感想や、今後の展開における要望を書いていただけると参考にする可能性があります。
ぜひよろしくお願いします。
以下は本作を読むにあたっての注意点です。
主な矛盾点
二次創作なのでやむなしですが、「俺ガイル」本編の話は中学2年生の時に起こった話とさせていただいています。生徒会の活動や生徒に与えられる裁量権など中学生では収まらない話になってしまいますが、創作なのでご容赦いただければと思います。
本作では「俺ガイル」の本編後、雪ノ下と恋愛関係になることはなく由比ヶ浜とも仲の良い、いわゆる友情エンドで中学3年をすごしたのち、高育に揃っての入学となります。
ですので、後々開示していきますが比企谷八幡をはじめとした奉仕部の3人のデータベースは独断と偏見で妥当かなと思ったものにしています。評価が高すぎだろ、などのご意見もあるかもしれませんが温かく見守っていただければ幸いです。
高校生活。
その字面だけ見て人は何を思い浮かべるだろうか。
あるものは華々しい青春を、あるものは中学校から変化する環境への戸惑いを感じるのかもしれない。
しかし俺はこうも考える。
別に高校生になったからって何かが変わるわけじゃない、と。確かに大きく変わるものはあるだろう。例えば義務教育であるかの有無、自らを取り巻く人間関係、人によっては下宿生活によって住む場所が変わるものもいるだろう。
もちろん生まれてこの方約15年千葉に生まれ千葉を愛するこの俺が千葉を去るなどありえない話ではあるが人によってはその限りではないだろう。俺は自身の故郷を愛しているが逆に苦々しい記憶を故郷に、あるいは家庭に覚え自立ができる年齢になったならすぐさまにでも飛び出してしまいたいものもいるだろう。だがしかし、それはあくまで個人の感情に委ねられるべきであり、変化を望まない、強く根付いた故郷への愛は認められて然るべきなのだ。
長々と語ったが結論を言おう。
高校に入ったら敷地外に出れないとか八幡聞いてない。
「往生際が悪いわね。いい加減諦めたら?比企谷君。」
「この高校に入学するのをか?」
「なんでそうなるし!ヒッキーマジであきらめ悪い!」
4月初頭。俺たちはこの新しい学び舎、高度育成高等学校の門戸を叩いた。
高度育成高等学校、通称高育。
東京の埋め立て地に建てられた日本政府直属の、『未来を支える人材を育成する』ことを目的にされた国立の名門校。その敷地は60万平米を超え、敷地内には1つの町と呼べるものが形成されているらしい。
なぜ俺がこんなエリートしか集まらなさそうな学校に入学することになったかは至極簡単。受かればラッキー程度で出願した推薦入試に合格したからである。筆記試験と面接試験、その2つの試験をもって合格とする。そこだけ抜き取ると普通の公立の高校とさほど変わらない。しかしこの高育には国立ならではの他では考えられない特徴があった。
学費完全無料。進学先、就職先への希望に100%答えるという現代日本では到底考えられない破格の特典、希望ヶ峰学園もびっくりである。人を見たらまず疑え、女性を見たら美人局と思え。を家訓とするところの比企谷家ではあるものの、さすがに国を疑うほど疑り深いわけではない。もちろん多々疑問に感じることはあるが、まだ理解できる範囲内。俺の問題というか、憂いは別のところであった。
「卒業まで外部との連絡は禁止、ねぇ。小町と3年間も会えないとか俺死んじゃうんだけど?」
「3年会えないだけで死ぬわけないでしょう。そもそもあなたの世話を小町さんに頼まれているのだけれど、私たち。」
「ばっかお前。俺の世話をできるのは小町だけだっつーの。そこらのやつに俺の世話ができるわけないだろ。」
「どや顔でいうことじゃないし!ヒッキーもゆきのんも、そろそろいこ?初日から遅刻とかダメじゃん?」
「由比ヶ浜さんの言うとおりね。ほら、あなたも行くわよ。」
「ああ、さらば俺の千葉。3年後、ビッグになって帰ってくるからな...。」
門を抜けしばらく歩くと校舎前に軽い人だかりができていた。大方クラス分けの看板だろう。その予想通り道行く人から口々にAクラス、Bクラスなどと聞こえてくる。
「俺は...Bクラスか。お前らは?」
「私はAクラスね。」
「あっ!あたしBクラスだ!ヒッキーと一緒!けどゆきのんとは別々かぁ...せっかく学科とかなくなったのに~。」
中学の頃、雪ノ下は国際教養科と呼ばれる帰国子女や一部の成績優秀者が入るクラスだったため俺や由比ヶ浜とはそもそもクラス分けの時点で一緒になる可能性がなかった。別にクラスが一緒だという程度で一喜一憂はしないが、由比ヶ浜にとっては違うだろう。
「ま、どうせ4クラスしかないんだ。卒業までには1回くらいクラスが被ることもあるんじゃねぇの?」
「そうね。由比ヶ浜さん、私が違うクラスだからと言って勉強を疎かにしないようにね。あと、その男を私の代わりに見張っていてちょうだい。」
「俺は執行猶予中かなんかか。見張られなくても何もしねぇよ。」
「信用ならないわね。それにさっきも言ったでしょう。小町さんに頼まれているのよ。」
「お前は俺の母ちゃんかよ…。」
「それじゃ、また放課後に。」
「またあとでね、ゆきのん!!」
俺と由比ヶ浜は雪ノ下と別れ、教室へと向かった。
教室につくと思っていたよりも時間はぎりぎりだったらしく俺たちが自分の指定された席を確認して鞄を置いたころには担任と思われる人物が教室に入ってきていた。
「は~い、みんな席についてね~!これから入学に関しての諸々の説明をするよ!」
ざわざわとしていた教室だったが先生の声でしっかりと自分の席へ戻っていく。
「まず、私の名前は星之宮知恵です!Bクラスの担任だね。普段は養護教諭として保健室にいるから授業としてみんなのことを受け持つことはないけど、相談とか質問とかは遠慮なく来てね!それと今から皆にはこの学校で使う学生証端末を配布します。これは3年間この学校で使うものだからなくさないように!一応破損や紛失をしても修理や取り替えることはできるけど、ちょっとだけど修理費もかかっちゃうし、ないと思うけど故意に壊すなんて絶対やめてね~~?」
教室で軽く笑いが起きる。どうやらこの担任は気さくな人物らしい。気さくといえば平塚先生もだいぶ親しみやすく生徒から人気な先生だったがまた違うベクトルで親しみやすい。何より暴力をしなさそう。ここ超大事。
学生証を配布し終えたことを確認すると星之宮先生はまた説明を続けた。
「初日だしまずは大事なことからどんどん説明していくね~。もしわからなかったり質問があったら後から個別に教えるからちょっと待ってね。…じゃあまず、この学校には3年間クラス替えがありません!卒業まで基本的にこのクラスで生活していくからみんな仲良くね!次に、寮について。学年ごとに寮が分かれてるから1年生は全員同じ寮だね。下層が男子、上層が女子になってるよ。設備に関しては部屋の中に説明と注意点の資料が置かれているはずなのでそれを見てね。寮のフロントに管理人が常駐してるから、最初は学生証を見せてカギを受け取ったら部屋に入れるようになるよ。それじゃ最後に…この学校で1番大事なシステム、Sシステムについて説明するね。」
ふわふわとした話し方をしている割に要点をしっかりと抑えた説明をしていく先生。やはり将来を確約されるエリートを育成する高校。教師もその能力は折り紙付き、ということだろう。
「さっきみんなに渡した学生証端末。起動したらこの端末にみんながそれぞれ持っているpp、プライベートポイントが表示されるの。4月はじめ、一年生のみんなにはそれぞれ10万ppを持った状態で端末を渡しているの、ppは1ポイント=1円の価値があって、敷地内であれば購入できないものはないよ。この高育に入学したみんなにはそれだけの価値がある、と判断された証拠でもあるね。生きていく最低限の設備は寮とかに配置されてるけど足りないものや娯楽なんかはこのppを各々使って生活していくって感じだね!他の人に譲渡する、なんてこともできるけどカツアゲだったりは当然問題行為だからしないように!閉鎖的な環境だからっていじめ問題や喧嘩は学校は見過ごさないし、発覚した場合は厳正な処罰が下されるから十分気を付けるようにね。」
話を聞きながらこの先の生活の流れを確認していく。一介の高校生に月10万円というのはいささか多すぎなような気もしたが、もらえるものはもらっておく主義だし何よりも多い分には文句もない。高校に上がったばかりの生徒がいきなり実質的な1人暮らしを強要されるのだ。金に限らず先立つものは多いほうがいい。
「それじゃ以上で説明は終わり!これから体育館で入学式が始まるから今の説明で質問があった人は入学式の後にお願いね。」
その後、特に中学から代わり映えのしない入学式を終えて、俺たちは再び教室へと戻ってきていた。
「今日は学校の説明と入学式だけだから、以上で解散とします!明日からまたよろしくね~!」
そういって先生は足早に教室を出ていく。やはり新学期早々だし、やるべき仕事が多いのだろう。国立の高校の教師でも世間とそう変わらないその社畜ぶりに嫌気がさしつつも、その背中にエールを送る。ファイティン!ちえちゃん!
俺が現代の社会構造に対して警鐘を鳴らしていると、いつの間にかクラスの視線は教壇に――――正確には教壇の前に立つ一人の生徒に向いていた。
「突然ごめんね!私は一之瀬帆波って言います。クラス替えもなくて3年間みんなと一緒みたいだし、早く仲良くなりたいなって思ってます!それで、もしよかったらなんだけどみんなで自己紹介をしないかな?」
「わっ!それちょー賛成!あたしも早く仲良くなりたいし!」
一之瀬の発言に乗っかる形の由比ヶ浜の賛成でクラスの大半は自己紹介する流れになった。残りの積極的では無い層も戸惑いこそすれ、断る理由もないといったところか。俺?もちろん戸惑ってる側だよ馬鹿野郎。
「じゃあ改めて、一之瀬帆波です。中学の頃は陸上部に入ってて、高校では今のところ入る予定はないけど、これから3年間でみんなと仲良くなれたらって思います。よろしくお願いします!」
ちらほらと拍手が起き、この場全体の空気も弛緩する。この学校は生徒の自主性という名の投げっぱなしジャーマンを決めているのでこういう音頭を取れる人間は貴重だろう。そんなことを考えながら、2年前の自分からはずいぶんと変わったものだと少しおかしく感じるが、そうこうしている間に俺の番まで回ってきたらしい。それじゃ由比ヶ浜あたりに見せてやるとしますかね、この2年で変わったこの俺のコミュニケーション能力ってやつを。
「比企谷八幡デス。えっと…あの…よろしくお願いします。」
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した。
いや、何も変わってねぇじゃねぇか。名前しか言えてないし。てか変わるってなんだよ。元来変化というのは成長していることと同義ではなく、別に変らない美徳も時にこの国では重要視される。つまり俺は日本の変わらない伝統文化、ジャパニーズスタイルであるところの自己紹介をしたのであって、そもそもこいつらが行っている趣味だなんだとペラペラしゃべるのはもともと行う気がない。なに?アメリカンスタイルなの?夜は毎晩ピザとコーラでパーティしちゃうのん?アメリカ人の自己紹介からの兄弟認定の速さは異常。ソースはない。ねぇのかよ。てかこの微妙な空気どうすんの?ほら、一之瀬さんも困っちゃってるよ?誰か一之瀬さんを助けてあげて!!いや、困らせたのも助けてほしいのも俺なのだが。
「あ、ありがとう!!こっちこそよろしくね!!じゃあ次は、、、」
そうやって自己紹介は続いていく。ようやくあと数人といったところでわれらがコミュニケーションモンスター、すなわち由比ヶ浜先生のご登場である。
「由比ヶ浜結衣です!趣味は~、料理、、特にお菓子作りです!これから3年間よろしくお願いします。」
由比ヶ浜の自己紹介に1部の男子がざわめく。趣味が料理、男子にとってこれほど心が弾む自己紹介もあるまい。だが俺は知っているのだ。中学2年の春。奉仕部に俺が入ってきて受けた最初の依頼からの2年間。雪ノ下に料理を師事していた由比ヶ浜の料理スキルは、ついぞ上がることはなかった。あの雪ノ下が努力で解決すると言った自分の発言を訂正しかけた瞬間をきっと俺はこれからも忘れることはないだろう。だがしかし、そんな雪ノ下の涙ぐましい努力のおかげで、隠し味を入れることはなくなったのだ。よかったねゆきのん。無茶だったかもしれない、無理だったかもしれない、でも無駄じゃなかった。
そんなこんなで自己紹介も終わり、これからどうするかを思案していると、隣席の人間から声を掛けられる。
「なぁ、比企谷。せっかく隣の席になったし、連絡先を交換しないか?これから必要になることもあるだろう。」
まずい、自己紹介で大敗を喫した俺にせっかく話しかけてくれた村人1号、もといクラスメイト1号なのに名前を全然思い出せない。向こうはちゃんと覚えてくれているのにこちらが覚えていないというのもなんだか申し訳ない。何とかばれないように、取り繕うしかないだろう。
「お、おお。わかった。えっと、、、悪い、友達いたことなくてな、連絡先の交換とかわかんねぇわ。頼んでいいか?」
「あ、あぁ。俺もあまり友達が多いほうじゃないし気にするな。しかし比企谷、この端末はまだ使って無いとはいえ大金が入っている以上人に渡すのは財布を明け渡しているようなものだ。早めに操作を覚えて自分で登録できるようにしておいたほうがいいと思う。」
至極全うかつとてもいい奴だった。名前憶えてないのが申し訳なさ過ぎて謝りたくなってくるレベル。たしかにこの端末は敷地内での決済手段を兼ねている以上、ある種の生命線といえるだろう。俺だったら勝手に操作して自分の端末に全部ppを移動させて大金持ち…なんてことになるところだ。もちろんそんなことをすれば大問題なのでやらないが。ほんとだよ?八幡嘘つかない。
そのまま隣人に操作を教えてもらいつつ初めての連絡先交換をすました。どうやらこのいいやつは神崎隆二というらしい。
「じゃあ比企谷、改めてこれからよろしく。また明日な。」
「おお、また。」
図らずも早速友人(候補)ができてしまった。これはおれのボッチ脱却も近いのではないか。新しい生活に俺も期待しているのかもしれない。そう思うと先ほどまではあんなに微妙な態度をとっていたものだが案外浮足立ってたりするのかもしれないな。もちろん、無意識ではあるけれど。そんなどうでもいいことを考えてたらクラスの女子とも連絡先を交換し終えたのであろう由比ヶ浜がこちらの席まで来ていた。
「ヒッキーお待たせー!ゆきのんと合流しよ?」
「おぉ、分かった。」
これが中学の頃なら一足先に教室を出て待っていたものだが、あいにくとそんな俺の生態はもう調教されきってしまった。・・・なんか表現がひどいな。俺は養われたいのであって、尻に敷かれたいわけではない。とりあえず今は雪ノ下と合流することにしようと鞄を持ち教室に出ると、すでに雪ノ下は教室の前まで来ていた。
「すまん、待ったか?」
「いえ、こちらのクラスが早く解散したから来ていただけだから気にしないで。それに、どのみち由比ヶ浜さんが教室から出るのに時間がかかるのはわかっていたことだもの。」
「ごめんねゆきのーん!あっ、そうだゆきのんも番号交換しよ?」
「ええ、そうね。これから先何かと使うでしょうし…それに、あなたもよ。」
「はいはい。」
そういって俺たちは邪魔にならないよう廊下の端でそれぞれの番号を交換する。
「昔は人に携帯を丸投げだったのにあなたも随分と良識のある人間になったわね。」
「なんで息はくように俺のダメなところが指摘されてるんですかねぇ、…さっきクラスのやつに言われてな、金もかかわる端末だからやすやすと人に渡すなってさ。俺もそう思う。」
「あら、あなたにも話せる人ができたのね。てっきり由比ヶ浜さんがクラスのみんなと連絡先を交換している間、端末をもって鼻息荒くその辺をうろうろしているかと思ったのに。」
「ばっかお前、俺にかかれば連絡先の交換くらい余裕だっつーの、あとそんな気持ち悪いことするかよ。そもそも俺は集団に入れてって言えない可愛いやつなんだよ。そんなことするくらいなら諦める。」
「それは可哀そうの間違いじゃないかしら。…まぁいいわ、とりあえず今日のうちにある程度生活に必要なものも買っておきたいし、ひとまず寮へ行きましょうか。」
「さんせーい!先生は必要なものはあるって言ってたけど、何あるかまではわかんないもんね!」
俺たちは寮につくと雪ノ下主導のもと、それぞれの部屋のカードキーを手に入れた。俺の部屋は308、少しエレベーターからは遠いがまぁさしたる問題はないだろう。
「じゃあまたあとで。」
「えぇ、部屋の中に何があるかをメモしたら玄関前まで来てちょうだい。男子と女子の部屋では置かれている初期設備が違う可能性もあるわ。」
「ヒッキーまたあとでね~」
エレベーターで上まで行く2人を見送ると俺は自分の部屋に向かい、カードキーで鍵を開けた。なるほど、さすが国がいきなり1人暮らしをしろと言ってくるだけのことはある。男女の寮が同じとはいえ、部屋のセキュリティはしっかりしている。そのまま雪ノ下の指示通りに用をすますと玄関まで向かった。しばらく待っていると、雪ノ下たちもおりてきた。女子は支度が長いというがいってもただの施設設備を確認するだけだ。特に問題もなかったのだろう。
「お待たせ、校内の地図を見たらコンビニが寮の近くにあるらしいわ。まずはそこに行きましょう?比企谷君、案内を。」
「いや、俺場所知らねぇんだけど…。」
「端末の中に地図が乗ってるよ?てかゆきのん、もう方向音痴あきらめたんだね…。」
「何を言ってるの由比ヶ浜さん、別に諦めてなんかいないわ。この男のほうが適任なのと、初日で忙しいから余計な体力を使いたくないだけよ。」
「わかったよ、えっと...」
そういって端末の地図を頼りに俺たちはコンビニの前へたどり着くと、1人の男子が入り口前でゴミ箱の片付けをしていた。ゴミの散らばり具合からしておそらく倒れたのだろう。今日は風も強くないのに災難なことだ。頑張ってくれよと心の中で思いつつコンビニに入ろうとすると、雪ノ下達に止められる。
「何をしているの、私たちも手伝うわよ。」
「そうだよヒッキー、かわいそうじゃん!」
「わかったよ。」
「あ、悪いな。邪魔だろ。別に1人でも片付けれるから気にしないでいいぞ。」
「いや、人が多いほうが早いだろ。しかし放っておいてもよかっただろうに、災難だな。」
「あー、あっちに監視カメラがついてたからな。後でなんか言われたら嫌だと思って。」
そう言ってその男子生徒が顔を向けたほうを見ると確かに監視カメラが2台ほど設置されていた。あまり気分のいいものではないが、ここがコンビニであることと敷地内のほとんどが年端もいかない学生である以上、カメラなどの防犯意識は多いに越したことはないだろう。それに、この生徒の言い分もわかる。カメラが誰かにチェックされてあとからゴミを拾わなかったから内申点を下げるなんてことになったらたまったものではないだろう。俺がうんうんと頷きながら納得していると、雪ノ下はいまいち納得していない顔で怪訝そうにカメラを見ていた。
「すまない、手伝ってくれて助かった。見た感じお前たちも1年生、だよな?」
「ええ、私はAクラスの雪ノ下雪乃。ゴミのことは気にしなくていいわ。どうせあなたが放置していても片付けていたもの。」
「私はBクラスの由比ヶ浜結衣だよ。こっちは」
「自己紹介くらい1人でできるっつーの。俺もBクラスの比企谷八幡だ。」
「あぁ。俺はDクラスの綾小路清隆だ。しかし比企谷、他クラスの女子まで連れて初日からコンビニとは、これがハーレムってやつか?」
物静かだからおとなしいやつだと勝手に判断していたが案外そうでもないらしい。綾小路と名乗ったそいつは対して表情も変えないまま、俺に向かって小声でそういった。
「ちげーよ。ただ同じ中学からの面子ってだけだ。」
「そうなのか、てっきりどっちかと付き合ってるのかと思ったぞ。」
「この男と付き合うなんて、正気の沙汰とは思えないわね。綾小路君もこの男と関わるとろくな目に合わないわよ?」
「俺は触れるものみな傷つけるナイフかよ。」
断じてそんな危険人物ではない。どちらかというと俺は人畜無害な健気な生き物だというのに失礼な話である。
このまま懇切丁寧に教えてやってもよかったが、用があるのはコンビニのため、会話は切り上げることにした。
「じゃあそろそろ行くわ。もしなんかあったらまたな。」
「あぁ、また。」
そういって俺たちはコンビニの中に入っていく。
中に入ると別に特別なことはなく、強いて言うなら外のコンビニよりも品揃えがかなり豊富なことぐらいだった。さすがに3年間不自由ない生活を謳うだけあってこういう細かいところでも拘っているのだろう。
しばらく1人でぶらぶらと店内を眺めていると、雪ノ下がある一点を見つめたまま動かなくなっていた。
「おい、どうした。」
「比企谷君。これを見て頂戴。」
そうして雪ノ下がさしたほうには1か月に3点まで無料と書かれているセール品だろうか、割と乱雑にワゴンに様々な消耗品が詰められていた。
「無料商品?まぁ、もらえるものはもらっとくか。」
「ppを使いすぎた生徒に対する救済措置、のようなものかしら。ねぇ比企谷君、由比ヶ浜さんを呼んできてもらってもいいかしら。少し思うところがあるの。」
俺が雪ノ下の指示通り由比ヶ浜を呼んでくると、雪ノ下はすでにワゴンから何点か商品を取り出していた。
「由比ヶ浜さん、比企谷君。この無料商品から使用頻度が高くてかつ消耗しがちな品を選んだからそれをもらっていきましょう。シャンプーなんかよ。棚に並んでいるのよりかは少し質の劣るものだけれど、無料商品なのだから当然ね。」
「わっ、ただでこんなのもらえるんだ!太っ腹だね~、10万円ももらってるのに。」
由比ヶ浜はあほの子に見られがちだが案外お金なんかのことに関してはしっかりとしている。俺と一緒でタダでもらえる分には好都合と判断したんだろう。そのまま俺たちは無料商品を2点ずつ取り、当然ほかに足りないものを数点ずつ買って、コンビニを後にした。
「コンビニなのに結構いろんな商品がおいてあるんだな」
「そだね~、しかも結構安いし。」
「…そのことなのだけれど、少し話したいことがあるから買うものは最低限にして寮に戻ったら比企谷君の部屋を使わせてもらっていいかしら。」
特に断る理由もないので承諾し、そのまま雪ノ下の言うとおり最低限の品だけを買い寮の俺の部屋へさっそく集合した。
「で、話ってなんだよ。」
「まずお金の話になってしまうのが心苦しいのだけれど、2人とも毎月10万円が支給されることについてどう思う?」
「めっちゃもらえてうれしい!」
「そういう話じゃないだろ、多分。まぁ実際、もらいすぎだなとは思う。」
「そうね、これほど寮の初期設備も充実しているし、水道や光熱費も無料なのにかかわらず10万円、正直なところ半分、いえ、もっと言うなら初月で買うものが多い今月ですら30000ppもあれば十分贅沢な生活ができるわ」
「確かにそうだね、先生は私たちが10万ppの価値ある生徒~みたいなこと言ってたけど…」
「腐っても国立のエリート候補生を敷地内に3年間閉じ込めるんだから不満の出ないように金は出すって話じゃないのか?」
「確かにそれも考えたのだけれど、少しおかしな点があるから少し話して2人にも考えてほしいの。」
そういって雪ノ下が説明し始めた話は確かに気になる点が多かった。
「まず、年間支出ね。この学校は毎年定員が160人。もっと言えば全学年合わせて480人に毎月10万円相当を配るだけの財源があるという話になるの。月にして約5000万、毎年約6億円が私たちの娯楽費に消えている、ということよ。ほかにも、さっきのコンビニでもおかしな点はいくつかあるわ。」
「無料商品、か。」
「ええ、さっきはppを使いすぎた生徒への救済措置かとも思ったけれど、流石にいくらなんでも甘すぎるわ。特にあのワゴンに置かれていた商品はシャンプーなどの日用品が多かった。食べ物なんかだったら月末で財布に余裕がない、なんて人がいても金遣いが荒ければあり得る話ではあるけれど、それが生活必需品というのが少し気になるわね。」
「つまりお前が言いたいのは、毎月10万円が支給されるわけじゃないってことか。」
「えっ、そうなの。ごめん2人とも、あたしまだちょっとついていけてないかも。」
「大丈夫よ由比ヶ浜さん。根拠はほかにもあるわ。さっき私がコンビニで無料商品を見つけた時なのだけれど、上級生と思われる人が無料商品をもっていっていたの。」
「この学校のシステムですでに1年以上過ごしているであろう生徒が、月の初めに無料商品を取りに来るのがおかしいってことか。」
「ええ、もちろん私が見た生徒が極度の倹約家である可能性もあるし、例えば10万円以上の高額なものを買いたいからこまめなところで節約している可能性もあるから、確定とまでは言えないのだけれど。」
「いや、十分じゃねぇの。要するに俺たちもいつ必要になるかわからんから節約できるところは節約しようって話だろ?毎月10万もらえないのは確かに残念だがすっからかんで過ごすわけにもいかないしな。」
「そういうことよ。」
「むずかしくてよくわかんなかったけど節約ね!オッケー!」
「まぁ、その認識でいいわ…それと最後なのだけれど、さっきの綾小路君の話を聞いて思ったことがあるのだけれど。」
「綾小路?あいつがなんか言ってたか?」
「監視カメラの話よ。あれと同じカメラを教室で見たわ。」
「「え」」
「あなたたち、気づかなかったの?でもまぁ、普通に生きてきて監視カメラなんて気にならないものね。私もたまたま目に入ったから覚えていただけだし。」
「いくらなんでも教室に監視カメラってのはいい気分がしないな。」
「ねー、なんかちょっと怖いかも。」
「先生はいじめや暴力に厳しいと言っていたからもしかしたらそういった問題を起こさせないためのものかもしれないわね。ただ、普段の生活態度を見られている、ということも十分あり得る話だからあなたたちも気をつけなさい。私が伝えたかったのはこんなところね。」
雪ノ下先生によるありがたい説明が終わったところで、そこそこいい時間になったので俺たちは解散した。
部屋で1人今日の出来事を思い出しながら雪ノ下の話を反芻する。
「10万は確約の特権じゃない。生徒は監視されている、ねぇ。…いや普通に大問題じゃね?」
監視カメラはともかくとして問題は10万のほうだ。毎月もらえないのが問題なのではない。いや、というか一介の高校生が毎月10万ももらったら別の意味で問題だろう。真の意味で問題なのはまるで毎月10万円もらえるかのような言い分で実際はもらえない可能性を回りくどく示唆している点だ。実質詐欺とやり口が変わらないだろ。
しかし今学校への文句を考えても仕方ないし、雪の下の考えすぎだって可能性もある。ひとまずは雪ノ下の言うとおりに節約をある程度心がけて、問題が起きないようであればそれはその時遊べばいいだろう。
そう考えて俺は備え付けのベッドに潜ると、思っていたより疲れていたのか、すぐに眠気がやってきた。
改めまして、初投稿の作品を読んでいただきありがとうございます。
次話も読んでいただけると幸いです。
誤字脱字、感想等ありましたらご報告いただけると嬉しいです。
また、以下は読み飛ばしていただいて構わない本作における目標といいますか、意識していただきたい点です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
比企谷八幡を主人公に据えているので原作の主人公である綾小路はクラスが違うこともあり、あまり出てこない可能性があります。もちろんチャンスがあればどんどん出していきたいですが、まだ未定です。
私個人の思想として、いわゆるチート系にはしたくないので試験の無双などを期待されている方には不向きかもしれません。それこそ八幡ではなく綾小路にしてもらうかもです。
また、恋愛要素についてですが、未定です。なるべく誰かと付き合わせてみたいな~とは考えていますが、相手もまだ考えていません。ちなみに奉仕部メンバーにはしないと思います。「○○と付き合ってほしい!」なんかありましたら是非感想に書いていただければ考えてみたいと思います。場合によっては本編とは別枠でifを書いてみるのいいかもしれません。
ヒロイン候補アンケート その他は教えてもらえると嬉しいです
-
一之瀬帆波
-
坂柳有栖
-
椎名ひより
-
堀北鈴音
-
その他