日に日にUAが増えていってる……コワイ
追記:ちょっと修正しました
確認お願いします
百ちゃんて可愛いよね
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朝食を食べ終わり、使用人が運転する高級な黒塗りの車へと乗り込む。
いやー最初の方は高級車で送迎ってTHE令嬢みたいな感じがして楽しかったんだけど、2年かそこら経ったら何にも思わなくなっちゃった。慣れって恐ろしいね。
車の窓に寄りかかりながら流れていく外の景色を見る。
窓一枚隔てた外は秋も終わり、本格的な寒さが到来し雪がチラホラと舞っていた。目の前には肌寒く乾燥した空気が広がる。対して車の中は暖かく、また眠ってしまいそうなぐらい快適だった。ふと、朝だというのに馬鹿騒ぎをしている元気な小学生のグループが目に入る。
――私も、あんな風に……。
願いは虚しく、車が発進しあっという間に小学生たちは流れる風景の一部となった。
それにしても何だか今日は思考がネガティブ気味だ。……朝の食事のせいか。
「……はぁ」
ため息が仮面の中を支配する。そもそも、もう十一月の中旬なんだけど。今更進路変更するとか考えるだけで憂鬱になる。確かに雄英は受けるつもりだったけどさ、サポート科とヒーロー科は全然違うじゃん! しかも試験の内容も確か実技あったよね。……はぁ〜。
しかもヒーロは嫌だなぁって今朝思ったばっかりなのに……。ままならないなぁ。
「憂鬱だぁ」
思わず口に出してしまい、急いで運転している使用人の方に仮面越しに視線を向けるが特に気付いた様子はないようだ。
……気付いてなくて良かった。イメージがね、崩れちゃうからね。そう、「廻」はネガティブなことを言わない。いつまでも飄々と、仮面をつけたミステリアスな少女として生きるのだ。アイデンティティの確認、大事。
にしても、…………首席、かぁ。きっと、首席を取るのはそう難しいものではないはずだ。私の個性は強い。それに私は今人生二周目? の人間だ。これで落ちる方が難しい。落ちたら末代までの恥、ぐらい。それに、首席を取ったら……あの人は――。
「喜んで、くれるよね」
小さく発したその短い言葉。今回は誰にも聞こえることなく車の暖かい空気に溶けて消えていった。まだ、学校には着かない。
◆ ◆ ◆
車が停まる。どうやら学校に着いたらしい。使用人が車のドアを開けた。すると我先にと冷たい空気が車に入り思わず身震いする。
巨大な校舎の上や屋根には薄い膜のような雪が被さっていた。
眼前には大きな校門。富豪しかいないこの学校は――。
――掘須磨大付属中学校。それが今の私が通っている中学校だ。
◆ ◆ ◆
なんか全部無駄に大きいし、広いし、長いしのコンボを叩き出したこの中学。……親の資産を全部一まとめにしたら買えないものはなさそう。絶対こんなスペースいらんくね。まぁ結局何が言いたいかというと、教室に着くまでが遠いのだ。
遠いということは歩かなければならない。歩かねばならないということは人目につく。人目に付くということは――。ほら。
それは、視線。羨望、畏怖、好奇、嫉妬――。それらが混ざり合い、黒色に染まっていく。
黒色に染まった視線の仕上げは皆が大好きな、
ここの生徒は良くも悪くもみんな弁えているから表立っては言わないし、話しかけてもちゃんと答えてくれる。けど私は観察力も高いし、耳もいい。聞こえるというか分かるのだ。仕草、表情、雰囲気で。もう慣れたからどうでもいいが。
勿論それを咎めることはしない。こんな所で「善人」である訶複家のイメージを落とすわけにはいかない。落としてはならない。
……というかどうして異形系は良くて私の仮面はダメなんだろう。
頭を捻って考えてみるも答えはでない。デザインの問題か? そんな変なデザインだとは思わないんだけどな。うーん、うーん。
……うん、やーめた。
くだらないことに脳のリソースを使うのがもったいない。そう考えた私はそれまでの思考を打ち切り教室に入る。
席に荷物を置き、ある人物を探すため周りを見回す。……あ、いた。
「おはよう、百」
仮面越しに声をかける。すると彼女はこちらを向き、少し驚いたような顔をしたあと、すぐに華やかな笑顔で返事をした。
「おはようございます、廻さん。今日も寒いですわね」
「最近めちゃ寒くない? 来るとき凍死しちゃうよー」
「あら、毎朝車で登校されていることは知っていましてよ?」
「ありゃ、バレちった」
なんて軽口を叩き合う。こういう雰囲気は嫌いではない、むしろ好きなほうだ。百って見た目というか言動から勘違いされやすいけど結構ノリがいい。あと偶にプリプリしてるのなんか可愛いんだよね。こう、家の違いをナチュラルに見せつけてくるけど憎めないって感じ。
「……? そのように見つめられて……わたくしの顔に何か? 」
おっと、自分でも気づかぬうちに見つめ過ぎていたようだ。
「いやー百は相変わらず可愛いなぁって」
嘘は言ってない。
「か、可愛い……ですの? その、急に言われると……」
「あは、照れてんのー?」
「っ照れてなどおりません!」
って言いながらも耳まで真っ赤になる百。かわいー。あんまり言われ慣れてないのかな。
「あ、そうだ。」
「私前、雄英のサポート科受けるって言ってたじゃん?」
「? ええ、言ってましたけど……」
「なんかヒーロー科受けることになった」
一拍――。
「そう、ですの……」
「あれ、そんな驚いてない感じ? もっと驚くと思ってたんだけど」
もっと「ええっ!」とか「マジ!?」とか……いや、百は「マジ」とか言わないな。解釈不一致になってしまう。キャラ崩壊、ダメ、絶対。
「驚きはしましたが……わたくしは廻さんがヒーローに向いていると前々から思っていましたの。ですから進路を変更することの驚きはあっても、その変更先に驚きはないですわ」
――私が? ヒーローに、向いている?
困惑している私など知らないかのように百は言う。
「それに、廻さんは個性も強力ですし学力も申し分ないでしょう?」
ヒーローに向いている――その言葉がずっとグルグルと鎖のように頭の中を支配する。向いている、向いている――何に?
「もしわたくしたちが雄英高校に受かったら来年もご一緒に……? 廻さん? どうかしましたか?」
思考が、うまくまとまらない。
「……ヒーローに向いてる、なんて言われたの初めてかも」
「あら、そうなのですの? わたくしはてっきり言われ慣れてるかと……」
そんなこと、言われたことなんて無い。一度も。
……この話題は、良くない。自分を覆っている何かが剥がれ落ちて消えてしまいそうだ。自分の中の泥々とした感情がごちゃまぜになって、胸の奥に重しのように沈んでいく。
「だって廻さんはお優しいですもの。それに困っている人を見捨てたりしないでしょう?」
あー痛いところついてくるなぁ。
「そういえばどうして急に進路の変更をなさるのですか?」
「……あー家の都合? ってやつ。あの人が今朝急に言ってきてね」
「まぁ、……訶複様が」
本当に、仮面をつけていて良かった。こんな顔は百に見せたくない。綺麗でこの世の穢れなど知らないようなその澄んだ瞳に。
「……あ、もう少しでチャイムなるよ。席、着いとこ」
「あ、ええ、そうですわね」
ちょっと強引すぎたかな。申し訳ないな。
ふと、疑問に思う。百が呼んでくれているのはどっちの「めぐる」なんだろう。目の前にいる、仮面をつけた薄っぺらい人間か。それとも――。いや、きっと百は最大限の親しみを込めてくれているのだろう。知らないのは、罪ではない。
朝礼が始まり騒がしかった教室も静かになっていく。
――どこからか苦い煙草の匂いがした。
◆ ◆ ◆
午前最後の授業。
前回書いた進路希望調査の紙が配られる。今更変更する人なんているのだろうか。
配られた紙に視線を落とす。
第一希望 ――雄英高校サポート科
第二希望 ――
消さないと。消しゴムを手に取り第一希望の欄に書かれた字。昨日までの私の未来、そしてありえたかもしれない未来を消していく。
――まだ、消えない。
段々力を強くしていく。
まだ、まだ――。
ビリッ。
……どうやら力が強すぎたようだ。紙の中央にはパックリと大きな亀裂が入り、少し皺になっていた。――先生から、また貰わないと。
どうしてこんなに力が入ってしまったのだろう。
そんな疑問は脳の端に置いておき、とりあえず席を立つ。周りの人たちは結構皆自由に、席を移動していた。周りを見渡すと一際大きな歓声のようなものが上がる。視線を向けると教室の隅――百がクラスメイトに取り囲まれていた。
「八百万さん雄英受けるの!?」
「え、マジで!」
「八百万さんなら絶対ヒーローなれるよ!」
「推薦だって。やっぱすごいねー」
「いえいえ、わたくしなんてまだまだですわ」
謙遜する百。一瞬だけ目が合ったような気がするが気のせいだろう。気にせず教卓の方へ足を運ぶ。
……貰ってきた。今度こそちゃんと書こう。
ちゃんと、ちゃん……と。ヒーロー、に。
書くだけじゃないか。簡単なことだ。誰だって、なんなら小学生でもできる。だからほら、早く、早く、――。
書き終わったのは終わりのチャイムが鳴る寸前だった。
煙草の匂いは未だに消えてくれない。
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