マリーの中の寄生虫   作:ややや

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狩猟:Eternity Blue

 藤丸達からゲーティアの真実を聞き、カルデアは溜め込んだ食糧を放出してパーティを開いた。

 

 サーヴァント達はロマニを問い詰めながらもその勇気を讃え、ロマニはソロモンを継ぐ人間として彼の中身をつぶさに語った。自由の無い、自我を持ち切れなかった哀れな男の話だ。

 

「そんな男はハーレムを築きませんぞー。女体に溺れた王様が不自由とか、非モテ独身弱者に可哀想だとは思いませぬか?」

 

 サーヴァントのあられもない指摘に、ロマニは笑って肯定した。結局は自業自得だと理解している。ゲーティアの怒りと嘆きは本物だった。彼が暴走するまでに何かしらの納得をソロモンとして与えるべきだった。

 

 だから騒いだ。ゲーティアの凄まじさがサーヴァント達の名誉となるほどに偉業だったと、逃げ出した少数の魔神柱に伝わるようにカルデアはパーティを楽しんだ。

 

 ソロモンが人間になれたと、宣言するように。

 

 翌日。

 

 公人として人理修復の報告を行ったオルガマリーは、回線を遮断して個人用の携帯でゴルドルフ・ムジークに電話をかけていた。

 

「あー。ゴッフ、久しぶりね。私よ。いま、大丈夫かしら」

『久しぶり…まあ、君的にはそうなるのか。私的には数週間前にマシュ嬢に対しての愚痴を聞いたばかりだが。取り敢えず、無事で何よりだ』

 

 オルガマリーとゴルドルフはいわゆる婚約者の間柄である。時計塔にて孤立していたオルガマリーに対して空気の読めなかったゴルドルフが声をかけたのが始まりだった。

 

 能力と家柄の優れた察しのいい貴族はオルガマリーの蛮族性を警戒していた。事実、当時の当主であるマリスビリーが彼女に課した役割は戦闘方面の内容だった。

 

 Q:聖杯戦争に参加したマリスビリーが勝利した後、ORTが消滅して娘のオルガマリーからその残滓が微かにします。仲良く出来ますか?

 

 A:無理。

 

 ゴルドルフは稀有な勇者として貴族達から一定の評価と引き換えに胃痛を手に入れた。マリスビリーが婚約をとりなす前後で死亡したためになあなあとなった今でも時計塔からのオルガマリーへの依頼は基本的にゴルドルフ経由である。

 

 飼育員ゴルドルフ。

 

 時計塔での彼の渾名であり、それは今でも変わらない。魔術協会に所属する連中からの連絡が山のように来ているのが、今の彼の現状だった。

 

「ありがと。ちょっと…色々…まあ、吐き出したかったのよ」

『何やら対人に苦労している声色だなぁ。噂の藤丸某とやらの扱いに困っているのかね?君はなんだかんだ純粋な『一般人』を知らないだろうしなぁ』

 

 ゴルドルフは意識して軽く笑った。色々と凄まじい経歴を持つオルガマリーがその実ナイーブな女性だと熟知しているからだ。カルデアの苦労を切り抜けた彼女ならば受け止めるだろう信頼もある。

 

「まあね。それは何とでもなるのよ。藤丸は良い子だし」

 

 揶揄した口調にオルガマリーが緩く受け流した結果に、ゴルドルフは妹分が見事な成長を果たしたことに感動していた。

 

「今日の…マシュが…その、内股になってたのよ…」

『oh…』

 

 オルガマリーとゴルドルフはどちらも清い身である。シモの事情や男女の関係など碌にわからない。魔術師的には『交際おめでとう。後継者用の種は此方で用意するかい?』で済むが、一般人はどのように反応するべきかは理解の範疇になかった。

 

「戸籍はあるけど、マシュと結婚するには背景が真っ白すぎるの。一般人として過ごすなら魔術師に違和感を感じないくらいには経歴を盛らなきゃいけないけど…どうやったら南極在住の違和感を消せるのかしら…」

『さて(震え声)。ただ、君は1人ではない。いるだろう?カルデアという見識の深い仲間が。彼らにも頼りなさい。私よりも余程良い回答を持っているだろうさ』

「…!!その通りねゴッフ!」

 

 この子大丈夫なのかなぁとゴルドルフは危機感を抱いた。オルガマリーは魔法を発動した年齢で魂が固定されたために色々と情緒が幼い。実のところその事実を知る唯一の人間はゴルドルフだけだったりするが、彼はその情報を仲良くなれば察せる程度だと軽く考えていた。

 

『それで、カルデアの買収話が上がっているのだが…』

「買えるの?」

『厳しい』

 

 レフボムはカルデア施設に重大なダメージを与えたが、アンナマリーにより機材の大部分は修繕されている。壊滅状態のカルデア施設ならばゴルドルフの資産を傾ければ購入可能だが、機材ごとの購入は不可能だった。

 

『…のだが、なーぜーかー、時計塔のロード達が合同で出資してきてな。株式会社ムジークとして購入することになりそう。不思議なことに、社長の私が全財産を払い出すことに拒否権が存在しない」

 

 政治的にも、立場的にも、心情的にも。オルガマリーに手を貸すにはゴルドルフ個人では手が出せない。貴族のムジーク家として、アニムスフィア家を略奪するべきだと、ゴルドルフは決心していた。

 

 決して家にいるホムンクルス達からせっつかれたからではない。

 

『だから…うむ。後ほど改めて正式に行うが』

「……」

『…結婚してほしい。君が欲しい』

「…はい。…その、よろしく、おねがいします」

 

 ムジーク家のホムンクルス達が歓声で沸いた。

 

『あら。おめでとうございます♡結婚指輪は是非とも我が社にてご購入を検討していただければ♡』

『あ、ああ。ありがとう』

 

 ゴルドルフはオホンと咳き込んだ。

 

『まあ、査問会が終わり次第Aチームも復帰する。藤丸君とマシュ嬢はそのまま人事異動に紛れて私か君の部下の一員として市井に放出しようじゃあないか』

 

 魔術協会に無断での人事異動。機密知識の開示。サーヴァントの乱雑召喚。レイシフトの無許可発動。査察団が訪問するには充分な理由だ。とはいえ、オルガマリーという究極の暴力装置がいる以上カルデアチームに重篤な被害は与えられない。

 

 分かりました。仕方ないので管理していたORTを解放します。

 

 オルガマリーが気まぐれにその言葉を口にするだけで協会側は何も出来なくなる。世界を滅ぼす化け物を退治する力が協会には存在しない。協会はゴルドルフを生贄に新たな管理体制を作り上げる目論見なのだ。

 

『君は大人しくカルデアと一緒にビーストの残党を狩ってくるがいい。なあに、細かいところはささやかながら手伝わせてもらうよ』

 

 ゴルドルフの見栄の入った口調に、オルガマリーは頬を染めて頷いた。ホムンクルスのトップであるトゥールⅣはゴルドルフを改めて教育し直すことを決心した。

 

「そういえば、貴女、何も言わなかったわね」

 

 雑談後、フォウに荒らされた部屋を掃除しながら、オルガマリーはふとアンナマリーへ声をかけた。魔法で確立した魂にアンナマリーは同居できない為、今のアンナマリーの魂は首元のメダルに存在している。

 

 カルデアスにある謎に増えている肉体の放棄が完了すれば、アンナマリーの理想の終末ライフは確定している。分かりやすく浮かれていたアンナマリーは、いつも通りに空気を読めずにオルガマリーの地雷を踏んだ。

 

 大切なものを他人に奪われたくない管理欲がオルガマリーにはあった。

 

『確かにムジーク家にはビースト(どうるい)の気配がしましたが。きっとゴルドルフ様もビーストを降したのでしょう。ワタシからは何も…ヒェッ』

 

 アンナマリーは本体のメダルにヒビが入ったのにビビり散らかした。オルガマリーは笑顔のままにメダルを握り締める。突然の死の危機に瀕したアンナマリーが恐る恐るオルガマリーを見上げれば、彼女は凄惨な笑みを浮かべてアンナマリーの肉体に変化していた。

 

…はあ?

 

 ⭐︎★⭐︎★⭐︎★

 

「…あれ?ダヴィンチちゃん、所長はどうしたんだい?」

「資金調達のために外出するって旅立ったよー」

「それ高跳びって言わない!?まだ魔神柱いるんだよ!?カルデアの責任者は!?ボク!?マジで!?嘘でしょ!?」




オルガマリー「つぶちゅ」
ロマニ「(封印指定が嫌で逃げたな…)」
ダヴィンチ「(封印指定が嫌で逃げたのかなぁ…)」
ゴルドルフ「コヤンスカヤ君とオルガマリーが凄惨なキャットファイトを始め出した…!?」
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