姫騎士(肉食)共から貞操を守りつつ、僕の騎士道がハードモードすぎる   作:お庭屋さん

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ムチムチッ♡


第22話:亜人の神。肉の宴。

「……アグリム……ニ……ササグ……。」

 

 不気味な仮面をつけた灰色の亜人が、掠れた声でそう告げた瞬間。

 周囲を取り囲んでいた数十匹の亜人たちが、一斉に天を仰ぎ、喉を震わせた。

 

「ヴォオオオオオッ!!」

「来るぞ! 総員、エヴ様を守れッ!」

 

 ルイーズが叫び、マドゥワス騎士団が一斉に殺気を放つ。僕も覚悟を決めて剣の柄を握りしめた。

 数はこちらが圧倒的に不利。

 だが、ここで引くわけにはいかない。

 灰色の集団が一気に距離を詰めてくる。

 鋭い爪が、棍棒が、振り上げられ――。

 

「ワッショイ!!」

「……え?」

 

 次の瞬間、僕の体は宙に浮いていた。

 痛みはない。

 斬られたわけでも、殴られたわけでもない。

 僕は、灰色の亜人たちによって、まるで神輿のように高々と担ぎ上げられていたのだ。

 そこまで僅かコンマ数秒。神速の早業だ。

 僕じゃなきゃ見逃しちゃうね……。

 

「えっ? ちょっと、何!?」

「グルァ! ガウッ!」

「フンフン!」

 

 よく見れば、僕を担いでいる亜人たちは全員、小柄で曲線的な体つきをしている。

 ボロボロの布切れから覗く肢体はしなやかで、仮面の奥から聞こえる声も女性特有の高さがあった。

 ……どうやら、この部族も人間の社会と同じく、女性が狩りや力仕事を担っているらしい。

 

「エヴ様ーッ!? き、貴様ら、エヴ様をどこへ連れて行く気だーッ!!」

 

 ルイーズたちが血相を変えて追いかけてくる。

 当然だ。側から見れば、完全に連れ去り案件だからな。しかし、亜人達から敵対的な雰囲気は感じられない。むしろ喜んでいるようにも思える。

 ワッショイ!とかいってたし……。懐かしいな。

 

「待って! 待ってルイーズ! 攻撃しないで!」

 

 僕は高い視点から必死に叫んだ。

 

「彼ら……いや彼女たち、戦う気がないみたいだ! 剣を抜かないで!」

「ですが、そのままだと……!」

「大丈夫! ……たぶん、悪いようにはされてない気がする!」

 

 実際、僕を担いでいる亜人の女性たちは、楽しそうに「ホウッ! ホウッ!」と掛け声を上げながら、軽快なステップで荒野を進んでいる。

 その手つきは、獲物を拘束するものではなく、まるで壊れ物を扱うかのようなソフトタッチだ。

 時折、どさくさに紛れてお尻や太ももを撫で回されている気がするが、殺気がないので良しとしよう。

 

 

 ☆

 

  

 連れて行かれたのは、岩山の中腹にある、巨大な洞窟だった。

 入り口には動物の骨や、奇妙な塗料で描かれた壁画があり、お世辞にも入りやすい雰囲気ではない。

 まさに「悪魔の棲家」といった風情だ。

 

「ウオオオオン!」

 

 洞窟の中は意外にも広く、奥の方から温かい蒸気が漂ってきている。

 彼女たちは僕を、一番奥にある、清潔な毛皮が敷き詰められた祭壇ような場所へ、ふわりと優しく下ろした。

 

「グルァ……。」

 

 リーダー格の女性亜人が、得体の知れない木の実を差し出そうとしてきた。

 見た事もないグロテスクな見た目の木の実だけど、食文化というのは大切だ。前世の世界ではそれを否定するだけで戦争になるという事もあったらしい。

 正直、お腹はいっぱいだけれど、1粒だけ受け取ることにした。

 

「ありがとう。でも、お腹は空いてないからこれだけ頂くよ。」

 

 僕がお腹をさすってジェスチャーで伝えると、彼女は「もういらないの?」と小首を傾げた。

 そしてすぐに、「ポンッ!」と手を打ち、仲間たちに向かって別の指示を出し始める。

 

「ガウッ! ギャウ!」

 

 その瞬間、彼女たちの目の色が変わった。

 獲物を狙う目ではない。

 身に覚えのある、そこはかとなく嫌な予感。

  

「え、なに?」

 

 ドサッ。

 僕は柔らかい毛皮の上に押し倒された。

 抵抗する間もなく、ブーツを脱がされ、マントを外される。

 

「グルルゥ〜。」

 

 仮面の亜人が、親指でグイグイと僕のふくらはぎを揉み始めた。え!マッサージ!?スケベ抜きの純粋なマッサージだこれ!!!

 

 ……え、しかも上手い。

 長旅と昨夜の不寝番でパンッパンになっていた足のむくみが、嘘のように引いていく。

 

「キャッキャッ!」

「フンスフンス!」

 

 別の亜人が僕の腕を取り、オイルのようなものを塗ってマッサージを始める。

 さらに別の亜人は、温かい蒸しタオルを僕の顔に乗せ、目の疲れを癒やしてくれる。

 

「……あ、そこ。そこ気持ちいい。」

 

 思わず本音が漏れると、亜人たちは「キャッキャッ!」とハイタッチをして喜び合った。

 どうやら彼女らにとって、僕は、全力で尽くすべき対象らしい。うん、悪くない気分だ。

 

「エヴ様ッ!!」

 

 遅れて到着したルイーズたちが、洞窟に飛び込んでくる。

 

「今助けます……って、あれ?」

 

 彼女たちは、武器を構えたまま凍りついた。

 そこにあるのは、血なまぐさい生贄の儀式ではない。

 謎の仮面美女軍団(推定)に囲まれ、至れり尽くせりのマッサージを受け、あろうことか「極楽じゃ……」と呟きかけている主君の姿だった。

 

「……エヴ様? それは、何の拷問ですか?」

「いや、拷問っていうか……すごく凝りをほぐされてるんだけど。食後のリラックスタイムというか。」

「グルァ!」

 

 リーダーがルイーズたちを一瞥し、鼻を鳴らした。

「チッ、女かよ」という露骨なガッカリ感が伝わってくる。

 この世界、種族が違っても男女の価値観は共通らしい。

 リーダーは手でシッシッと追い払う仕草をし、再び僕の方へ向き直ると、今度は「コイツは私の獲物だ」と言わんばかりに、僕の頭を膝に乗せた。

 まさかの膝枕だ。

 

「……どうしましょう、副団長。」

 

 入り口で立ち尽くすネリーが、困惑しきった顔でルイーズに尋ねる。

 

「敵意は……なさそうですね。むしろ、エヴ様を丁寧に扱っているよう見えます。」

「ええ。……どうやら彼らにとって『アグリムに捧ぐ』というのは、『生贄にする』という意味ではなかったみたいね。」

 

 ルイーズは剣を納め、深いため息をついた。

 だが、その目は笑っていなかった。

 彼女の視線の先では、灰色の肌を持つ亜人の娘が、エヴァンの頭を撫で回し、仮面の隙間から伸びた舌で、ペロリとエヴァンの頬を舐めようとしていたからだ。

 

「……ですが。」

 

 ルイーズの背後から、ゴゴゴゴゴ……というどす黒いオーラが立ち昇る。

 

「エヴ様の『お世話』をするのは、我々マドゥワス騎士団の特権であり、義務です。……どこの馬の骨とも知れぬ仮面女たちに、その座を奪われてなるものですか。」

「同感だねぇ。」

 

 サーシャが、ボキボキと指を鳴らしながら歩み出る。

 

「マッサージだか何だか知らねぇが……アタシらの方がもっと気持ちよくさせてやれるってのを、分からせてやる必要がありそうだなぁ?」

 

 騎士たちの瞳に、対抗心という名の炎が宿る。

 言葉の通じない亜人たちの「野生のホスピタリティ」と、マドゥワス騎士団の「過保護な愛」。

 二つの巨大なエネルギーが、カステ高原の洞窟で衝突しようとしていた。

 

 

 ☆

 

 

「そこです! 僧帽筋の上部繊維、そこをもっと深く!」

「グルァッ!」

 

 洞窟内は、異様な熱気に包まれていた。

 祭壇の上でうつ伏せになった僕の背中をキャンバスに、マドゥワス騎士団と、灰色の亜人たちの「磨き上げ合戦」が繰り広げられているのだ。

 

「……あぁ、そこ。効くぅ……。」

 

 右半身を担当する亜人のリーダーは、香油を巧みに使い、筋肉のカットを際立たせるように流してくる。

 一方、左半身のルイーズは、武骨な手で凝りをほぐし、筋肉のハリを取り戻させる。

 彼女たちは競い合うように、より高度な技を繰り出してくる。

 サーシャに至っては、「足裏は任せな!」と僕の足を抱え込み、ゴリゴリとツボを押し始めた。

 痛い。でも気持ちいい。

 

 至福だ。

 旅の疲れが、汗と共に吹き飛んでいく。

 

「……それにしても、どうしてこんなに崇められているんだろう?」

 

 至福の時を過ごしながらも、僕はふと疑問を口にした。ただの珍しい客という扱いにしては、熱量が異常だ。まるで、待ち焦がれていた救世主を見るような目で、僕の筋肉を見つめている。

 

「エヴ様、そちらについてはあれをご覧ください。」

 

 ネリーが指差したのは、洞窟の壁面に描かれた、古びた壁画。そこには、赤や黒の顔料で、神の降臨のような様子が描かれていた。

 天から降り注ぐ光の中に立つ、一人の「男性」。

 丸太のような腕。岩のような胸板。

 この世界の華奢な男性像とはかけ離れた、圧倒的な「マッスル・ゴッド」だ。

 

「グルァ! ガウッ!」

 

 リーダーが手を止め、壁画と僕を交互に指差して興奮気味に叫んだ。

 言葉は分からないが、言いたいことは痛いほど伝わってくる。

 どうやら僕の体は、彼らの信仰する神そのものらしい。

 

「……なるほど。そういうことでしたか。」

 

 ネリーが納得したように頷き、解説を始めた。

 

「この部族の伝承にある『男神』……その姿が、鍛え上げられたエヴ様の肉体と酷似しているのでしょう。この世界では男性といえば『細身』が美徳とされますが、彼女たちにとっては『力強さ』こそが信仰の対象なのです。」

「つまり……僕がその神様の生まれ変わりだと思われてるってこと?」

「ええ。言わば『生ける御神体』ですね。……見てください、あのうっとりとした目を。」

 

 周囲の亜人たちを見れば、全員が頬を染め、僕の上腕二頭筋や大胸筋を拝むように見つめている。

 中には、こっそり僕の汗を拭った布をポケットにしまっている者もいる。ナニする気だ貴様。

 

「……素晴らしいです、エヴ様。」

 

 ルイーズが感極まったように、僕の背中に頬ずりをした。

 

「エヴ様が日々の鍛錬で培ったその肉体が、種族の壁を超えて『神』として認められたのです。……『ゴリラ』と呼ばれて落ち込んでいたあの日々が報われましたね!」

「言い方ァ! ……でもまぁ、悪い気はしないかな。」

 

 前世の記憶に基づいて、ただ「強くなりたい」一心で鍛えてきた体だ。

 それがこうして、誰かに、たとえ異種族でも肯定され、愛されるというのは、素直に嬉しい。

 

 「グルァ……。」

 

 マッサージが終わると、今度は「お色直し」の時間らしい。亜人たちが奥から恭しく運んできたのは、何かの獣の皮で作られた腰布と、ジャラジャラとした装飾品。

 きらびやかな装飾が施された衣装だった。

 だが、そのデザインは僕の想像を遥かに超えていた。

 

 下半身は極小面積のビルパン風な腰布だけ。

 そして上半身は――。

 

「えっ、これ……どうやって着るの?」

 

 渡されたのは、鎖と宝石で編まれたハーネスのようなものと、胸の先端を隠すための「金細工のニップルカバー」だった。

 この世界において、男性の胸は性的な象徴であり、人前で晒すのはご法度だ。正直、意味がわからないけれど。

 一応、「隠す」必要があるのだが……。

 

「ガウッ!」

 

 着させられた僕は、この世界の価値観で言えば、鏡がないのが救いなほどに淫らな姿になっていた。

 太い鎖が盛り上がった大胸筋に食い込み、胸の突起だけが黄金の装飾で覆われている。

 動くたびにジャラジャラと音が鳴り、隠しているはずなのに、逆に視線がそこへ吸い寄せられるような背徳的なデザインだ。

 

「オォ……ッ!」

 

 僕の姿を見た亜人たちのボルテージが最高潮に達した。彼女たちは手拍子を打ち、太鼓を叩き、僕の周りで踊り始めた。

 歓待の宴――いや、「降臨祭」の始まりだ。

 

 リーダーに手を引かれ、僕は祭壇の中央、一番高い場所に座らされた。

 そして差し出される謎の発酵酒。

 ドロッとした白濁色のソレは、飲む気を失せさせるには十分な見た目の割に、程よい酒勢の匂いする。

 えぇぇい、ままよっ!

 

「ガウッ!」

「あ、ありがとう……。」

 

 勧められるままに一口飲むと、カッと喉が熱くなり、全身に活力がみなぎってくる。

 度数は高いが、フルーティーで飲みやすい。

 見た目はグロテスクだが味は絶品だ。

 

 どんちゃん騒ぎをする亜人。

 言葉が伝わらずとも楽しそうなのが伝わってくる。

 

 いいね…………。祭りっぽいじゃないか……。

  

 僕はニヤリと笑い、ゆっくりと息を吸い込んだ。

 鎖が肌に食い込む感触が、なぜか僕の中の危ないスイッチを入れる。

 

 ……ふ。いいだろう。

僕は力強く足を踏み鳴らすと、お祭り騒ぎの亜人達の視線が集まってくる。

 一息ついて両腕を大きく広げてから、頭の後ろで組んだ。

 

「アブドミナル・アンド・サイ!!」

 

 バキィッ!!

 腹筋(アブドミナル)が洗濯板のように波打ち、太もも(サイ)の筋肉が鋼鉄のように浮き上がる。

 鎖がピンと張り詰め、今にも弾け飛びそうだ!

 

「ヴォオオオオオオッ!!?」

 

 亜人たちの絶叫が洞窟を揺るがした。

 彼女たちは目を剥き、口をあんぐりと開け、そのあまりの神々しい筋肉に震えている。

 洞窟内を照らす火の灯りが、オイルの塗られた僕の身体をテラテラと照らしている。

 

「まだだ! まだ終わらんよ!」

 

 僕はポーズを変える。

 右手を突き出し、左手で右手首を掴み、渾身の力で上腕二頭筋を収縮させる。

 

「フロント・ダブル・バイセップス!!」

 

 ギュッ!!!

 力こぶがピークを作り、胸の黄金の装飾が激しく揺れる。隠された「点」が強調され、筋肉の躍動と共に妖しく煌めいた。

 

「ギャァァァァッ!!」

「ガウッ……!」

 

 ドサッ。ドササッ。

 刺激が強すぎたのか、最前列にいた亜人たちが次々と白目を剥いて卒倒していく。

 だが、彼女たちの顔は恍惚に満ちていた。

 

「いいぞエヴ様! 鎖が悲鳴を上げている! ナイスバルク!」

 

 ルイーズが拳を突き上げて叫ぶ。

 完全にボディビル大会の観客だ。その頬はしっかりと赤みを帯びており、酔っているのがひと目でわかる。

 あの発酵酒を飲んだのだろう。

 よくよく見渡せば、騎士団の皆皆、同じような顔つきをしている。

 

「デカい! 肩にちっちゃいドラゴン乗せてんのかい!」

 

 サーシャもノリノリで野次を飛ばす。

 

「金細工が可哀想! 筋肉が服を食べています!」

 

 ネリーまで冷静な顔で謎の賛辞を送っている。

 部下たちの声援を受け、僕のボルテージも最高潮に達した。あぁ……気持ちいい……。

 最後にこの一撃を捧げよう。

 

「ラストだ……! この一撃で、君たちの信仰に応えよう!」

 

 僕は体を斜めに捻り、両手を前で合わせて胸筋を極限まで絞り込む。金細工と鎖がミチミチと弾けそうな音を立てている。もう少し行けば引き千切そうな程に。

 

「サイド……チェストォォォォッ!!」

 

 ドォォォォォン!!

 分厚い大胸筋が岩盤のように盛り上がり、鎖が「パキーン!」と音を立てて千切れ飛んだ!

 黄金のカバーだけが、奇跡的なバランスで張り付いている!そのギリギリの攻防こそが、まさにエロスとパワーの融合!僕は一体何を言っているんだ!?

 

「ピギィィィィィッ!?」

 

 リーダーの亜人が、限界を超えたのか、鼻からツーっと鮮血を流しながら、ゆっくりと後ろへ倒れていった。

 周囲の亜人たちも、全員が拝むように手を合わせながら、次々と気絶していく。

 洞窟内は、感動と興奮のあまり倒れた灰色の山で埋め尽くされた。

 

「……ふぅ。」

 

 僕はポーズを解き、あふれる汗を拭った。

 静寂が戻った洞窟には、満足げに眠る亜人たちの寝息だけが響いている。

 

「……………やりすぎたか。」

「いえ。……最高でした、エヴ様。」

 

 ルイーズが、鼻血を拭いながらサムズアップを送ってくれた。

 僕の胸元で揺れる黄金の装飾を見つめるその目は、亜人たちと同じくらい熱っぽかった。




ムチムチなのはエヴァンだ。
残念だったな。

メインキャラが増えてきたので....みんなの好きなキャラを教えてくれぇ!!!書くわよ〜!!!!

  • ルイーズ・ロンズデール
  • ネリー
  • サーシャ、クロエ、ミリア他騎士団
  • アンドレア殿下
  • ガーベラ
  • アグニ
  • バルバラ
  • 上記以外のキャラクターは感想等で教えてね
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