姫騎士(肉食)共から貞操を守りつつ、僕の騎士道がハードモードすぎる   作:お庭屋さん

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グロ表現あります。

活動報告の方へお知らせを掲載しております。
ぜひ御一読頂けますと幸いです。


第35話:くっ殺?ぶっ殺!!!

 

「『赤錆の風』……!?」

 

 僕がその名を呟いた瞬間、隊列の先頭を行く騎影が、こちらに気づいて速度を上げた。

 燃えるような赤髪が、雪景色の中で鮮烈なコントラストを描いてなびく。

 

「よォーーーーッ! 久しぶりだねぇ、色男ォ!!」

 

 雪原に響き渡る、鼓膜が破れそうなほどの大音声。

 間違いない。

 あの豪快すぎる笑い声、そして雪の中でも「寒くないの?」と聞きたくなるほど露出度が高すぎる軽装鎧。

 

「バルバラ……!?」

 

 彼女は僕たちの目前まで馬を寄せると、手綱を引いて豪快に急停止させた。

 馬が嘶き、雪を跳ね上げる。

 至近距離で見る彼女は、以前会った時よりもさらに野性味と、そして「長」としての貫禄を増していた。

 

「よう。随分と辛気臭い顔をしてるじゃないか。……デートの誘いに来たのにそんな顔するんじゃあないよ。」

 

 バルバラはニカっと笑い、白い歯を見せた。 

 その背後には、ずらりと並んだ百名の傭兵たち。全員が歴戦の猛者といった面構えで、武器の手入れも行き届いている。

 

「バルバラ、どうしてここに……。君たちは帝国との契約があったんじゃ……。」

「あァ? あんなケチな雇い主、こっちから願い下げさ!」

 

 彼女はペッ、と雪の上に唾を吐いた。

 

「命張って街道を守ってやってるのに、『備品の損耗は自己負担』だの『危険手当は出ない』だの、セコいことばかり言いやがる。……だから、見限ってやったのさ。」

「見限ったって……これだけの人数を連れてか?」

「ああ。アタシについてきたいって言う物好きどもを集めたら、いつの間にかこんな大所帯になっちまってね。」

 

 彼女は背後の部下たちを親指で指し、そして熱っぽい視線を僕に戻した。

 

「それに……風の噂で聞いたんだよ。あんたが、この辺境の領地に戻ったってな。」

 

 バルバラは馬から降り、雪を踏みしめて僕の馬――オニキスの側まで歩み寄ってきた。

 そして、遠慮なく僕の太ももを撫で回す。

 

「シルバッツの森で会った時、あんたは言ったろ? 『道が邪魔だったからどかしただけだ』って。……あの気障なセリフと、この美味そうな筋肉が忘れられなくてねぇ。」

「……それで?」

「決まってるだろ! あんたに見合うだけの『イイ女』になって、口説き落としに来たのさ!」

 

 彼女は両手を広げ、背後の百名の傭兵団を誇示するように示した。

 

「どうだい? こいつらは全員、アタシからの『結納品』さ!……これだけの数がいりゃあ、あんたの悩み事の一つや二つ、力ずくで解決できるだろ?」

 

 結納品。

 つまり、この百名の精鋭部隊を、僕への求愛(?)のために連れてきたというのか。

 なんというスケールのデカさ。そして、なんという頼もしさ。

 僕は呆れるよりも先に、体の奥底から震えるような安堵と感謝が湧き上がってくるのを感じた。

 絶望的な数の差。

 それを埋めるピースが、まさかこんな形で転がり込んでくるとは。

 

 ……いや待てよ。不自然なほどタイミングが良すぎる。

 野盗の襲撃と援軍(仮)が同時?

 そんなミラクル、そうそう起こってたまるか。

 コイツらどっかで合流するタイミングを見計らってたな?

 

 僕が断れない状況まで追い込まれてから自分たちを売り込んでくるとは抜け目のない奴め。

 背に腹はかえられない。かなり嫌な予感がするけれど、ダンテ市に被害が出ないようにするにはバルバラ達の手を借りる他ないだろう。

 

「……バルバラ。最高のタイミングで来てくれたな。」

 

 猛烈な嫌味を付け加えつつ、僕はオニキスの上から、彼女に向かって手を差し出した。業腹だが致し方なし。

 僕の本音に気づいたようで、バルバラはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

  

「今まさに、北から二百の野盗が迫っている。……この街を守るために、君たちの力を貸してくれないか?」

「ハッ! 二百の野盗? 雑魚掃除かよ、お安い御用だ!」

 

 バルバラは僕の手をガシリと握り返した。

 その握力は強く、熱い。

 

「契約成立だね! 報酬は弾んでもらうよ? ……金貨か、それとも『あんたの体』か。……ま、それは勝ってからの楽しみにとっておくさ!」

 

 彼女はウインクを飛ばすと、翻って自軍に向かって叫んだ。

 

「女郎ども! 聞いたなァ! 今回のクライアントは、アタシが惚れたこの色男だ! 泥船じゃねぇ、勝ち馬だぞ!」

「「「オオオォォォッ!!」」」

 

 傭兵たちが武器を掲げ、野太い歓声を上げる。

 その熱気が、雪原の寒さを吹き飛ばしていくようだ。

 

「……エヴ様。……複雑ですが、助かりましたね。本当に複雑ですけど……。」

 

 ルイーズが、安堵と嫉妬の入り混じった微妙な顔で呟く。

 ネリーも「背に腹は代えられません。……後で請求書を見るのが怖いですが。」と苦笑している。

 

 マドゥワス騎士団三十名。

 バルバラ傭兵団百名。

 計百三十名の混成部隊。

 

 これなら、戦える。

 いや、勝てる。

 

「行くぞ! 街には一匹たりとも通すな! ……全軍、迎撃ッ!!」

 

 僕の号令と共に、百三十の騎影が動き出した。

 雪煙を上げ、北の地平線を目指す。

 

 絶望は去った。

 ここから先は、蹂躙の時間だ。

 

 

 ☆

 

 

 

「女郎ども! 稼ぎ時だァ! クライアントに良いトコ見せてやんなッ!!」

 

 バルバラの裂帛の号令が、吹雪く雪原の空気を震わせた。

 それに応えるように、彼女の背後に控えていた傭兵団の中から、軽装の騎兵たちが飛び出した。

 その数、およそ三十。

 彼らは重い馬鎧を着けず、機動力に特化した装備で統一されている。手にするのは長槍と曲刀。

 雪深い足場などものともせず、風のような速さで側面へと展開していく。

 

「ヒャハハッ! 一番槍は頂いたァ!」

 

 先頭を行く隻眼の女傭兵が叫び、馬の腹を蹴る。

 彼女たちは、正面から突っ込んでくる野盗の群れに対し、綺麗な弧を描いて横腹へと突撃した。

 

 鈍い衝突音と共に、野盗の隊列が弾け飛ぶ。

 統率の取れていない野盗たちは、突然現れた高速の騎兵隊に対応できない。槍に貫かれ、馬蹄に踏み潰され、瞬く間に混乱の渦へと叩き落とされた。

 

 悲鳴と怒号が交錯し、真っ白だった雪原はあっという間に血に染まっていく。

 バルバラの軽騎兵たちは、深入りして足を止めるような真似はせず、敵陣を食い破るだけ食い破ってそのまま反対側へと突き抜けていった。

 

 見事な「かき回し」だ。

 敵の指揮系統は寸断され、前進の勢いは完全に削がれた。

 

「……流石だな。高い金を払う価値がある。」

 

 僕はその光景に舌を巻きつつ、愛馬オニキスの手綱を強く握りしめた。

 敵の陣形は崩れた。

 ここしかない。この好機を逃せば、敵は数に任せて再集結し、泥沼の消耗戦になる。

 

「総員、抜剣!!」

 

 僕の声に呼応し、背後の三十名の騎士たちが一斉に各々の武器を抜き放つ。

 金属音が冷たい空気に響き渡る。

 ルイーズがツヴァイハンダーを構え、ネリーがアーミングソードで盾を叩いた。

 

「バルバラたちが開いた傷口を、僕たちが抉じ開ける! ……我に続けッ!!」

「「「ウラァァァァァ!!!」」」

 

 オニキスの腹を蹴る。

 漆黒の馬体が、弾丸のように加速し、雪煙を上げ、僕たちは一直線に敵陣の中央――混乱の渦中へと突っ込んだ。

 

「シィヤァッ!!」

 

 最初に接敵したのは、慌てて槍を構えようとしていた野盗の小集団だ。

 僕は身体強化の魔力を右腕に乗せ、すれ違いざまに剣を一閃。

 

 鉄と鉄がぶつかる火花。

 野盗の槍が飴細工のようにへし折れ、僕のロングソードがそのまま首を捉える。

 襲来する重騎兵に戦慄していた野盗は断末魔をあげる間もなく、頭が乗っかっていた場所から鮮血を吹き上げて絶命した。

 

 僕に続いて、ルイーズが暴風のように突撃する。

 彼女は大剣を風車のように振り回し、群がる敵を鎧ごと薙ぎ払っていく。

 ネリーは冷静に隙を突き、魔法で凍らせた地面で敵を転倒させ、的確に急所を突く。

 サーシャたちも負けていない。個々の武力において、マドゥワス騎士団は野盗ごときに後れを取るはずがないのだ。

 

「ひ、ひぃぃッ! なんだコイツら!?」

「強すぎる! 騎士だ! 本物の騎士だぞ!」

 

 野盗たちの顔に、恐怖の色が浮かぶ。

 彼女たちは数で押し潰すつもりだったのだろう。だが、傭兵団にかき回され、さらに正面から精鋭に蹂躙され、戦意は急速に崩壊していく。

 

「逃がすな! 一匹残らず叩き潰せ!」

 

 僕たちは足を止めない。

 敵陣を縦横無尽に駆け巡り、抵抗する者を排除し続ける。

 その背後では、バルバラ率いる残りの傭兵部隊――重装歩兵や弓兵たちが、扇状に展開して包囲網を敷いていた。

 混乱に乗じて逃げ出そうとする野盗や、僕たちの背後を突こうとする小賢しい手合いを、彼女たちが確実に仕留めていく。

 

「おらおらァ! どこへ行こうってんだい!」

「ここから先は通行止めだ! 命を置いていきな!」

 

 傭兵たちの壁は厚い。

 野盗たちは袋の鼠だ。

 圧倒的な優勢。勝利は目前に見えた。

 ――その時だった。

 

「ええい、どいつもこいつも不甲斐ない! 雑魚相手に何を手間取っているんだ!」

 

 敵陣の奥から、空気をビリビリと震わせるような怒号が響いた。

 周囲の野盗たちが、怯えたように道を空ける。

 その奥から現れたのは、一際巨大な影だった。

 

「……あれが、頭目か。」

 

 僕はオニキスの足を止め、その姿を見据えた。

 身長は二メートル近いだろうか。全身を分厚い毛皮と鉄板で継ぎ接ぎした鎧で固め、丸太のように太い腕には、身の丈ほどもある巨大なハルバードが握られている。

 顔には無数の傷跡があり、凶暴な獣のような瞳が僕を射抜いていた。

 あきらかに、その辺の野盗とは格が違う。歴戦の猛者だ。

 

「おい、そこの男! テメェが大将か?」

 

 女頭目はハルバードの石突きで地面を叩き、僕を指差した。

 

「チッ……女手が足りないからって、男を戦場に出すなんざ世も末だな。だが、顔だけはいいじゃねぇか。」

 

 彼女は下卑た笑みを浮かべ、舌なめずりをした。

 

「俺の名はガンドラ。この辺りじゃ少しは知られた顔だ。……なぁ、ボウヤ。俺の愛人になるなら、命だけは助けてやってもいいぜ? ほらいいなよ、『くっ…殺せ!!!』ってな!」

 

 周りの野盗共は頭目が現れてから落ち着きを取り戻しつつある。それどころか、ガンドラと名乗った頭領の挑発にニタニタと気色の悪い笑みを浮かべて余裕の表情すら浮かべている。

  

 挑発。

 そして、男を戦利品としてしか見ていない、歪んだ欲望。

 背後でルイーズが「ブチ殺す」と呻くのが聞こえたが、僕は片手で彼女を制した。

 

「……断る。」

 

 僕は静かに剣を構え、オニキスから降り立った。

 馬上のままでは小回りが利かない。一対一で確実に仕留めるなら、地上がいい。

 

「僕の体は安くないし、君の趣味に付き合うつもりもない。……それに。」

 

 僕は切っ先をガンドラに向けた。

 

「僕の領地に土足で踏み込んだ代償は、高くつくぞ。くっ殺?ふざけんな。ぶっ殺す!!!」

「ハッ! 生意気な口を! その綺麗な顔、恐怖で歪ませてやるよ!」

 

 ガンドラが咆哮し、突っ込んできた。

 巨体に似合わぬ速度。

 振り上げられたハルバードが、暴風を纏って振り下ろされる。

 ――速い。

 だが、見えないほどじゃない。

 僕は身体強化の魔力を脚に集中させ、半歩、横へ踏み込んだ。

 

 ハルバードが僕の残像を切り裂き、雪原に深いクレーターを作る。なるほど、単に膂力だけではこうはならない。コイツ、身体強化が使えるな?

 雪飛沫が舞う中、僕は間合いを詰めた。

 

「チョコマカと!」

 

 ガンドラは力任せにハルバードを薙ぎ払う。

 その一撃は、まともに受ければ大木さえへし折る威力だ。普通の騎士なら盾で受けるか、大きく後退するだろう。

 だが、僕は違う。

 

 ………剣道なら、これは隙だらけだ。

 

 僕は逃げなかった。

 迫りくる刃に対し、自身の剣を斜めに合わせる。

 受け止めるのではない。力を逸らすのだ。

 

 金属同士がぶつかる鋭い音。

 剣の腹でハルバードの軌道を滑らせ、頭上へと受け流す「擦り上げ」。

 ガンドラの態勢が、勢い余って大きく泳ぐ。

 ガラ空きになった胴体。

 

「……しまっ――。」

 

 彼女の目が驚愕に見開かれる。

 男の細腕に、自分の剛撃が逸らされるなど、夢にも思っていなかったのだろう。

 

「終わりだ。」

 

 僕は踏み込み、魔力を右腕に爆発させた。

 剣の柄を両手で握り、最短距離で振り抜く。

 

「オォッ!!」

 

 気合一閃。

 僕の剣は、ガンドラの分厚い鎧の隙間――脇腹を正確に捉え、深々と切り裂いた。

 

 鮮血が雪原に散る。

 ガンドラは苦悶の声を上げ、ハルバードを取り落として膝をついた。

 勝負ありだ。

 

「……ば、馬鹿な……。男、ごときに……。」

 

 彼女は信じられないものを見る目で僕を見上げ、そのままどうと雪の中に倒れ込んだ。

 戦場に一瞬の静寂が落ちる。

 野盗たちは、自分たちの最強の頭目が、たった一人の「男」に一撃で敗北した光景を前に、完全に戦意を喪失していた。

 

「……頭目ガンドラ討ち取ったり!」

 

 僕が剣を掲げて叫ぶと、バルバラがニヤリと笑い、勝どきを上げた。

 

「聞いたかお前ら! 大将首は色男が取った! ……残りの雑魚は一匹残らずひっ捕らえろ! 逃がすなよォ!!」

 

 ワァァァッ!! という関の声が上がり、傭兵たちと騎士団が雪崩れ込む。

 それはもう、戦いではなかった。

 一方的な掃討戦だった。

 

 

 ☆

 

 

 頭目を失った野盗の群れは、もはや敵ではなかった。

 恐怖に駆られて逃げ惑う者を、バルバラの騎兵隊が追い込み、マドゥワス騎士団が各個撃破していく。

 雪原は一時、怒号と悲鳴に包まれたが、それも長くは続かなかった。

 太陽が中天に差し掛かる頃には、戦場には再び冬の静寂が戻りつつあった。

 

「……終わったな。」

 

 僕はオニキスの首を撫で、荒い息を整えた。

 周囲を見渡せば、雪の上に赤黒く点々と倒れ伏す野盗たちの姿。

 こちらの損害は……残念ながら無傷とはいかない。少なからず傭兵団には死者も出たようだ。我がマドゥワス騎士団は軽傷者が数名のみ。奇跡的な大勝利だ。

 

「ヒューッ! やるじゃないか、色男!」

 

 血振るいをした斧を肩に担ぎ、バルバラが馬を寄せてきた。

 返り血を浴びて赤髪がさらに鮮烈に見えるが、その表情は晴れやかだ。

 

「敵の大将との一騎打ち、見させてもらったよ。……あの体格差を、力押しじゃなく技術で制するとはね。惚れ直したよ。」

「よしてくれ。……君たちが周りを固めてくれたおかげだ。」

「謙遜するんじゃないよ。……ま、これで『結納品』の性能テストも合格ってところかい?」

 

 バルバラはニカっと笑い、背後の傭兵たちを親指で指した。

 彼女たちもまた、勝利の余韻に浸りながら武器を掲げている。正規軍のような規律はないが、個々の実力と団結力は本物だ。

 

「ああ。最高の働きだった。……約束通り、報酬は弾ませてもらうよ。」

「アッハッハ!いいねぇ!期待してるよ! ……さて、女郎ども! 凱旋だ! マドゥワスの若様に続けェ!!」

 

 バルバラの号令で、百三十の騎影が再び動き出した。

 向かうは、守り抜いた故郷、ダンテ市。

 帰り道、雪は止み、雲の切れ間から薄日が差していた。

 白銀の世界を、勝者たちの隊列が進む。

 心地よい疲労感が体を包む中、僕の胸には安堵と共に、早く皆の顔を見たいという想いが込み上げていた。

 ダンテ市が見えてくる。

 街の入り口、防衛ラインとして築かれたバリケードの向こうに、黒山の人だかりが見えた。

 

「……おーい! 帰ってきたぞー!!」

「マドゥワスの旗だ! 若様たちが帰ってきた!!」

 

 見張り役の男性が叫び、歓声が爆発した。

 バリケードが取り除かれ、僕たちが街へ入ると、そこには住民たちが総出で待ち構えていた。

 先頭に立っているのは、農具を構えたまま震えて待っていた、あの男性たちだ。

 

「若様……! よく……よくご無事で……!」

 

 一人の青年が、泣きそうな顔で駆け寄ってくる。

 彼らは「最後の砦」として、一歩も退かずに家族を守ろうとしていたのだ。その緊張が解け、へなへなと座り込む者もいる。

 

「ただいま。……皆が無事でよかった。」

 

 僕が馬から降りると、わっと歓声が上がり、もみくちゃにされた。

 

「凄い……! あの数の野盗を、半日もかけずに追い払っちまった!」

「見ろよ、あの傭兵たち! 強そうだねぇ!」

 

 街の女性たちが、バルバラ率いる「赤錆の風」を興味津々といった様子で見ている。

 本来なら、武装した余所者は警戒される対象だ。だが、今の彼女たちは「街を救った英雄」として迎え入れられている。

 

「へぇ、ここがあんたの街かい。……悪くないね。活気がある。」

 

 バルバラが馬上で周囲を見回し、満足げに頷いた。

 その視線が、農具を持って整列する男性たちに止まる。

 

「おや? なんだい、あの男たちは。……随分といい顔をしてるじゃないか。」

「僕の自慢の領民だ。……彼らが後ろを守ってくれたから、僕たちは前で戦えたんだ。」

「ハッ! 騎士様ってのは、口が上手いねぇ!」

 

 バルバラは豪快に笑い、男性たちに向かってウインクを飛ばした。

 男性たちはドギマギしながらも、悪い気はしないようで顔を赤らめている。

 

「ガウッ! アグリム! ……コイツ、ナニ?」

 

 不意に、僕の腰元でアグニが声を上げた。

 彼女の手には、戦利品なのか、キラキラ光る石のついた首飾りが握られている。

 それをバルバラに見せびらかすように突き出した。

 

「おっ? いいもん持ってるねぇ、嬢ちゃん。……そいつは戦利品かい?」

「ガウ! ワタシ、ツヨイ! コレ、アグリムニ、ヤル!」

「ほう、殊勝な心がけだ。……気に入った! あんた、名前は?」

「アグニ!」

「いい名前だ! アタシはバルバラ。……仲良くやろうぜ、アグニ!」

 

 バルバラが大きな手でアグニの頭をガシガシと撫でる。

 アグニは一瞬唸ったが、すぐに「悪くない」といった顔でされるがままになっていた。

 野生児と女傑。波長が合うらしい。

 屋敷の前まで戻ると、ガーベラと使用人たちが整列して出迎えてくれた。

 

「おかえりなさいませ、エヴァン様。……そして、ようこそお越しくださいました、バルバラ殿。」

 

 ガーベラは、百名の傭兵団を前にしても眉一つ動かさず、完璧な礼をした。流石は我が家の執事。僕なんかより余程貫禄がある。

 

「勝利の報は届いております。……皆様のために、温かい食事と酒、そして宿の準備を整えております。」

「話が早いねぇ! さすがは色男の家の執事だ!」

 

 バルバラが手を叩いて喜ぶ。

 傭兵たちからも「酒だー!」「飯だー!」と歓声が上がる。

 ダンテ市の夜は、勝利の宴で更けていった。

 街の広場では焚き火が焚かれ、備蓄の食糧とバルバラたちが持参した酒が振る舞われる。

 男たちも、女たちも、騎士も、傭兵も。

 垣根を超えて杯を交わし、今日の勝利と、明日の平和を祝う。

 僕は喧騒から少し離れた場所で、その光景を眺めていた。

 隣には、いつものようにルイーズとネリーが寄り添っている。

 

「……終わりましたね、エヴ様。」

「ああ。一時はどうなるかと思ったけど……バルバラたちも加わって、街はもっと賑やかになるぞ。」

 

 人口が増えれば、消費も増える。

 だが、それは同時に「力」が増えることでもある。

 この冬を越えれば、ブレスダンはきっと、以前より強く生まれ変わるはずだ。

 

「ふふ。……覚悟しておきます。まずは、あの騒がしい傭兵団をどう『しつけ』るか、ですね。」

 

 ネリーがどんちゃん騒ぎをしている傭兵団を眺めつつ、不敵に笑う。

 ルイーズも剣を撫でながら、「エヴ様に手出しするようなら、私が相手になります」と頼もしいことを言ってくれる。

 

 雪は止み、夜空には満天の星が輝いていた。

 再生の灯火は、もう揺らがない。

 新たな仲間と、確かな絆を胸に、僕たちの冬は熱く、賑やかに過ぎていくのだろう。

 

メインキャラが増えてきたので....みんなの好きなキャラを教えてくれぇ!!!書くわよ〜!!!!

  • ルイーズ・ロンズデール
  • ネリー
  • サーシャ、クロエ、ミリア他騎士団
  • アンドレア殿下
  • ガーベラ
  • アグニ
  • バルバラ
  • 上記以外のキャラクターは感想等で教えてね
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