もしもグランドツアーの3人がキヴォトスに来たら2 作:ガチタン雷電
『The Grand Tour 特別編
――Kivotos: Not Mars, But Somehow Worse』
空は赤くない。
しかし、どこか薄く、乾いた透明感を帯びていた。
都市の外縁には砂漠が広がり、遠くには白く光る氷の峰が見える。
現在の気温は18℃。
風は穏やかで、生命に優しい。
そして――
この世界は、火星と同じリズムで季節が巡る。
Chapter 1
「とても面倒な惑星」
巨大なヘリがキヴォトスのDU地区を上空を旋回していた。
機内では三人の男が窓の外を見下ろしている。
「さて諸君」
ジェレミー・クラークソンが腕を組む。
「我々は今、“火星と同じ周期で季節が巡る学園都市”にいる。」
ハモンドが即座に振り向く。
「待って。火星なの?」
「違う。」
「じゃあ何なの?」
クラークソンはニヤリと笑った。
「それを解明するのが今回の企画だ。」
ジェームズ・メイはタブレットを操作していた。
「科学的に説明すると、この星は多重星系の影響下にある。」
画面には複雑な軌道図が映る。
「公転周期は約687日。
つまり火星とほぼ同じ。」
「ただし――」
彼は指を立てる。
「複数恒星の干渉により、気候が地球並みに保たれている。」
ハモンドが呟く。
「つまり…」
「科学的奇跡だ。」
Chapter 2
「年に二度来る春」
ヘリは中央行政区に着陸した。
三人が外に出ると、風が頬を撫でる。
穏やかな温度。
柔らかな日差し。
「平均気温は約15℃前後」
メイが説明する。
「地球とほぼ同じ。ただし誤差±10℃。」
クラークソンが空を見上げる。
「つまり凍えない火星か。」
「その言い方は極めて乱暴だが、概ね正しい。」
街の掲示板には奇妙なカレンダーが表示されていた。
四つの季節が――二回並んでいる。
春Ⅰ
夏Ⅰ
秋Ⅰ
冬Ⅰ
春Ⅱ
夏Ⅱ
秋Ⅱ
冬Ⅱ
ハモンドが吹き出した。
「季節が二周してる!」
メイが頷く。
「公転周期が長いからね。
人間が生活しやすいように、季節を二分割した文化が形成された。」
クラークソンは即座にまとめる。
「つまりこの世界では、春が二回来る。」
「ロマンチックだろ?」
Chapter 3
「暦戦争」
三人が訪れたのは学園地区だった。
巨大な門に刻まれた文字。
百鬼夜行連合学院。
門前には提灯が揺れていた。
ハモンドが首を傾げる。
「ここ、やたら古風じゃない?」
メイが資料をめくる。
「当然だ。ここは旧暦を使用している。」
「つまり?」
「他校より約1か月ズレて生活している。」
クラークソンが爆笑した。
「最高だな!
全員がイベントを忘れる惑星ってことだ!」
さらに彼らは山海経高級中学校を訪れる。
そこでは入学式の準備が進んでいた。
しかし、別の学園都市では――
すでに文化祭が終わっていた。
ハモンドが呟く。
「これ…行政どうやって管理してるの?」
メイが静かに答える。
「していない。
共存している。」
Chapter 4
「火星ではない」
夕暮れ。
三人は高台から都市を見下ろしていた。
二つの夕日が雲の向こうで揺れている。
ハモンドが静かに言った。
「火星じゃないんだよね…」
メイが頷く。
「違う。」
クラークソンは笑う。
「だが火星よりずっと厄介だ。」
都市では二つ目の秋が始まりかけていた。
風は穏やか。
気温は快適。
そして暦は――誰も一致していない。
クラークソンが呟く。
「もし文明というものが、秩序の上に成り立つなら…」
「この都市は完全に狂っている。」
彼は振り返る。
「そして私は、こういう場所が大好きだ。」
END