404:Not Found   作:Kumokumo

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UA740!? 見た瞬間変な声出ました。皆さんありがとうございます
お気に入り登録なども感謝です!
頑張って執筆スピード上げていきたいです





父と娘

 

 

 

 

 ……突然だが自己紹介をさせて欲しい。

 

 今世の名前は訶複廻(かふくめぐる)。世界的サポートアイテムの大企業である訶複グループの御令嬢であり超絶美少女だ。

 ……そう今世は。

 

 どうやら私は、以前にも一度、生きていたらしい。そうとしか思えない感覚が、ずっと胸の奥に引っかかっている。

何をしていたかとか、名前や死因とか、そこまでは覚えていないけど。

 

 生まれた瞬間に……なんかこう……ビビッときたのだ。

いやーあの時はびっくりしたね。何て言ったって個性やテレビでしか見れなかった某平和の象徴さんがいたんだから。

 一人だけ画風というかオーラがちがったもん。

 ただその前世? の記憶ももう薄れかかっていて細かいことは全然思い出せないけど。

 

 でも、この世界はあと数年で取り消しのつかないことになるのを知っている。きっとそれは、避けられない出来事だ。

 

 折角もう一度生を与えられたのだから好きなように、後悔しないように生きたいと、誰かに必要とされる人間になりたいと願うのはきっと私だけではないだろう。それは恐らく誰にでもある欲求だと思う。

 

 だから、きっとこれは、私が何者かになるまでの物語だ。

 

 

 ああ、でも。

 

 

 別にヒーローになりたいわけではない。ヒーローは、好きじゃない。

 

 

 

  ◆ ◆ ◆

 

 

 

 令嬢の朝は早い。……というのも単に寝付けなかっただけだが。何でかは分からないが最近よく悪夢を見るのだ。

 

 これがまあタチの悪い夢で、夢の内容は覚えていないくせに「悪夢である」ということはやけにハッキリと分かるもんだから後味が非常に悪い。

 お陰様で最近は背中が汗でぐしょぐしょだ。今度からは睡眠薬でも飲もうかな。んーでも調達方法がわかんないや。

 

 ああ、そうだ。仮面をつけないと。というのも今世ではミステリアスなキャラを目指していこうと思っている。……なんかかっこよくない? 思わない、か……そうですか。

 

 なんて、くだらないことを考えながらベッドから上体を起こす。窓を見ると日はまだ完全には上がっていないが、周囲は明るく、その存在を主張している。夜明けが、近い。

 

 ふと椅子の方を見ると黒いネグリジェが雑に椅子に掛かっていた。

 ……どうやら昨日の悪夢全てが夢ではなかったようだ。なんとも言えない気分になりながら黒いネグリジェを手に取る。

 手に取ったネグリジェは汗が染み込んだままなのか、ひんやりと気持ち悪く湿っている。……そのままにしておけば使用人が勝手に洗濯してくれるだろう。決して丸投げしたわけではない。断じて。

 

 自分を正当化しながら着替えや準備を終わらせていく。特に拘りがないからか直ぐに準備が終わった。

 そのまま部屋に併設されているダイニングルームへ足を運ぶ。ダイニングルームのテーブルには朝食が既に置かれていた。

 

 テーブルには豪華さや優美さなどとは程遠い完全栄養食のカロリーブロック、それを飲み込みやすくするための水のみが置かれていた。

 味や見た目を完璧に無視し効率だけを重視した、食事とも呼べない食事。

 

 別にこれが嫌いなわけではない。が、もっと他にもあったんじゃないかとか、見た目を何とかしろ、と言いたくなるのは我儘なのだろうか。

 けれど普通の食事だと喉を通らないから、仕方がないと諦め、口に運ぶ。

 

 

 口に到達するその瞬間、ドアの方からコンコンと軽快なノック音が聞こえる。……嫌な予感がする。

 

 

「廻お嬢様」

 

 

  若い女の声――使用人はそこで区切って、躊躇いがちに――。

 

「旦那様より本日の御食事はご一緒にと」

 

 その言葉を聞いた時、私の手は止まった。いや、止まってしまった。

 

 口に運ばれるはずだったカロリーブロックは行き場を失い虚空を彷徨う。        いつの間にかひびが入ったそれに気づき、それが割れる前に皿に戻す。

 

 沈黙――。

 

 暫く迷ったのち、断ろうと思い、口を開こうとして――。

 

 「……ご案内いたします」

 

 ……どうやら沈黙は肯定で、私に拒否権はないらしい。 

 

 諦めた私は席を立ち、重い足取りで部屋を出る。

 

 (……? )

 

 何となく手に痛みを感じて手のひらを見ると白い肌に赤い爪痕がくっきりと残っていた。 

  

 

 

 使用人が何かを言っていたがその声すら今は遠く感じ、部屋の時計の音だけがやけに大きく聞こえた気がした。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

使用人side

 

 

 

 廻お嬢様は少し変わった人だ。

 

 後ろに響く静かな足音を聞きながらそんなことを考える。 

 

 廻お嬢様は常に仮面をつけていらっしゃる。起伏のない、目のところだけに穴が空いている無感情な白磁の仮面。初めて見た時は少し驚いた。……多分、素顔を知っているのは旦那様――私達の雇い主である訶複壱児(いちご)様だけだと思われる。

 

 使用人の中でも詳しくは知らされていない。ただ、旦那様から「無理に外してはならない」、「理由はあまり聞かないように」とだけ、厳命されている。

 

 多分、あの事故が原因だと考えられる。……というのも実は、廻お嬢様は旦那様の実の娘ではない。あの事故でたった一人生き残ったお嬢様を旦那様が養子として迎えたのだ。

 

 数年前、旦那様が経営していた系列の児童施設で原因不明の火事が起こり、お嬢様を除いて児童施設にいた子供達は全員死亡。旦那様はその子供達を助けようと火に飛び込んだ。そのせいで旦那様の顔や体には痛々しい火傷の跡が大きく残っている。

 

 最後まで子供達を火から救おうとしたヒーローのような心優しい経営者。世間はそう語る。

 

 ……噂では施設の管理を任されていた人達は怒り狂った旦那様にボコボコにされた挙句消息不明だとか……。本当かは分からないが。

 

 

 実際、旦那様は非常にお優しい方だ。様々な福祉施設に寄付をしたり、開発したサポートアイテムを個性の制御が難しい人達に提供したり、挙げればキリがない。勿論使用人に対しても分け隔てなく接してくださったり、特にお嬢様のことを誰よりも案じていらっしゃる。

 

 

  私たち使用人の間では火事で顔に酷い火傷を負ってしまったのだろう、と考えられている。

 

  だから仮面を外せないのだと。

 

 あれ程の惨事だ。しかも子供。心に傷を負うのは仕方のないことだろう。

 

 

 

 

  ……どうやら考え事をしている間に旦那様のいらっしゃる場所に着いたようだ。

 

 ノックをしてから大きく、豪華な扉を開ける。

 

 

 広いダイニングルーム。天井には宮殿かと見間違うほどの七色に光る豪華なシャンデリアが吊るされており、この広い部屋を煌々と照らしている。扉の先には絹のような緑のテーブルクロスが掛けられた長卓があった。既に真ん中ら辺に旦那様は座っていた。

 

「おはよう、廻」 

 

柔らかく、海のような優しい声。

背筋は真っ直ぐと伸ばされていて非常に品がある。……世間が旦那様を「善人」だと称するのがそれだけでよく分かる仕草だった。

 

 私の後ろにいたはずにお嬢様はいつのまにか前方に立っており、恭しく一礼をした後、

 

「おはようございます、お父様」

 

 と、静かに、されど冷たく年齢の割に不相応な挨拶をなさった。

 

 二人の間には既に朝食が並べられていた。旦那様のは和洋折衷の彩豊かな美味しそうな食事。しかしお嬢様の方にはいつも通りの完全栄養食が並べられているだけだった。……旦那様はお嬢様がくるまでずっと待っていたのか少しも手がつけられた痕跡がない。

 

「無理に、食べなくていい。まだ、普通の食事は難しいだろう?」

 

「……はい」

 

 短く、冷たい、仮面越しの返事。白磁の仮面はシャンデリアの光を受けてキラキラと反射していた。仮面の中でどんな表情をしているのかは誰にも分からない。

 

 暫く、静かな家族団欒の時間が過ぎていく。食器が当たる音がこの広いダイニングルームに響き渡る。

やがて、旦那様は思い出したように口を開く。

 

「そうだ、廻。進路の話なんだが……。以前、雄英高校のサポート科を受けるように言っただろう? あの後少し僕も考えてね。」

 

 その話を聞いた瞬間、お嬢様の手が止まる。――仮面の下の視線が揺れ動いたかのように見えたのは気のせいだろうか。

 

「廻は個性も強いし、人格も問題ない。学力だってこの間の模試は雄英高校もA判定だったんだ。だから、君にはヒーロー科に進んで欲しい。ああ、勿論、廻のやりたいことを尊重するつもりだ。」

 

 「ただ、廻にとっても悪い話では無いはずだ。何より将来の選択肢が楽になる。雄英高校というのはそれだけで箔になるんだ」

 

 旦那様はそう言い、優しく微笑んだ。 

 

 ――静寂が訪れる。

 

 お嬢様の視線が今ははっきりと、旦那様に向けられているのがこのときだけはよく分かった。

 

 数分にも感じられた、いや、きっと数秒しか経っていないがそのぐらい長い沈黙がお嬢様によって破られる。

 

「……お父様は、私が首席を取ったら……喜びますか? 」

 

 その言葉を聞いた時、私の心の中を駆け巡ったのは――安堵、期待、驚き。そして――大きな、喜び。

 きっと、認められたいのだろう、褒められたいのだろう。何より、今まで最低限の返事しか返さなかったお嬢様が、と思うと自身の胸に熱い何かが込み上げてくるものがある。

 

 旦那様は大きく目を開き、嬉しそうな声で言った。

 

「勿論だとも」

 

 その返答に、一瞬だけお嬢様の表情が揺らいだのは気のせいだろうか。

 

「……分かりました――雄英高校を受験します」

 

「そうか」

 

 旦那様は心底嬉しそうに頷き、止まっていた食事を再開した。

 

 

 お嬢様が仮面をつけている理由はまだ分からない。ただ、少し歪でも暖かな家族団欒がそこにはあった。

 

 

 








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