まあこの小説では色々ダメなところを見せたので父呼びだと思ってください。
ちょっと人類の欲深さを甘く見ていたと、ヨーチューバーを見ながら藤丸はため息をついた。
『いぇーい!カルデアスぎゃるぎゃるチャンネルにようこそぉー!今日もあーし達の亡国と化した国(笑)に関してガンガン勉強していくよー!』
カルデアスにより侵食されたテクスチャは世界を大きく変貌させた。カルデアス人類の侵略によりテクスチャという概念が認知されたのだ。
『カルデアス人はみーんな白髪っしょ。なーして、髪染めは文字どーり色付けになるよ。光弾?あれは野球のへんかきゅーみたいな…あー、すご技?って感じ。詳しい理屈はあーしにはわかんね』
カルデアス世界であれば魔法を使える。
『うちの星は
法則に外れた現象も別世界ならば科学的に納得出来る。その上、カルデアス人類による特異点が一般人により攻略されたのも後押しとなった。世界中の特異点は痛ましい無差別殺人事件であると同時に、渇望していたファンタジーへの入り口そのものだった。
『テクスチャ?とかよくわからないけど、あーしらがあーしらでいるためにはカルデアス世界じょーほーみたいのが存在しなきゃいけないらしくて、その植物を繁殖させすぎた結果、世界がおかしくなったらしいんよ。んで、あーしらみたいな地球に生きられるヒト以外は纏まって…あんまり纏まってない気もすっけど…順化センソー始めたってわけ』
カルデアス世界は宇宙の存在しないファンタジーの世界だった。少なくとも一般人の─これからの歴史に学ぶ人類の認識ではそう決定した。世界の不思議はカルデアス世界が侵略した結果と断じられ、世界にひっそりと存在した神秘はカルデアス由来のものとして統合された。
『聖杯とかはマジでわからん。てか、なんで保護区域外で生きることを選んだ連中がカルデアスから湧き出た上でじょーぶつしたら食器になんの?しかもなんか不思議パワーはっせいすんし?どゆこと?この世界のテクスチャは魂を加工すんの??』
実際には逆が正しい。カルデアスは生き延びるために神秘として地球に同化した。メタクソとなった神秘に統治側は発狂している。乱高下する株価に日夜スレ立てが発生し、魔術による詐欺に気付いた住民による事件が後を絶たない。カルデアが獲得した聖杯はほぼ全てがインフラ周りに費やされていた。
『責任とかは…センソーに関しては感じるけど、特異点に関してはしらねって感じ。そっちも無国籍のヤクザが外国で犯罪して殺されても何とも感じないっしょ?慰謝料(物理)は笑えるけど』
国も、魔術協会も、聖堂教会も、全てが手一杯だった。時流に呑まれた彼らに一般人を制御出来るはずもなく、それはマリスが差配するカルデアス人類も同様だった。
『動画見たけどさ、政府が攻略してるのにも安全な特異点あるよねー。コミケとかコミケとかバニーガールとか。日本特異点下半身集まり過ぎー。でもあーしのリスナー監禁されたみたいだし…ああ、いや、まって』
動画には、金髪に染色したカルデアスギャルが最高で最悪のアイデアを思いついてしまっていた。
『国の適合者が入れば複数人入れんなら…
大聖杯戦争の幕開けだった。
カルデアス特異点の攻略は千差万別である。そして、正しく悪霊だった。取りこぼされたカルデアス人の末期の想いが特異点の核なのだ。幼い子供ならば抱擁ひとつで成仏し、創作欲(と承認欲)が強い人はコミケに集束する。行き来だけなら簡易なこともあり、千差万別の宝箱として世界中の人間が異界探しを始め出した。
当然ながら、才能のある側は自我を持って侵入者を餌にする。
『タッチー!』
『ぎゃーるさん!?』
国も死人が出る危険地帯だと周知しているが、聖杯()の詳細が広がるにつれて公的に立ち入り許可範囲及び聖杯の買取を公布した。手が回らなかったのだ。
藤丸が本部に篭りがちなのもサーヴァントの慰撫のためだ。国連として派遣するマスターとサーヴァントの相性チェックや不満点の洗い出しを繰り返している。最近の特異点はバーサーカーが大半となった。デイビットと藤丸くらいしかまともに制御できないからだ。
今見ているこの映像も、アンナマリーが採集した特異点の記録を報告書として提出する仕事である。オルガマリーから突然押しつけられた仕事だったが、隣家の幼馴染が登場したのを見て藤丸は閉口した。
「バーソロミューさんが気に入りそうな人ですね、先輩」
「ふぁっ」
そして居ないはずの真横にマシュが座っていた。
「びっくりした!さっきまで居なかったよね!?」
「先輩の幼馴染さんと移送ついでに少しお話しを。先輩はここ最近お忙しいようでしたので、全て私が対応しました。…白髪ではありませんでしたね」
「そりゃあ日本人だし」
雑談中でも作業は止まらない。藤丸は特異点突入後にオルガマリーがアンナマリーに指示して会得した『人質』のダイジェストをまとめはじめた。映像では、見知らぬカルデアス人と幼馴染が抱擁を交わしている。黒髭が歓喜したと、藤丸はテロップを差し込んだ。
『マジ無事でよかった。タッチーの恋相の結末聞かないまま音信不通で。家凸したらこの⭐︎始末だったし、動画編集まじきつだし!頑張って脱出しよーね』
『嬉しいですけど一緒の牢屋にいる時点で説得力が死んでますよ!?』
『まま、召喚された拙者がいる限り安全は保証するでござるよ』
『あなた誘拐犯の一味ですよねぇ!?』
特異点の主犯の目的は金銭欲だった。
『こぃいイつぅゔらをがぇじで欲じぃなら、聖杯ヲ100こ持ってコォい!!』
『神秘学赤点のあーしでもわかる。それ実現したらこの異界爆発四散するって』
『ダァまぁレェええ!!』
過去形である。藤丸の見立てではマフィアの組織が丸ごと空想樹に転じたと判断している。無法で無謀で無知な欲深さの集合体は(おそらくは無差別に)未成年を誘拐し、身代金に聖杯を要求していた。連絡手段も無いのにどうやって脅すつもりだったのかは全くわからない。
世界は『特異点の侵入方法』と『
『ほら、聖杯持ってきたわよ』
『ひ、ひぃいいい!!!?』
『ゲェーッ!◼︎◼︎◼︎氏!?』
主犯は非常に愚かで、強欲だった。世界の貴人・貴公子・令嬢を無闇に誘拐した上、ライブ映像として中継しているにも関わらず、聖杯(ダミー99個)をリアカーで持ち運んだオルガマリーに特異点の魔獣をけしかけたのだ。
ワイバーン。キメラ。ゴースト。
ゲイザーバイコーンスプリガンドラゴンスフィンクスデーモンヒュドラ。
ストレス発散にオルガマリーはその全てを蹂躙した。兎に角迅速に救助することを厳命されたからだ。しかし、その絶対的な暴力は人類には不可能なはずの所業であり、政治的に伏せられているべき内容だった。
『む、無双です!藤丸さんの家に来たあの女性が!?モン⚪︎ンを笑い話にするような無慈悲なムービー処理!拳1発でドラゴンの頭が!スフィンクスの胴体が!ぐろぐろぉ!?』
『うわ、どーりで大将軍ゲーティアが参戦しないわけだ。ヤバヤバのやばってやつ』
『知っているのですかぎゃーるさん!』
『知ってるというか都市伝説っつーか』
胡乱なぎゃーるの説明を纏めると、カルデアス人類の空想樹化は一種の戦闘形態らしい。自らの体内に収められた
『な、なるほど。つまり、空想樹はカルデアス人が体内にある野菜神の肉体をビック・モンキーとして暴走した形態で、ゲーティア将軍はそれを遥かに超越したスーパー野菜神を常時使用しているのですね』
『そーそー。なんでちんたらやってるのかって思ってだけど、近場…近並行世界?だけあって地球もアレをパーペキに…』
カルデアス人の言葉が詰まった。普段から口が止まることを知らない彼女の珍しい姿に、幼馴染はカルデアス側の機密を口走ったのかとオロオロし始める。彼女の中身を見抜けたのは、興味を持って外側から観察していた藤丸達だけだった。
「よくわからないけど物理的に壊せないアンナマリーの肉体を消耗品として扱える存在が地球にいるなら、カルデアスと地球の力関係は超人同士の空気読み次第じゃない?と思った顔だね」
「女心を読むのは私だけにしてください」
「はい」
流れ作業で黒幕(とノリで召喚されたとおもわしき黒髭)を粉砕したオルガマリーは、国連組織の身分証を提示して拉致被害者の檻を毟り取った。年若い少年達の性癖がへし折れる光景を飛ばしつつ、藤丸はカルデアス人と幼馴染が細々と会話する内容を集めていった。カルデアス人類側からの意見は何でも欲しいとシオンが主張したからだ。
『…タッチーの相手何の仕事しているん?』
『国連の特殊部隊のカウンセラーを…あのびじんでそうめいなおんなのひとをおやにしょうかいしていました』
『あっ(察し)』
「彼女はあれではないですね」
あれの詳細を藤丸は聞かなかった。藤丸の知らないところで度々現れるらしい謎のサーヴァントを、マシュは異様なほど警戒していた。所長の匂いがするとはなんなのだろうか。それなら所長も処される対象ではないのか。
『なあに◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎…ああ、藤丸の地元の人ね。勘違いしているようだけど、私は(そう遠くない内に)既婚者(になる予定)だから。彼とは何もないわよ』
『そ、そうですか…よか』
『婚約者は私の従姉妹よ。招待状に入れておくわね』
『(白目)』
『タッチィー!!』
泡を吹いて気絶した幼馴染を藤丸は見なかったことにした。マシュが呟いた一言も聞き流した。割と嫉妬深いマシュがオルガマリーにしでかした事件を藤丸は忘れることが出来ない。惚れたからには頭を上げるな。父からの教えは絶対だと確信した。
「そういえば、何か用事でもあったの?」
「あ、そうでした!先程トマリンさんからクラシックコンサートのチケットを貰いまして、是非とも先輩にも『マシュー、事務作業片付いたかしらー?』─…」
緊急通信で回線を繋いだオルガマリーの声に、マシュの瞳が暗くなった。
「どうも」
『あら、藤丸も居たのね。ちょうどよかったわ。新たな…ひゅぇ』
「 」
『おかしいわねマシュが呼吸しただけなのに身体の震えが止まらないわ。でも手は緩めないわよ。貴方達と私の人生設計に多大な影響を及ぼす仕事だから!…真面目にそろそろ後継者を拵えないと拙いのよ…!!』
「実現出来ます?」
『私に…権限は…無くなったのよ…』
オルガマリーは咳き込んだ後、真剣な表情を作った。
『イギリスの裏側で発生した特異点で─
「…!」
『規模は今までの特異点とは比べ物にならない。カルデアス人すら侵入不可の大規模特異点。トリスメギストスは、マリスに関係する特異点だと計算しているわ』
聖杯とロマニを酷使して復元中のシバは未だに目処が立たない。マリスが語った内容が真実かどうかさえカルデアは判別できていない。示す先の存在しない航海での冒険だが、オルガマリーに藤丸達を誘わない理由は存在しない。
オルガマリーは
『あと、私の部屋にあった燭台。今日郵送されるカルデアの資材置き場に捨てられていたら回収しておいて。アレ私が持ち込んだものだから。魔術的な価値は無いから処分されかねないのよね』
「あの火事の元にしかならないブツ、所長の私物だったんだ」
「オルガマリーさん」
『えっと、なぁに?』
「それはマリスビリーの痕跡があるため、壊すことに決定しました」
『アレが!?何故!?』
オルガマリーは絶叫した。
えらいひと「キミの名前伏せてないから再編集ね」
藤丸「別に良くないですか?」
えらいひと「(オルガマリーを御せないから)だめ」