転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件   作:想いの力のその先へ

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十一話

 あの後、結局搾取。というかアクラ派の醜聞に関しては棚上げ、という共通見解になった。当然だ。こっちのような下っ端が決められるような内容じゃない。さしもの怖いもの知らずのエレインすら否定しなかったんだ。

 彼女も、さすがに見えてる地雷源でタップダンスをするほど怖いもの知らずではなかったということだ。

 

 とりあえず、いまのところは伝令を出したので、それの帰還待ちと言う状況になる。正直、親父も公爵閣下も頭を抱える未来しか見えないが。

 

 それが終わった後、エレインは率いてきた黒鍬と行動をともにしている。街道整備の陣頭指揮、ならびに護衛に精を出しているようだ。野生動物は時季的にいないだろうが、盗賊やら山賊はいてもおかしくない。

 それらが現れたら叩き切ってやる、と気炎をあげているようだ。そんなことをしていたら、むしろ避けそうなものだが。

 

 それはともかく、いまは重要なことは他にもある。その一つが――。

 

「それで、アスガル。姉上はなんと?」

「ご当主の説得は任せてほしい、と」

 

 まぁ、あの姉貴。アマテル・アルデバランが任せろ、と言っているのだから問題ないだろう。

 あの人も物腰は柔らかであるが、本質は女傑だ。親父のことを従えていても驚かないぞ。それに、姉貴も見えてるはずだ。この領地に投資する旨味を。

 なにしろ、このタイミングで援助。食糧配給を行えば、その功績は伯爵家、というより姉貴の元へ舞い降りる。そして、それは婚約者。イクリル・イオスへの手土産となる。

 それだけじゃない。この領地が軌道に乗れば貿易が活発になるだろう。その利益は、伯爵公爵両家にもたらされる。

 なにしろ、一番近い領地がその二つなのだから。

 

 こちらからは一次産業品、木材や食材、それに動物の革など。両家からはそれらを加工した二次産業品。家具や生活用品、人力の荷車なんかもあるだろう。それらを格安で手に入れられるのだ。むろん、この領地でもいずれ技術者。職人を誘致して作れる環境を整備するつもりだが。

 

 そうすれば、この領地は発展する。発展すれば貿易の許容量も増え、さらにその資金、資源を使って発展というサイクルが出来るだろう。

 そして、その富の一部は両家に流れる。まさしく、Win-Winの関係になれるのだ。見逃す理由がない。

 姉貴なら、間違いなくそれが見える。そして、親父のケツを蹴ってでも援助を引き出すだろう。

 ならば、俺はそれを前提として動くべきだ。と、なるとすべきことは。

 

「よし、アスガル。着いて――」

 

 こい。そう言おうとして、ドアのノックが聞こえる。はて? 面会の予約などはなかったはずだが。

 

「アインさま、失礼しますよ」

「レグルス? どうした、急に」

 

 ドアをノックした主。それは違う部屋で内政のための書類を処理していたレグルスだった。アスガルやエレインとのやり取りをしている間も作業を停めるわけにはいかなかったので、代行してもらっていたのだ。

 しかし、そのレグルスが作業を停めてまでこちらへ来た。なにか問題でも起きたのだろうか?

 

「アインさまにお客さまです。直接お会いした方が良さそうでしたので」

「そうか、わかった」

 

 客? それこそ、予定になかったが。アポ無しの飛び込み客というわけか。

 さて、鬼が出るか蛇が出るか。肝を据えないとな。

 

 

 

 ……と、警戒していたわけだが。目の前に座る女性に気勢を削がれることとなった。

 

「いやぁ、こんなお若い領主さまとお会いできて光栄ですわぁ」

「そ、そうか」

 

 いまも、こちらにおべっかを欠かさない女性。彼女はマーネン商会の商人。アルフェ・マーネンと名乗った。

 

 確かに以前、この領地の噂を聞き付けて商人が来るかも、なんてことを考えたが、それにしても早すぎる。

 警戒すべき、なのだろうが。同時に商人の伝手というのは喉から手が出るほどほしい。どうしたものか。

 

「それにしても、ご領主さま。公爵家から信頼されてるんですなぁ」

「ん……? なんでだ?」

「そりゃあ、そうですよぉ。なんてったって、姫騎士-エレインさまが直々に援助の陣頭指揮を取っておられるのでしょう?」

 

 あいつ(エレイン)のせいか!

 

 ちなみに、姫騎士というのはあいつの二つ名だ。

 見た目が姫のように可憐なこと。自身が幼馴染みで親友の王女、ライナの騎士になることを目指しているのを公言していることから、その名がついた。

 そして、ある意味当然であるが。二つ名がつく、ということはあいつの剣の腕。実力が評価されてのことでもある。多少は公爵家、という色眼鏡を入っているだろうが。

 

「それに、ご領主さまもお若くいらっしゃる。その若さで領主を下賜されるなんて、陛下からも信任厚いのでしょう? そりゃあ、うちら商人も興味も惹かれるってもんですよ」

「……ほう?」

 

 内心、警戒のギアを一段階引き上げる。何者だ、この商人。表向き、この領地は伯爵家所有のものになっている。正確には、王家から公爵家に。公爵家がいままでの忠勤を鑑みて伯爵家へ。そして伯爵家が俺を代官として派遣、という筋書きだ。そこに、国王の意向は介在しない、というのが表向き、目に見える部分の()()だ。

 

 それなのに、この商人。あるいはマーネン商会は本当の意味での事実を知っている。

 

 王家の御用商人か?

 しかし、御用商人であれば、そもそもこんな零細領主を相手にする必要がない。王家との取引だけで利益は十分。それどころか、下手に虎の尾を踏む必要がない。

 ならば、他の貴族の出入りを許された商人?

 少なくとも、マーネン商会という屋号は伯爵家では聞き覚えがない。もしかしたら、公爵家と取引しているのか。それなら、エレインの動きを掴んでいることの説明もつく。

 

 ……まぁ、どちらにせよ。商人という伝手が喉から手が出るほどほしいのは事実。怪しかろうがなんだろうが、使うしかない、というのが現状だ。

 

「それで、マーネン商会はなにを取り扱ってるんだ?」

「そりゃあ、もう、なんでも。なんてったって、うちらのモットーは、『揺り篭から墓場まで』なもんで」

 

 ……どうしよう。すごく使いたくなくなってきた。実は死の商人、とか言わないよな。こいつら。

 俺は内心、頭を抱えつつ、どう付き合っていくべきか悩むのだった。

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