アクセルの町 路地裏
僕は自分の特典、グラニュートとしての能力を確かめるため、路地裏に来ていた。町の外だと人に見られる可能性があるからだ。路地裏も人に見られそうだが、こっちの方が来る可能性は低い。
「さてと、果たして本当にオリジナルそのままなのか…試してみなきゃね。まずは……」
早速試そうと、僕は指を一舐めしつつ、地面に押し当てた。すると、押し当てた箇所から黄色い液体がじわりと広がっていった。液体は何かを溶かしているかのような音と、湯気が立ち上っている。
「おっできた。これが毒の沼か、どれどれ……」
上手く発動できたのを確認し、次は僕にどんな影響があるかを試した。まずは指で触れてみる事にした。
「僕を溶かす事はない…か、さて次は味見をしてみようかな。」
どうやらこの毒は僕には効かないようだ。となれば次は味だ。顔を顰める程苦いらしいが、
「にがっ……」
凄く苦い。ゴーヤやピーマン、珈琲の苦味とも違うが、とても苦い。これは顔を顰めてもおかしくないな。
「毒の検証はこれくらいで良いかな。範囲や濃度なんかはモンスターで試せば良いし、そして問題は。」
そう、問題はグラニュート態だ。本来、グラニュートは、人間に擬態する能力は無く、オリジナルの技術であるミミックキーがあっての物だ。オリジナルと同じになってはいるが、作れるかは分からない。
だが、現に僕は人間の姿に擬態している。なら、ミミックキーとミミックデバイザーの二つが無いとおかしい。
「どういうことだ?……ん?」
僕が擬態できている原因を探っていたところ、腰部分に妙な感覚を覚えた。まるで
「成る程、そういうことか…フフッ」
腰部分には、ミミックデバイザーが装着されていた。バックルの上部分にある装着口には、ミミックキーが刺さっていた。
「これはありがたい、グラニュート態に成れないのかと思ったよ。いや、この場合は
僕はもうグラニュートで今の姿は擬態だ。少しずつ認識を変えていった方がよさそうだ。勿論、周りにバレないように、ね。
「最後はやっぱり、これだよね。」
最後の検証は勿論、グラニュート態に戻れるのか。まぁ、既に答えは出てるようなものだけどね。
僕はこれから起こることに歓喜しながら、ミミックキーを引き抜いた。
引き抜いた途端、僕の身体は形を変えていった。
マッシブな黒い身体をベースに、肩や太股に蛇の牙を模した突起。オレンジが差し色に入った外見。頭部は爬虫類を思わせ、先端が蛇の頭になったコーンロウのような髪。口元はステンドグラスのような物に覆われている。
何より特徴的なのが、腹部にある蛇を思わせるような巨大な口。上顎には2本の鋭い牙があり、先程着けていたミミックデバイザーが収まっている。
「これが…!グラニュートとしての僕の姿……不思議な感覚だ。初めてなのに何だか落ち着く。こっちが本来の姿だからかな。でも確か、この姿は身体が弱かったオリジナルが、自らを改造して手に入れたもののはず、」
何故最初から改造後の姿なのか、まぁ、別に良いかな。自分だって改造前の姿を知ってる訳ではないし…
「これで大体の検証は済んだかな。武器は流石に貰えなかったし、細かい部分は気になったときにすればいっか。」
再び人間に擬態し直し、僕は路地裏から出た。
「さて、まずはどこに行こうかな。」
路地裏から出た僕は、これからどこに向かうか迷っていた。さっき転生したばかりで、この町の事はよく分からない。異世界ということは、ギルドのような場所があるはずだ。何処にあるのだろうかと少し考えていると、
「あら、貴方どうしたの?」
後ろから声をかけられた、振り向くとそこには50代ほどの女性がいた。辺りを見渡していたから気になったのだろうか。
「あぁ、実はこの町に来るのは初めてでして、ギルドは何処にあるのだろうかと。」
「あら~、そうだったの?ひょっとして、他所からきた人?冒険者を目指して来たのかしら?」
「はい、そうなんです。」
なるべく穏やかに、丁寧に喋るようにする。不穏な空気を纏っていたら、不審者と間違われてしまう。できるだけ避けたい。
「そうなのね。駆け出し冒険者の町、アクセルにようこそ。ギルドはここの通りを真っ直ぐ進んで右に曲がれば、看板が見えてくるわ。」
「有り難うございます。では、失礼します。」
道を教えてくれた女性にお礼を言いつつ、ギルドに向かった。言われたところで曲がると、看板が見えてきた。
「あれが冒険者ギルド…」
着いた場所は大きな建物で、中からは食べ物らしき匂いがする。だが、あまり食欲を刺激されない。グラニュートになった影響だろう。
「いらっしゃいませー!お仕事案内ならカウンターへ、お食事なら空いてるお席にどうぞー!」
中には入ると、ウェイトレスが元気よく出迎えにきた。中は酒場と併設しており、冒険者らしき人たちがたむろしていた。見慣れない顔だからか、少し注目を集めてしまっている。
鬱陶しい視線を無視しながら、真っ直ぐ空いてるカウンターに向かった。一つ凄い列ができているが、気にしないでおく。
「今日はどうされましたか?」
受付の男性職員に冒険者になりにきた旨を伝える。
「冒険者になりたいのですが……」
「冒険者登録ですね。では登録料1000エリス頂きます。」
………え?登録料?
「……少し待ってて下さい。」
登録料が掛かるなんて聞いてないぞ!
僕は心の中で愚痴りながら服のポケットを探った。焦りが顔に出ないようにゆっくり探していると、内側の胸ポケットから、ジャラという音と固い感触を感じた。出してみると小さい革袋が出てきた。揺らしてみると、コイン同士がぶつかる音が聞こえた。恐らくこの中にあるのがお金だろう。一先ず、これを出してみよう。
「これでお願いします。」
袋の硬貨を全部渡してみる。
「丁度お預かりします。」
良かった、足りたみたいだ。だがこれで僕は一文無しになってしまった。まぁ後のことは後で考えよう。
「では冒険者について説明させていただきます。まずは冒険者とは、町の外にいるモンスターを討伐を請け負う人の事です。とはいえ、基本的には何でも屋みたいなものです。冒険者はそれらの仕事を生業にしている総称。そして、冒険者には各職種がございます。」
成る程ね、モンスターを狩るだけじゃないのか。草むしりとかかな?そんなことを考えていると、職員の人は僕の目の前に一枚のカードを出してきた。
「これは冒険者カードといって、ご自身のステータスやレベル、経験値が表示されるのです。レベルは経験値を獲得するとレベルアップ、急激な成長を遂げます。更に、レベルが上がるとスキルを習得するためのスキルポイントが与えられます。」
レベルにスキル…ねぇ、前世にはゲームにしかなかったものが現実にあるなんて、流石は異世界っていったところかな。
「これで説明は以上になります。続いてはこちらの書類に身長、体重、年齢、身体的特徴の記入をお願いします。」
そこまで書かなきゃいけないんだ、参ったな。オリジナルの身長は分かるけど、体重は公開されていない。身長から平均体重を予測するしかないか。年齢は前世のを使おう。
身長174cm、体重57kg、年齢22歳、茶髪茶色目
オリジナルより年齢は若いほうだと思うけど、まぁ良いでしょ。
「はい、結構です。ではカードに触れてください。それで貴方のステータスが分かりますので、その数字に応じてなりたい職業を選んで下さい。経験を積むことにより、選んだ職業によって様々な専用スキルを習得できる様になりますので、その辺りも踏まえて職業を選んで下さい。」
ステータスか、擬態していてもパワーや耐久力は人間より高い。ガヴやヴラムの攻撃を人間の姿で耐えていたからね。さて、どうなっていることやら。
「ニエルブ・ストマックさんですね、えっと、は?えっ?……ええええええっ!!!!なんですか!?このステータスは!?魔力は平均の少し上で幸運が低めですが、残りステータスが大幅に平均を越えてますよ!!特に知力がハンパないですよ!!?貴方は何者なんですか!?」
僕が触れたカードを確認した職員が大声を上げた。その声を聞いた冒険者達がこっちを見てくる。凄い奴がきたという期待の目、本当にこいつが?という疑惑の目。様々な視線が僕に集中してくる。
というより、ニエルブ・ストマックの名前で登録できたのか、助かった。折角この姿に転生出来たのに前世の名前のままだったらやる気失くしてたよ。
「このステータスなら、魔法職以外ならどんな上級職にもなれますよ!?ソードマスターやクルセイダー、上級職以外なら盗賊やアーチャーにだってなれますよ!!」
アーチャーか、オリジナルも弓を使ってたし天職だよね。
「では、アーチャーでお願いします。」
「アーチャー…ですか?上級職ではなく?」
上級職を選ばなかったのを疑問に思ったらしい。それで良いのかと言いたげな表情をしながら聞いてきた。
「えぇ。剣より弓の方が性に合ってるので、お願いします。」
「成る程、かしこまりました。ではアーチャー……っと。冒険者ギルドにようこそニエルブ様!スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!」
これで僕は冒険者なれた。なら次は毒沼の濃度や範囲の確認も兼ねてクエストにでも行こうかな。
続きました!
外見の描写や会話がマジで難しい!
毎日投稿してる人マジで凄い!
続きは未定です!