404:Not Found   作:Kumokumo

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遅れてしまって申し訳ないです!
その分ボリュームは増やしたので……


打ち上げ花火 in 試験会場

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 あれから数ヶ月の時が流れ、雄英高校実技試験当日――。

 

 

 とはいえ彼女――廻の朝は何も変わらない。いつもと同じ朝食、同じ使用人、変わらない会話。ただ、ただ一つだけ違ったのは、普段なら既にダイニングルームで朝食をとっているはず彼女の父親、訶複壱児が部屋の前に立っていたことだった。

 

「おはよう、廻。ああ、それとすまない。本当は今日一緒に朝食をとりたかったんだが急用が入ってしまってね」

 

 壱児の傍ら、廊下の飾り棚には、彼が趣味で手入れをしている苺の小鉢が何個か置かれていた。

 

 実っているものもあり、天井の光を反射し、静かにその存在を主張していた。もっとも、最近植えられたばかりなのか、残りの苺の小鉢にはまだ芽が出ている途中のような物もある。

 

 

「……入試、期待しているぞ。廻の最大限を出し切るんだ。君は――ヒーローに、なれる」

 

「…………あ、りが、とう、ございます。お父様」

 

 その言葉を聞いた壱児はフッと微笑み廻の頭をポンと撫でた。――微かに香る、摘み取った直後の苺の甘酸っぱい芳醇な匂い。それが廻の鼻腔を掠め、僅かに、ほんの僅かに呼吸が浅くなる。

 

「廻なら出来る」

 

 優しく、慈愛を感じさせる顔でそう言った壱児は時計をちらりと一瞥した後、使用人を連れ、仕事に行った。

 

 廻は暫くその場に立ち尽くす。やがてその姿のまま廻の手のひらは開いたり閉じたりを繰り返す。

 

 

 ボタンを掛け違えたような、静かな朝。

 

 

 

 

 苺の芽は、まだ育たない。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 うーん。コンディションが悪い。今日起きて最初に思ったのはそんな結構ヤバめのこと。正直筆記試験は間違いなく首席だ。人生二周目の人間だし、今世は結構暇な時間多かったから勉強にいっぱい費やしてきたし。……陰キャじゃないよ。決して。友達百人いるし。……どこにいるっけ。ていうか最後に見たのは……。やめだ、やめ。

 

 

 

 とはいえ身体は心と違って正直なようで、どこか身体の感覚が遠い感覚がする。手足の輪郭が曖昧で何だか掴みにくい。

 

 だからと言って、緊張しているわけではない。でもこういう時は決まって良くないことが起きる。本能というか野生の感みたいなもので分かるのだ。まぁ、欲しいと望んだことなんて一度もないけどね!

 

 会場に着く。既に試験会場は人でごった返しており、色んな個性の持ち主がいる。……何人か見たことのある顔ぶれもいる。確か……うーん上手く思い出せない。記憶がもう薄れかかっているのかな。

 

 ふと、視界の端にモジャモジャとした特徴的な髪の毛のオドオドしている男の子が目に入る。

 

 ――ああ、記憶が薄れかかっても分かるもんだな。

 

「――デク」

 

 思わず口をついて出る――聞かれてないよな。周りを見渡しても特にこちらを見ている人はいない。ちょっと安心。

 

 ―― 一体彼は、当時どれだけの人々に希望と、感動と勇気を与えたのだろう。日本を救ったヒーロー。

 緑谷出久。OFAを受け継ぐ者。……生で見れるなんて感動〜〜。

 

 あ、そうだ。緑谷出久を語るなら彼の存在は欠かせない。

 

 

 大・爆・殺・神ダイナマイト――爆豪勝己。

 

 

  ……うん、名前の癖が強すぎるね。すっごいネーミングセンスだし、仮にもヒーローでしょ。この名前だったら真っ先に思い浮かべるのはヒーローじゃなくてヴィランだと思うのは私だけではないはず。尖ってんなぁ。

 

「どけデク‼︎」 

「かっちゃん‼︎」

「俺の前に立つな殺すぞ」

 

 なんかやってる。元気だなぁ。

 

 側から見てても怯えてるのが分かるくらいビビってる緑谷君は、何かをぼそぼそと言っているがそれを無視して突き進んで行く爆豪君。……やっぱ尖ってんなぁ。

 

 

 「なああれ……バクゴーじゃね?『ヘドロ』ん時の……」

 

 「おお本物……」

 

 

 …………噂話が好きな連中は何処にでも居るもんなんだな。本当に反吐が出る。外野も外野から好き勝手に言って、あまつさえ勝手に歪めていく。……嫌いな人種だ。消えればいいのに。

 そして爆豪君のことで噂になるんだったら次はきっと――。

 

 

「……お、あっちの仮面は訶複グループの令嬢じゃないか?」

 

「ああ、あの火災事故の……」

 

「あれだろ?ほら、……『聖人』の娘」

 

 

 

 

 

 ――――死ねばいいのに。

 

 

 

 

 

 

 ……おっと本音が少し漏れてしまった。これじゃあいけない。あの人や皆から愛される「めぐる」はこんなことを絶対に思ってはいけないし、ましてや言うなんて言語道断だ。。深呼吸、深呼吸。落ち着いて……ゆっくり……。

 

 

 

「はぁ」

 

 

 

 思わず溜息が出る。朝から悪かったコンディションが更に悪くなったような感覚に陥った。……最悪。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「今日は俺のライヴにようこそー‼︎! エヴィバディセイヘイ‼︎!」

 

 

 うるさい。

 

 

 金髪を逆立てたグラサンのヒーロー、プレゼント・マイクの大爆音が静まり返ったホールに響き渡る。

 

 

 本当なら「ようこそー!」と叫びたかったが生憎今はそんな気分じゃないんだ。ごめんなぁ。

 

「こいつあシヴィー!!! 受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ‼︎アーユーレディ⁉︎」

 

 受験生にフル無視されながら、なおも叫び続けるプレゼント・マイクを横目に入試要項にさっと目を通す。

 

 模擬市街地演習……ね。それに三種の仮想ヴィランにポイント制……。

 

 

  (“げーむ”みたい)

 

 

 ……ん、あれヴィラン……四種?……後一体はなんだろ。

 そんな疑問が頭から湧いて降ってくる。そんな私の疑問を代弁するかのように前方から声が上がる。

 

 

「プリントには()()の敵が記載されております! 誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態‼︎ 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです‼︎」

 

 

 わおクソ真面目。ああ、えーとインゲニウムの弟の……飯田……何だっけ。うーん思い出せない。まぁいつか分かるっしょ。

 

 

  あ、緑谷君注意されてやんの。かわいそうに。

 

 

 プレゼント・マイクに視線を戻す。

 

「そいつは言わばお邪魔虫! 各会場に一体!所狭しと大暴れしている『ギミック』よ!」

 

 

 ふーん、成程。……とりあえず全部壊せばいいか。――何だ簡単じゃないか。ロボットをバラバラの鉄屑にしていくだけの簡単な作業。

 

 首席も余裕だな。首席を手土産にして帰ったらあの人は一体どんな顔をするだろうか。また、……あの慈愛に溢れた笑顔を見せるのかな。

 

 

 「……あは」

 

 

「かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と‼︎」

 

Puls Ultra(更に向こうへ)‼︎」

 

 

 本当に――。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ 

 

 

 試験会場に着く。ひっろいなぁ。

 しかもデカい。雄英の経済力というか何と言うか……。わざわざ試験の為にこんなものを7個か……。

 

 周りを見渡す。……どうやら緑谷君や爆豪君とは別の試験会場らしい。残念だ。緑谷君の活躍みたかったなぁ。

 

 まぁいいか。

 

 

 準備運転を少し。その場で個性を発動する。――うん。多分大丈夫。これなら――。

 

 

 

 

 

 「ハイスタートー!」

 

 

 

 

 

 いきなり発せられたスタートの声。

 

 

 

 「賽は投げられてんぞ‼︎?」

 

 

 

 その言葉を聞き、周りの受験生は堰を切ったように市街地に流れ込んでいく。

 

 

 (……遅すぎ)

 

 

 そんなことを思いながら既に自分の()()にいる受験生の集団がグングンと後ろへ遠ざかっているのを見る。

 私の体はまるで箱に入れられたスーパーボールのように或いは隼のように縦横無尽に街の中を跳んでいき、強烈な浮遊感と圧倒的なGに耐えながら進行方向やらなんやらの制御をする。

 

 

 

 「標的捕ソッ――」

 

 

 「邪魔」

 

 個性を発動させる。 

 

 ――一閃。

 

 ガシャン、と後方で仮想ヴィランが沈黙するのをチラリとも、一瞥もせずに、すぐに次の獲物へ視線を飛ばす。

 

 

――『瞬間変形』。それが私の今世の個性だ。その名の通り肉体の形状や筋肉の構造、骨の硬さなんかを変えることが出来る。……結構強個性だと思うんだよね。

 

 閑話休題。少し外れていた意識を目の前の仮想ヴィランに戻す。

 

  バチンッ、と体内で何かが噛み合う音がする。少しの不快感と熱を感じた後、鞭のようにしならせていた腕は、一瞬で鋼鉄を凌駕する鈍器へと変貌し、仮想ヴィランを装甲ごと紙切れのように引き裂いた。

 

  硬化だけじゃない。軟体動物のように関節を無視した角度で腕を伸ばし、遠心力を乗せて叩きつける。物理法則を無視したようなその一撃は、重機が振るわれるのに似た破壊力を持っていた。

 

 (2ポイント……次)

 

 視界に映る全ての仮想ヴィランを片っ端から叩き壊していく。正面にいる3ポイントヴィラン。堅牢そうな鋼鉄の鎧に覆われた装甲を見たその瞬間に、腕と脚の形状をすぐに変形させる。

 

 バキバキと骨が砕ける不快な音が体の内側に反響していく。あっという間に私の腕は巨大な釘打ち機(パイルバンカー)のような鉄の塊へ変形した。

 

 避ける必要性なんてないし、ましてや難しい動作も必要ない。ただ、真正面から貫く。

 

 それだけで3ポイントヴィランは火花が散るより圧倒的に速く、その驚異的なパワーをもって飴細工のように粉々に砕け散った。

 

 

 (17……24、32……45…………まあまあ)

 

 

 「何だ、あいつ‼︎?」

 

 「早すぎるだろ‼︎」

 

 「やべぇぞ、どんどんポイント取られていってる‼︎」

 

 

 受験生たちの驚愕の声が響く。そりゃあそうだろう。だって彼らの近くには既に私がスクラップに変えた物言わぬ鉄屑が道のあちこちに置かれているだけなのだから。

 

 (首席は余裕だな)

 

 跳躍したままそのまま両足を更に変形させる。

 

 足先の爪からはおおよそ人間とは似ても似つかない異様な鉤爪が生える。その鉤爪はまるで人という枠組みを拒否するように靴の先端を破きビル壁を穿っており、五指は不自然に細長く、ただ前方へ身体を弾き飛ばすためのバネへと変化した。

 

 腱が鋼鉄のように硬直し、既に踵は浮き、歩法はヒトのそれとは完全に異なっていた。

 

 ――想起させるは地上最速の掠奪者(チーター)

 

 

 瞬く間に私は試験会場を暴風雨のように蹂躙していった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (うん、結構稼げた)

 

 

 

  会場内の仮想ヴィランをあらかた片付けた頃、突如、轟音が響き渡る。

 

 

 (――0ポイントヴィラン)

 

 

 今までの仮想ヴィランとは全くサイズの違う圧倒的な巨躯を誇り、受験生たちを見下ろすように試験会場で暴れていた。

 

 

 

 「……あはは、なにあれ」 

 

 

 

 思わず声が漏れる。周りを見渡すと既に他の受験生は蜘蛛の子を散らすようにに逃げていた。

 

 

 (――にーげよ。100点近くは稼いだし、もういいでしょ)

 

 

 それに胴体や首がもう限界だ。いくらそうなるように固定されたとしても結構厳しい。そう思い、他の受験生と同じように踵を返す。

 

 だって私には立ち向かう義理もなければヒーローのような泥くさい高潔さもない。だからさっさとその場を離れたかった。

 

 

  ――そのはずだったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……っ、……ぁ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 両肩をズッシリと見えない「ナニカ」にのしかかられるように、重く掴まれる。複数の手のようなソレは真っ赤に焼けた鉄のように熱く、そして冷たかった。肩を、手首を、足を、決して逃さないと言うかのように強く、強く、強く掴んでいる。

 

 逃げるために変形させた足や腕は役割を忘れたかのようにその場で動かなくなってしまった。

 

 

 そして私の耳元でソレは囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「⬛︎⬛︎⬛︎、⬛︎⬛︎って、いったよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ああ、うん。そうだ。そうだった、よね。

 

 

 

 

 

 

 最初から、「逃げる」なんていう選択肢、私にはなかったんだ。

 

 

「あ、はは、あははは」

 

 

 乾いた虚しい笑い声が仮面の中で充満する。

 

 

 呼吸が朝のとは比にならないほど浅くなる。背を向けていた体は、出来の悪いブリキ人形のように振り向き真っ正面から0ポイントヴィランと対峙する。

 

 

 考えるよりも先に体が最適解を導き出す。足を、腕を変形させていく。

 

 

 

「分かっ……た、わかったから……!」

 

 

 

 うるさい、うるさいうるさい。ぐわんぐわんと頭の中で声が反響し続け、私の脳をダイレクトに揺さぶってくる。その苛立ちや恐怖を無理矢理消すようにそのまま足に力を込める。

 

 メキメキと骨が砕けるような音が鳴った瞬間――踏み抜いた地面は蜘蛛の巣状に亀裂が入る。その暴力的なまでの跳躍により一気に0ポイントヴィランの頭上に躍り出る。

 

 

 その勢いのまま、「ナニカ」の命ずるまま、肩の付け根まで変形させる。

 

「――ッあ゙、ぐ……」

 

 途端に全身を焼かれるような痛みが身体を疾駆する。――禁足地に足を踏み入れてしまった子供に罰を与えるような、本来末端までしか赦されない変形を破った代償が私を襲った。

 

 元の姿に戻ろうとする個性と、「ナニカ」の意思が私の体の中で衝突しあう。バキバキと肩の付け根から骨が砕けるような音が響く。

 

(痛い、痛い痛い痛い)

 

 声を漏らしてしまわないように喉の奥で必死に悲鳴を飲み込む。

 激痛を我慢しながら振り上げた右腕は先程のパイルバンカーとは比べ物にならないほどの硬さを誇る凶器となり、弾丸のような速度でその胸部の装甲の一点に突きつける。

 

 

 ――一撃。

 

 

 胸部を守る分厚い装甲は紙細工のように無惨にひしゃげ、まるで壁に叩きつけられたトマトのように、又は上空に打ち上げられた花火のように破裂し、無様にその内部機構を露出させていた。自重に耐えきれなくなったのか徐々に崩れ落ちていく。

 

 

「ッいっ、……う……ぐ」

 

 

 崩れ落ちた0ポイントヴィランを確認する間もなく、地面に着地した私は体を走る激痛によりそのまま膝を突く。

 

 ――その痛みは過去か、それとも(ゲンザイ)か。

 

 痛みは全く収まらず、震える左手で右肩を抱くように押さえつける。視界が明滅し、赤と黒に切り替わる。

 

 

 ――本当の地獄はそこからだった。

 

 

 私の身体に深く根付いた「固定」が、異形に歪んだ肩を「異常」と判断したのだ。目には決して見えない鋳型が、異形と化した、変形した私の肉を、元の「正しい形」へ無理矢理押し戻そうと蠢き出す。

 

 熱された鉄が金槌で何度も何度も叩かれて、形を作っていくようにボコボコと不気味な躍動が体の中や元凶である右肩の内部で爆ぜていく。

 

 

 

 

 

 

 プレゼント・マイクの声や他の受験生達のざわめきが聞こえたかのような気がしたが、そんなのもう、どうでもよかった。

 

 

 

 ただ、ただ、一刻も早くこの地獄(世界)から逃げ出してしまいたかった。

 

 

 

「……帰らないと」

 

 

 

 首席という輝かしく最高の手土産を持って。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「実技総合成績出ました」

 

 ――雄英高校の暗い会議室にて、ヒーロー科の先生達は本来、顔を顰めながら厳正な審査を行っていたはずだが今年だけは少し違った。顰めていたはずの顔は映像を見た後、面白そうな顔で、珍しい物を見たかのように笑っていた。

 

「今年のヒーロー科どうなってんだよ!」

「敵ポイント0で7位()()に立ち向かったのは過去にもいたけどブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないね」

「思わずYEAH! って言っちゃったからなー」

「対照的に救助ポイント0で1位、2位とはなー」

「2位の方は1ポイントや2ポイントは標的を捕捉し近寄ってくる。後半他が鈍っていく中派手な個性で寄せつけ迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」

 

 

 

  ――一拍。

 

 それまで騒がしかった会議室に静寂が訪れる。

 

 

「――で、問題の1位の方だ」

 

 

各々が手元のタブレットを見る。

 

 ――訶複 廻

 敵ポイント104点

 救助ポイント0点

 

 学力試験――5教科満点

 

 ――総合成績1位

 

 

 

  誰かが投げたその言葉が導火線に火をつけた。先程の熱狂とはまた違った肌寒いような、興奮が会議室の中を満たしていく。

 

「――訶複廻。個性「瞬間変形」……ねぇ。エグすぎだろ。最短距離、最小の動きで文字通り仮想ヴィランどもを鉄屑に変えてやがる」

「あの0ポイントヴィランをブッ壊すなんてな。……初めてじゃないか?ブッ飛ばすのは」

「敵ポイントに目が行きがちだけど救助ポイント0もなかなかだぞ」

「彼女の目には他の受験生が目に入っていなかったのか?……恐らく2位の爆豪とはまた違う理由だろう? 爆豪は何というか勝利への渇望というか、「熱」という物を感じられたが彼女にはそれが全く感じられない」

「あの動きはヒーローというより掠奪者、だな」

 

 スクリーン上の映像では何度も0ポイントヴィランを花火のように破壊したシーンがリピートされる。

 

 

 そして誰かが言った――

 

 

 

  「あの、「聖人」の一人娘だろう?」

 

 

 

「ああ、訶複グループの代表取締役……訶複壱児氏の御令嬢だ。火災事故で経営していた施設を焼失し、6人の子供が亡くなった後、私財のほぼ全てを投じて遺族支援団体を立ち上げたあの「聖人」のね」

「父親の方はこれ以上ないほど慈愛に満ち溢れた優しい人物らしいが、どうやら娘の方はそうではないみたいだな」

 

がやがやと各自が「聖人」について知っていることを好き勝手に挙げていく。その高まりがピークに達した頃――。校長の声が響く。

 

 

 「ま、何にせよ首席は首席さ。歓迎しようじゃないか」

 

 

  今ここには居ない彼女に向けて――。

 

 

 「ようこそ、ヒーローアカデミアへ」

 

 

 

 

 

 






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