転生領主一代記──伯爵四男に転生したので辺境開拓したら、いつの間にか公国建国して連邦王国まで出来てた件   作:想いの力のその先へ

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六十五話

 

 レグルスの報告、一部の奴隷が解放拒否のデモを行っている、という話を聞いてから一週間が経った。

 あのあと、何度かの話し合い。そして当人たちへのヒアリングの結果、出来た草案を開示、説明を行った。

 最初の説明では大丈夫なんだろうか、と否定的な者たちもいたが、根気よく説明することで、男爵さまがそこまで言うなら。と納得してくれたようで、改めてフェネクス男爵家で農奴制の政策を取ることとなった。

 

 それと前後して、やはり人の口に戸は立てられなかったようで、我が領土。フェネクス男爵領が裕福である。という噂がまことしやかに囁かれ、移住者が増えてきた。

 また、それに付随して護衛やこの領地で一旗揚げようと、冒険者たちも集まりだしてきている。

 

 ……と、まぁ。それだけなら良かったのだが。

 

「きゃあっ、フェネクス男爵さま!」

「男爵さまぁっ!」

 

 と、町中を散策。巡察する俺に黄色い声。声援が聞こえてくる。

 

「は、はは……」

 

 なるべくポーカーフェイスで声援をくれた華へ手を振る。

 ……なにを隠そう。俺が女好き、という噂も順調に増えているようで、あわよくば妾。側室になって玉の輿を、という女性陣も増えていた。

 

 噂を流すのは早まっただろうか……?

 

 そんな自問自答を繰り返す日々である。イオネやメルが冷たい目をくれるし、レグルスはやれやれ、と肩を竦めていた。

 そしてさらなる問題は、そのレグルスによってもたらされている。

 以前、俺はレグルスを家宰に任命するとともに人事権を与えたわけだが。今回、あいつはそれを行使し農業都市とフェネクスに、代官を任命した。

 

 奴のなかで優秀な()()の代官を、である。

 ここでミソなのは女性が代官、ということ。ここまで言えば分かるかもしれないが、あの野郎。俺の側室候補として送り込んできやがったのだ。

 名目上は、俺の無聊(むりょう)を慰めるため。ということで。……隠してもいやしねぇ。

 

 まぁ、さすがに女性。しかも代官相手に現状、手を出すつもりはない。

 レグルスはフェネクス男爵家の血筋を増やしたい、という思惑で俺のお手付きを期待しているのだろうし、おおよそ、人柄や背景が問題ない人物を選別しているはずだ。

 しかし、それはそれとして。片っ端から手を出して、代官や文官が足りなくなるのは本末転倒。それよりも、今は領地を完全に軌道に乗せることが先決だ。

 

 ……まぁ、単純に好みの問題。というのもある。

 俺がイオネと関係を持ったのも、彼女が辛い時期に支えてくれたからだ。そこらの女性なら誰でも良い、というつもりは毛頭ない。

 だから、そういう意味では玉の輿目的で来た女性たちはもってのほか。体を重ねるつもりも、手を出すつもりもない。

 

「まったく、困ったもんだ」

 

 領主館へ帰路につきながら、独りごちる。

 玉の輿を狙うにしても、それなりの家格。もしくは何らかの仕事を出来るものでなければ。

 それに、今後は農業都市の他。河川河口に都市を築く予定なんだ。

 その他にも、金鉱、鉄鉱の販路開拓。移民者の住居選定。奴隷に関しての農奴制移行の手続き。冒険者ギルドの誘致、建設。

 それに、ハレム。離宮の、王族のお歴々を迎える準備。とてもじゃないが、酒池肉林などと現を抜かす暇はない。

 

「坊っちゃ――アインさま!」

 

 どどど、と土煙がこちらへ近づいてくる。

 アスガルがこちらへ走ってきていた。

 すわ、なにか問題か。と身構える。果たして、それはある意味当たりだった。

 

「どうした、アスガル」

「急ぎ、領主館へお戻りください!」

「うん……? 既に戻っている――」

 

 ――最中だが。それを言う前にアスガルに手首をぐわりし、と掴まれる。

 

「えっ……。ちょっ――」

「急ぎますぞっ!」

 

 ごう、と風切り音が響く。そして、身体が浮遊する。

 

「いだっ、いだだっ! おま――」

 

 このバカ。俺を引っ張っての爆走を始めたのだ。俺は人形じゃないんだぞ!

 そんな思いはアスガルへ届くはずもなく、俺は暴風にされされた枝葉のように、ふらふら、と揺られるのだった。

 

 

 

 

 それで、早く領主館まで帰ってこれた、のは良かったのだが。

 

「ここです。ここにお客さまが……」

 

 顔を引きつらせているアスガル。

 ここに入れ、と。マジで?

 

「おい、アスガル。誰が来てるんだ?」

 

 なんと言うか、客間の雰囲気がとても重いのだ。それこそ、空気が固体の質量を持っているように。

 

「申し訳ございません。口止めされておりまして……」

「はぁ……??」

 

 口止めされてる? 誰に? 客人に?

 というか、お前は俺の。フェネクス男爵家の騎士だろうが。どういうこったよ。

 

「アインさま、お進みください」

 

 嫌です。そう言いたかった。あまりにもアスガルが平常と雰囲気が違いすぎる。

 かといって、ここで押し問答していても意味がない。

 

 ――ええい、ままよっ!

 

 俺は覚悟を決めて、がちゃりと客間へ入る。そこにはソファに座って、意識を彼方に飛ばして伸びているレグルス。そして、見覚えのある女性の後ろ姿。

 

「あら、ようやく来たのね。アイン?」

「アマテル、ねえさん……?」

 

 ソファから立ち上がり、こちらを見る女性。

 それは間違いなく、俺の姉。アルデバラン伯爵家令嬢にしてイオス公爵家嫡男。イクリルくんの婚約者。アマテル・アルデバランその人だった。

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