転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件   作:想いの力のその先へ

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三十八話

 最近、イライラすることが多くなった。

 それもこれも、愚兄と愚妹。二人がオレに刃向かうからだ。

 

「クソがっ……!」

 

 思わず腕をなぎ払う。腕が机に置かれていた陶器の置物に当たり、がちゃり、と吹き飛ぶ。そして、床へ落ち、がちゃん、と割れた。

 忌々しい……!

 

「誰か、誰かいないかっ!」

「は、はいっ! 失礼いたします!」

 

 慌ててメイドの一人が入ってくる。オレの側付き。お気に入りのやつだ。

 

「片付けろ」

「た、ただいま!」

 

 青ざめた様子で床に散らばった陶器をかき集めている。あれの怯えた様子に少し、溜飲が下がった。

 しかし、愚兄ダレスに愚妹ライナ。揃いも揃ってオレに刃向かうし、協力もしないとは――。

 

 それだけじゃあ、ない。あの、辺境。名はなんだったか。まぁ、良い。あそこの代官に任じていた愚物は、どうやら、まともに仕事も出来ていなかったらしい。

 こうなると、やはり、戻ってきたときに首を刎ねていたのは正解だった。

 このオレの、アクラの手を煩わせるなど、万死に値する。

 

 それにライナもライナだ。このオレを指示するという栄誉を与えようというに、それを拒むとは。なにが継承を放棄する、だ。なにが、誰にも肩入れしない、だ。愚かしいにも程がある。

 ここは頭を垂れ、感激に震える場面だろう。そうすればあれのお気に入り。たしか、アルデバランの息子、だったか? あれを側で飼う権利を与えるというのに。

 

 それにエレイン。公爵家の娘も美しく育った。あれなら我が正室として侍らせるに問題ない。

 

「に、しても……」

 

 あれは騎士に傾倒しているようだ。姫騎士、などと持て囃されているようだが……。

 だが、公爵の令嬢なら、淑やかに、オレの側へ侍れば良い。多少の跳ねっ返りは良いだろうが、あまりに目に余るようなら、オレ直々にしつけてやる必要がある。

 そういえば、あれは度々辺境へ足を運んでいるのだったか? 物好きなことだ。

 

 それとも、あそこに何かあるのか? 妙に公爵家や、あの愚姉。マイアが嫁いだディオスクロイ子爵家が気にしているようだが。

 

「ちっ……」

 

 面倒なことだ。流石に王家とはいえ、あの二家が同時に絡むとなると、少しは配慮してやらざるを得ん。このオレを煩わせるなど、業腹だが。

 いや、いっそ。ディオスクロイ子爵家は何等かしらの罪をでっち上げて取り潰すか? それが出来れば苦労はないが。

 またイライラしてきた。これは、発散しなくては。都合良く、発散するためのものも近くにある。

 

「おいっ!」

「は、はいっ!」

 

 メイドがびくり、と震えた。いつのまにか、陶器の片付けは終えていた。声をかけなかったら、恐らく、そのまま消えていただろう。使えないメイドだ。

 メイドなら、ご主人様へお伺いをたてるのが当然だろう。

 

「おまえ、まだ、立場が分かっていないのか。それとも、まだ、前の立場が惜しいのか?」

「……い、いえっ! そんなことはっ!」

 

 顔を青ざめさせるメイド。

 これは愚かしくも、かつてオレと同じように王家の継承権を得ていた。順位は遥かに下であったが。だが、それでも不敬には違いない。そもそも、ライナもだが、正室の子ではない、側室、妾の子が継承権を持つのがおかしいのだ。

 だから、このオレ直々に立場というものをしつけてやった。だというのに――。

 

「まだ、しつけが足りなかったようだな?」

「そんなっ! ……そんな」

 

 カタカタと震える。顔が蒼白になっている。目には大粒の涙が溜まっていた。

 こいつは唯一、ここが良い。オレを道化として楽しませる。だが、今回はそれだけで済ませるわけにもいかんだろう。今一度、立場を分からせてやらねば。

 

 腕を握った瞬間、身体が強ばる。

 

「ぃ、ぃゃ……」

「ん、なんだ? 嫌、と言ったか?」

 

 その言葉でメイドが、腹違いの妹が固まる。面白いように、思う通りに動く。くっくっ、と喉がなった。

 

「そうか、嫌か」

「ぃえっ、そんなつもり――」

「なら、他の奴らと同じ道をいくか?」

 

 メイドの顔から血の気が引く。

 そうだろう、そうだろう。なにしろ、兄弟、姉妹の殆どは売られたんだ。このオレに。

 男は労働奴隷として、女は――。

 

 自身の末路を悟ったのだろう。震えが酷くなっていく。

 

「ぃ、や――! お、お待ちください!」

「なら、なにをすれば良いか。分かるな?」

 

 オレの問いかけに、引き攣りながらも、にこり、と笑みを浮かべたメイド。そして、オレへ近づいて、抱きつく。

 

「…………お情けを、お願いいたします」

 

 メイドの、腹違いの妹の懇願の声。それがオレの身体へ染み渡る。最初は抗っていたこの愚物をここまでしつけるのは苦労した。

 だが、いまではこんな従順になった。これがオレのしつけの賜物だ。

 

 しかし、飽きてきたのも事実。……売るか。

 

 お気に入りではあるが、手に入らないものじゃない。替えがきくものだ。なら、拘らなくても良いだろう。

 今度、奴隷商が訪れた際、こいつを含め、どれを売り払うか考えながら、いまはこれで楽しむことにした。

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