マリーの中の寄生虫   作:ややや

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戦場:北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム

 夢をみる。

 

 寝巻き姿の父は、和かな笑みを崩さないまま私を見ていた。いつもとは少しだけ違う、魔術師を主軸にした冷たい眼だ。洗面台の前にいる父の後ろにある鏡には私の姿が映っている。幼く見える表情で、私の肉体をアンナマリーが動かしているのが分かった。

 

「あれだけ暴走していた君がこうして会話まで出来るとは。中々趣深いものだね」

「なんの。ようだ。マリスビリー」

 

 アンナマリーの容姿は二十歳前だろうか。そういえば、大学受験の際に父から貰ったワインをこっそり飲んだ時に寝入っていたことを思い出す。アンナマリーに歯を磨いて寝るように指示したはずだが、この光景はなんだろうか。

 

「無知であり全知。全能であり無能。得られる全てを保存出来ない性質。外部デバイスに依存する君は学習は不可能だった。オルガマリーの特異性によって君は脳を擬似的に獲得し、ビーストとしての覚醒を否定している」

「はぶらし。かえせ。はなすきょかない。はみがき」

「なに、浪費の名を冠する君に借金を申し込みたいだけさ」

 

 父はいつもの笑顔でアンナマリーに資料を渡した。アンナマリーはそれを一瞥すると、そのあまりの金額の大きさに思わず眉を顰めた。

 

「なに。なぞ。国家予算?国?購入。したい、マリスビリー?貴様は」

「カルデアスを稼働するための燃料代だよ。国連とも提携する形で進めているから、返しそびれることは無いと思う」

「死ぬ。金。無駄。返せない」

「魔術師は延命技術を常に持つ。余程ではない限り死なないよ」

 

 アンナマリーは首をかしげたが、別に言及する必要を感じなかったからか黙り込んだ。父は今死ぬのは困るからと、変わらない笑みで返済に関してある提案をした。返済時期と最低金額を決めるという、企業間の借金での返済だ。

 

「稼働後に返済することになるから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「なるほど。なるほど?はみがき。つまり─いつになる?」

 

 父は。

 マリスビリーは、貼り付けたような口元を揺るがさずに笑った。

 

2017年でどうかな?

 

 ⭐︎★⭐︎★⭐︎★

 

 何か重要な記憶を見た(マスター適性0%)気がしたが忘れてしまった。

 

 レフボムで色々消し飛んで修復した肉体だ。一縷の望みを兼ねてメディアに検査して貰ったところ、マスター適性は最悪のままだった。むしろ下がった。なんでも、アンナマリーの発するエネルギーが私の肉体を誤認させているらしい。

 

 残念だけど予想した結論である。地球人のシステムを異星人が使える理由は無い。本心から言えば悲しい。私も空中でキャッチされたり令呪で粋な命令を出したかった。

 

 とはいえ、カルデアの運用にはサーヴァントは必須である。気分だけでも味わうために、藤丸が召喚した神サーヴァント『百貌のハサン』を借りてカルデアの危険物調査を実施した。

 

 明け透けに語れば、不発弾が怖かった。カルデアの壁の中や土の下に不発弾でもあったら一大事である。複数人かつ単一である彼女に確認を依頼したのも見落としが低いだろうと言う目論見からだ。そして、その判断は誤っていなかった。

 

 レフボムはカルデアの山脈内にも設置されていたのが判明したからだ。

 

「この規模だと焼却範囲にある山脈にも爆薬は存在しますな。おそらく、起爆装置はそちらかと」

 

 つまり、レフの爆破は本来なら()()()()()()()()()()()()で、内部はおまけにしか過ぎなかったってこと。恐ろしいほどに冷徹に、レフは不死を利用してカルデアを詰め路に置いていた。

 

「いやはや。運が良かった限りでなによりですな、所長殿」

 

 百貌のハサンの言葉には頷くしかない。爆破と人理焼却はほぼ同時だった。起爆を行う直前のタイムラグが私達の生存率をほんの少しだけ上昇させた。この幸運から勝利を掴み取らなければならない。

 

 …そのために、マシュを前線に張り付けにしなければならないのは辛いところだ。ロマニは休息を取らせるべきと進言したが、もはやマシュは藤丸と一蓮托生の間柄だ。マシュの寿命を縮めようともカルデアはマシュを出撃させなければならない。

 

「…マシュ殿は余命僅かなのですかな?」

 

 ホムンクルスとしての稼働時間はね。人理焼却が無ければゴッフ─ホムンクルスの大手と協力して寿命を人並みにする目処は立っていた。言い方は悪いが、マシュはカルデアの最重要な備品だ。長持ち可能ならばメンテナンスの権利くらいは持っている。

 

 ホムンクルス1000体分の運命力含めた譲渡処理。アンナマリーありきの裏技だけど、マシュ1人救うには安い買い物である。既に購入と準備はゴッフに任せていた。人理焼却さえなければ、あの子は藤丸と仲良く世界を見て回ることも許されたのに。

 

「ホムンクルスを使い潰すのをマシュ殿は否定するのでは?」

 

 そんなもの隠せばいい。この世界の法則として、勧善懲悪よりもやったもん勝ちが優先される。何十人殺害しても世界を危機に陥らせても可哀想な過去が存在すれば無罪放免で許される。私が壊滅させた間桐家はそんな存在だった。

 

 こちとら世界のために協会に依頼されてクッソ忙しい中潰しにきたのに衛宮とか遠坂とかが邪魔するわ邪魔するわ…!蟲と!聖杯モドキと!無差別の夢遊病は!人理の敵よ馬鹿!野放しと監視は別でしょ!─やはり衛宮は使い潰さなければ…!

 

 …いけないいけない。所長、私は所長。えらいひと、みなクール。

 

 今回の特異点は独立戦争中のアメリカ。争うのは機械兵士とケルト兵。どちらが聖杯を所持しているかは不明だが、分かりやすく物理で襲ってくる強敵だ。戦線のど真ん中にレイシフトした藤丸達は攻撃を捌き切ることに失敗し、今はナイチンゲールの監視の下治療中らしい。

 

 アンナマリーの治癒術式は…ナイチンゲールに持ってかれた?バーサーカーだから話が通じない?治療に関して一方通行となるタイプかしら。マシュ、藤丸の意識が戻り次第、ナイチンゲールに『担当医師が治療方針について話したい』と伝えなさい。ロマニ経由で現状を聞き取らせるわ。

 

 えっ今すぐ聞きたい?身体が傾いているわよマシュ─マシュ!?赤いのに吹き飛ばされたけど大丈夫!?

 

「失礼。貴女が藤丸の主治医ですね」

 

 えっと。正確には担当医ですけど。藤丸とマシュの治療担当は私になります。

 

「この度は手術のご協力ありがとうございました。おかげで8割の患者の手脚が無事に接合されました。マニピュレーターに聞きましたが、貴女が居ないとアンナマリーは稼働しないのでしょうか」

 

 そうなります。カルデアから遠隔操作で行いましたので。看病や衛生管理は貴女の指示なしでは難しいでしょう。

 

「貸与は」

 

 出来ません。私達はこの戦争(何も知らないけど)の根治を成すために訪問しました。貴女もこの局面がジリ貧なのは理解していると思いますが。

 

「…確かに、患者を増加させるケルト兵は損害を気にせず襲撃します。患部の切除は命を救う上での最優先事項。貴方達の治療方針は確かに適切だと判断しました」

 

 何で私、バーサーカーから医者の評定されてるんだろう。

 

「それでは今後のアンナマリーの利用に関して─」

 

 ロマニ─ロマニ、ヘルプ!ヘルプ!流石に術後ケアは分からない!アンナマリーは天使と言われたからって羽根を生やすな!!精神衛生にいいわけあるか!現実感が狂うわ!ナイチンゲール女史もアンナマリーを叩かないで!精密機械だから皮膚の結晶は仕様だから!剥がさなくていいから!

 

 マシュ!藤丸!早く起きて…!このままだとツッコミで死んでしまう…!!

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