隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録 作:sakigake2004
「『進化論』!」
ネフィリムが地面を蹴り、飛び込んで「アハハ!」
「!?」
━━さっきよりも格段に速い!ちょっとでも意識を逸らすと視界から消える!
「ッ『凶星』『氷柱』!」
「はいっ!」「ええ!」
私が声をかけると、二人を中心として強風と吹雪が吹き荒れる。
「アハハ!冷気による封殺ってわ…け…あれ?」
ネフィリムの動きがだんだん鈍くなっていく、かかったか。
「何これ…?こんな寒いわけない…こんな暑いわけない…何したの…!?」
「矛盾脱衣ってわかるかしら?私の『雪女』で起こした吹雪はそこに至りうるあらゆる現象を誘発するの。」
『氷柱』の十八番、初見殺しの極み、彼女を敵に回したく無い理由の大半をこれが占めている。
「もちろん貴女がこれで凍死するわけは無いし、むしろ体温は上がるでしょうけど…その鈍った思考と下がった身体能力で戦闘が続けられる?」
「はっ…やるじゃん…進化っ」
ちっ、まだやる気か!
「そこまでにしておけよ『パノプティコン』観測開始。」
誰だ!?ネフィリムの仲間か?
「…!………!?」
は?声が出ない、体も動かない、瞬きは出来る、なんだこれ?
「…ナイスタイミングだね、『アルゴス』!」
「思ってるよりはだいぶピンチだったな『ネフィリム』」
「いや、まだ戦おうと思えば戦えたしさ?制限時間もまだ5分はあるし!」
「5分だけじゃないか、時間無駄遣いしすぎだろ。」
聴覚も視覚も機能してる、視線は動かせる、呼吸も出来る、だけどどれも最低限で声は出せない。背後にいる三課の皆んなもたぶん同じだ。
声の主がようやく見えた、金髪の男だ、手に持ってるのは…ビデオカメラ?違う、ビデオカメラにあそこまで大量のレンズはついてない、そういう観測ツール、
「これは『全域監視兵装パノプテース』ゼウスを見張る巨人アルゴスになぞらえ、任意の対象を監視し続ける隠秘兵器。俺が実行してるアプリ『パノプティコン』の効果は効果対象が複数人で認識しあう限り事前に設定した行動を禁止する。つまり俺とこの兵装とアンタらで見張り合う限りアンタら動けない?オーケー?」
「…!!…!!!」
悠長に宣言しやがる!というかアプリで外部から同意もなしに押し付ける拘束がこんな強力になるわけないだろ!絶対なんかインチキがあるやつだろうが、そこまで宣言しろ!なめやがって!
「…流石に不興を買ったみたいだな、今日は撤収するぞネフィリム。」
「えー!もう帰るの?」
「そんなわけないだろ、返却要請は断られた、つまり…俺たちもオークションに参加する。」
「…!」
「なんてな、アンタらならわかるだろうから言うが、こうなったら法務課やら軍やらを呼ぶのもアリではあるんだよ。」
「…」
「ただまあ、そこまですると色々もったいないわけで、金で解決出来るなら金で解決すべきなんだ。」
「…」
「つまりバトルはもう無いって事?」
「どうかな、このままおとなしくオークションが始まるわけ無いってのが『ヘラ』の予想だよ。」
『貴女でも少し考えればわかるはずです、雑にAIに意見を求めるべきではありません。』
この威圧感!女の声だが雰囲気が人間じゃない、言及したAIは自認、人工知能か。
「さて…『パノプティコン』の効果はしばらく持続する、早ければ1分ぐらいで解けるかな。じゃあまた明日、オークションで…いや会いたくは無いな、アンタら怖いから。ジャパニーズ妖怪とのバトルはもう勘弁してほしい。」
「またね、今度会ったらメタメタにボコってあげるかさ!」
「頼むからその今度が無いことを祈っててくれよ…」
そう言ってネフィリムとアルゴスは小走りで道の向こうに去っていった
「…うああああ!ふざけやがって!時間返せコンニャロ!」
「落ち着いてよ課長。」
「これが落ち着いていられるか!?骨折り損のくたびれ儲けとはこの事だ!こっちの方が無駄に手札晒した挙げ句ほぼ無傷で帰っていった!最悪だ!」
「ほらほら、来たはいいけど何もできず拘束されてた俺と『夢味』と『昼夢』に比べれば…」
「拘束は全員そうでしょ、卑下のふりして全員を巻き込まないでよ『髑髏』。」
「うっ、そう言われるとどうしようもない…」
「しかし割と早く拘束が解けましたね、30秒くらいですよ。」
「あの手のアプリの時間見積もりは実力差があると、アテにならないよ、それで痛い目見た事が何回もあるからわかる。」
「…なるほど、ありがとうございます昼夢さん。」
「そんな畏まらなくても…それでどうするの課長、追う?」
「いや…ここは一度『八咫鏡』達と合流して情報を整理しましょう、私達の知らないところで事態が大きく変化している気がします。」
最初にちょっかいかけてきたやつらの撤退がスムーズ過ぎた、やはりこれはなんらかの時間稼ぎだったと見るのが…
♪♪♪
…私の社用端末に電話?
「…知らない番号、誰だ?」
私は通話を開始する
「はい、こちらオラクル&インサニティー・カンパニー日本支社事業部営業三課の『ツルギさん、ツルギさんだよね!』
…そうだけど、その声は『ラッキー』か、この端末の番号は伝えて無いはずだけど?」
『ライトが教えてくれたよ!』
勝手に人の番号教えるとかコンプラ違反だろ…どこかのタイミングで痛い目見るぞアイツ…
「はあ…それで、要件は何?」
『ライトが病院に行った!それで伝言があって、軽傷だから安心しろ、だってさ。』
「…は?」
なんだアイツ、このタイミングで病院とかふざけてるのか?
『なんか通り魔にあったらしいよ、ナイフでめちゃくちゃに刺されるところだったって!』
「まったく、世も末だな!?」