マリーの中の寄生虫   作:ややや

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所長の強さの例えを少し変更しました。


吊上:終局特異点 ソロモン

 魔術王の侵攻予報が確認された翌日。

 

 ロマニ・アーキマンことソロモン人間体を自白した彼はオルガマリーにしばかれて半死半生のアンナマリーの横で磔にされていた。特異点全解決に伴い、後回しにしていた糾弾大会である。

 

「吊るせ吊るせ!」

「この節穴が!その目口は飾りか!」

「とにかく拷問だ。拷問にかけろ!」

「我が家の研究素材にしてやる!」

 

 レオニダスにより鍛えられたカルデア職員が思い思いにロマニをしばく。敵が目前なので怪我はさせないように注意しているが、痛いものは痛い。ロマニは半泣きだった。

 

 アンナマリーは磔にされていない。手脚がもげた石像のような粗大ゴミに飾るバランスは存在しなかった。オルガマリー怒りの鉄槌である。

 

「や、やめてー!ボクの耐久値は高くないんだ!いや、それよりアンナマリー君大丈夫かい!?顔が完全に大穴空いているけど!?」

『(大丈夫ですのポーズ)』

 

 アンナマリーの性質を良く知っているロマニはこの局面で誤魔化しても仕方がないと全てを白状した。第5次聖杯戦争にてソロモンとしてマリスビリーに召喚され、手早く全サーヴァントを排除した後に汚染聖杯の魔力のみを拝借して人間になった存在。それが、ロマニという人物の正体だった。

 

「黙っていてごめーん!でイタイッも、敵に正体を知らイタイッれる訳にはアデッいかなかったんだ…!」

 

 カルデア職員達から腹パンを喰らいつつ、ロマニは謝罪した。

 

「敵はボクの肉体を利用している。千里眼も、召喚魔術も、間違いなく生前のボク並みに…あるいはそれ以上に使いこなしていた。正体を知られたらボクは『サーヴァントソロモン』として使役される可能性があった」

「でも所長には相…」

 

 ロマニの髪を切り取っていたエルロンは途中で言葉を止めた。オルガマリーの額に青筋が浮かぶ。しかし事実だった。オルガマリーはアンナマリーと繋がっている関係上、情報漏洩の危機は高い。全員がオルガマリーが漏洩すると確信しているのは腹が立つが、多分気のせいなのだろう。

 

「それで総力戦の前に白状したって訳か」

 

 ムニエルの言葉にロマニは頷いた。

 

「千里眼の視線は独特なんだ。所長を強制退去させるときに偽ソロモンと目があった。全部バレたと思う。一応サーヴァント化は出来るけど、宝具に関しては…その、魔神柱…あーと、ゲーティアが居ないとダメで…」

 

 もにょもにょと誤魔化し始めたロマニをカルデア全員で拳で説得し直したところ、神に全能の力を返した際の再現を行う逸話宝具とのことだった。

 

 効果はソロモン王の痕跡の全抹消。ソロモン王自身が英霊の座から降りて完全消滅する宝具であり、偽ソロモンの肉体が本物ならば連動して崩壊を見込めるだろうとロマニは語った。

 

「それ、ロマニが考える推定黒幕だよな?」

「…うん」

「ソロモンはサーヴァントの攻撃を無効化できるんだよな?」

「い、一応。凄いよね。ボクだと反応が追っつかないよ」

「ゴミ宝具じゃねーか!!」

 

 ムニエルの絶叫はカルデア全員の総意だった。ロマニは目を逸らした。実際、偽ソロモンの肉体がソロモン本人の保証がない。本人だとしても死体な以上本体に影響はない。一か八かの賭けにロマニを使い潰すのは、オルガマリーの矜持に反する。

 

「ロマニ。貴方、ソロモンの霊基は本当に要らないのね?」

「うん。ボクはロマニ・アーキマン。ソロモンは大昔に死んだ存在だ」

「なら、私の実験に付き合いなさい」

「何をするんだい?」

「レフが私にしたことを忘れたの?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私の切り札を使ってね」

 

 その言葉に絶句したのは、魔術に詳しい職員だけだった。魂を的確に分離して抽出する魔術など存在しない。それが出来るのならば、それはまさに◼︎◼︎ではないか。

 

「ただ、ソロモンの霊基は宝具を使えば消えるわ。ソロモンも死ぬのは嫌でしょうし、決戦でのデミ・サーヴァント化は彼の判断に任せるわ」

「…うん。それはきっと、問題ない」

 

 全員の視線がオルガマリーに集まった。彼女は震える身体を抑え込み、本心を口にすることを決めた。

 

「私はこれまでに散々脳筋と言われたわ。魔術協会にも、武力だけが評価されるばかり」

「そうなのですか?私はあまり魔術協会には詳しくないのですが…」

 

 体調は優れないものの動き回れる余裕のあるマシュは魔術協会に詳しいムニエルとシルビアに問いかけた。2人は目を交わしてから、諦めたように下を向いた。

 

「暴力だけで十二のロードを支配できる蛮族って呼ばれてるわね」

「アニムスフィア家が政敵に襲われないのは所長に皆殺しにされるからと断言されてるな」

 

 貴族の扱いではなかった。マリスビリーから引き継いだ2代目の扱いがおなざりだったカルデアの背景が明かされた。オルガマリーはアンガーマネジメントを意識して眉間の皺を伸ばした。

 

「…まあ、そんな私だけど。切り札を使えばティアマトは勝てたし、きっと魔術王にも勝てると思う

「えっ」

 

 ロマニはドン引きした。ソロモン王としての気味悪さだった。全員が絶句したのにオルガマリーは首を傾げた。全員の感想を代弁したのは、やはり藤丸だった。

 

「魔術は等価交換が原則なんですよね。…その代価は、なんですか」

「化け物になる…多分。真祖のようなひとでなしに成り下がる。ウルクの私みたいに、人の死を平然と見届けられるナニカに」

 

 オルガマリーは目を瞑った。

 

「ウルクで試したけど、中途半端だとアンナマリーの思考に引っ張られる。飛行機や自転車のように、勢いがないと術式が安定しない。化け物になるか、人間を維持できるか。正直、自信がないの」

 

 だからとオルガマリーはカルデア職員に頭を下げた。

 

「私という人間が消失しないために、私を助けてくださ「勿論です!」…ありがど、う」

 

 マシュの即答に、オルガマリーは泣きながら感謝を伝えた。普段よりも幼い、オルガマリーの仮面が剥がれた素顔は10分ほど続いた。ようやく泣き止んだ彼女は、少しばかり興奮しながら部屋の隅に隠してあった段ボール箱を机に置いた。

 

「勿論!貴方達に負担がかからないようにちゃんと礼装は作ったわよ。藤丸と同じ。これを着るだけで私の切り札の補助となるわ」

 

 オルガマリーは自信満々に礼装を出し、他の全員が固まった。

 

 それは、オルガマリーの生き恥フォームに、申し訳程度の股間カバーがついた代物だった。

 

 女性陣は戦慄した。アンダーヘアのケアとかの話ではない。あれを着れば間違いなく()()()()()()。上も下もまろび出る。恥晒しをしろというのか。

 

 男性陣は恐怖した。あの逆バニーを着るのか。男のブツは紐でカバーなど出来ない。前と後ろの穴を開張したまま決戦に挑めというのか。恥晒しをしろというのか。

 

 かろうじて復活したロマニが、震える声でオルガマリーに質問した。

 

「所長。負担。負担のある、方法とは?」

「え?…まあ、アンナマリーの結晶を皮膚に植え付ける方法もあるけど。訳の分からない鉱物を真皮に入れるのはリスクがあるで…えっみんななんでアンナマリーのとこに行くの!?夜鍋したのよコレ!?」

 

 オルガマリーの地団駄を他所に、全員がアンナマリーの肉体を解体し始めた。

 

「よなべしたのよぉー!!」

 

 決戦は近づいていく。

 

 決戦の前夜、マシュ・キリエライトがゲーティアと夢の中で邂逅と舌戦を繰り広げているその時、オルガマリーはアンナマリーの過去を見ていた。アンナマリーがいつも試みている、自身の想いと危惧に対してのエラーログの送信。

 

 第5次聖杯戦争の、結末を。

 

 ⭐︎★⭐︎★⭐︎★

 

 ロマニが詰問されていた同時刻、時間神殿にて。

 

「吊るせ吊るせ!」

「この節穴が!その目口は飾りか!」

「とにかく拷問だ、拷問にかけろ!」

「誉れある一番槍にしてやる!」

「同胞達よ、落ち着くのだ!私は統括局の使命に従いオルガマリーにリソースを─止めろ!パンケーキの記憶を流し込むな!惑星轟の被害は大部分が私だっただろうが!ああ、あああああ!!」

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