マリーの中の寄生虫   作:ややや

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マリスビリーの聖杯の使い道をチラ見せする回。


解消:神聖円卓領域 キャメロット

 高笑いが響くなか、カルデアと相対できたのは、わずか数人だけだった。

 

 片腕を失った獅子王。腹部に穴が空いたガウェイン。傷だらけで血まみれとなったアグラヴェイン。モードレッドは殿となって消滅した。聖都の住民はいまだにアンナマリーの腹の中で、運営の手脚となる粛清騎士達は死に絶えた。

 

 半月早まった筈の人理修復は、帳尻を合わせるように予定通りに進行している。その是非は語れない。アンナマリーは先を知っても最善が理解出来ない。針を進めるべきか、遅らせるべきか、人外がそれを決めるのは烏滸がましいと自粛していた。

 

 乾ききってひび割れた地面が獅子王を足元から照りつける。閉じこもっていた彼女が蹂躙した大地の結果にも無反応な態度に現地サーヴァント達が色めき立つ。

 

「さて、話をしよう。ワタシが掌握したしげ『令呪を以て命ずる。アンナマリー、自害して此方に戻りなさい』えっ」

 

 ヌァー!!

 

 ドヤ顔で出てきたアンナマリーは盛大に爆死した。聖都を覆った結晶は粉々となって崩壊し、多数の民と外からの軍が入り交じりごった返す。獅子王は兜を投げ捨て、アーサー王の素顔を晒しながら藤丸達を見た。

 

「何のつもりだ」

『永劫無垢なる魂に罪はないんでしょう?』

 

 次回はオルガマリーがレイシフトする。サーヴァント達が次回召喚されない理由など存在しない。メンテナンス序でに現地サーヴァントの不快感を解消するのは必要経費だ。藤丸達に負担はかかるが、非道の結果最後の特異点で足を引っ張る事態は避けなければならないとオルガマリーは判断した。

 

 アトラス院にて出会ったホームズの解説がアンナマリーの何百倍も分かりやすかったのもある。何で証拠動画を撮影する機能を持って過程すら再生できないのだ。ホームズ苦笑いしていたわよ。

 

「マシュも、張り切っているみたいだしね」

 

 マシュは藤丸の前に立ち、円卓の盾を獅子王に向けた。

 

「話を─しましょう」

「─円卓の盾、か」

 

 よく磨かれた盾が陽の光を反射し、その輝きに獅子王は目を細めた。過去を思い出すように、懐かしんだ声色で彼女は遠くを見た。マシュは、ゆっくりと首を振った。

 

「私は、貴方達をただの悪人とは思いません。人理焼却という異常事態の解決策に避難を選ぶのは正当です。災害から逃げる。そのためにリソースを制限する。勝ち目のない存在からの対応なら、それは正しい行為です」

 

 マシュは悲しげに目を伏せた。円卓の半数以上が彼女を拒否した本質が、彼女の中にいるギャラハッドの意思と併せて口から出た。

 

「けれど、他人を傷付ける善意が正しい行為となる世界は誤っていると信じています」

 

 結局のところ、結論はそれなのだ。

 

 獅子王が人類を保護するだけならばカルデアはもっと悩み抜いた。やがて来るであろう魔術王の脅威の代わりとして、その堅牢さの穴を突くような蟻のひと噛みを選択しただろう。

 

 選ばなかった側を殺し尽くす必要など、必要ないのだから。

 

「獅子王─いえ、アルトリア・ペンドラゴン。貴方は、完全にボケています」

 

 アーサー王は完璧であり、不変である。

 

 その根本は6世紀の価値観を保ち続ける蛮族の王である。食事はテーブルに直置きしたものを手づかみで毟り取り、軍の調達は掠奪に依存する。中世の価値観の中での完璧な存在である。

 

 不変とは思考が変わらないということ。その政策も、当時にとっての完璧である。従わない者は殺し、従うものを連れ去る。根本が暴力的なのだ。

 

 それでも、アルトリアが正気なら保護活動はもっと穏当となっただろう。流民や棄民を保護する。外貨を調達して国から奴隷を買い取る。魂だけが目的ならば墓守の長で問題ない。目的の手段として、雑に収集する必要はどこにも存在しない。

 

 美しい見た目に騙されるが、アルトリアは恐ろしいほどに劣化していたのだ。

 

「話す余地はない。戦場にて決着をつけるべし」

 

 脈絡のない回答が答えだった。アグラヴェインは今にも泣き叫びそうな表情でハサン達に突撃し、ガウェインは鉄面皮のままオジマンディアスへ進撃した。

 

 サーヴァントの戦闘音が鳴り響く中、カルデアとアルトリアだけが動かなかった。長い逡巡の後、藤丸の横にいた端正な容姿の隻腕の男がゆっくりと現れた。彼はベディヴィエールだとアルトリアに名乗った。

 

「サー・ベディヴィエール」

「貴方が犯した罪は、全ては私のせいです。王を失いたくないという思いで、あまりにも愚かな罪を、貴方に押し付けてしまいました」

 

 アルトリアはベディヴィエールの名を繰り返した。反応か、対応か、ベディヴィエールには判別出来ない。それは彼が生み出した罪だった。

 

「やめろ」

「我が王、我が主よ。今こそ─いえ。今度こそ、この剣をお返しします」

「やめろ、私に歯向かうな…!」

 

 アルトリアが不老となったのはベディヴィエールが聖剣を返却出来なかったからであり、聖罰が起きたのは誇りを忘れていたからだ。聖剣の加護によって1500年という永きを孤独に生き続けた負担は膨大だった。恥すらも忘れてしまうほどに。

 

「聖槍、抜錨!!」

 

 アルトリアは宝具を展開した。緩んだ精神が執着する死の拒否本能だった。その行動に善悪は存在せず、だからこそ醜悪な無垢なる魂(白痴の老婆)

 

 マシュ・キリエライトはその想いを受け止める。その苦痛に溢れた人生が少しでも救われるために。魂の赴くがままに、マシュは叫んだ。

 

いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)!!

 

 勝敗は、既についていた。

 

 ⭐︎★⭐︎★⭐︎★

 

 遺書を認めて出陣したカドックは翌日に普通に帰ってきた。きてしまった。本来なら全員が喜ぶべきことなのに、茶化す気質のベリルやペペロンチーノも気難しい顔で唸っている。

 

「カドック」

 

 唯一、マリスビリーの目的を直に聞いているデイビットだけが、青筋を浮かべなら彼が組み立てた人理保障のレールを探り当てていた。カドックが撮った写真と資料を睨みつけながら、彼は唸るようにカドックに再確認した。

 

「コレは、本当にORTが眠っていた場所なのか」

「嘘を吐く理由はない。何なら、実際に行けば分かるさ」

 

 写真には何も存在しない、真っ白な地面だけが存在した。

 

 ガイアの意思も魔力も何らかの神秘も消え去った死の大地。ORTはカルデアスには存在しない証拠だった。最も計算するべき危険要素を、カルデアスは計算していない。デイビットは、マリスビリーが死ぬ寸前に語った言葉を思い出した。

 

『人類は醜い。外敵に余りに無力で、未来の保障は何もない。歩む速度に、赦される時間が足りない。私は幸せ者だ。オルガマリーという美しい星になる魂に全てを任せられる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 マリスビリーはデイビットの前で呆気なく死んだ。全てに安堵した死に様だった。世界を滅茶苦茶にかき混ぜたくせに、後始末を娘に押し付けて逃げた男を、デイビットは邪悪と思えなかった。

 

「…全くもって、臆病者だ」

 

 デイビットが吐き捨てるように愚痴をこぼした。その背後で、彼のサーヴァントのテスカトリポカは無言で頷いた。彼はこの地面の上に存在したものを知らないが、闘争の残滓はありありと感じ取れる。1()0()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「すまないな、カドック。おかげでカルデアスの原因が理解出来た」

「分かったのか?」

「ああ。おそらく間違いない。解説はアンナマリーを含めて全員にする。みんなを呼び寄せてくれ」

「分かった、サーヴァント達も集めよう」

 

 純粋な闘気に混じるのは、くだらない陰謀の匂い。懐かしい、かつての王様が燻らせた匂いだ。全てを煙草の煙に吸わせて、テスカトリポカは茶化した。

 

「おまえさんが顔に出すのは珍しいな」

「奴の完成像を理解すれば誰でも歪む」

 

 とにかく、マリスビリーの青写真は大まかに見通せた。カルデアス内の時計塔を調べれば判別は付けられる。間違いなく、人理焼却は奴の想定外だ。異聞帯が何故呼び出されたのかを察したデイビットは、結末を理解して頭を掻きむしった。

 

「人質。…最低最悪だ。そこまで託すのか。クソッタレ」

 

 裏も表も準備して理解して結末を導いている。生物としての規格を熟知した誘導。ダンゴムシが持つ交替性転向反応を利用した迷路を人間で成し遂げる類稀なる頭脳。

 

「…異星の神」

 

 どう足掻いても結末はそれだ。デイビット達が最善を尽くして台無しにしても、結末だけは彼女が決めることになる。

 

 末期を看取るのは、いつだって神なのだから。




この作品のマリスビリーは本編fgoの場合は爆発するリスクを計算して手を出さないことを決めたと想定しています。
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