ひゅんひゅん。どんどん。ぱちやゎん。ぎゃああ。せんせー。ちりょーを。
…もう大砲の音を聞きたくない。弓矢も。叫び声が未だにリフレインする。
第二特異点セプテムは西暦60年の古代ローマ帝国。皇帝ネロが統治する繁栄の時期に襲いかかる過去のローマ皇帝。前回と同じくシンプルに目的が分かりやすい特異点である。皇帝ネロの守護がカルデアの役割だった。
マシュ達の方は。
マシュ達の方は!
彼方が皇帝とサーヴァントときゃっきゃうふふしている間、私の仕事は負傷者の治療だった。戦争とか、流石に本職には敵わない。
士気を上げるには風土を理解しなければならない。ポッと出の私達には決して成し得ない力だ。私に出来るのはその力が減らないようにすることだった。
アンナマリーが好みそうな職場だ。鉄火場で、危険で、他人に従うだけで喜ばれる。序でに信仰してくる存在も居た。手脚の復元は、カルデアがこの状態でなければきっと使わなかっただろう。
アンナマリーの能力は所謂借金─それも闇金に近い。望んだモノを望むだけ渡すが、アンナマリーの一存でそれは返却させられる。逆に言えばアンナマリーが適切な取引だと思っていれば特に問題なく使えるし、期限は無限大になる。
アンナマリーは興奮していたけど、出処も不明なリソースに手を付ける理由なんかないでしょうに。助けを求める人間にドライフルーツをささやかな報酬として受け取る。仕事なんてそんなものでしょう。
まあ便利だから私の負担軽減に少しだけ使うけど。
まあ、裏でなんやかんや血生臭いことをやっていた私に対して、藤丸達はサーヴァントを運用して見事に神祖ロムルスを撃破した。流石にそこには参戦した。ぶっちゃけ観ていただけだったが、その選択に間違いはなかった。
時代を狂わせるサーヴァントに聖杯を持たせる。アンナマリーは私のことを清貧と称した。欲があれば無限に使う
魔神柱フラウロス。レフを媒介に出現した、ソロモン王の使い魔である化け物。ロマニは否定したが、彼らが動き出す理由はいくらでも見当がつく。
魔術回路は死体からでも移植できる。ソロモン王がとち狂わなくとも、ソロモンN世が狂わない保障は無い。20世紀までに自動稼働してエネルギーが貯蓄した魔神柱を発掘して利用した。普通にあり得る範囲だ。アトラス院あたりがしでかしそうな
そしてレフが裏切れた理由も分かった。アンナマリーと同じだ。魔神柱に取り憑かれた人間が何らかの要素に引っ掛かると中から食い潰されて置換する。情報生命体としての羽化だ。最後に出来るのは人間の知識と振る舞いを引き継いだモンスター。私の信じていたレフはとうの昔に死んでいたのだ。
そう思うことにする。合掌。
そしてカルデア人員だが、ローマ勢が追加して随分と楽になった。皇帝特権をはじめとした事務能力、力仕事、単純な護衛、レイシフトの資源調達。エリザベートが拾った聖杯のかけらで創り出した微小特異点は調達先として利用しっぱなしだ。
途中で人狼をしばいて団子狩りしていた気もするけど。
お礼として現代技術での歌唱法を指導したけど、何故か泣かれてしまった。『このまま教わるとアタシのプライドが壊れる』だって。何でよ。上手くなるなら別にいいじゃない。叫ぶにしても叫び方があるのよ。
さて。
サーヴァントが増えたカルデアだが、その中でも特に有能な者がいる。現代の書類に慣れ、銃器や機械の整備が可能で、固有結界という敵を隔離するのにうってつけの宝具を持つ男。名を、エミヤ。
いやこいつ衛宮士郎でしょ。
アンナマリーの戯言を信じるならパンツ一丁でエルメロイ2世とロンドンを駆け巡ったという伝説の男。ニヒルを気取っているけど私には分かる。あれは、旅先で誰も素性を知らないから格好良い自分を偽造しているだけだ─!
あれ?なら多少の未来を(乱雑な走り書き)
問い詰めたら並行世界の衛宮士郎だと判明した。月の聖杯戦争やマナの消滅、財閥による管理などは私達の歴史に存在しない。未来を語るには誤差が大きすぎる。
とはいえ、コイツ自体には使える部分が多々ある。この世界の衛宮士郎の
とにかく詰め込む。筋トレと肉体強化と魔術の対処法を無理矢理でも詰め込む。冗談抜きで今回の強敵は藤丸の体力不足だった。私が強引に治療することで何とかなったが、マシュの目線が恐ろしかった。
別に寝取りはしないから。奪わないから。だから治療中に私の背後に回らないで。漏らすわよ。大の大人が恥じらいもなく漏らす姿を見せてあげるわよ。
段々マシュの執着心が強くなっている。藤丸がおねだりすればマシュは容易く身体を許すだろうと確信するほどに。ロマニに避妊薬を常飲させるように指示することを決める。ちょっと洒落にならなくなってきた。エミヤするのは困るのだ。
そして、私の肉体に関してだが。
まず、肉体が頑強になった。流れ矢が刺さっても弾かれるほどに皮膚が硬質化している。腕力に関しても屈強なローマ兵と大差ないほどだ。サーヴァントで語ればEクラス。人体の規格からすれば異常なほど強くなっている。
異常。そう、過剰なのだ。私が棄てた霊基を補填する中身として明らかに狂っている。アンナマリーは生態的に過剰な返却を行えない。下品になるが、普通の人が下痢をしないのと同じだ。返却にしては無駄な情報量が…情報が多い?
…なんか嫌な予感がしてきた。
一度アレの能力を振り返る。刺激の値に応じてエネルギーを得る。学習してどの生命体でも会話出来る。エネルギーは実体がなければ効率はともかく変換可能。私の霊基を手に入れているが、拷問を受けたとしても所詮は人間のサイズ。
夢の中でも異形にはなってなかったし…いや、まって。あのバカ、Aチームにあのハイレグ姿で会話してるの…?嘘でしょ…いや、いや、いや。
アイツ、服着る文化は知っているのよね…?
いやいやいやいや。
Aチームから変な目で見られたくないんだけど…!大丈夫!?信じてるからね!アンナマリー!頼むから恥を晒さないでよ!!