もしもグランドツアーの3人がキヴォトスに来たら2   作:ガチタン雷電

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アリウス襲撃

アリウス襲撃

 

エデン条約調印式襲撃後

―― 現場は、誰の想定にもなかった

古聖堂周辺は、もはや「式典会場」ではなかった。

瓦礫に覆われた石畳、倒れた照明塔、砕けた長椅子。

逃げ惑う生徒、誘導に奔走する者、呆然と立ち尽くす者。

そして――

秩序を担うはずだった組織が、同時に“躊躇する”瞬間が訪れていた。

 

■ユスティナ聖徒会・ミメシスの出現

最初に異変を察したのは、トリニティの生徒だった。

瓦礫の影から現れたのは、

黒の法衣に青白い肌。

そして、異様に誇張された呼吸音を響かせるガスマスク。

――ユスティナ聖徒会・ミメシス。

彼女が一歩前に出ただけで、

周囲の空気は明確に“重く”なった。

銃を構えていたトリニティの生徒は、そのまま硬直する。

ゲヘナの生徒でさえ、舌打ちしながら距離を取った。

「……撃てない……」

誰かの声が、震えた。

ミメシスは戦闘能力そのものではなく、

“刷り込まれた象徴”だった。

撃てば何かを壊してしまうという恐怖。

それが判断を鈍らせ、照準を狂わせる。

その隙を、アリウスは見逃さなかった。

 

 

■空が安全でなくなる瞬間

救護騎士団拠点へ向かう仮設ヘリポート上空。

負傷者搬送のため低空侵入していた救助ヘリが、突然フレアを散布した。

白熱の光が空に弾け、機体が急旋回する。

「ミサイル警戒!」

次いで、英国軍ネットワークに甲高い警告音が走る。

「アリウスがMANPADSを所持!

 FIM-92、確認!」

スティンガー。

空は、もはや安全ではなかった。

アリウスが放ったミサイルはフレアに命中したが、

救助ヘリは即座に反転し、離脱。

その判断に、誰も異を唱えられなかった。

だが――

それは同時に、制空権が失われかけているという意味だった。

 

■英国陸軍、制空権を取り戻しに来る

数分後。

空気を震わせる低い音が、遠方から迫ってきた。

「いくぞ……」

英国陸軍の即応分遣隊だった。

旧式だが整備の行き届いた攻撃ヘリ『アパッチ』と、対空警戒車両オランダから中古で購入したゲパルト自走対空砲。

展開済みのレーダーが即座に連動する。

「低空警戒、北東方向。

 アリウスのミサイル発射地点。」

対空火器が展開され、レーダーを“睨む”。

もうミサイルを撃たせない。

そして、逃げ道を与えない配置だった。

 

日が沈み、霧が低く垂れ込める街――

黒ずんだ煉瓦造りの建物が連なり、石畳の通りが迷路のように伸びている。

かつて栄えたこの英国風都市は、ミサイルの直撃を受けて今や廃墟。

 割れたショーウィンドウと、風に鳴る標識だけが動いていた。

 その上空を、WAH-64 アパッチが爆音を響かせ滑る用に進む。

「ヴァイパー1、低空維持。屋根の高さを越えるな」

建物の影に溶け込むように飛ぶアパッチのローター音は、都市の反響で方向を誤魔化される。

しかし敵は待っていた。

 ミサイルアラート

「赤外線警告――来るぞ!」

古い集合住宅の屋上から、スティンガーが撃ち上がる。

街路に反射した熱が、ミサイルの軌道を一瞬歪ませた。

フレア。

白い閃光が、濃霧の中に花を咲かせる。

「回避成功……だが、都市部だ。次は近いぞ」

その時、戦術ディスプレイに新たな緑色の枠が現れた。

――データリンク確立

都市郊外の広場。

石造りの市庁舎跡に身を寄せるように、陸軍が中古で買ったゲパルトが陣取っていた。

回転する捜索レーダーが、街の上空を“切り取る”。

「ヴァイパー2より各員。

 屋上熱源、三階建てと五階建て。発射後、再装填中」

地上の目が、空の目と重なる。

「了解。都市ブロック単位で処理する」

ヴァイパー1がホバリングに入り、機首をわずかに振る。

ロングボウ・レーダーが、煉瓦越しの“存在”を拾い上げた。

その直後、ゲパルトの追尾レーダーが別の異常を検知する。

「警告。路地裏移動中の人員あり。MANPADS保持の可能性」

逃げ場のない街路。

35mm機関砲が短く、正確に火を吹く。

コンクリートと煉瓦が砕け、路地が一瞬だけ昼のように明るくなった。

「地上脅威、排除確認」

残る屋上目標に、アパッチが応える。

ヘルファイアは寸部違わず、正確に突き刺さった。

爆炎が、古い煉瓦壁を内側から押し崩す。

静寂が戻る。

霧の向こうで、ゲパルトのレーダーだけが回り続けていた。

「都市空域、クリア」

Viper 1が小さく息を吐く。

「やっぱりな……

 この街じゃ、空と地上は一緒に戦わなきゃ勝てない」

アパッチは再び低空に沈み、

石造りの街は、何事もなかったかのように夜闇に包まれていった。

 

結果、アリウスの戦闘員は空への攻撃能力を失い、地上に縫い止められる。

空が、少しだけ静かになった。

 

■先生、負傷

 

夜空を染める閃光か瞬くその直前、

先生はアリウスの銃弾を受けていたと大使館経由で連絡が入った。

致命傷ではない。

だが、即応指揮を取れる状態ではない。

 フロントライン

『トリニティ』からの離脱が確定する。

現場の指揮は――

ハナコへと引き継がれたそうだ。

 

■ハモンド、クルセイダーへ

「……兵士が足りないか」

その一言で、現場の視線が集まった。

ハモンドは一瞬だけ息を吸い、

そして言った。

「僕がやる」

クルセイダーに乗り込む。

操縦席。

この戦車は、彼にとって“攻撃兵器”ではない。

自分を含めた多くを守る、動く壁だ。

「行くぞ」

履帯が唸り、瓦礫を押し分けて前進する。

 

 

古聖堂から数ブロック離れた通り。

救護騎士団の拠点前に、M2ブラッドレイはエンジンをかけたまま停車していた。

車体の横では、すでに待機していた英国陸軍の兵士たちが、無言で乗り込んでいく。

彼らは“増援”ではない。

最初からここにいた、守るために配置されていた兵士たちだった。

「全員、入ったか」 車長が短く問う。

「はい。救護拠点警備分隊、全員搭乗完了」

誰も気合を入れたりはしない。

叫び声もない。

ただ、やるべき順番を確認するだけだった。

ハモンドはその様子を、クルセイダーの操縦席から見ていた。

「……撮影じゃないな、もう」 誰にともなく呟く。

ブラッドレイの後部ハッチが閉じる音が、低く響いた。

それは“出発”の合図だった。

 

■正義実現委員会の横槍

そのときだった。

「ちょっと!

 そのクルセイダーは、うちの車両よ!」

正義実現委員会のモブ生徒が、腕を組んで立ちふさがる。

「勝手に使われると困るんだけど?」

一瞬、戦場が凍った。

ハモンドはエンジンを止めなかった。

代わりにハッチを開け、静かに言う。

「違うこれは僕の私物だ。」

低い声。

だが、はっきりしていた。

「それにこれは今、ここで人を守ってる車両だ」

瓦礫、怯える生徒、動けない戦線。

それを指さし、続ける。

「管轄の話は後だ。

 今止めたら、死ぬ人が出る」

誰も、言い返せなかった。

クルセイダーは再び動き出す。

 

■ブラッドレイ ―― 見せる盾

シスターフッド本部前。

M2ブラッドレイが、門番のように陣取る。

あえて動かない。

砲塔だけが、ゆっくりと旋回する。

アリウスの戦闘員が姿を見せるたび、

距離感を誤る。

その瞬間、短く、正確な射撃。

無慈悲だが、必要な制圧。

背後では、ハナコが冷静に指揮を飛ばしていた。

 

■クルセイダー ―― 動く壁

救護騎士団拠点前。

霧の向こうに立つ、ミメシス。

その姿だけで、生徒たちの動きが鈍る。

だが、クルセイダーは止まらない。

撃たない。

回らない。

ただ、近づく。

それだけで、

ミメシスの背後にいたアリウスの戦闘員が後退する。

「……クルセイダーだと!!正義実現委員会か!!

 動きが速すぎる」

恐怖は、象徴を上書きする。

 

 

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