転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件   作:想いの力のその先へ

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四十九話

 ボクはメル。ただのメル。

 おにぃ――にいさんのように領主さまでもなければ、アスガルさんのように騎士でもない、ただの女の子。

 強いて違う点を上げるなら、ボクもボクなりに騎士さまを目指してる、ってことかな?

 そんなボクは、いま村の広場で男の人たちに混じって剣を振ってる。

 

「やぁっ――!」

「ふっ……!」

 

 がきん、と鉄がぶつかる音がした。簡単に防がれてしまったから。どうしても、女の子。しかもアスガルさんが言うにはまだ身体が出来上がってないから、簡単に防がれちゃう。でも――!

 

「獲った!」

「ぬぐぅ……!」

 

 防がれるのなんて分かってる。なら、それをブラフにすればいい。あえて一撃目を防がせて、二擊目を叩き込む。アスガルさんに教わったことだよ。

 やってることも簡単。一撃目はあえて力を込めないでわざと弾かせる。その反発を利用して身体を回転。本命の二擊目、回転斬りを叩き込む!

 この攻撃も、ボクが男の人より身体が柔らかいから出来る、ってアスガルさんが言ってた。

 

 それはそれとして、もちろん、寸止めだけどね。

 

 いくら刃を間引いてても鉄の塊を当てるのは危ないからね。ボクが非力でも怪我をさせるのは確実、最悪死んじゃうかもしれない。

 そんなことになったら、目も当てられないもん。

 村に一応教会はあるけど、治癒術師さまはいないし、大怪我したらどうしようもなくなっちゃう。

 

 噂では、レグルスさまが治癒術を使える、なんて話があるけど。そもそもレグルスさまもにいさ――領主さまもすごく忙しくしてるから、そんな暇がないし。

 それこそ、前はふたりとも。あまりの忙しさに顔が死んでて、領主館にゾンビが出た、なんて大騒ぎになったもん。

 

「ふぅ……。ありがとうございました!」

「ありがとうございました」

 

 模擬戦が終わったから、相手にお辞儀した。これが礼儀、って習ったからね。

 相手の人は、確か……。

 

「すごいなぁ、メルちゃん。こんなに、あっさり負けるなんて思ってなかったよ」

「えへへ……」

 

 相手の人に誉められちゃった。……あぁ、そうだ。確かこの人は戦争奴隷として連れてこられた人だ。貴族の人たちの小競り合いに巻き込まれて……、って言うのをこの間聞いた気がする。

 

「頑張っているようだな!」

 

 がちゃ、がちゃ、と鉄が擦れる音が聞こえて、すぐに大きな声が聞こえた。この声は……!

 

「アスガルさん!」

「うむうむ、重畳、重畳」

 

 いつの間にか、後ろにいたアスガルさんが、満足そうに笑ってた。もしかして、模擬戦見ててくれたのかな?

 

「メル、うまく立ち回れたようだな!」

 

 やっぱり、見ててくれてたみたい。少し恥ずかしいのと、嬉しいのと……。

 

「はいっ!」

「精進するんだぞ」

 

 アスガルさんの雰囲気が少し柔らかくなった気がする。

 

「そこで、だ。メル」

 

 なんだろう?

 今度は気配が鋭くなった気がする。

 

「俺と手合わせをしてみるか?」

「……えっ?!」

 

 いままでアスガルさんとは身体の動き方を教えてもらう形で剣を合わせたことはあるけど……。

 身体が震えてる。でも、怖い訳じゃない。嬉しいんだ。アスガルさんに認めてもらえた。エステルさまが憧れてる騎士のアスガルさんに!

 それが嬉しいんだっ!

 

「お願いしますっ!」

 

 ボクはかちゃり、と剣を構えた。アスガルさんも剣の鞘に手を掛けた。

 

「さぁ、来るがいい!」

 

 ずん、と重くなった気がする。ごくり、と音が響いた。そこではじめて、ボクが唾を飲んだんだ、って気付いた。

 この重さ、アスガルさんから感じる。きっと、前に教えてもらった殺気、剣気だと思う。でもっ……!

 

「や、ぁ……!」

 

 どん、と地面を蹴ってアスガルさんを目指す。

 迷ってなんていられない、怖がってなんていられない!

 

 ボクとアスガルさん、逆立ちしたって勝てないなんて、分かってる。でも、前にアスガルさんは言ってた。

 

 ――メル、生きることを諦めるな。戦いで勝てない相手でも、生き残れたらお前の勝ちだ。生き残れれば、それがお前の経験、血肉になる。

 

「はっ――!」

 

 寸止めもなにも関係なく剣を振るう。がきん、と重い音が響いた。そこには鞘から少し剣を覗かせて防いでるアスガルさん。

 

 ――防がれた、まずい!

 

 ボクは直感を信じて、後ろへ飛び退く。直後、どごん、と抜かれた剣が大地へ叩き付けられた。ブワッ、と土煙が上がった。

 避けられた。……ホッ、とため息を吐こうとして――。

 

 ――ぞくり。

 

 背中に、身体全体に寒気が、怖気が走った。ボクはまた直感を信じて横っ飛びに飛んで、ごろごろと転がる。

 そして、顔を上げてさっきまで居た場所を見ると、そこには土煙を引き裂いて現れるアスガルさん。

 もし、まだあそこにボクがいたら――。

 

 そして、真顔で怖かったアスガルさんの表情が破顔する。

 

「はっ、はっ、やるじゃないか」

 

 そう言って剣を鞘へ戻す。模擬戦終了の合図だ。

 

「ぷはぁ……!」

 

 ボクのなかの張り詰めてた緊張がほどけて、汗がじわり、と流れ出た。

 まだまだ、だなぁ。それが良く分かる。

 アスガルさんが歩いてくるのを見ながら、ボクは今回。どこがダメだったか考える。アスガルさんがこっちに来たら、反省会が始まるんだから。

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