もしもグランドツアーの3人がキヴォトスに来たら2 作:ガチタン雷電
アビドス自治区 大使館前
数週間後 アビドス地区のイギリス大使館
その駐車場で大使と今回の護衛を務める小隊長から説明を受けた。
英国側護衛部隊からすれば今回の任務は特殊だった。
キヴォトスのトリニティ自治区とゲヘナ自治区によるエデン条約関連行事への来賓出席者の警護。
大使館経由の正式要請。
そのため、英国側は万全の体制を敷いた。
かつてアメリカと共同出キヴォトスの調査をした時にアメリカが残した車両。
M2 ブラッドレイ歩兵戦闘車 ×2両
機甲師団から選ばれた兵士8名
番組スタッフ12名(ブラッドレイに分乗)
そして隊長車と最重要人物の乗る古びた戦車。
駐車場にブラッドレイのエンジン音が低く響く。
そして――
クルセイダー戦車の中。
配置
車長:現役英国軍将校
操縦手:同じく現役軍人
射手:リチャード・ハモンド
「射手席、確認」
ハモンドの声は、
これまでになく落ち着いていた。
「……うん。
やっぱりここは、落ち着く」
かつて番組で戦車兵の訓練をした経験が、
彼をこの場所に押し込んでいた。
最終調整 ―― 実地テスト
試射は行わない。
あくまで動作確認と連携確認だ。
砂丘を越えるたびに、
クルセイダーは軋みながらも前へ進む。
防弾ユニットが砂を叩き、
履帯が地面を噛む。
ブラッドレイ2両が左右後方を固める。
無線が静かに鳴る。
「振動、問題なし」
「温度安定」
「視界、クリア」
ハモンドは照準器越しに、
揺れる砂漠を見つめていた。
「……ジェレミーがいたら
ここで必ず“もっと速く!”って言ってるな」
誰も答えない。
■実戦遭遇
それは、
突然だった。
砂嵐の名残のような霞の向こう、
不自然な動き。
車長の声が鋭くなる。
「前方、不審な接近あり」
ブラッドレイの砲塔が動く。
クルセイダーの砲塔も、
わずかに遅れて追従した。
ハモンドは、
無意識に呼吸を整えていた。
「……了解。
照準、取れる」
相手は即席武装の車両。
ピックアップトラックに銃座をつけたものだ。
アビドスでは、珍しくもない存在。
だが――
こちらは“来賓”であり、
“外交の顔”でもある。
発砲は避けなければならない。
緊張の数秒。
そのとき、
相手は距離を取るように後退した。
砂煙の中へ消える。
無線に、安堵の声。
「接触回避」
「被害なし」
ハモンドは、
ゆっくりと息を吐いた。
「……やっぱりさ」
誰にともなく言う。
「戦車って、
撃たなくても“居るだけで”仕事するんだね」
エデン条約へ
隊列は再び動き出す。
クルセイダー戦車の中で、
ハモンドは静かに考えていた。
ジェレミーなら、きっと不満を言う
ジェームズなら、冷静に皮肉を言う
だが、
今ここにいるのは自分だけだ。
「……一人で来賓ってのも、
なかなか新鮮だな」
前方には、
エデン条約の会場へと続く道。
砂漠の中を、
古い戦車と新しい責任が、
並んで進んでいく。
ナレーション(ハモンド)
「こうして――
一人の司会者は、
異世界の条約に、
戦車と共に向かった。」