姫騎士(肉食)共から貞操を守りつつ、僕の騎士道がハードモードすぎる   作:お庭屋さん

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ノリノリな時だけ連日投稿します。
多分。


第2話:旅支度って金かかるんすよ。

 チチチ、という小鳥のさえずりで目覚める朝ほど気持ちのいい朝はない。

 部屋の窓から見る異郷の地の風景も、一年経てば慣れ親しんだものに変わってくる。

 まだ完全に登りきっていないのだろう、ぼんやりとした朝日に照らされた石造りの家々が朝露に濡れてテラついている。

 

「んぁぁ……。」

 

 僕は朝がとんと弱い。

 騎士たるもの、凛々しくあらねばならないけれど、誰にも見られることの無いこの瞬間くらい気を緩めて居てもいいだろう。

 

 寝ぼけ眼を擦りつつ上半身を起こすと、たいそう立派な()()()が視界に入った。

 うぅん。ナイステント。

 さぞ立派な支柱がお立ち上がりになられているに違いないな。見事なまでのライジング・マイ・サン(笑)

 朝日かな?

 

 比較的寒い地方に分類するこの帝国でも、夏ともなれば掛布団は薄いもの一枚で充分である。

 その掛布団すらお持ち上げ遊ばされた我が自慢のお柱様も誇らしげに……いかん。思考がお下劣極まりない。

 

 いやでも仕方なく無いか?

 ほぼ24時間女所帯の中にいるのだから、()()()()のしようがない。

 流石に一人部屋をあてがってもらっているけれど、貴族である僕のベッドメイクなどは従騎士(スクァイア)の仕事だ。

 ソロ活動の痕跡が見つかるなど恥ずかしい事この上ないし、自分の心象的にも「幼馴染に自己処理済シーツを洗ってもらう。」なんていう激ハード羞恥プレイは避けたかった。

 

「こればっかりは我慢だよなぁ。」

 

 故に、我慢である。

 騎士たるもの、性欲に身を任せるなど言語道断である。一時の情に流されて身を滅ぼした貴族など、少し歴史をかじれば山のように出てくる。

 先人達の身を呈した教えに従い、ここは耐え忍ぶのだ。

 

「心頭滅却すれば火もまた涼し……。チン頭滅却すれば…………滅却は困るな……。うん。」

 

 寝惚けた脳ミソでくだらない事を考えていると、部屋の扉がノックされた。

 恐らく従騎士の1人だろう。

 朝の着替えや髪を整えたりするのは従騎士の仕事だ。

 彼女も自分の責務をしっかり果たそうとしてくれているのは分かるんだけど、生憎と頼むことがない。

 

 婚前の男性のお着替えを手伝うなど性犯罪でお縄待った無しだし、髪だって短いので整えようがない。

 せいぜい寝癖があれば治す程度だけれど、それくらいは自分でやる。

 それもこれも説明した上で尚、毎朝欠かさずに来るのだから大した忠誠心である。我が部下ながら鼻が高い。

 

「ん、入っていいよ。」

「し、失礼します〜。朝の支度をお手伝いしに……。」

「あーーー。着替えは自分でするから大丈夫。」

「左様ですか……。」

 

 入ってきたのはクロエという騎士であった。

 そうあからさまにガッカリされると上司としても困ってしまう。

 折角の満ち溢れた部下のやる気を折りかねないのは嫌だからだ。……まぁやる気というよりヤる気なのしれないけれど、よりによって幼馴染達にそれは無いだろう。

 

「うん。だから朝餉の準備の方を頼むよ。その後で部屋の掃除を頼もうかな。」

「かしこまりました!」

 

 一転、笑顔が咲くクロエを微笑ましく見送り、僕も着替えを始めた。

 ブリオーという丈の長いシャツに袖を通し、ブレーというスボンを履く。ショースの上に、少しはしたないけれど、足で皮のブーツを寝台に寄せてそれも履いた。

 まだ出掛ける時間ではないし、マントは必要ないだろう。

 

 かなり質素な服装だけれど、武官の平服などこれで良いと思う。問題があるとすれば生地が少しごわついていて肌触りが悪いというところだけれど、もう慣れた。

 

 着替えが終わる頃にはパンの焼けるいい匂いが漂ってきた。パンと言っても前世で食べていたような白い小麦のパンではなく、ライ麦や大麦で作られた酸味が強くて硬い黒パンだ。保存は効くけれど、そのままでは固くて食べられないのでスープやシチューに浸して食べる。

 チーズとか出てくれると尚嬉しいけれど……。

 

 この体になってからかなり()()が悪い。

 かなり大柄なせいなのだろうけれど、食べても食べてもすぐにお腹が空くのだ。

 グゥとなりそうなお腹を抑えて自室を出たのだった。

 

 

 ☆

 

 

「さて。今後の予定だが、べレイン王国に戻り領地を再整理しようと思う。異論はあるか?」

「異論はありません。しかし、ここグラディティアから王国まではかなりの距離があります。旅支度は念入りに致しましょう。」

「そうだな。各自、必要な物を報告してくれ。」

「「「サー!」」」

 

 朝餉の後、宿の大広間に騎士団を集めて今後の方針について説明する事とした。

 まずは帰郷することを第一目標としつつ、その後に一年の放置で荒れているだろう領地を再建する所が第二目標といったところか。

 

 しかしルイーズの言う通り、ここ帝都グラディティアから我が家の領地、ブレスダンまではかなり遠い。

 方角的にはひたすら南下し続けるだけなのだけれど、帝都を出てすぐに、南へ広がるスリヒ台地を踏破し、国境沿いのメルト樹海を乗り越え、ようやくべレイン王国へ入れたと思ったら今度はカステ高原を抜けなければならない。

 

「あまりにも難所が多すぎるっ……。」

「ですね…………。」

「ざっと見積もって1ヶ月以上は掛かりますよ…コレ。」

 

 余りにも遠い故郷への旅路。

 ある程度、街道が整備されているスリヒ台地はともかく、樹海や山岳地域は土地勘のあるものが居なくてはまともに進めないだろう。

 

「幸い、メルト樹海はシルバッツ大森林方面へ迂回すれば回避できますし、そちらは先日街道整備が終わったとの事です。あとは高原ですけど……。」

「山歩きは慣れたものだからな。」

 

 べレイン王国の国土は半分が山岳に覆われた土地だ。

 故に、王国民であれば山の歩き方は必修と言っていいだろう。カステ高原は歩いたことはないけれど、同じ様な地形であれば何とかなりそうだ。なんとかなりそうだが……。

 

「しかしなぁ……。徒歩で向かうのか?この距離を?」

「う……。馬はないですからね……。」

「うちの騎士団……お金ないもんね。すまん。」

「いえ!エヴ様のせいでは!」

 

 そう。万年金欠騎士団なのである。

 指揮官である僕やルイーズはフルプレートの甲冑を持ってはいるけれど、その他の騎士達はせいぜいチェインメイルやブレスプレートなど部分的な板金鎧を身に纏う程度なのだ。

 本来ならば、騎士の本懐である騎馬突撃もさせてやりたいところだけれど、馬というのはとにかく金がかかる。馬代、餌代、世話をする厩務員に、装蹄も頼まなければならない。

 

 ただでさえ旅中の食料代が高額になろうというのにこれ以上の出費は僕の財布では賄いきれない。

 まぁ田舎の地方領主の収入などたかが知れているし、領民からの税収だって雀の涙ほどしか取らない。

 代々、我がマドゥワス家では領民の生活を第一に考えた統治を心掛けているからだ。

 

「貴種を貴種たらしめているのは平民あってこそ。なれば、我らは青い血をその民の為に流すのだ。」と母上もよく仰っていたし、僕もそう思っている。

 決して裕福とは言えない生活の中で、必死に生きる彼らから搾取するなど騎士としてあるまじき行為である。

 

 見栄を張る訳でもなく、心の底からそう思っているが、しかしなぁ。

 その少ない収入から、彼女たち騎士団の給与も払わなければならないし……。

 ううぅん。

 

「ともかく、まずは旅支度からです。時間はかかるでしょうが、我らなら徒歩でも充分向かえます。初期の食糧さえ準備出来れば、あとは道行く先々で路銀を稼いで凌ぎましょう。」

「そうだな。皆、苦労を掛けるがどうか頼む。」

「「「ウラァ!」」」

 

 

 ☆

 

 

 宿での小会議後、各々が必要な物、食糧や消耗品などをリストアップし手分けして買い出しに出る事にした。

 

 僕が担当するのは主に武具の手入れに使う道具類だ。

 ひとえに道具類といっても様々で、サビを落とす為の細かい砂とお酢、防錆用のワックスやそれを塗る為の羊皮など、かなり種類がある。

 

 幸い、従騎士だけでなく幼馴染騎士の面々も我先に、と荷物持ちに名乗り出てくれたおかげで、重たい荷物をひとりで抱えずに済みそうであった。

 

 流石に全員揃って行く訳にもいかないので、というか、分担する意味が無くなってしまうので……。

 僕を含めて3人になるよう指示したのだけれど、「じゃあ一番強いやつがデート権ゲットな!腕相撲しようぜ!」とか言い出して一悶着あった。

 

 そのせいで出発がだいぶ遅くなってしまったが、幼馴染達が和気あいあいとじゃれ合う姿は微笑ましくて、つい見入ってしまう。

 それに、うら若き乙女(僕視点)達がキャッキャしているのは目の保養になる。いいぞ。もっとやれ。

 

 結局、ルイーズとネリーが他の騎士達をねじ伏せて、僕のお供をしてくれる事になった。

 まぁ、騎士団の武闘派トップツーの2人だから当然と言えば当然だったけれど、年端の行かぬ従騎士にも本気で相手するとは大人気ないな。

 

「いいですね。気分がいい。こう……晴れやかな気持ちです。」

「おっ、同感ですよ〜副団長殿。たまにはこういうご褒美があっていいと思ってたんですよね。」

「君たちねぇ……。」

 

 そんなこんなでバタバタと宿を出た僕たちは、現在、帝都のダウンタウンへ足を運んでいる。

 道行く人達はどの人も一癖二癖ありそうな感じだ。

 みな景気の悪そうな顔付きで、やる気があるんだか無いんだか分からない様子で商売している。 

 中には元受刑者の姿も見える。腕に掘られた罪人の証である刺青がちらほらと見えるのだ。

 しかし、故郷から遥か北方であるグラディウス帝国であっても、街ゆく人々の顔ぶれは変わらないな。

 

 僕達と同じヒュム族を始め、外見こそさほど変わらないけれど、長く尖った耳を持つエルフ。

 頭に生えた角と体表を覆うウロコが特徴的なドラゴニュートに、褐色の肌を持つ偉丈婦のオーク。

 2頭身のデフォルメキャラじみたハーフリングもいる。

 

 様々な国からなるエテルニア大陸だが、どの国も人種によって構成されている事はない。

 どの国も、多民族国家として成り立っているのだ。

 もちろん、歴史の長いグラディウス帝国や、南方の大帝国、ロームルシア帝国などは代々同じ種族が皇帝に就く。

 しかし、そこに住む国民はやはり多種多様なのだ。

 

「ところでエヴ様、何故ダウンタウンへ?」

「ん?」

 

 周りの様子を見つつ、ネリーが耳打ちしてくる。

 まぁ、言わんとしていることは分かる。

 貴族であり、それも男子なのだから、見るからに治安の悪いダウンタウンにわざわざ足を運ぶ事ないでしょとでも言いたげな表情だからね。

 

「ネリーの危惧も十分理解できるけど、アッパータウンの店は……ほら、高いから。」

「あー。納得しました。」

 

 上流階級が居を構えるアッパータウンの方が治安も良く、高品質な商品を扱う店も多い。

 勿論、値段も馬鹿みたいに跳ね上がる。

 

 ただでさえお金が無いのだから、どうにか安く買い揃えなければならないので、治安がどうとか品質がどうのとかは考えている余裕が無い。

 例えものが悪くても、消耗品であればとにかく数を揃えたかったのだ。

 

「まぁそういう事だ。それに気取った高級店の雰囲気がどうにも苦手でね。それよりこちらの方が幾分、活気があって大変よろしい。」

「なるほど。では!御身は我らがお守りします故、ごゆるりとお楽しみくださいな。」

「ありがとう。2人とも頼りになるよ。」

 

 ルイーズとネリーは僕の騎士団の中では最強格である。

 どちらも剣技に優れ、戦術面においても機転が利く。

 単なる膂力では、体格に勝るオークにすら引けを取らないだろう。背丈も僕に近く、ヒュム族の中ではかなりの高身長である。 

 

 ルイーズは背にツヴァイハンダーを、ネリーは標準的な青銅盾を背に、アーミングソードを腰に差している。

 鎧こそ着けていないけれど、大柄な彼女たちが武装して両脇を固めているので、そうそう僕へ無体を働く輩もいないだろう。

 

「エヴ様。まずは何を買いに行くのです?」

「そうだなぁ。酢などは食料班が用意するだろうし、まずは羊皮かな。あとは砥石も必要か。」

 

 うん。とりあえず、人数分の羊皮とワックスがあれば手入れは個々に任せられるし、砥石も丈夫なものが幾つかあればみなで使いまわせるだろう。

 少しかさばるけれど、ギャンベゾンも予備があった方がいいな……。

 うぅ……いくらかかる事やら。

 

 殿下の使いっ走りも卒業してしまったので、僕の収入源は今のところ皆無である。

 そこそこ良い報酬が貰えていたのだけれど、度々蛮族である亜人や盗賊団の討伐をさせられていたので、その都度、装備を整えては金が消えていった。

 策謀高い殿下の事だから、恐らく計算して依頼していたのだろう。末恐ろしい女である。

 

「はァ……どっからかアホみたいに金湧いてこないかな。」

 

 隣を歩くふたりに聞かれないよう、小さくボヤいた僕の愚痴は、ダウンタウン特有の喧騒に掻き消されていった。

  

 

メインキャラが増えてきたので....みんなの好きなキャラを教えてくれぇ!!!書くわよ〜!!!!

  • ルイーズ・ロンズデール
  • ネリー
  • サーシャ、クロエ、ミリア他騎士団
  • アンドレア殿下
  • ガーベラ
  • アグニ
  • バルバラ
  • 上記以外のキャラクターは感想等で教えてね
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