「蛇塚研斗さん、ようこそ死後の世界へ。残念ながら貴方は、不幸にも亡くなりました。貴方の人生は終わってしまったのです。」
気が付いたら、知らない場所にいて、翼の生えた知らない人が居て、目の前でそんなことを言われた。
いや…なにこれ!?
夜、俺は曲を聴きながら家に帰ろうとしていた。
その曲は「The Formula」
仮面ライダーガヴに登場するニエルブ・ストマックという悪役を演じる俳優が歌うキャラソンで、何度もリピートする好きな曲である。
片耳にイヤホンをつけ、ゆっくり帰路についていた。だがそのせいだろうか、後ろから此方に走ってくる足音に気が付くのが遅れてしまった。
「ぐぁっ!?」
背中に激痛が走り、身体の内側に何かが入っているような異物感。地面に倒れて初めて刺されたのだと気付いた。倒れた拍子にイヤホンが外れて周りの音が鮮明に聞こえてくる。走り去っていく音が遠くから聞こえることから、刺してすぐ逃げたのだろう。
血を流し過ぎたのか、身体が寒くなってきた。周りに人が居ないから速く救急車を呼ばないと手遅れになる。そう感じた俺はスマホを取り出そうと身体を動かそうとするが、まともに動かない。これでは救急車を呼べない。
嫌だ!死にたくない!まだ生きたい!まだやりたいことが沢山あるのに、やらなきゃいけないことがあるのに!
だが、身体は動こうとしない。せいぜい身動ぎするぐらいだ。しかもその身動ぎすら出来なくなっていく。目が霞む。もう手遅れかもしれない。
あぁ……こうなるなら、ミミックデバイザー買っとけばよかったなぁ
何故か不思議とそう思った。先程までは恐怖で心の中で叫んでいたにも関わらずにだ。もう手遅れだと気付いたからなのか、我ながら可笑しい事だ。
「あぁ………もし……転生…できたら……研、究者……に……」
最期に出た言葉は、好きなキャラへの憧れによるものだった。
「そうだ、思い出した。俺は確か死んだはず…」
此処に来る直前の記憶を思い出した。だが、何故自分が生きているのか分からない。目の前の女性は俺に言った。"亡くなった”と。目は見えるし呼吸も安定してる。さっきまでの出来事が嘘のようだ。彼女の言っていることが本当なら此処は…
「此処は……あの世…ですか?」
恐る恐る聞いてみる。刺されたのは悪い夢で、此処にいるのはドッキリか何かの可能性が僅かにあると思ったからだ。まぁ、それはそれで犯罪なのだが…。
けれど、刺された時の痛みは確かにあったから希望的観測だからないのだろうが、一応念の為目の前に居る女性に聞いてみる事にした。
「はい。正確にはこの世とあの世の境になります。」
帰ってきた言葉に俺は不思議と納得していた。だが、ショックを受けていないのかと言われればそうではない。
何せ生きていた時のようにしていた事ややりたい事が出来ないからな、それも永遠に。どうしたものかと思考していると…
「何か考えているところ申し訳ございませんが、一度私の話を聞いてもらえませんか?」
その言葉で我に返る。そうだ今は目の前の事に集中しなければ。そうして俺は、目の前の翼の生えた女性の話を聞くことにした。
「貴方にはいくつか選択肢があります。まず一つ目は天国に行くか、二つ目は記憶を無くして現代にて転生するか。」
天国があるのか?それなら…
「なら天国に行きたいのですが…」
「天国ですか?天国はお勧めしません。あそこは何もなく、只ずっと日向ぼっこするだけになりますから。」
そんなの地獄じゃないか。逆に今のを聞いて天国に行きたい人は居るのか?
天国は無しだ。だからといって記憶が無くなるのは嫌だ。
「その二つ以外に何か無いのですか?」
駄目元で聞いてみる。
「いえ、三つ目があります。それは異世界に転生するものです。それも記憶を保ったまま。」
「え!?異世界に!?それってゲームに出てくるようなあの!?」
「はい。その異世界であってます。」
それを聞いて驚愕した。まさか創作の中にしかないような異世界が存在するなんて思いもよらなかった。まぁ、この状況もそうなんだが…
翼の生えた女性──天使様曰く、異世界は人間と魔王軍とで争っていて、その争いで死んだ人たちがその世界での生まれ変わりを拒否してしまい、数が減っていっているとのことらしい。
「それでは三つ目の異世界でお願いします!」
俺は異世界での転生を選んだ。争いは怖いが、やっぱロマンには勝てん。
「分かりました。それでしたら異世界に持っていく特典を選んでください。」
そう言いながら天使様は俺に分厚いカタログを渡してきた。特典?それにこれは一体…?
「異世界に行く場合は特典を持って行けるのです。そのカタログには持って行ける特典が記載されています。」
「こんなにあるのか…」
この分厚さだと200個以上有りそうだな、選ぶのに時間が掛かりそうだ。
カタログを読んでいると、死んだ直前の事を思い出した。
"ミミックデバイザー買っとけば良かった”
そこで俺は少し賭けに出た。
「すみません。このカタログに無いものでも大丈夫ですか?」
「はい、問題ありません。」
よし!なら次は、
「それなら、創作上の人物になるとかでも大丈夫ですか?アニメや特撮のキャラクターとか…」
これは流石に無理か?
「はい、問題ありません、誰になりたいのですか?」
よし!これならなれる!俺が生前に好きだったあのキャラに!
「では、"仮面ライダーガヴ”に登場する"ニエルブ・ストマック”でお願いします!」
「かしこまりました。では念の為、精神や正確が肉体に引っ張られない様にしておきますね。」
おぉ!それは助かった、ニエルブは実の兄弟や研究仲間を平気で改造したりするヤバい奴だから、そこだけ不安だったんだ。天使様から言ってくれて助かった。危ない危ない。
天使様が手を指す方向には淡く光る魔法陣が現れていた。俺が噛み締めるかのようにゆっくりと歩き出した。
あのニエルブ・ストマックみたいになれる処か、そのものになれるだなんて夢みたいだ!
魔法陣の上に乗ると、淡い光が徐々に強くなっていった。
「蛇塚研斗さん。貴方をこれから、異世界へと送ります。魔王討伐の為の勇者候補の一人として。魔王を倒し世界を救った暁には、神々からの贈り物を授けましょう。」
「贈り物?」
「はい、世界を救った偉業に見合った贈り物。例えどんな願いでも、たった一つ目叶えて差し上げましょう。」
「おおっ!」
贈り物を聞いて思わず声を上げた。だが、ニエルブになれる時点で願いは叶っていると言えるから、よく思えば別に要らないかな。まぁ流石にこの空気では言えなけど。
「さぁ勇者よ!願わくば、数多の勇者候補の中から、貴方が魔王を打ち倒すこと願っています!さぁ、旅立ちなさい!」
その言葉と同調するかのように輝く魔法陣の光に、俺は包まれていった。
光が落ち着くと俺は、石造りの町中にいた。
「此処が…異世界……ん?」
初めて見る光景に思わず声が出てしまったが、自分の知る声ではなかった。そこで転生前のことを思い出し、直ぐに自分の格好を確認した。自分が着る服は何度も見た服だった。
茶色のスチームパンク風のロングジャケットにアスコットタイと呼ばれる幅広のネクタイを着けていた。
両手の爪は薬指が黒く、他はオレンジと少し変わったネイルがされている。髪は黒髪から茶髪に変わっていて、丸眼鏡がかかっていた。度は入っているようだが、あまり違和感は感じない。
まさか本当におれは、否、"僕”は…
「まさか本当になれるなんてねぇ……不思議な感覚だ。他に何があるか調べてみないと」
僕は眼鏡を直し、高揚感で少し笑いながら近くの路地裏に入った。
書くの本当に難しい!前のアカウントが消えてから久しぶりに小説を書いたので、かなり苦労しました。
今回のは突然の思い付いた設定を書いただけで先の事は全然考えてません(笑)
続かないかもだし、そのまま忘れるかもです(笑)
此処まで呼んでくれてありがとうございます!