転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件   作:想いの力のその先へ

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 どうも、閲覧していただきありがとうございます。作者です。
 突然ですが、今回の更新で完全にストックが切れました。なので、しばらく書き溜め。ストックを作るために、しばらく更新が出来ません。申し訳ございません。
 また、量を溜められたら再開しますので、お待ちいただけると幸いです。


第41話

 俺は目の前の女傭兵、イオネを計りかねていた。

 仮にも貴族である俺相手に軽口を叩ける胆力がある。デフとのやり取りを見るに人望もある。傭兵団を率いて、かつ破綻させていないのだから統率、指揮という意味でも力がある。

 ……そういえば、聞いてなかったと思うが彼女はどれ程の兵を率いているのだろうか?

 

「イオネ団長、ひとつ聞きたいんだが?」

「なんだい、領主さま?」

「あなたはどれくらいの規模の傭兵団を率いてるんだ?」

 

 俺の問いかけにイオネはにやり、と笑った。

 

「あぁ、そんなに期待しないでおくれよ。アタシが率いてるのは100ちょっとさ」

「100……!」

 

 数だけで見れば少ない。小隊規模だろう。しかし、それで終わりとは思えない。彼女が率いる、すなわち彼女が鍛えた兵たちだ。ただの有象無象で終わるとは思えなかった。

 

「それほどの人数を……」

「驚くほどかい?」

 

 イオネが挑戦的な笑みを浮かべた。彼女にとってはできて当然、そういうことだろう。

 しかし、こちらの辺境領ではアスガルが鍛えているものの、頭数として数えられそうなのは精々20から30だろう。

 それにこの間、連れられてきた戦争奴隷たち。そちらも20程度だった。

 すなわち、辺境領での兵力という意味では、精々50程度。むろん、数合わせとしての雑兵を考えればもっと数は増える。だが、戦力としては数えられない。それどころか、その雑兵たちが死ねば領地が立ち居かなくなる。

 そういった意味では、雑兵を使うという判断は論外だ。

 

「ふぅ……」

 

 一息、息をつく。少し、頭を冷やさなければ。

 正面ではイオネがにやにや、とこちらを見ている。

 こいつ、と反感が出てきそうだ。完全にこちらの足元を見ている。だが……。

 

「はははっ、面白いお坊っちゃんだっ!」

「むっ……」

 

 急にイオネが声を上げて笑い出した。

 

「アタシ相手に、そこまで不躾な目をくれるやつなんて久しぶりだよ!」

 

 知らず、彼女を睨み付けていたようだ。

 どうにも不味いな。己が律することが出来ていない、ということだ。こうも、簡単に腹の中を読まれては。

 俺は精一杯の強がりで軽口を叩く。

 

「ほぅ、それは光栄だ。それで? 俺以前に、不躾な目をくれたやつはどうなったんだ?」

 

 俺の問いかけに、イオネは無言で首を掻っ切るジェスチャーをした。それは、つまり、そういうことだろう。

 ……おぉ、怖。

 それが表情に出てたのだろう。にやにや、と笑いながらイオネは安心させるように告げる。

 

「お坊っちゃんにはするつもりなんてないから安心しな」

「……はははっ。それは良かった」

 

 いや、本当に。どこまで本気かしらないが。

 まぁ、どちらにせよ。イオネにはこの辺境が、もしくは俺自身に価値を見いだしているのだろう。だからこそ、ここへ来た。そして、その理由は――。

 

「さて、ご領主さま? 商談といこうか。どれだけの値をつけてくれるんだい?」

 

 そら来た。つまり、ここに来た本来の理由は営業。自身の傭兵団。紫煙の蜻蛉団の売り込み、というわけだ。

 

「ご領主さまだって分かってるんだろう?」

「ふん……」

 

 あぁ、分かっている。分かっているとも。いくら怪しかろうと選り好みをしている余裕などないことは。

 それに、売り込みも確かだろうが、デフを、もと副団長を心配していたのも確かだろう。でなければ、ああも和気あいあいとした雰囲気にはなってないはずだ。

 だからといって、こちらも卑屈になるつもりはない。なにより、人材という意味でもイオネ、という女団長は必要になりそうだ。

 なにしろ、彼女は傭兵団、という武力でアスガル。我が騎士と同じ視点を、そしてその運用で股肱之臣たるレグルスと同じ視線を見れる稀有な人材だ。これの逃す手はない。

 

 ならば、俺がするべき行動は――。

 

「全面的に雇い入れよう。必要なら住居も用意するし、なんなら傭兵団ではなく、この辺境の正規軍。もちろん、指揮権はイオネ団長のままで良い」

「……それはまた。太っ腹だねぇ」

 

 呆れたか、あるいは呆けたように言葉を吐くイオネ。だが、もちろん。それだけで終わらせるつもりはない。

 

「ただし、条件をつけさせていただく」

「うん? 待ちなよ、お坊っちゃん――」

「条件はふたつ。ひとつ、デフの副団長復帰。もうひとつはイオネ団長は俺の副官。アドバイザーになってもらう。これが条件だ」

「「…………はぁ?」」

 

 イオネと、ついでに巻き込まれたデフから訳が分からない、とばかりに声が上がった。

 

「ちょ、ちょっと待ってくだせぇ、領主さま。オレは戻るなんて一言も……」

「なにか、問題があるのか? 何も、前線で戦え。と、言ってる訳じゃない。あくまでイオネ団長の補佐をするだけだ」

「ですがねぇ……」

 

 困った、とばかりにぼりぼり頭を掻くデフ。

 次にイオネへ視線を向ける。そこには、やれやれ、と言いたげに首を振っている姿。

 

「至れり尽くせり、だとは思うけどねぇ……。お坊っちゃん、アイン、って言ったかい? 正気か?」

 

 嘘は許さない。

 そう凄んでくる彼女へ俺は肯定する。

 

「ここで嘘を言っても仕方あるまいよ。イオネ団長、アンタという人材を迎え入れられるのなら、この程度。安いと判断した。そういうことだ」

 

 俺の宣言に、イオネは一瞬ポカンとした。そして、言葉が理解できたのか、呵呵大笑する。

 

「はははっ! そうかい、そうかい! そこまで求められちゃあ、仕方ないねぇ!」

 

 俺とイオネはどちらともなく手を差し出し、がっしり、と握手した。

 

「商談成立だ。よろしく頼むよ、お坊っちゃん。いや、アインさま」

「あぁ、こちらこそ。よろしく頼む、イオネ団長」

「イオネで良いよ」

「あぁ、了解した。イオネ」

 

 さて、彼女が首輪つきか否かは別として。彼女を迎え入れられたのは吉となるか凶となるか……。どちらにせよ、これで動けるようにはなる。

 また、忙しくなるな――。

 

 

 

 

 

 ――なお、後になって思うと、ここで彼女を迎え入れられたのは吉も吉。大吉と呼べたのは別の話。

 もし、彼女を迎え入れられなければ、ライナ救出はさらに難しくなっていたのは間違いなかった。

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