シャーリーは窓から出て行ったミシェルを見送った後、振り返りそこにいる人々を見据えた。
「ここはとても危険です。だから、これから食堂車方面に逃げようと思います。
……あの、敬語、苦手なのでとってもいいですか?」
シャーリーは途中まで真顔でしゃべっていたのだが、途中、苦笑いでベリアル妻子を見つめる。
「え?……ああ、私には敬語じゃなくても良いですよ。」
「ああ、本当?良かったぁ…敬語、苦手なんだよねーしろって言われたらやるんだけど、言われてないのに敬語にするのはちょっと、って感じなんだよね。だから、敬語、やめるね?」
ナタリーは少し、不安になる。この女性に任せて良いのかと。
「…ベリアルさん、疑ってるでしょ。これでも家の武術の免許皆伝ってやつだよ?」
「そうなんですか…。」
「あ、ニースさん!ちょっと、扉から離れてもらえるかな?」
シャーリーが笑顔でそう言うと、ニースは言われた通りに扉から離れる。
ニースが扉から離れると同時にドアが開いた。そこには銃声を聞いてやって来た黒服が居た。
「遅かったね。待ってたんだよー?みんな、私がこんなんだから不安がっちゃってさ。
不安になるんなら、安心させなきゃいけないでしょ?
一番手っ取り早い安心のさせ方って言ったら、私の実力を知ってもらうしかないでしょ。」
シャーリーはそう言うと、黒服の前に現れた。…窓の前から、一秒もかからずに。
「なっ…!」
「驚いた?でもね、もう、驚くことなんてできなくなるよ?
……なんて言ったって、君たちはここで倒れるだけなんだからっ!」
シャーリーは言うが早いが、その場でジャンプして相手の頭を蹴りつけた。
「んー、これじゃあ、足りないかな。」
横に微小だが飛ばされた黒服は立ち上がると同時に、シャーリーに踵落としをされ、そのまま気絶した。
「わぉ!踵落としって出来るものだねー。初めて出来たよ!みんな背大っきいんだもん。
スカッとするねー。ミシェルがよくやるのもわかるってものだよ。」
シャーリーはキャッキャとはしゃぐ子供のように、目を輝かせながら言った。
少しばかり黒服から目を離してしまっていたせいか、入口近くにいるもう一人の男に銃を向けられる。
「あれ、ちょっとちょっと!こっち素手なんだからそっちも素手になってくれてもいいじゃない!危ないって。」
シャーリーはそんなことを言いながらも冷静だ。
ニースたちは驚きで開いた口をそのままにし、シャーリーを呆然と見ている。
シャーリーは身につけているポーチを乱暴に開けその中から銃を取り出す。
「まぁ、そっちが使うんならこっちも使わせてもらうよ?」
「ふんっ…貴様のはたかがハンドガンじゃねぇか。連射力も機能性も俺のには劣るな。」
それも当たり前だ。向こうはマシンガン。ハンドガンで連射力が勝利できるほうがおかしいというものだ。
「でもでも、素早さはどうかな?勝負っていうのは武器の性能だけで決まるわけじゃないよ?」
「確かに貴様は速い。だが、こっちには援軍ってものがあるんだよ!」
黒服は窓を凝視しながら叫ぶ。だが、援軍は一人も来ない。と言っても、当たり前だが。
シャーリーとミシェルが分断したのはこのためだ。―他にも理由はあるが。
ミシェルが敵をみすみすこちらに向かわせるなど、する訳が無いだろう。
シャーリーはそんなことを思いながら、援軍が来ないことに不安がり、窓に近づいて行っている無防備な背中に銃弾を2、3発撃ちこんだ。
「ついでにこっちにも!」
シャーリーのかかと落としでバテてしまっている男の心臓部分に適確に銃弾を撃ち込み、シャーリーはニースたちの方に振り向いた。
いつもと変わらぬ、優しげな笑顔で。