あの服をオレンジ色にしたのがこの小説でのマリスになります。
そしてだいたいあの精神で固定されたのがこの小説のオルガマリーです。
「「ぐあああ!?」」
マシュの
大都市に必ずあるモルガン謹製の結界をサーヴァントを用いてすり抜けながら虱潰しに聖杯の反応を調査する。手がかりがないために乱雑に行った調査は10を超えた頃には警戒されるようになり、遂には先代の妖精騎士『達』が藤丸達を奇襲するまで拡大した。
力比べを理想とする妖精がそこまでするのは珍しい。
当然、カルデアの協力者として収まったバーヴァンシーも加勢する必要がある。彼女の本領はケルヌンノスありきの力だが、藤丸が呼び出すサーヴァント程度には自信がある。だが、戦闘役の妖精騎士と向き合うには3枚は格が落ちる。
バーヴァンシーは死を覚悟しながら藤丸の指揮に従い、そしてほぼ無傷で妖精騎士を撃破した。4対3の数的有利だけで、10ターン程度の短時間で、至極順当にカルデアは勝利を得た。
勝ってしまった。
「…まじかよ…」
想定外の結果にバーヴァンシーは流れ出る汗を拭った。
元人類最後のマスターに降る結論は間違っていなかった。しかし、彼らの旅路に
ガバガバのガバを極めた妖精國でも備わっている国是の否定だ。
妖精國の成り立ちは巫女と妖精が心身合わさって産まれた奇跡。それを残すことが、全ての妖精に刻まれた不動の目的意識。よく分からないナニカに召喚された外様のモルガンが王になったのも、技術力を求められた結果に過ぎない。
『ぬんがラスボス滑りするンノス?』
ケルヌンノスの念話にバーヴァンシーは少し躊躇ってから否定した。背景も何もなく察せられない悪役滑りはあからさまな作為が見えてしまう。というか、それをしたらバーヴァンシー自身がヒロイン役として惨たらしく死ぬではないか。
『選定』をバーヴァンシーは諦めるつもりはない。
『ヌンの依代役として枠を空けるンノス』
それあの巫女の意思に乗っ取られるフラグじゃないかよ、クソが!
「バーヴァンシー、何故いきなりぬいぐるみを蹴飛ばしたの…?」
「生意気な目線してたからな。折檻だよ折檻」
「…。…目?」
あるだろう分かりにくいけど。
「私のことはいいだろ。それよりも、特異点解消の…聖杯?の手がかりは見つかったのかよ。膨大な魔力とか言われたから
『ははは。聖杯の反応は全妖精にあるみたいでね。空気のように妖精に吸収…いや、集約というべき形で妖精の力となっている。会社の株みたいにね。だから
バーヴァンシーは半目になった。とぼけた顔をする
修羅の国として先祖の遺志に縛られているのが、今の妖精なのだから。
「大丈夫かこのモヤシ男。
『4徹してるからちょっと地が出てるねー。─しゃあっ、ダヴィンチ芸術突きっ!』
『がぺ』
『コレであと10分後には蘇る…話を戻すけど、聖杯の心当たりは本当にないのかい?このままだと刑期が迫った元所長が特異点を物理的に更地にする作業をやりかねないんだけど』
ダヴィンチの脅しを含ませた言葉に、バーヴァンシーは首を振った。特異点の核になる聖杯は知らない。特異点の解決方法に覚えがあるだけだ。
「ない。正確には、テメェらが次に狙う女しか予測できねー」
『Aチームが応戦している妖精騎士、ウッドワスとメリュジーヌを育て上げた先代妖精か』
バーヴァンシーは頷いた。
「そ。妖精に聖杯の力がある…つまり影響下にあるなら、
人間と妖精の混血児を創り出した手法をケルヌンノスは語らない。つまりは不名誉な行為で今の妖精は誕生した。聖杯で死んだ巫女を解体したのか、あるいは巫女が妖精に寄生したのか。
どちらにせよ、巫女の肉体こそが聖杯なのだろう。
「だが、『次』は知らねぇ。その鍵を持ってるのは、当時に巫女の直属の部下をしていた妖精。…何千年も妖精を改造してきた、オーロラ婆だけだ」
次が誰になるかは、バーヴァンシーも知らない。
バックストーリーはある。悲しい
想定外だったのは、カルデアが余りにも強かったことだけ。
『致命傷レベルの想定外ンノス』
だろうな。
ラスボスは倒された。ただ強いという化け物として、奈落の虫は死に絶える寸前だ。凡百の特異点として聖杯を回収されたら、目的は達成しない。
諸々を考えつつ、バーヴァンシーは玉虫色の態度を貫くことに決めた。キャラクターとしては『妖精にも人類にも与せない優柔不断な巫女』だ。実際、
神、妖精、人類にふらつくどちら足らずの半端者。結構なキャラ立ちはしているのではないだろうか。
『なら、Aチームと合流しよう。あちらに連絡をするから数分間まってくれたまえ』
ダヴィンチの通信が切れたのを確認してから、バーヴァンシーはケルヌンノス人形を拾った。ばさばさと近場の岩に叩きつけて埃を落としつつ、気が回らなかったある事実を口にした。
思い出したとも言う。
「…真相を聞ければ良いけどな」
「なんで?」
「メリュジーヌ…と、バーゲストか。アイツらが妖精騎士に就任した頃に、あの婆さん、一気に呆けやがった」
バーヴァンシーが知る限り、ウッドワスが無断で長期休暇を取ったメリュジーヌに小言を言わなかったのはアレが初めてだった。1ヶ月後に出勤したメリュジーヌは恐ろしくしおしおになっていた。連れてきたオーロラを見た自分を含めた全騎士も顔を歪めていただろう。
「何言ってもあらあらうふふ。メリュジーヌが懇願しなきゃあ一日中座りっぱなしさ。Aチームがメリュジーヌを捕まえたならどうにでもなるが」
「何の成果も得られない可能性が高いと」
「そう」
そしてラスボスに誰が選ばれるかも分からないということでもある。ただ、ラスボスの選定はあの婆さんの匙加減だが、あのドラゴンモドキへの寵愛っぷりを見るにラスボス役はメリュジーヌになるだろう。
…出来んのか?
………いや、本当に実現可能なのか???
『可能不可能ではないンノス。
ブラックだな。
『それが妖精の義務だ』
気持ち悪りぃなあと思いながら、バーヴァンシーは妖精の血に従う。成否に関わらず、あと少しで妖精國は終わる。母モルガンが求めた美しい国のまま滅びる。
『藤丸君、マシュ!2人とも急いでAチームまで合流するんだ!!』
「ダヴィンチ?」
憐れで孤独な狂人が創り出した特異点。
何もない女が欲した願望は、
『Aチームがクラス
彼らが心底から痛ましい表情を成し遂げたのを見て。
よくやったと、バーヴァンシーは内心で笑った。