隠秘実存フルコース:二十二世紀オカルトパンク・アポカリプスの生存記録   作:sakigake2004

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8皿目

「はあ…私達三課は今からオフィスに戻るけど、君は何処に居るんだ?」

 

『ライトが刺された通り!』

 

「…犯人は?」

 

『まだ見つかってないよ、ライトは一応通報したみたいだけど。』

 

「アイツなら『八咫烏』で顔とかわかってるんじゃないのか?」

 

『それが隠秘に加えて物理的にも顔を隠してたから見てないって、女性かもとは言ってたけど。』

 

「よし、すぐにそこから離れてオフィスに戻れ、取引先に無駄に怪我させるなんてオラインのプライドに反するからな。」

 

『えーと、ツルギさん達を迎えに行くところだったんだけど。』

 

「いいから戻れ、君を怪我させるとイギリス支社にも迷惑がかかるんだ、わかってくれ!」

 

『はい、わかりました!』

 

「よし、じゃあオフィスに戻ってくれ、頼むからさっさと!確実に!」

 

『了解!』

 

通話はそれで切れた。

 

「ツルギちゃんは〜あの娘がちゃんと戻ると思う?」

 

「不安になってくる事言わないでください…というか名前呼びもやめてくださいよ!」

 


 

「よし、戻ろうか呪理チャン!」

 

「意外だわ、あんたの事だから寄り道しようとか言うのかと。」

 

「私のことなんだと思ってるの?帰れって言われたんだからそりゃ帰るよ。」

 

「ハロウィンの時コニーさんにもう帰れって言われたのに学校の幽霊探しやめなかったじゃない。」

 

「あれで反省したんだよ、首を突っ込んではいけない事もあるって身をもって知ったの!」

 

「今はそれで納得してあげるわ…そしてこのお土産の山は頼むから自分で持って、めちゃめちゃ重くて私の腕が震えてるから。」

 

本当に重たい、この子の怪力は何処から来るのかしら。

 

「はいっと!電話中もっててくれてありがとね!」

 

「…あんたって挨拶ちゃんとするわよね。」

 

「え、何?褒められてる?」

 

ルシールはずいぶんと驚いた顔をしている。

 

「そんな深い意図無いわよ、いや褒めてると言えば褒めてるけど。」

 

「えへへ…」

 

「なんでそんな照れて「呪理チャン危ない!」はっ?」

 

ルシールがいきなりぶつかってきた、何の何よ!?

 

「ちょっと!?急に何よ!って…」

 

「あーあ、刺し損ねちゃった、消化不良だからここはサクッとキメたかったのに…」

 

誰?血みたいに赤い髪に青紫のメッシュ、黒いパーカーに黒マスクの女の子…剥き出しのナイフを持ってる、まさかついさっきライトを襲ったっていう通り魔?

 

「誰なの!?私の友達に手を出すとかさすがに容赦しないけ「あ、その顔!ルシールじゃん!」ど…もしかして………真理亜(マリア)?」

 

あれ、ルシールの知り合いなの?

 

「そうそう!久しぶり!だいたい三ヶ月ぶりぐらい?イギリスに居るって聞いたけどなんで日本にいるわけ?まさかイギリスにも居られなくなったとか?」

 

マリアと呼ばれた女の子はとても楽しげにルシールに話しかけてるけど…

 

「…そっちこそ、なんで日本に居るの?」

 

肝心のルシールはとても複雑…というかかなり嫌そうな顔をしている、こんな表情してるルシールは初めて見た。

 

「いやね?遊んでたらちょっと大事になっちゃってさ、それはいつも通りパパがお金で解決してくれたけど、流石にいつものところでは遊べなくなっちゃって。」

 

「それで日本に捨てられた?」

 

「まさか!日本なら万が一の事があっても死なないって事でパパが連れてきてくれたんだよ、こっちならお金で人って生き返るんでしょ?もうここんところ毎日それっぽい人を探してて…」

 

「それが呪理チャンだった、と」

 

「そうそう!そこの女の子!まさかルシールの友達だったなんてなあ、知ってたらやらなかったのに、ごめんね?」

 

「え、あ、いや…」…いいかげんその趣味やめた方がいいよ、いつか酷い目に遭うだろうから。」

 

私の言葉を遮ったルシールの声には、彼女から一度だって聞いた事が無いような怒りが溢れていたが

 

「ふーん?まあ肝に銘じとくよ、そんじゃあまたね!またちょうど良さそうな人探さなきゃだから!」

 

マリアはそんなルシールの様子など気にも留めていないようで、あっという間に何処かに行ってしまった。

 

「…今日まであの子の事そんなに嫌いじゃなかったけど、今日から嫌いかも。」

 

「えーと、そもそも彼女は誰なの?」

 

「…マリア、真利愛(マリア)・V(ボイド)・グレイ、私の従姉妹だよ。趣味は…暴力と拷問、昔っから色んな格闘技とかやっては過剰な暴力で出禁になってて、最後に会った時には今みたいな通り魔行為を自慢げに語ってた。なんでも、人を殴ったり刺したりするのが好きなんだってさ。」

 

「親戚である貴女の前でこんな事言うのもアレだけど…だいぶ…変態ね…」

 

「別にそれであってるよ。アメリカに居る頃は正直どうでもよかったけど実際に被害に遭うと流石に嫌な気持ちが勝つね…警察に通報だけしてさっさと戻ろう…あっ!押し倒しちゃったけど怪我はない!?いきなり襲われたけど怖くなかった!?」

 

「え、大丈夫だけど、それよりもお土産が…」

 

落としたやつを私が踏んでぐちゃぐちゃになってるんだけど…

 

「お土産なんてまた買えばいいんだから!怪我が無いのが第一だよ、愛理サンもそう言うに決まってる!」

 

「わ、わかったから落ち着いて、あんたがそんなにツルギさんやおばさまの言う事を気にしてるとは思わなかったわ…」

 

「え…?」

 

「…そういうことじゃないの???」

 

「いやいやいや、私は純粋に呪理チャンが心配なんだよ!」

 

「ほら、私は見ての通り大丈夫、傷一つ無いわ。」

 

「それなら…よかった…」

 

何この子、急に情緒おかしくなっちゃって…

 

「ほら、しゃんとして、早く帰るわよ。」

 

「うん…」

 

なんで襲われた私よりショック受けてるのかしら?

 




 

「あーあ、良い人居ないなー、ジュリちゃんだっけ、もうちょい気をつけれてたらいっぱい刺せてたのになー。」

 

こうやって独り言を言っても、私の心は虚無(ボイド)のままだ。

いつもそう、私の特異点(シンギュラリティ)が私の何もかもを虚無にしていく。

何の感傷も残ってくれない。

ただひたすら、刹那の喜びだけが私の行動方針なのだ。

 

「まったく、半日も人を待たせるなんてスポンサー様もタチの悪い…」

 

ダラダラ歩いて時間を潰していると、痩せぎすで青い髪の結構なイケメンを発見。こんな路地裏で映画見て時間潰しだなんて奇特な人もいるんだね…あれって。

 

「『銀の弾丸(シルバーバレット)』じゃん、おにーさんこれ好きなの?」

 

「…誰だい君は?」

 

「この辺に最近引っ越してきたの、おにーさんはこの辺の人?」

 

「いいや、知り合いと待ち合わせ中だったのさ、その知り合いはあと12時間はこちらへ来れなさそうなんだが。」

 

「へー…よければお茶でもしない?その映画好きなんだけど知り合いは誰も話に乗ってくれないんだよね。」

 

「古い作品だし、グロテスクだからね…もしかしてナンパかい?悪いが他を当たってくれないか?」

 

「そんな、私は趣味について話したいだけなんだよ、ちょっとぐらい良いじゃん?」

 

「…ま、僕も暇してたところだ、乗ってあげよう。」

 

「いいね、じゃあそこのカフェにでも行こうか、わたしのオススメはオレンジジュース、真っ赤で綺麗なんだよ。」

 

「そうかい…君、名前は?」

 

「マリアだよ、おにーさんは?」

 

「…教えないのもバランスが悪いか、とりあえずは…『フレデリック』とでも呼んでくれ。」

 

変な間を開けたね、映画監督の名前と一緒だし偽名かな?

 

「じゃあフレデリックは何飲む?」

 

「一番安いコーヒー。」

 

「えー、オレンジジュースじゃないの?」

 

「僕はコーヒーが好きなんだよ、飲むと目が醒めるから。」

 

「でも10000円もするんだよここのコーヒー。」

 

「なんだいそれは、ずいぶんと挑戦的な値段設定だな。」

 

「実はいつでも90%オフクーポンが配布されてて実質1000円なんだけどね。」

 

「最悪な売り方だね本当に!」

 

なんだかんだ思ったよりもだいぶノリがよくて面白い人、よく見たら着崩してるスーツもかなりいいやつだし良い人捕まえたかも…

 

刺すのが楽しみになってきた!

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