これはとある日の夕刻…
『まさかオールマイトに子供がいたとはねぇ!OFAを自分の子供に与えたかっ!』
闇の奥から、“顔”を持たない男が現れる。皮膚は溶けたように歪み、仮面を剥ぎ取られた後の肉人形のように、のっぺりとした虚無が広がっている。黒のスーツに身を包み、声が響いた瞬間、恐怖が完成するように…
優しく、穏やかで、まるで慈父のような声色。しかしその裏に潜むのは、人の尊厳を弄ぶ絶対的支配者の冷酷な意思。顔がないからこそ、感情は読み取れないが、だが分かってしまうのだ――この男は、人を“人”として見ていない…と
まさに…この世の“悪意そのもの”を表したかのように
相対しているのは…平和の象徴に育てられる"次世代の象徴たり得る者"
背は高く、無駄のない体躯。細身でありながら、その立ち姿には揺るぎない自信と余裕が漲っている。特徴的なのは、雪のように白い白髪…そして何よりその全身から迸る蒼い"稲妻"…蒼白い電光が皮膚の上を這い、肩から腕へ、背骨をなぞり、脚先まで一気に駆け抜ける。空気が裂け、微細な火花が弾けるたび、周囲の音は一拍遅れて置き去りにされた。まるで世界の処理速度だけが、彼の存在を基準に書き換えられたかのようだった。
「何言ってんのか分かんないけど…やる気なら…"殺る"ぜ?」
「ふふふ…見せておくれオールマイトの遺伝子を!」
言い終わる直前に蒼白い稲妻が、空気を切り裂く。
次の瞬間、距離という概念が消えキルアの姿は“消失”したかのように掻き消える。そして地面に残されたのは踏み砕かれたアスファルトと、遅れて響く衝撃音だけが響き渡った
「ーー速いね」
オール・フォー・ワンが、感嘆とも取れる声を漏らす。
だが、その言葉が終わるより早く、既にキルアは背後にいた。
神速《カンムル》。
思考よりも先に体が動く領域。
電気信号を限界まで強化した神経伝達が、筋肉を“意志を待たずに”駆動させる。
拳が振り抜かれる。
蒼い雷光を纏った一撃が、オール・フォー・ワンの背を貫く――はずだった。
「……惜しい」
瞬間、空間が歪む。
拳は確かに“当たった”。
だが手応えがない
次の刹那、キルアの体は横殴りの衝撃を受け、数十メートル先まで吹き飛ばされた。
ビルの外壁に叩きつけられ、コンクリートが砕け散る。
「がはっ……!」
着地と同時に地面を蹴り、衝撃を殺す。
内臓が軋むが、致命傷ではない。
(…何を受けた)
オール・フォー・ワンは、その場から一歩も動いていなかった。
いや、正確には――
動いた“痕跡”が存在しない。
「速度、反射神経、攻撃力……どれも一級品だね。特に速度に関してはオールマイトを彷彿とさせる…
なるほど、ワン・フォー・オールに選ばれるだけはある」
「オレに・・・何した?」
キルアは、笑みをやめて全身から殺気を噴き出す
それをみたオールフォーワンは
「…君…本当にオールマイトの実子かい?」
次の瞬間、雷光が爆ぜる。
視界が白に染まるほどの閃光。
電気を地面に流し、感電領域を形成する。
「っ……!」
オール・フォー・ワンの足元が爆ぜ、動きが一瞬止まる。
その隙を、キルアは逃さない。
一気に距離を詰め、爪を突き立てる。まさしく殺しの技術そのもの。キルア本人も殺ったと自認する
だが――
「甘い」
腕が掴まれた。次の瞬間、キルアの体は地面に叩きつけられる。
衝撃で視界が揺らぐ。
(……クソ、油断したかっ!)
しかし今回は念の能力の一つである流を使い背中にオーラを集中させダメージを激減させる。…そして再び距離を取る
互いに、大きなダメージはない。
だが、決定打が欠けている。
風が吹き抜け、沈黙の空間が訪れる
「君は……危険だ」
オール・フォー・ワンの声色が、わずかに変わる。
「このまま成長すれば、私にとって“害”になる」
黒い気配が、周囲に広がる。
「だから――ここで終わらせるとしよう」
同時に、キルアも理解する。
(……こいつ、殺る気か!)
神速の電圧が、一段階引き上げられる。
神経が焼き切れそうなほどの負荷。
「言われなくても……!」
両者が、同時に踏み込んだ――
その瞬間。
「――そこまでだ!!」
空が割れ轟音と共に、黄金の影が地上に降り立つ。
「親父ぃ!」
「大丈夫か!怪我はないか!」
「……オールマイト」
オール・フォー・ワンが、低く呟く。
平和の象徴。
圧倒的な存在感が、場の空気を一変させる。オールマイトがオールフォーワンを睨み据える。
だが、オール・フォー・ワンは肩を竦めるような仕草をした。
「今日は“観察”が目的だ。君と闘るつもりはないよ?それに
……収穫は、十分すぎるほどあった」
黒い霧が、彼の足元から立ち上る。
「また会おう、次世代の象徴」
視線が、キルアに向けられる。
「次は……万全の準備をして」
次の瞬間、姿は完全に消失した。
――静寂。
キルアは、深く息を吐いた。
「……チッ」
「無事か、キルア!」
オールマイトが、穏やかに声をかける。
「うん…あの程度へでもないね。…それよりアイツは…やけに親父を敵視してたな」
「…それについては家についてから話そうか…ここじゃあ人目が多すぎる」
親父はそれ以上は語らずその場を後にするのだった。
――――――――――――――――――――
その日の夜…アルカが寝静まったのを確認した後
家の灯りは落ち着いた橙色に揺れ、外の世界とは切り離されたような静けさが漂っていた。
キルアはソファに腰掛け、カップの中の湯気を眺めている。
向かいに座るオールマイトは、珍しく変身を解いたまま、静かに息を整えていた。
「……今日あったあの男のことを話そう。…初めに言っておくんだがこれは機密事項…絶対に他人に話してはならない。…必ずだ…いいかい?」
その声は低く、重い。
俺はことの大きさを理解し慎重に頷く
「おーけーだ。オール・フォー・ワン。
そして、ワン・フォー・オール……。
これは、私が君に隠してきた“世界の裏側”の話だ」
まるで昔話の語り部のように、オールマイトは言葉を選びながら語り始める。
――――――――――――――――――
個性がこの世に現れた黎明期。
人々は力の使い方も、意味も分からぬまま混乱し、社会は秩序を失っていた。
その混沌の中で、一人の男が現れた。
オール・フォー・ワン。
「彼の個性は、他者の“個性”を奪い、蓄え、与えること」
助けを求める者に力を授け、代わりに忠誠を奪う。
生きる術を失った者に希望を与え、同時に“支配”する。
「当時の人々にとって、彼は“救世主”にも見えた。
だが本質は違う。彼は人を救ってなどいなかった」
オールマイトは拳を握る。
「彼は、人の人生を“所有”していた。
力も、意思も、未来さえもな」
だが――
その男には、たった一人の弟がいた。
「弟は、病弱で、力もなく……
だが、誰よりも人を思いやる心を持っていた」
兄は弟を見下し、支配しようとした。
そして“役に立たない力”を与える。
――個性を他人に譲渡できる能力。
「だが兄は知らなかった。
弟のその個性が、もう一つの力と融合していたことを」
オール・フォー・ワンが弟に無理やり与えた
“力を蓄積する個性”。
その二つが一つになり、生まれたのが――
ワン・フォー・オール。
「弟は悟った。
この力は、自分一人のものではない。
“次へ繋ぐための力”なのだと」
弟は兄に抗い、力と意志を次代へ託した。
それが、すべての始まりだった。
「ワン・フォー・オールは、戦いの中で引き継がれてきた。
名もなき継承者たちが、命と引き換えに力を磨き、繋いできた」
強さだけではない。
正義への意志、恐怖、覚悟、怒り、希望――
すべてが“力”として蓄えられていった。
「そして私は、その八代目の継承者だ」
キルアは、黙って聞いている。
蒼い瞳は、一度も逸れない。
「オール・フォー・ワンは、今も生きている。一度は私自身がけりをつけた筈だった。…しかしあの男はどこかで生きていた。そして再び…
ワン・フォー・オールを根絶やしにするために、長い年月をかけて暗躍してきた」
今日の戦いを思い出すように、オールマイトは目を伏せる。
「彼は君を見て、確信しただろう。
君が、この力を“完成”させ得る存在だと」
静かな間。
キルアが、低く呟く
「…いやでも俺ワンフォーオールなんて貰ってねぇけど?」
キルアが目をぱちぱちさせながらまるで「何言ってんの?」とでも言いたげな顔をしながらオールマイトを見やる
それに対しオールマイトも不思議そうな顔をして
「そうそれ!それなんだよ…なぜか奴は私がキルアにOFAを譲渡したと考えている!」
「マジで迷惑な話だぜ」
「…本当にすまない」
「いや!いやいや!冗談な冗談!」
何もそこまでガチ凹みすることねぇじゃんかよ…
「んで…俺に託すの…それ」
「…そのことなんだが…正直迷っているんだ…最近ヒーロー活動をしている最中にとある少年を見つけてね…無個性なのに巨大なヴィランに立ち向かう勇気を待っていたんだ。力があるから助けるのではなく、
助けたいと思ったから命を懸ける
──ヒーローにとって1番大切なその精神を」
「ふ〜ん…ならそいつにすれば良いじゃん。何で迷ってんの?」
「何でって…そりゃあ一つは自分の子が狙われてるかも知れないならその子に強くなって抗って欲しいからさ。その少年同様キルアも無個性だからより強くなれるかも知れない。…なにより無個性の状態で互いを比べた時に君と彼とではそもそもの土台が違いすぎる。キルアならすでに私が高校生の時よりも仕上がってるから使いこなすことができるかも知れないが彼はまだ…ね。」
「あぁ!もう!うじうじしてんなら俺が決めてやるよ!」
「へ?」
「俺は個性なんていらねぇ!今のままでも充分つえぇからな!…それに個性なんてなくてもあのバケモンとやり合えたろ?…普段から一緒にいる親父からみて俺は個性を与えられなきゃいけないほど弱いか?」
「…ふふ…そうだな…君は強い…ありがとうキルア」
「あ、ちょっ」
いきなり抱きついてくんなよな。マッスルフォームじゃないにしろ俺よりデケェんだから。
…ま、よく分かったよ。どれだけ俺たちのこと大切に思ってくれてるのか…
もっと修行やらなぁとな…一から鍛え直すか…せめてアイツからアルカと親父を護れるくらいには…な
――――――――――――――――――――
数ヶ月後。
オールマイトは、一通の書類を机に置いた。
「キルア。君に、雄英高校から推薦入学の話が来ている」
「……へぇ」
キルアは興味なさげに言いながら、
「そういや…焦凍も行くって言ってたな」
書類を手に取る。
ヒーロー科・推薦入学証明書
理由は明白だった。
・非公式ながらヴィラン制圧の実績
・異常な身体能力
・戦闘判断能力
・そして――オールマイトの"息子"…それらを加味した結果、ヒーロー科を大々的に推している名門の雄英がキルアのことを見逃すはずがなかった。
「ま、別にどこでもいいけどね。焦凍もいるならそっちの方がいっか」
「あ、ちなみに私の個性を受け継いだ子も雄英志望だからいずれ会えるかもね?」
「あぁーそういや弟子にしたんだっけ?強いの?」
「既にトッププロと遜色のない君と比べたら全高校生が可哀想だ。…でも伸び代はあるよ」
「…へぇ〜…No. 1のお墨付きってわけか…」
「それは君もだろ?」
ま、良いや!まだ会う予定もないんだし!それよか修行修行!最近は焦凍とも家の訓練場で試合形式でやったりするんだけどアイツ俺の父親がオールマイトって知って死ぬほど驚いてたな。
あ、ちなみに対戦成績は俺の全戦全勝ね!勿論!
アイツ世間一般では強個性って言われてるらしいけど本人は"母親"のこともあって片方は使いたくないんだと…ま、対人戦以外の時は使ってるけどな。あのクソ親父に目にものを見せてやりたいんだと。
とりあえず先まだまだは長いな…
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そして、春。
雄英高校・入学式当日。
門の前に立つキルアと焦凍は、
周囲の視線を一身に集めていた
「緊張してる?」
「…なんでだ?」
ーーキルア・ゾルディック改め八木キルアーー
次世代の物語は――
ここから、本格的に動き出す。
ヒロインいりますか?