マリーの中の寄生虫   作:ややや

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オ「あんた、特異点中は不眠不休でマシュ達の警護ね」
ア「えっ」


談話:北米神話大戦 イ・プルーリバス・ウナム

 藤丸は非常に疲れていた。

 

 人理焼却から半年程度しか経っていない。付け焼き刃で鍛えた肉体は未だ発展途中であり、礼装の補助による強化も1日中繰り返す戦闘と行軍で節約を強いられている。

 

 女王メイヴ率いるケルト軍は一切を滅ぼすべく市民を無差別に殺戮している無限の兵隊だ。レジスタンスとして陽動をしている現地サーヴァントに報いるための強行軍は藤丸達に深い疲れを与えていた。

 

「スヤァ…」

 

 疲れの極致に、藤丸は魂が浮く感覚を覚えた。微少特異点に巻き込まれた際に感じる、『レムレムレイシフト(マシュ命名)』の兆候だった。藤丸にそれを抗う術はなく、意識だけが別世界へと接続されていく。

 

「まあ待て」

 

 その前に、アンナマリーによって防がれた。首を絞められた藤丸は咳き込みながら起き上がった。目の前には、焚き火を意に介さず立ちほうけるアンナマリーがしきりに頷いていた。

 

「今はワタシの絆上げの時間だ。幕間の物語というヤツだ。互いに本音を話すことは取引において重要だ」

 

 何でも答えてやろうとアンナマリーは胸を張った。

 

「ええと、好きなものは」

「オルガマリー!」

「嫌いなものは」

「ガイア、ORT、裏切り。聖杯に叶える願いはないぞ。ワタシは機構。個人の嗜好は目的のためには全て排除される仕組みとなっている」

 

 アンナマリーの言葉に、藤丸は首を傾げた。

 

「機構…アンナマリーは誰かに造られたってこと?」

「偶発的な要素が大きいが、肯定だ。ワタシは此処ではない何処かで発生した()()()()を達成するためのシステム。故にオルガマリーを慕い、オルガマリーのために全力で恩を返す仕事を果たしている」

 

 鼻息荒く答えたアンナマリーに躊躇いはない。しかし、その表情はすぐに曇った。困りごとを話すかどうか、いや仲良くするには話すべきだ。話そう。そんな表情の変化がさまざまと顔に浮き出ていた。

 

 腹芸は出来そうにないなと藤丸は思った。

 

「だからこそ、謎なのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

「カルデアスに入れられたからじゃなくて?」

「それならば結晶は造れない。ワタシは0からモノを生み出せない。アレはワタシの存在理由。ワタシが討伐されたならば─アレは存在するはずがない」

 

 少なくとも、レフに投入されるまでのワタシは間違いなく無能だと思い込んでいた。アンナマリーは記憶することが出来ない。しかし、システムとしてオルガマリーを優先する機能が有効となっている以上、アレは完全に滅ぼしたのは事実だ。

 

 バグ。矛盾。機能としての不一致。

 

 オルガマリーと参戦したはずの第5次聖杯戦争の後から、存在しない(処分した)はずの機能がアンナマリーに再搭載されている。12回で終わり切ったはずの羽化が、未だに再誕しようと蠢いている。

 

 今のところはただ気持ち悪いだけだ。だが、仲良くなるとは不快を分け与えるものだとオルガマリーは言っていた。藤丸を使えるとオルガマリーが判断したならば、アンナマリーに躊躇する理由はない。

 

「ワタシの矛盾を解決するには貴様だと愚考した」

「それは…ありがとう」

 

 しかし藤丸立香は謎丸に近かった(頭が悪かった)

 

 知識不足の身の上で解決案など出しようがない。差し迫った問題を解くのはカルデアにお任せし、とりあえず流れに任せて解決を目指すのが藤丸のスタイルである。マシュには悪いが、藤丸の仕事はサーヴァントを動かす延長コードを持ち歩く係。度胸さえあれば何とでもなる業務だ。

 

 後はイアソンすら『それズルくね』と評価したGANDR(スタン礼装)さえ撃てば藤丸の業務成績は満点となる。矛盾とか、謎解きとか、そんなモノはカルデアマスターには不要だ。そんな高尚なモノなど、解いた記憶は無いのだ。

 

『共感だよ、お兄ちゃん。理解してなくても頷くだけで女の子は安心を感じるんだ。だからマシュちゃんに幼馴染の思い出を』

 

 藤丸の脳内妹(焼却中)が語りかける。なるほど、とにかく真摯に向き合って話せば視点の整理は可能だ。アンナマリーに質問する形で、藤丸は彼女の疑問をまとめることに成功した。

 

1.アンナマリーの結晶化は触媒有ってのスキル

2.触媒はオルガマリーにより西暦2000年頃に消滅

3.現在のアンナマリーは触媒を所持している

4.こんな危険物を再取得した記録は無い

 

 単純に2と3が矛盾している。危険()と称する限り触媒は物理的に存在する物質のようである。危険物の模造品を見せてもらったところ、光り輝く青色の水晶に見えた。確かに、これほど目立つモノを手に入れた記憶が残らないのはおかしいと思えた。 

 

「オルガマリーの安全のために調べたが、()()()()()()()()()()()。手に入る経路が見当たらないのだ」

 

 アンナマリーの補足はあり得ない現象を肯定する神秘に満ちていた。だが、藤丸は覚えている。魔術は割といい加減でトンチキな代物だと。

 

「多分だけど、カルデアスで得たんじゃないかと思う」

「機能をスリープした記録は無いが…」

()()()()()()?」

 

 アンナマリーは黙った。確かに、カルデアスに墜ちてから数週間は稼働に不具合が生じていた。オルガマリーとアンナマリーの霊基が混濁した際の動作ログには欠損がある。アンナマリーが意図しない、情報の抜け穴だ。

 

「それに─今はなくても、100年後のカルデアスにはあるかもしれない」

「…!!」

 

 藤丸はアンナマリーを把握していない。しかし、それが触媒として使われるのならば何かしらの用途で誰かに消費された可能性は十分にある。未発見の鉱物もだ。墜落箇所に鉱物が存在した場合、意図せずして肉体に取り込まれるのはあり得る範囲だろう。

 

 そこまで考えて、藤丸の顔面にアンナマリーの谷間が挟められた。サーヴァントの攻撃を反射する結晶化からは全く想像出来ない柔らかくて甘い匂い。猫を可愛がるようにアンナマリーは藤丸の頭を撫で回した。

 

「盲点だった!確かにカルデアスは観ていなかった!これで上手くいけばAチームも帰還させられるかもしれん!やはりオルガマリーが選んだ俊英なだけはある!ありがとう、藤丸立香!」

 

 高笑いしてアンナマリーは哨戒任務に戻った。藤丸はほのかに温かい自分の頬を触りながら、少しだけ中腰になって辺りを見渡した。

 

「…所長に殴られるかも」

 

 藤丸は童貞だった。今のところ。

 

 ⭐︎★⭐︎★⭐︎★

 

「南米に…よりによってそこに向かえと?」

「ああ、もしかしたらカルデアスの不具合はそこにある可能性が高い」

 

 ワタシの命令に、カドックは少しだけ逡巡した。命を惜しむという反応ではなく、リターンを持ち帰れるかの迷いだった。

 

「行くのは構わない。だが、僕だと無駄死にする可能性が高いぞ」

「魂は保護する。あくまでワタシが主導だ。貴様はワタシが検知出来ない事象の観測を担当してほしい。これはAチームで貴様が最も優れている機能だ」

 

 余力を残すのは愚かなこと。調査は全員で赴く。それでも万が一があり得る故に他人を頼る。オルガマリーの教えはいつも正しい。

 

 やはり、それを知っているカドックは頷いた。流石の覚悟だ。Aチームでも随一の運命力の持ち主は伊達ではない。彼の献身には褒美を与えなければならないだろう。オルガマリーに相談する事項をひとつ増やした。

 

 そう、こういった場合は小粋な軽口で場を和ませるのが上流だったはず。

 

「頼むぞ、力コッブ・ジムトレプス…!」

「カドック・ゼムルプスだ…!!」

 

 横にいるサーヴァント(アナスタシア)が盛大に吹き出した。




アンナマリーの元ネタは某サンデーのアレです。
そして自分の中のマリスビリーは汚染聖杯でも利用できるなら完璧な運用を行う認識で動かしています。
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