つまりは独自設定です。
万一…おそらくはそれ以上の確率で発生するだろう僕の死を予期して調査状況を記録する。
アンナマリー…自称、元『人類悪』。『浪費』の名を冠する
かの救世主が贖った人類の七罪ではない。単なる欲望や悪意といった個人的で一過性のモノとは別の、人間が人間であるが故に犯さざるをえない悪癖。人を人たらしめる性質そのものが抱える普遍かつ根源的な罪業。
不可視の事象を無限に加算し、許容値を超えれば『回収』する寄生生命体の討伐は物理では殺せない。倒すためには
いや、だからこそオルガマリーは所長として抜擢されていたのか。世界を救う組織の頂点に相応しいのは、世界を救った人間なのだから。
「だからといってあんなトンチキにトップを任せるの?カルデアの人事は狂っているのかしら」
あれは彼女ではないぞ、アナスタシア。オルガマリー所長はもっと保守的な
「なら、私に関しても語るべきじゃない?」
…確かに、その通りだ。
彼女はサーヴァント『アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ』。僕達の世界とも、カルデアス世界とも異なる『異聞帯:ヤガ』のサーヴァントだ。
人類史の過程で切り捨てられ、並行世界としてさえ分枝を許されず足切りされた『有り得ざる歴史の断片』。アンナマリーは
「デイビットの案だっけ?世界を快活CLUBにするのは恥とのことだって神様が言ってたわね」
多分
兎に角、カルデアスが滅亡の危機に瀕したことで、別世界と接続が可能となってしまったことは事実だ。カルデアスが
「どちらにしても、私達ヤガにとっては貴方達は救世主よ」
それは僕達にも言えることだ。カルデアス人類が全滅した場合の差し替え先の人類。種族も寿命もカルデアスとして書き換わる形となるが、
レプテリアン。いわゆる陰謀論の類い。他人を信じられない弱い人間が縋り付く悪魔の証明。事実上
「爬虫類人にしてはケモケモしているわね」
今のところ異聞帯は『ヤガ』と『ラグナロク』だからな。オフェリアの交渉が上手くいけば氷河となったヤガにも太陽が訪れる。異世界の貿易で最大の取引…オフェリアは稀代の大商人として歴史に残るな。
「太陽が必須な
正直、僕らもこんなに上手くいくと思ってなかったんだよ。
滅ぶ世界だぞ?世界が切り捨てる一歩前の世界だ。普通、ヤガ並みに『終わっている』世界でノアの方舟もどきを再現するのを予想するじゃないか。何で世界を滅ぼす存在が割りかし話が通じるんだよ。
「わかるわ。こうやってロシアに違法移民してるけど逮捕してこないし。納税の意思はあるんだけど…何でかしら。軍隊の派遣もないようだし…」
確かに、カルデアス人類も明らかにおかしい。副作用も検討せずにアンナマリーの肉体を移植し始めたことといい、理性的な…というより、本能的な活動が抑制されているように思える。
「元々は異聞帯の私達をサーヴァントにするつもりはなかったのよね」
そりゃあな。僕達にも恥はある。シミュレーションした人類とはいっても、複製元は僕達の人類だ。普通に肉体が有れば交渉くらいは出来ると思っていたのさ。
本格的に始まる前の業務連絡だ。幸運にも損壊が低かった僕の肉体を参考にホムンクルス─まあ脳は無いんだが─を拵えて、お土産を依頼されながら緩い流れで外に出たよ。僕だって当時の流行曲を物色しようと考えてたさ。
「苦い顔ね。どうなったの?」
「…はあ?」
意味わからないだろ。僕達も唖然としたさ。
無論、僕はズタズタになった。銃弾の雨霰を防ぐほど人を外れてはいない。記念すべき遠隔ホムンクルス1号はこうして無駄に処理された。後ほど創り出した第2号もペペロンチーノでなければ同じ道を辿っていただろう。
兎に角、僕達の価値観でヒトを描けばカルデアス人類には化け物として認識される。ベリルが自称悪魔として裏社会に侵入することでようやくその事実を把握した。僕らに頭脳面で優れた人材が居ないことがここまで影響するとはね。所長達が羨ましいよ。
「ああ、だから私にホムンクルスの造形を担当させたのね。
見た目的には全く違いが見られないのが困るところさ。
とにかく、これから漸く僕達のカルデアス調査が始まる。僕とベリルは現地調査。オフェリアとキリシュタリアはラグナロクでの交渉。芥とペペロンチーノは異聞帯が追加された場合の予備人員、デイビットはアンナマリーによる魂の改竄と収集した『資料』の精査。
カルデアも順調に第3特異点を攻略している。此方も負けてはいられないな。
「中々楽しそうね。生命が懸かってるのに」
まあな。正直、敗退した僕が世界を救う一員に参加出来ると思ってなかった。あの爆破で死んでお終い。所長が順当に解決して大団円。それで終わりと思っていたところにこの難題だ。
男なら、世界を救えると証明したくなるじゃないか。
「馬鹿ね、カドック。女もヒーローになりたいに決まってるわ」
100年後に人類が死滅すると計算することは、変数Xにありえない数値を設定することに等しい。
何せ、異聞帯すら近代での滅びを計測できないのだから。