姫騎士(肉食)共から貞操を守りつつ、僕の騎士道がハードモードすぎる 作:お庭屋さん
王都ベルリネの夜は、二つの顔を持っている。
一つは、魔導街灯が煌々と輝き、貴族たちの夜会が繰り広げられる「光の顔」。
そしてもう一つは、その光が届かない場所で、貧困と犯罪が静かに蠢く「闇の顔」だ。
僕たちは今、その最も深い闇の中にいた。
「……ここですね。」
先頭を歩くネリーが、廃墟と化した建物の陰で足を止めた。
ここは王都の北端、スラム街の中でも特に荒廃が進んだ廃棄区画だ。
かつては工房などが並んでいたらしいが、今は崩れた瓦礫の山と、鼻をつく異臭が漂うだけのゴーストタウンと化している。
人通りはなく、野良犬さえも寄り付かないような、死んだ場所。
「ギルダさんの地図によれば、この瓦礫の下に『旧地下水路』への入り口があるはずです。」
ネリーが手元の羊皮紙――元近衛兵ギルダから託された古びた地図を、魔導ランタンの微かな光で照らし出す。
そこには、数百年前の王都の地下構造が、震える線で記されていた。
「……しかし、酷い臭いですね。地上でこれなら、中はどれほどか……。」
ルイーズが顔をしかめ、袖口で鼻を覆った。
彼女は隠密行動のために軽装の革鎧に着替えているが、その背中には布に巻いた愛剣ツヴァイハンダーをしっかりと背負っている。どんな場所でも、主君を守るための剣は手放さないという意思表示か?
頼もしいことこの上ない。
「文句を言っても始まらないよ。……ここが、母上を助けるための唯一の道なんだ。」
僕は瓦礫の山に近づき、手をかけた。
身体強化の魔力を練り上げる。
筋肉が熱を帯び、血管が浮き上がる。
「ふんっ……!」
ズズズ……。
大人が数人がかりでも動かないような巨大な石材を、僕は音を立てないように慎重に、かつ強引に持ち上げた。
石材の下から現れたのは、地面に埋め込まれた錆びついた鉄格子だった。
太い鉄の棒は赤錆に覆われ、鎖と南京錠で厳重に封印されている。だが、その封印も数百年という歳月には勝てず、触れれば崩れ落ちそうなほど朽ちていた。
「……開けるぞ。」
僕は鎖を掴み、指先に力を込めた。
バキンッ、という乾いた音がして、鎖が砕け散る。
続いて、重い鉄格子を持ち上げ、横へとずらした。
その瞬間、地底から噴き出したのは、暴力的なまでの「腐敗」の風だった。
「ぐっ……!?」
「ケホッ、ケホッ……!」
鼻が曲がる、という表現が生ぬるく感じるほどの悪臭。
腐った水、カビ、そして生物の死骸が長い時間をかけて熟成されたような、濃密な死の臭いだ。
あまりの強烈さに、ネリーやルイーズが涙目で後ずさる。
「ガウッ……! クサイ!! ハナ、イタイ!!」
アグニが悲鳴を上げ、両手で鼻を抑えてのたうち回った。
嗅覚が鋭い彼女にとっては、この臭気は毒ガスにも等しい攻撃だろう。
「大丈夫か、アグニ。……無理なら、外で待っていてもいいんだぞ?」
僕が背中をさすってやると、アグニは涙目で首を横に振った。
「イヤ! ……イク! アグリムト、イッショナラ、ヘイキ! ……鼻、ツメル!」
彼女は落ちていた布切れを丸め、自分の鼻の穴にギュウギュウと詰め込んだ。
見た目はかなりシュールだが、彼女なりの覚悟の表れだと思う事にする。
その健気さに、僕も腹を括ろう。
「よし。……行こう。」
僕は暗黒の口を開けた竪穴に、縄梯子を下ろした。
梯子が軋む音だけが、静寂に響く。
その先にあるのは、光の届かない奈落。
だが、その闇の底だけが、囚われの母上へと繋がっているのだ。
僕は先頭を切って、梯子に足をかけた。
一段、また一段と降りるごとに、空気が湿り気を帯び、肌にまとわりつくような不快感が増していく。
地下数メートル。
石造りの床に足がついた時、靴底が「グチャリ」と嫌な音を立てた。
「……灯りを。」
僕の合図で、ネリーが魔法を行使する。
「『ライト』」
彼女の掌に浮かんだ青白い光の球が、周囲の闇を切り裂いた。
照らし出されたのは、想像を絶する光景だった。
半円形の天井を持つ、石造りの水路。
壁一面には見たこともない蛍光色の苔がびっしりと張り付き、脈打つように微かな光を放っている。
足元には、黒いヘドロのような汚水が、緩やかな流れを作っていた。水面には油膜が浮き、正体不明の気泡がポコポコと弾けている。
「……これが、旧王都の地下……。」
降りてきたルイーズが、絶句して辺りを見回した。
かつては王都の排水を支えていた水脈。だが、廃棄されて数百年。ここはもう、人の領域ではない。独自の生態系を持った、異界の迷宮だ。
「地図によれば、この水路を北へ進み、三つの分岐を超えた先に、王城の地下へと続く跳ね橋があるはずです。」
ネリーが地図とコンパスを確認する。
方向感覚が狂いそうな閉塞感だ。地図がなければ、数分で遭難していただろう。
「道なりに進もう。……足元に気をつけて。何が沈んでいるか分からない。」
僕たちは隊列を組んだ。
先頭は僕。中央にアグニとネリー。殿にルイーズ。
狭い通路だ。横幅は二人並ぶのがやっと。
ペタ、ペタ、という粘着質な足音が響く。
進むにつれ、悪臭にも少しずつ鼻が慣れてくる……ということはなく、むしろ濃くなっている気がする。
「アグリム……。ナニカ、イル。」
鼻に詰め物をしたアグニが、僕のコートの裾を引っ張った。
「前方か?」
「ウン。……ベトベト、スル、オト。」
ベトベトする音。
嫌な予感しかしない擬音だ。
僕は魔導ランタンの光量を上げ、前方の闇を照らした瞬間。
――ボタッ。
天井から、何かが落ちてきた。
それは水面に落ちると、跳ねることなく「広がり」、そして「盛り上がった」。
「……ッ! 上だ!」
僕が叫ぶと同時に、天井の闇からボタボタと雨のように「それ」が降り注いだ。
緑色の、半透明な粘液の塊。
それらは地面に落ちると、互いに融合し、震えながら形を成していく。
「スライム……!? いえ、色が違います!」
ネリーが叫ぶ。
通常のスライムは青や透明だが、こいつらはドブのような焦げ茶色をしており、体内には消化されなかった骨やゴミが浮いている。
そして何より、その体表からは湯気のような酸の煙が立ち上っていた。
『モルダースライム』
汚水と魔力が化学反応を起こして生まれた、地下水路特有の変異種。
物理攻撃を無効化し、触れたものを腐食させる、極めて厄介な掃除屋だ。
「グルルゥ……!」
それだけではない。
通路の奥から、無数の赤い目が光った。
キーキーという耳障りな鳴き声と共に現れたのは、犬ほどの大きさがある巨大なネズミの群れ。だが、その手には粗末な石器が握られ、腰には布切れを巻いている。
『ラットゴブリン』
知能を持ち、病原菌を武器に集団で狩りをする、地下の暴徒たち。
「……歓迎されているようですね。」
ルイーズが苦々しげに呟く。
前方はスライムの壁。後方はネズミの軍勢。
狭い通路での挟撃だ。
「総員、構えろ! ……この汚泥の海を、強行突破するぞ!」
僕が剣を抜き放つと同時に、地下水路の静寂は、魔獣たちの咆哮によって破られた。
王城への道は、やはり平坦ではない。
泥と、酸と、病魔が蔓延る地獄の行軍が幕を開けた。
☆
「シィヤァッ!!」
狭い通路に、ルイーズの気合が響き渡る。
彼女は背中のツヴァイハンダーを抜き放ち、迫りくるモルダースライムの群れに向かって一閃した。
だが。
ガギィィィン!!
鈍い金属音と共に、火花が散る。
刀身の先端が、石造りの壁に深く食い込んで止まったのだ。
「くっ……! 狭い……!」
ルイーズが忌々しげに舌打ちをする。
彼女の武器は、広大な戦場でこそ真価を発揮する長大な刃だ。横幅が二人分しかないこの地下水路では、横薙ぎはおろか、斜めに振り下ろすことさえままならない。
本来なら敵を両断しているはずの一撃が、壁に阻まれて勢いを殺される。
その隙を、魔獣たちは見逃さなかった。
壁に張り付いていたスライムたちが、ルイーズの剣を伝って、あるいは頭上から滴り落ちるようにして彼女に襲いかかる。
汚物にも似た色の粘液が、ジュウウウ……と嫌な音を立てて彼女の革鎧を焦がす。
「ッ……! この、軟体生物風情が!」
ルイーズは剣を強引に引き抜き、ポメルでスライムを殴りつける。
だが、相手は流動体だ。衝撃は吸収され、殴った拳に粘液がまとわりつくだけ。
「離れてください、ルイーズ! 物理攻撃は相性が悪すぎます!」
後方からネリーが叫んだ。
彼女はすでに詠唱を終え、掌に冷気を収束させている。
「水路ごと凍てつけ――『フリージング・ウェイブ』!」
ネリーが手をかざすと、猛烈な冷気が扇状に吹き荒れた。
汚水が瞬時に凍りつき、迫りくるスライムたちが、その不定形のまま氷の彫像へと変わっていく。
酸の煙さえも凍結し、キラキラとダイヤモンドダストのように舞い散った。
「……すまん、助かった。」
「礼には及びません。……エヴ様!」
ネリーの指示で、僕は凍りついたスライムの群れに向かって踏み込んだ。
カチコチに固まった粘液は、もはやただの氷塊だ。
僕は剣の腹で、ゴルフのスイングのように思い切り叩く。
パァァァンッ!!
爽快な破砕音と共に、スライムたちは粉々に砕け散った。
茶色の氷片が散弾のように飛び散り、後続のスライムたちを突き刺す。
「よし、前衛は崩した! ……次は奥だ!」
スライムの壁が消えた向こう側。
暗闇の奥から、キーキーという嘲笑うような鳴き声が響いている。
ラットゴブリン共だ。
奴らはスライムを盾にして距離を取り、安全圏から石礫や、病原菌を含んだ汚物を投げつけてきている。
「ガウッ! キタナイ! アグリム、アレ、トドカナイ!」
アグニが飛んでくる汚物を避けながら喚く。
直線的な通路では、飛び道具を持つ相手は厄介だ。こちらが間合いを詰めようとすれば、集中砲火を浴びる。盾を持つネリーは防げるが、攻め手に欠ける。
「……僕が行く。」
僕は剣を逆手に持ち直し、深く腰を落とした。
身体強化の魔力を練り上げる。
足の裏、太もも、そして背筋へ。全身をバネに変えるイメージ。
「エヴ様!? 正面から突っ込んでは的になります!」
「正面からは行かないよ。……上下左右、使えるものは全部使う!」
僕は地面を蹴った。
ただし、前方へではない。
斜め上方――壁に向かって。
垂直に近い壁を駆け上がる。
一歩、二歩。重力が仕事を始める前に、さらに反対側の壁へと跳躍する。
ジグザグに、三角飛びの要領で高速移動。
狭い通路だからこそ可能な、三次元的な機動だ。
「ギギッ!?」
ラットゴブリンたちが、天井付近を高速で迫ってくる影に気づき、慌てて石を投げる。
だが、遅い。
僕は天井の梁を蹴り、弾丸のように群れの真ん中へと落下した。
「せーぇのぉ!!!」
着地の衝撃を乗せ、剣を地面に叩きつける。
衝撃波が汚水を巻き上げ、周囲のラットゴブリンたちを吹き飛ばした。
陣形が崩れる。
パニックに陥ったネズミどもが逃げ惑う。
「今だ! やってくれ!」
僕が叫ぶと、待機していたルイーズとアグニが飛び込んできた。
ルイーズは長剣を捨て、腰のダガーを二刀流で構えている。
「よくもエヴ様に汚物を……! 万死に値します!」
大型武器が使えないなら、手数で勝負する。彼女は近接格闘の鬼となって、次々とラットゴブリンの首を刈り取っていく。
アグニも負けていない。
小柄な体躯を活かして敵の股下を潜り抜け、爪と牙で急所を食い破る。
「ヨワッチイ! アグリムノ、テキジャナイ!」
戦況は一変した。
数に物を言わせていた群れも、懐に入り込まれれば脆い。
数分後。
最後のラットゴブリンが水路に沈み、辺りに静寂が戻った。
「……ふぅ。片付いたか。」
僕は剣についた体液を振り払い、息を整えた。
周囲は死屍累々。悪臭がさらに酷くなった気がするが、今は気にしていられない。
「お見事です、エヴァン様。壁走りの機動……どこであの様な軽業を?」
「うーん、普段のアグニを参考にしてみたんだけど、なかなか疲れるしあんまり使うもんじゃないね。」
ネリーが感心したように、しかし少し呆れたように言った。
「それにしても、この装備では限界があります。」
ルイーズが、壁に傷をつけてしまったツヴァイハンダーを愛おしそうに撫でながら溜息をつく。
確かに、彼女の武装はこの地形には不向きだ。
だが、ここから先はさらに深部へ向かう。魔獣も強力になるだろう。
「……アグリム。……奥。」
アグニが、進行方向の暗闇を睨みつけて唸った。
彼女の鼻は、悪臭の奥にある、より濃密な「死」の気配を捉えているようだ。
「ああ。ここまでは前座ってことか。」
僕は魔導ランタンを掲げ、先を照らした。
水路の水位が、徐々に上がってきている。
ここまでは足首程度だった汚水が、膝下まで迫ろうとしていた。
水中戦、あるいは水陸両生の敵。
「……気を引き締めよう。母上の元へ辿り着くまで、泥水だろうが何だろうが泳ぎ切るぞ。」
僕たちは隊列を組み直し、さらなる深淵へと足を踏み入れた。
背後で、破壊されたスライムの残骸が、再び融合しようと蠢いているのを尻目に。
☆
地下水路の深部へと進むにつれ、環境はさらに悪化していた。
水深は膝上まで達し、泥を含んだ重い水流が足にまとわりつく。
魔導ランタンの光が届かない水面下には、何が潜んでいるか分からない恐怖があった。
「ガウッ……。ツメタイ。……毛、ヌレル。キライ。」
アグニが不快そうに足を振り上げ、僕の背中におんぶをせがんでくる。
普段なら甘やかすところだが、今は戦闘中だ。
「我慢してくれ、アグニ。……君の鼻だけが頼りなんだ。」
「ウゥ……。ワカッタ。アグリムノタメ、ガマンスル。」
彼女はしぶしぶ水の中を進むが、その耳は常にピクリと動き、周囲の気配を探っている。
「……地図によれば、この先の広い貯水槽を抜ければ、王城の地下へと続くメンテナンス用の竪穴があるはずです。」
ネリーが地図とコンパスを確認し、前方を指差した。
その先には、少し開けた空間が見える。
かつて汚水を一時的に貯めていた調整池のような場所だろうか。天井が高くなり、そこだけ異様なほどの静寂に包まれていた。
「……静かすぎる。」
ルイーズが短剣を構え、周囲を警戒する。
ラットゴブリンの鳴き声も、スライムの這う音もしない。
それはつまり、ここが「他の魔獣が寄り付かない場所」であることを意味していた。
――ボコッ。
突如、水面が大きく揺れ、巨大な気泡が弾けた。
腐った卵のような強烈な硫黄臭が漂う。
「アグリム! ……シタ! シタカラ、クル!!」
アグニが叫んだ瞬間、水面が爆発した。
大量の汚水を撒き散らしながら、水中から巨体が躍り出た。
全長五メートルはあろうかという、巨大な爬虫類。
全身を覆う鱗は苔とヘドロで緑色に変色し、その隙間からは絶えず強力な酸が分泌され、触れた水を白濁させている。
『アシッドアリゲーター』
王都の地下で数百年、汚泥と魔力を喰らい続けて肥大化した、水路の主だ。
「グルルルァァッ!!」
ワニが大きく口を開け、咆哮する。
その口内には、鉄さえ噛み砕く鋭い牙がびっしりと並んでいた。
「デッケェな……!」
「酸の霧を吐いてきます! 触れれば火傷じゃ済みませんよ!」
ネリーが叫び、即座に盾を展開する。
ワニは巨体に似合わぬ敏捷さで尻尾を振るい、汚水の津波をこちらへ叩きつけてきた。
「散開ッ!!」
僕たちは左右に飛び退いた。
直撃を受けた壁が、酸でジュウウと音を立てて溶けていく。
まともに食らえば骨まで溶かされる威力だ。
「おのれ、爬虫類風情が……! 私の剣の錆にしてくれます!」
ルイーズが激昂し、背中のツヴァイハンダーを抜き放つ。
ここは天井が高い。大剣を振るうスペースはある。
彼女は水飛沫を上げて突進し、浑身の力で剣を振り下ろした。
ガギィィンッ!!
硬質な音が響き、剣が弾かれた。
ワニの背中の鱗は、鋼鉄以上に硬い。刃が通らないどころか、衝撃でルイーズの手が痺れている。
「硬い……!? エヴ様、斬れません!」
「魔法も効きにくいです! 表面の粘液が魔力を中和しています!」
ネリーの氷の矢も、ワニの体表で弾けて砕け散った。
物理も魔法も通りにくい。その上、足場は最悪の水の中。
ワニは僕たちを嘲笑うように水中へ潜り、死角からアグニに狙いを定めた。
「ガウッ!?」
水中からの奇襲。アグニが反応するが、足を取られて回避が遅れる。
巨大な顎が、彼女を噛み砕こうと迫り――。
「させるかッ!!」
僕は身体強化を最大出力で発動させ、水面を蹴った。
爆発的な加速で二人の間に割って入り、迫りくるワニの上顎と下顎を、両手でガシリと受け止める。
凄まじい衝撃が腕に走り、腕や肩からブチブチと筋繊維の千切れる嫌な音がする。
だが、止めた。
僕の腕の筋肉が悲鳴を上げ、血管が浮き出る。ワニの咬合力は数トンにも及ぶだろう。だが、僕の筋力はそれに負けない。
「ぬ、ううぅぅぅ……ッ!!」
「アグリム!?」
「手出しはさせない! ……ネリー! 足場を!」
「はいッ! 『フロストフロア』!」
ネリーが剣を水面に突き立てると、僕の足元を中心に、水面が一瞬で凍結し、強固な氷のステージが形成された。
足場さえあれば、こちらのものだ。
「ルイーズ! 腹だ! 腹を狙え!いくぞ!?」
僕はワニの口をこじ開けたまま、その巨体を強引に持ち上げた。
背負い投げの要領で、硬い背中を氷の床に叩きつける。
ワニがひっくり返り、無防備な白い腹を晒した。
「承知いたしました! エヴ様への愛を込めて、死になさいッ!!」
ルイーズが跳躍する。
彼女は大剣を逆手に持ち、落下エネルギーと体重の全てを乗せて、ワニの心臓部分へと突き立てた。
分厚い皮を貫き、刃が深々と埋まる。
ワニが断末魔の悲鳴を上げ、激しくのたうち回るが、僕はその尾を押さえつけて逃さない。
「トドメだ、アグニ!」
「ガウッ! 任セロ!」
アグニが氷の上を滑るように走り、ワニの開いた口の中へ飛び込んだ。
そして、体内から脳天に向けて、黒曜石の短剣『アグリムの牙』を突き刺す。
――ビクンッ。
巨体が大きく痙攣し、そして動かなくなった。
「……はぁ、はぁ……。やったか。」
僕はワニから手を離し、氷の上に座り込んだ。
腕がパンパンだ。酸の飛沫で作業着が所々溶けているが、肌までは達していないようだ。
「ナイス連携でしたね、皆様。」
ネリーが氷の上を歩いて近づき、身を清める為の水を生成し、ルイーズは剣についた血糊を払い、「汚らわしいトカゲめ」と吐き捨てつつも、僕の無事を確認して安堵の表情を見せた。
「アグリム、ツヨイ! ワタシモ、ヤッタ!」
アグニが泥だらけの顔でVサインをする。
「ああ。みんなのおかげだ。」
僕は立ち上がり、貯水槽の奥を見つめた。
ワニが守っていたその先。
壁に埋め込まれるようにして、古びた鉄の梯子と、上へと続く竪穴があった。
「……あそこですね。」
ネリーが地図と照らし合わせる。
ギルダの情報通りだ。この竪穴は、王城の離宮へと直結している。
僕たちは梯子の下まで進み、上を見上げた。
遥か頭上、微かな風の流れを感じる。
だが、それと同時に、肌を焼くようなピリついた気配も降りてきていた。
「……結界か。」
王城を守る魔導障壁の余波だ。
ここから先は、魔物の領域ではない。
人の悪意と、高度な魔術が支配する敵地の中枢。
「行こう。……母上が待っている。」
僕は梯子に手をかけた。
冷たい鉄の感触。
その冷たさが、僕の覚悟をより鋭く研ぎ澄ませていく。
汚泥の迷宮を抜け、次なる舞台は白亜の檻。
マドゥワス騎士団、王城潜入。
メインキャラが増えてきたので....みんなの好きなキャラを教えてくれぇ!!!書くわよ〜!!!!
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ルイーズ・ロンズデール
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ネリー
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サーシャ、クロエ、ミリア他騎士団
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アンドレア殿下
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ガーベラ
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アグニ
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バルバラ
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上記以外のキャラクターは感想等で教えてね