マリーの中の寄生虫   作:ややや

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偽物:ゴルドルフとの会談

 魔神柱の残党を討伐して少しした後、査問会が開かれた。

 

 本来ありえた可能性とは異なり、サーヴァント達の大多数が顕現した状態での査問である。サーヴァントの契約を担当していた藤丸がいなくなる以上、サーヴァントの関係性は一度白紙に戻される。しかし、霊基再臨のコストを費やした彼らを出来る限り使いまわしたいのは国連の本音である。

 

 世界を守るために足むきを揃えましょう。蘇生するマスター候補の選り好みくらいは融通します。

 

 そんな下心を秘めた提案を、サーヴァント達は快く受け入れていた。それは、カルデア職員が悪くない扱いを受ける証拠でもあったからだ。

 

 大多数の魔術協会員がロマニ(と護衛役のダヴィンチとホームズ)に殺到する中、藤丸とマシュはオルガマリーの自室にて紅茶をしばきながら面談を行っていた。

 

「うぉっほん。私はゴルドルフ・ムジーク。オルガマリーの婚約者であり、査問会後には司令官として在留する立場となる。藤丸とマシュ嬢には短い付き合いとなるだろうが、よろしく頼む」

 

 小太りの人が良さそうな顔をした男だと藤丸は思った。威厳を出すために見た目は年嵩に見えるが、オルガマリーと年齢に大差はないように感じる。査問会と称して紅茶を注ぐ姿は、ただの人のいい青年にしか見えない。

 

「まあ、これから退職する君達には正直確認することなどなーんもない。世間話がてら君達の自慢話(残党退治)を耳にするのが、私の仕事だ」

「そして私が筆記を務める技術士のフランシスコ・ザビエルです。お見知り置きを」

 

 アンナマリーの仮装体に扮したオルガマリーが素知らぬ顔で藤丸達と握手する。開き直れずに別人のままで査問会を乗り切るつもりのようだ。正直に無断出奔したことを謝ればいいと思うが、生命の危機を救われたためにゴルドルフは何も言えない。オルガマリーの膝に乗っている子兎も同じ気持ちだろう。

 

「此方は私のペットのコヤン。暇があれば撫でてあげて」

「…キュー」

 

 子兎の眼は死んでいた。正体を知る側としては物凄く複雑である。真の姿を解放したまま呆気なく蹂躙される様を見て思わず助命したが、復讐してきそうで少し怖い。ゴルドルフは紅茶を啜った。

 

「よろしくお願いします。ゴルドルフさんにザビエルさん」

「うむ」

「ザビエルさんにはよくわからないけど質問表が来てたよ」

 

 藤丸はサーヴァントから渡されたと思わしき走り書きを見ながらザビエル(オルガマリー)に質問した。

 

「えーと、アムネジアシンドローム…という病気になっていましたか?」

「…。…ええと、とりあえず今まで大病に罹ったことはありません、はい」

「岸波白野…いや誰なんだろこれ…という名前に聞き覚えは」

「???…いえ、存じ上げませんが…?」

 

 まあ、勘のいいサーヴァントにはバレてるよなぁ。

 

 ゴルドルフはサーヴァントの実態を理解しきれていないが、オルガマリーやロードのような超然とした存在だと把握している。オルガマリーを見て狐耳のキャスターや赤いレオタードドレスを着たセイバーが驚愕の表情をしたのは記憶に新しい。

 

 それはそれとして誰だろうキシナミハクノ。彷徨海から魔法目当てにやってくるという女性の仲間だろうか。

 

「(オルガマリー。諦めよう?子兎(物証)もあるし、正直に話そうじゃないか。私も一緒に頭を下げるから…)」

「(何で何でぇ!?しがらみのないアトランダムな女性なはずなのに!)」

 

 ダメそう。

 

 策謀に向いていないのになーんで小賢しいことしちゃうのか。アンナマリー嬢もオルガマリーを甘やかしすぎである。ゴルドルフは仕方なく場を温めるために藤丸達に自身の家を伝えた。錬金術の名門であり、ホムンクルスの製造管理を行っていること。昨今の研究では、ホムンクルスの稼働期間の延長…つまりは、寿命の克服を重点にしていること。

 

「寿命の、克服ですか」

「そうだ。『完成された生命』とか無知な連中はほざくが、たかが人間程度の規格を超えられない存在が完成などありえんだろうに」

 

 マシュの内心に気付かないまま、ゴルドルフは苛立ち混じりに呟いた。

 

「そもそも、人体の神秘を解き明かし、完全なる人間の再現を行っても根源にはたどり着けないという風潮も馬鹿馬鹿しい。その持論は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。自分から魔術師を否定するなど、愚者の極みだ」

 

 根源到達の事例がある以上、人体の神秘は必ず根源の可能性が埋まっている。他の魔術師の研究とは違う。当てずっぽうに道を開拓する彼らと反対に、ムジーク家は実在する根源接続因子を掘り進めている。他者の進捗に嫉妬する必要などない。研究対象として緩く長く付き合っていけば我が家は栄光を手にするのだ。

 

 まあそこまで細かくは説明しないが。

 

「なるほどー。じゃあ、マリスちゃんは所長をモデルにしたホムンクルスなんですね

「うん?」

『(えっ2号機いるんですか)』

 

 アンナマリーが嬉しげに念話を送るが、そんな話は聞いていない。聞き分けの悪いホムンクルス達も魔術に関してはきちんと報告はさせている。

 

「確かにオルガマリーはマシュの寿命延長のためにホムンクルスの製造を発注していたが…」

 

 …うん?

 

「あー。オルガマリーは家で…オホン。行方不明になった()筈では?」

「はい。所長が出た数日後に宅配で『補助用ホムンクルス』として送られてきました。私の寿命問題が解決したと分かるとお手伝いとして所長代理…自称ですけど…を務めて、先日ムジーク家に帰宅した筈です」

 

 何それ聞いてない。

 

「ギュベッ」

「…」

「ギュー!ギュー!」

 

 オルガマリーの右手がコヤンの首を本気で握り潰そうと力を込める。コヤンは凄まじい速さで腹を出して首を横に振った。その顔は嘘をついている余裕がない。

 

「思い出に写真も撮ったんですよ。見てください」

 

 藤丸が財布から差し出した写真には、幼女化したオルガマリーが満面の笑みで集合写真に写っていた。

 

「「……」」

 

 誰?この子。

 

 顔色を伺うことに慣れきったゴルドルフの識別からも、この幼女が本気で楽しんでいることは理解出来た。所長代理としてオルガマリーの知識を有する彼女は亜種特異点攻略において有能な助手として働いていたらしい。

 

 ゴルドルフはオルガマリーを向いたが彼女は完全に固まっていた。本当に心当たりはないようだ。つまり、この幼女は完全に管理外の領域からオルガマリーの精巧な肉体を持って堂々とスパイを完遂したことになる。

 

 でもやり遂げたことはごく普通の助手である。権限もないから機密を傍受したわけでもない。この無害さは何だ。誰なの?怖いよぉッ!!

 

 ゴルドルフはかろうじて口から出そうになった叫びを喉元で押し留めた。

 

「ムジーク家にはまた会わせてほしいと思っています」

「…。…。…………そうです、ね」

 

 ああ…オルガマリーの目が完全に死んでいる。アンナマリーの肉体であるザビエル嬢の顔面は完璧に平静をたもっているが、私にはわかる。オルガマリーは幼女化偽オルガマリーを本人が独断で派遣するような女だと納得されたことにショックを受けているのだ。

 

「それでは、亜種特異点のはなしをおねがいします」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 えっ始めちゃうの?

 良いの?

 公然の秘密で謎の存在が闊歩したことになるんだけど?

 

 ゴルドルフは不安げな表情でオルガマリーの背中を叩いた。オルガマリーは酷薄な目でゴルドルフを見据えた。さっさと謎の存在の足取りを掴んでぶっ頃しようとする激情の眼差しだった。

 

 ゴルドルフはちょっとちびりそうになった。




この世界線のfgoはマリスちゃんと1.5部を駆け抜けました。
ユーザーは詳細不明だった婚約者ゴッフのムジークぶりをここで味わっています。
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