もしもグランドツアーの3人がキヴォトスに来たら2   作:ガチタン雷電

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馬鹿が戦車でやってくる2

馬鹿が戦車でやってくる2

 

リチャード・ハモンド、Amazonと射場に行く

 

リチャード・ハモンドは、ノートパソコンの前で腕を組み、深刻な顔をしていた。

画面に映っているのは――Amazonのカートである。

8万ポンドの改修費は高く、装甲モジュールを自作することになった。

 

「……これ、本当に番組史上いちばん平和な買い物じゃない?」

 

カートの中身は奇妙だった。

「アルミ複合板 厚さ3mm W910mmH1820mm、

 

エラストマー製耐熱まな板33×24cm……なんでこんな中途半端なサイズしか無いんだ!!

 

黄色のアラミド繊維布30cm×1M、水用ジェリカン、

 

10cm×10cm厚さ5mmのタングステンプレートは150ポンドもするのか……高いから必要なとこにプラスだな。

 

タングステン用のアルミ板も買わなきゃ4mmx100mmx100mm 5pcsよしこれだな」

 

それぞれ単体ならDIY動画の延長だが、量が異常だった。

 

「1ユニットが……3セット分……いや、正面用は4セット……」

 

背後から覗き込んだジェレミーが鼻で笑う。

 

「君、今“世界で一番安い装甲”をAmazonで買おうとしてるよね?」

 

「うるさい。これは“中の人が生き残るための努力”だよ」

ハモンドはそう言って、購入確定ボタンを押した。

 

 

 数日後 ―― リチャード・ハモンドのガレージ

 

ガレージの床一面に、Amazonの段ボール箱が散乱していた。

 

無地の箱、プライムのテープ、なぜか一つだけ笑顔のロゴが逆さまに。

 

ハモンドは床に膝をつき、カッターで箱を開ける。

 

「……信じられないよ。

 戦車の防弾改修素材をAmazonで揃える日が来るなんて。」

 

中から現れたのは、一般的なアルミ板。

 

工業用品として売られている、無骨で反射の鈍い板だ。

 

次の箱には、

耐熱エラストマー製の“まな板”がぎっしり。

 

さらに別の箱から、

アラミド繊維の布の束がドサッと落す。

 

ハモンドはそれらを見比べ、腕を組んだ。

 

「防弾は、

 “衝撃”と“割れ”と“減衰”……

 そういう話なんだよな、これは」

 

作業開始 ―― 静かな集中

 

作業台の上に、アルミ板が一枚、静かに置かれる。

 

ハモンドは深呼吸し、

エラストマー板を慎重に重ねた。

 

ゴム特有匂い。

 

その上から、アラミド繊維。

 

引っ張りすぎず、たるませず、

 

“面”として力を受けるように。

 

「……よし」

 

さらにアルミ板を重ねて1ユニット完成。

 

それを繰り返し作ってゆく

彼は無言だ。

 

普段の饒舌さは消え、

ただ重ねる音だけがガレージに響く。

 

遠くで、ジェレミーの声が聞こえる。

 

「リチャード!

 それ、本当に“戦車”に付けるんだよな!?

 まな板じゃないよな!?」

 

「静かにして!!

 今いちばん大事なところだから!!」

 

 

ー翌日ー

 

 「よし。これでいける」

 

ハモンドは、地面に並べられたジェリカンを満足そうに眺めた。

 

「……リチャード」

 

ジェームズ・メイが眉をひそめる。

 

「それ、水だぞ」

 

「知ってる」

 

「戦車に水を積むのか?」

 

「ただの水じゃない。装甲だ」

 

ジェレミー・クラークソンが大声で笑った。

 

「ハハハ! ついに来たぞ! ハモンドの『たぶん大丈夫』工学だ!」

 

クルセイダーの砲塔を囲むように、何本ものジェリカンが並べられていた。

 

その内側には、薄い黒色のエラストマー製まな板が取り付けられている。

ハモンドは一枚を持ち上げると、砲塔側面に当ててみた。

 

「こいつをジェリカンと組み合わせる。硬い板を追加するより簡単だし、何より……」

 

「何より?」

 

「安い」

 

メイがため息をついた。

 

「戦車の防御について話しているのに、君はホームセンターの買い物みたいに言うんだな」

 

「ホームセンターは偉大なんだよ、ジェームズ」

 

ハモンドは工具を手に取った。

 

まずジェリカンを砲塔側面の取り付け位置に固定する

。

その外側にエラストマー板を重ね、金具でしっかりと押さえ込んでいく。

一枚。

二枚。

三枚。

 

やがてクルセイダーの砲塔は、まるで妙に分厚い外套を着せられたような姿になった。

 

クラークソンが周囲を歩きながら眺める。

 

「これは……戦車なのか?」

 

「戦車だ」

 

「水タンクをいっぱい付けた戦車にしか見えないぞ」

 

「だからいいんだ」

 

ハモンドは工具を置き、少し離れて改造された砲塔を眺めた。

 

「本来の装甲を置き換えるんじゃない。これは追加の防護だ。エラストマーで外側を覆って、その後ろに水を入れたジェリカンを配置する」

 

メイが腕を組む。

 

「そして?」

 

「そして、当たらないことを祈る」

 

一瞬、沈黙。

 

「おい!」

 

クラークソンの叫び声と同時に、三人が笑い出した。

ハモンドは笑いながらジェリカンの蓋を確認する。

 

「でも、見た目はかなり良くなっただろ?」

 

メイはクルセイダーを見上げた。

 

「……君の言う『良くなった』が、私には『さらに奇妙になった』としか聞こえない」

 

「つまり成功だ」

 

「なぜそうなる!」

 

クラークソンが叫ぶ。

 

その横で、ハモンドは満足そうに親指を立てた。

 

こうしてクルセイダーには、正式な設計図には絶対に存在しなかった――水とゴムの即席追加防護装置が搭載されたのである。

 

数日後。

 

イギリス郊外のだだっ広い射場。

 

地面に並べられているのは、

無骨な四角形の「防弾ユニット」――

外見は完全に“巨大なサンドイッチ”だった。

 

ジェームズ・メイがそれを見て、静かに一言。

 

「……少なくとも、見た目は非常に理性的だね」

 

「でしょ? 安いしね」

 

ジェレミーは腕を組み、にやりと笑う。

 

「つまり“撃っていい”ってことだな」

 

 

射場の空気が張り詰める。

 

最初は拳銃。

 

乾いた音が響き、防弾ユニットに弾丸が当たる。

――コンッ

金属音と、鈍い衝撃。

 

ユニットは揺れるが、崩れない。

 

ハモンドはゴーグル越しに目を見開いた。

 

「今の……効いてないよね?」

 

ジェームズが近づき、表面を眺める。

 

「貫通はしていない。変形も限定的だ」

 

ジェレミーは満足げに頷く。

 

「つまりだ。

“人が中にいたら、今ごろ紅茶を飲んでる”」

 

「それは最高の評価だよ!」

 

 今度は4枚立てかけてライフル、ブローニングBARを放つ

 

1枚目、2枚目が弾道を乱し、

数発が3枚目に止まり、最後4枚目が完全に受け止める。

 

誰も詳しい理屈は説明しない。

 

だが、結果は全員の目に見えていた。

 

沈黙のあと、ジェレミーがぽつりと言う。

 

「……悪くないな。

少なくとも“番組が終わる事故”は起きない。」

 

ハモンドは胸を張る。

 

「でしょ!?

これは“生きて帰るための改造”なんだ!」

 

ジェームズは少し微笑んだ。

 

「そして、世界で唯一

“Amazonレビューが書ける装甲”だね」

 

風が吹き、砂が舞う。

 

遠くには、これからキヴォトスへ向かう

近代化されたクルセイダー戦車が静かに待っている。

 

ハモンドはそれを見つめ、静かに呟いた。

 

「――中の人が生き残る

それが一番大事なんだ」

 

ジェレミーが肩をすくめる。

 

「珍しく正しいことを言ったな」

 

「今のは褒め言葉?」

 

「いや、記録しておくべき歴史的瞬間だ」

 

カメラは三人を引きで捉え、

防弾ユニットと戦車、そして広い空を映す。

字幕が静かに出る。

 

「Amazonで買える限界を超えた日」

 

 

 

遠くでジェレミーが叫ぶ。

 

「次はエアコンだ!

 砂漠は地獄だからな!!」

 

ハモンドは小さく笑った。

 

「……ああ。

 それもAmazonで頼もうか」

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