転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件   作:想いの力のその先へ

54 / 79
五十四話

 

 パルサ王国王城、その一角にある執務室で私。パルサ王国第一王子ダレス・パルサは部下からの報告を受けていた。

 

「……ふむ、いまのところアクラの近くで疑わしい行動は起きていないんだね?」

「はっ! いまのところ、鳴りを潜めているようです」

「なら、良いけど」

 

 始まりはさるところから情報がもたらされたことにある。アクラのところに帝国から離間工作が行われている可能性が高い、というもの。

 本心で言えば一笑に付したいところではあるけど。

 

「まったく、儘ならないものだね」

「殿下?」

「いや、何でもないよ」

 

 苦笑いしながら、話題をそらした。

 いくら私の派閥の人間とはいえ、隙を見せるべきではないからね。

 それよりも、気になることは他にもある。

 

「それより、イオス公と姉上。連名での言上があったと思うけど」

「はっ。辺境に派遣された代官の叙爵と預けられた直轄領の下賜。それに新たな命名権であります」

「ふむ……」

 

 顎に手を当てて考える。あのふたりが王家に背く、とは考えにくい。つまり、こちらに利がある。と、考えているはずだ。

 

「それで、その代官は何者だったかな?」

「アルデバラン伯爵家四男、アイン・アルデバランであったかと」

「あぁ、あれか。父上の覚えめでたかった子だね」

 

 それに、ライナも気に入っていた――。

 私は慌てて思い浮かんだ考えを打ち消す。いま、ここで私情を出すべきじゃない。

 

「うん、良く分かった。下がって良いよ」

「はっ、失礼いたします!」

 

 私は報告に来た部下を下がらせる。いまは少し、ひとりで考えたかったからだ。

 そして、部屋を出たのを確認すると椅子へ身体を預ける。ぎしり、と軋む音が聞こえた。

 

「やれやれ、イオス公が王家の力を削ぎに来た。なんて、ことはないと思うけど……」

 

 なにしろ、あのイオス公は王家――ではなく、父上。サルガス王に対して忠誠を誓っている。まかり間違っても、私やアクラに忠を尽くしているじゃあ、ない。

 とくにアクラの専横は目に余る。王家が見限られたとしても仕方ない。

 

「昔はそんなのじゃなかったのになぁ……」

 

 もっと純真で、私を兄上と慕って――。

 

「いや、純真すぎたから、か……」

 

 あれは、純真すぎた。人の悪意に鈍感すぎた。知らず、悪意に染まってしまった。

 軍事国家パルサ王国として、王に相応しいのは武力に秀でていたアクラだ。しかし、父上は長子相続性という法。そして、アクラの為人を危惧し私を後継者とした。

 

「これで、もう少しあれが腹芸が出来たらなぁ。私も喜んで後継者の座を明け渡したというに……。あの馬鹿者め」

 

 あるいは父上の考えでは政が得意な私を内に残し、アクラを武の象徴として使いたかったのかもしれない。だけど、父上は体制ができる前に病に伏せてしまった。

 それでも、それだけならまだなんとか協調できたかもしれない。

 

「……愚か者め」

 

 だが、あれは自身の権力の邪魔となり得るものを徹底的に弾圧した。いや、違うか。あれは自分の政敵を排除した、と思ってるかもしれないけど。

 

「実態は傀儡だ。派閥の貴族たちに良いように使われて()()

 

 だが貴族たちにも予想外のことが起きた。アクラは政敵の貴族たちだけじゃなく、それらが掲げていた王族。家族たちにまで手を出した。

 あのような失態、愚挙を起こす者に王家の舵取りを任せるわけには行かない。

 

「……あれはまた短慮を起こすだろうね。頭が痛くなるなぁ」

 

 帝国も、皇国もどう動くか分からないというのに。いや、帝国の方は分かりやすいか。

 

「アクラを使って内紛を起こす。それで万が一あれが勝てば傀儡、といったところかな? そんな皮算用にどれ程の意味があるか、分からないけど」

 

 そして、私が勝った場合は漁夫の利を得る、というところかな?

 現状、私の派閥が上回っているのだから勝てはするだろう。でも、全力で戦えるわけでもない。

 もし本格的な内紛、内戦となった場合、日和見の貴族たちがどう動くか分からない。そして、王軍から逃げた兵たちが野盗化する可能性だってある。

 

「だから、少なからず王都に防備に兵を割かなくてはいけないからね。でも、そうすれば私とアクラの兵力は肉薄する」

 

 痛し痒し、ではある。でも無茶も――。

 

「いや、待てよ……」

 

 イオス公と姉上の言上。これをうまく使えないだろうか? ふたりとも理性的な人物だから、無理ではないはず。

 それにアイン・アルデバランも父上が目にかけていた。それらをこちらの派閥……は無理でも、同盟に近い立場と出来れば、こちらはより磐石となる。それなら――。

 

「さて、動いてみるとしましょうか。新たな領地の名前。フェネクス、でしたか」

 

 多少王家が損失を被ったとしても余りある益としたいものです。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。