転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件   作:想いの力のその先へ

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三十九話

 イオス公爵領での話し合い――マイア姫、いや、夫人がいるのは想定外だった――が終わったあと、俺は領地、辺境領へと帰還していた。

 想定外がいくつもあった訪問であったが、それでも手応えは悪くなかった。それに、次期公爵のイクリルくんと知己を得れた、というのもプラス材料だ。

 

 むろん、公爵閣下が交渉相手として劣る、などということじゃない。ただ、今後の付き合いを考えると長い合間利害調整などをできる彼との交渉窓口は価千金といえた。それに――。

 

「無条件に味方、と考えるわけにはいかんだろうが……」

 

 マイア夫人との伝手が出来たのもの大きい。彼女は王族、ライナとは親族の間柄だ。何かの時に協力してもらえるかもしれない。

 あの王宮には、間違いなく良くないものが蔓延っている。そこからライナを助ける一助となるはずだ。そのためにも。

 

「いまはここを整備する。それが大目標だ」

 

 いわば、この辺境領はライナを迎え入れるための箱庭だ。むろん、その方法も考えなければならないが、それ以上にあの娘が暮らしていけるよう領地を、経済活動を発展、安定させなければ。

 そのための第一歩として、いま、アスガルは山師を引き連れ鉱脈調査へ乗り出している。

 最初の予定では、俺とレグルスが回る予定だったのだが……。

 

 

 

『もし、モンスターや他の問題で武力が必要なとき、どうするのですかな?』

 

 

 

 と、いうアスガルの尤もすぎる指摘によって、やつが調査に乗り出すこととなった。

 事実、クソザコの俺と青瓢箪のレグルスでは遭遇戦でそのまま全滅してしまう可能性が高いので反論できなかった。

 それはそれとして、やつに正論を言われたのは、なにか納得いかないのだが……。

 

 それはともかく!

 

 その間、手持ち無沙汰となった俺とレグルスは、今後のことについて協議していた。主に、住居面について、だ。

 山師、鉱山労働者を村に留め置くのは、通勤という意味で非効率だし、出来れば金鉱などについてイオス公爵家、ディオスクロイ子爵家は仕方がないとして、その他には出来るだけ秘匿しておきたい。

 つまり、そこを集落として隔離しておきたいんだ。そうすれば、金鉱が露見する可能性は低くなるから。

 

 もっとも、隔離だけするとここに秘密がありますよ。と宣言しているに等しい。なので、ダミーとして森、山の作物を栽培する山村とする予定だ。

 キノコ、山菜、ブドウなどだ。そうしなければ怪しまれる可能性は十分ある。

 

 なにしろ、現状で招かれざる客など、こちらとしてもご遠慮願いたい。そのためには、そういった措置も必要、という結論に至った。

 これは俺個人の考えではなく、辺境領領主、イオス公爵家、ディオスクロイ子爵家の総意だ。

 

 なお、ブドウに関してはワインに加工して出荷予定だ。新たな税基盤になる、と良いのだが。

 

 それより、問題はマーネン商会。こちらはマイア夫人が手綱を握ってくれるのを期待するしかない。もしくは、何等かの伝手をこちらでも得られると良いのだが。

 それが現状、どうしようもない以上。こちらも打つ手が限られてしまう。あるいは、イオス公爵家の御用商人を派遣してもらうか。

 こちらは公爵家の配下なので筋も通るだろう。

 これは要検討、といったところか。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

 ぎぃ、と木材が軋む音を響かせて立ち上がる。

 ちなみに、いままでなにをしていたか、というとレグルスから半強制的に休憩させられていた。

 俺が休憩している間に、候補地の選定を終わらせておきます。という、伝言付きで。有無を言わさずに。

 

 

 

 

 

 

 

「候補地の選定は終わりましたよ。ただ、まぁ。鉱山町の方は、位置次第で修正が必要ですが」

 

 レグルスと仕事を共にしていた部屋に戻った第一声がこれである。

 俺は差し出された村周辺の地図。そこにマーキングされた地点を見る。

 

「なるほど、確かにこれなら良さそうだな」

 

 地図には山間部に二ヶ所。川の下流に一ヶ所マーキングされていた。

 この下流の一ヶ所。これもまたダミーとしての役割も持つ。山間部だけでは、山に何かあるのか。と探られるかもしれない。

 しかし、下流にも集落を作ることで注意を分散させることができる。もっとも、それだけが理由ではないが。

 

 理由は複数ある。一つ目は先ほど話したように注意を分散させるため。

 二つ目は水運のハブ、物資集積地とするため。いわば、金はもとより、その他の産物。山菜やブドウ、ワインなども川で運んでしまおう、というわけだ。むろん、金の輸送には細心の注意を払う必要があるが。

 

 三つ目は単純にもとの村が手狭になってきたんだ。なにしろ、もとは人口50人の寂れた村に、奴隷やらなにやらで人があふれ、いまでは人口が三倍近くに伸びている。

 そうまで一気に人が増えれば、手狭になるのもさもありなん、という話だ。

 そのため、村の拡張もしなければならないが、それで起きたのが前回のスタンピード。前回はなんとか無事に治まったものの、慎重に期する他ない。

 そのための拡張先、という意味合いもある。

 

 あとは、単純に住む場所を変える。増やすことによって物流網を形成。自領で経済を回したい、という思惑もある。

 うまくすれば自領、ないしはイオス公爵領とディオスクロイ子爵領との交易路整備で、経済を完結させられる。そうすれば、王国に依らない、独自の経済網を形成できるだろう。

 

「それなら、とりあえずこのまま入植計画は進めそうだな」

「えぇ、そうですね。ただ……」

 

 そこで、レグルスが困った、とでも言いたげな顔をする。正直、次になにを言ってくるか。もう、予想はついていた。

 

「本格的に入植、開拓するとなると人員が……」

「……だよなぁ」

 

 場所は選定した。計画も出来上がっている。ただ、それを成す人員がいない。

 正確に言うなら、複数同時進行するだけの人員がいない。という問題。

 一応、鉱山村だけなら、すぐさま開拓可能だ。ただし、そこだけだと、いままで考えたダミーの意味がなくなるので本末転倒だが。

 

 二人して、はぁ。とため息をつく。

 貧乏暇なし、とは言うが……。どうしたものだろうか。

 俺とレグルスは揃って頭を抱えるのだった。

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