姫騎士(肉食)共から貞操を守りつつ、僕の騎士道がハードモードすぎる 作:お庭屋さん
揃うと舐めたヤツは皆死にます。
可哀想に......。
永遠にも思える長い梯子を登り切った先、頭上を塞いでいたのは、錆びついた重い鉄の蓋だった。
僕は梯子に足をかけたまま、片手で身体を支え、もう片方の手で鉄蓋を押し上げる。
不快な金属音が微かに響き、蓋が持ち上がった。
隙間から漏れ出してくるのは、地下水路の腐臭とは違う、埃っぽくも乾燥した空気と、微かな石の匂い。
「……よし。誰もいない。」
僕は蓋を慎重にずらし、地上へと這い出した。
続いて、泥まみれのルイーズ、ネリー、そしてアグニが次々と顔を出す。
そこは、薄暗い石造りの広間だった。
周囲には古びた木樽や木箱が乱雑に積み上げられており、天井からは蜘蛛の巣が垂れ下がっている。壁に埋め込まれた魔導ランプの明かりだけが、頼りなげに揺らめいていた。
部屋の中央には、僕たちが今這い出してきた古井戸が一つ。
どうやらここは、王城の離宮の地下にある、使われなくなった貯蔵庫か何かのようだ。
「……ふぅ。やっと、陸の上ですね。」
床に座り込んだネリーが、深く息を吐いた。
彼女の服も髪も泥だらけで、いつもの知的な美貌は見る影もない。だが、その瞳だけは鋭く周囲を警戒している。
「ここが、離宮の地下……。ラウラ様は、この近くにいらっしゃるはずです。」
ルイーズが小声で囁き、短剣の泥を袖で拭った。
彼女もまた、全身ヘドロまみれだ。女性騎士ですら見たら卒倒するような有様だが、今の彼女からは、汚れすらも気迫の一部に変えるような凄味を感じる。
「ガウッ……。クサイ、オワッタ? ……ココ、イイニオイ、スル。」
アグニが鼻の詰め物を取り、くんくんと周囲を嗅ぎ回る。
地下水路の悪臭から解放され、彼女の鋭敏な嗅覚が復活したようだ。
「いい匂い? 食べ物か?」
「チガウ。……血ノニオイ。……ソレト、オンナノ、ニオイ。」
アグニの言葉に、僕たちの空気が張り詰めた。
強い女。
この場所で、アグニがそう評する人物など一人しかいない。
「……母上だ。」
僕は確信と共に立ち上がった。
全身にまとわりつく泥が乾いてパリパリと音を立てるが、気にしてはいられない。
僕たちは足音を忍ばせ、部屋の出口にある重厚な木の扉へと近づいた。
扉の向こうからは、人の気配と、微かな話し声が漏れてくる。
僕は扉に耳を当て、息を殺した。
「……いい加減になさい、マドゥワス女爵。貴女の強情さには呆れ果てましたわ。」
聞こえてきたのは、冷たく、粘着質な女の声だった。
聞いたことのない声だ。だが、その口調には、他者を見下し、痛めつけることを楽しむようなサディスティックな響きが含まれている。
「この書類にサインをするだけです。『敗戦の責任は全て私にあり、国王陛下もまた、私の暴走を止められなかった無能である』と。……たったそれだけで、貴女は楽になれるのですよ?」
「…………。」
沈黙。
だが、その沈黙は「屈服」ではなく、嵐の前の静けさのような「圧力」を孕んでいた。
「ふん、黙秘ですか。……『国王の懐刀』も、手足を鎖で繋がれれば、ただの老犬と同じですね。」
カツン、カツン、とヒールの音が響く。
尋問者が、部屋の中を歩き回っているようだ。
「貴女が時間を稼げば稼ぐほど、外の世界では貴女の悪評が広まっていくのですよ? 『英雌ラウラは、保身のために国を売った魔女だ』とね。……民衆は愚かです。今頃は、貴女の領地でも暴動が起きているかもしれませんわねぇ?」
嘘だ。
ブレスダンの民は、そんな簡単に惑わされたりしない。
僕は怒りで拳を握りしめそうになるのを、必死に堪えた。今ここで飛び込めば、奇襲の効果が薄れる。
「……ふっ。」
不意に、乾いた笑い声が響いた。
それは、尋問者のものではない。
もっと低く、腹の底から響くような、威厳に満ちた笑い声。
「……何がおかしいのです?」
「いや、あまりにくだらない妄言だったのでな。……我が領民が、その程度の流言飛語に踊らされるとでも? 貴様は、マドゥワスの民を……そして私の息子を、舐めすぎている。」
母上だ。
間違いない、ラウラ・マドゥワスの声だ。
久しぶりに聞くその声は、少し掠れてはいたが、かつて戦場で千の兵を指揮した時と変わらぬ「覇者の響き」を失っていなかった。
「息子……ああ、あのアンドレア殿下の人質になった、可哀想なボウヤのことですか?」
尋問者の声色が、嘲笑を含んだものに変わる。
「聞いておりますわよ。……『男のくせに』戦場に駆り出され、見るも無残な傷物にされたとか。……お労しいことですわねぇ。貴女のような野蛮な母親を持ったばかりに、平穏な人生を奪われて。」
扉の向こうで、母上の気配が揺らいだ気がした。
僕のことだ。
僕が傷ついたこと、辛い思いをしたこと。それだけが、鉄の女と呼ばれる母上の唯一の「弱点」なのだ。
だが、僕はこれっぽっちもそんな思いをしちゃいない。
「……息子のことは、関係なかろう。」
「関係大ありですわよ。……ここだけの話ですがね、先日、我が主グルーゲル子爵が、貴女の領地に『手勢』を送ったそうですわ。」
野盗連合のことか。
やはり、奴らは繋がっていたのだな。
確証が取れたのは幸先がいい。絶対ぶっ殺してやる。
「二百を超える武装集団です。……領主不在、守るのは傷物の小僧と、数人ばかりの騎士団。……今頃、あの美しいブレスダンの地は火の海になり、貴方の愛しい息子も、野盗たちの『慰み者』になっている頃かもしれませんわねぇ?」
僕の中で、何かが切れる音がした。
隣を見ると、ルイーズが般若の形相で短剣の柄を握りしめ、ネリーが無表情のまま周囲の空気を凍りつかせている。アグニも、喉の奥で低く唸り声を上げている。
侮辱。
それも、事実無根の、下劣極まりない侮辱。
僕たちが守り抜いた領地を、そして僕自身の尊厳を、ここまで踏みにじられて黙っていられるはずがない。
「……貴様ッ!!」
母上の激昂した声が響く。
鎖が激しく擦れる音。拘束されていなければ、今すぐにでも相手の喉笛を食いちぎらんばかりの殺気が、扉越しにも伝わってくる。
「あの子に……エヴァンに手を出したというなら、私は貴様らを許さん! この命に代えても、貴様ら全員、地獄へ道連れにしてやる!」
「あらあら、怖い怖い。……ですが、ここで吠えても無駄ですわ。貴女は無力な囚人。そして息子は、もうこの世にいないかもしれないのですから。」
尋問者は、愉悦に浸りながら笑った。
「さあ、諦めてサインなさい。そうすれば、せめて息子の遺体くらいは、探してきてあげてもよくてよ?」
――限界だ。
これ以上、母上を苦しませる必要はない。
これ以上、この下衆な女の戯言を聞いている義理もない。
僕は、泥だらけの足を大きく引き、身体強化の魔力を右脚に集中させた。
「エヴ様?」
ネリーが驚いたように僕を見る。
隠密? 知ったことか。
舐められたら殺せ。それが、マドゥワスの流儀だ。
「……行くぞ。」
僕は短く告げ、渾身の力で扉を蹴り飛ばした。
爆音と共に、分厚いオーク材の扉が蝶番ごと弾け飛び、部屋の中へと砲弾のようにすっ飛んでいく。
「なッ!? 何事ですの!?」
悲鳴に近い驚愕の声。
舞い上がる粉塵の中、僕は部屋の中へと踏み込んだ。
後に続くのは、殺気漲る二人の騎士と、一匹の猛獣。
土煙の向こう。
椅子に縛り付けられた銀髪の女性――母上と、その前に立つ派手な軍服の女騎士が、信じられないものを見る目でこちらを凝視している。
僕は、泥とヘドロにまみれ、異臭を放つ身体で仁王立ちになり、静かに、しかし地獄の底から響くような声で告げた。
「……僕が、なんだって?」
王城の地下。
最悪で、最高の再会劇が幕を開けた。
☆
「……な、何事ですの!?」
爆ぜた扉の破片が散弾のように降り注ぐ中、尋問を行っていた女騎士――グルーゲル子爵の側近が、裏返った悲鳴を上げて振り返った。
部屋に充満していた拷問の冷たい空気は、瞬く間に粉塵と、そして僕達が持ち込んだ地下水路の強烈な腐臭によって塗り替えられた。
土煙が晴れていく。
そこに立っていたのは、泥と汚水にまみれ、異臭を放つ四つの影。
その先頭で、僕は仁王立ちになり、愛剣の柄に手をかけた。
「……僕が、なんだって?」
地獄の底から響くような声。
側近の女は、目を限界まで見開き、信じられないものを見るように僕を凝視した。
「お、男……? それも、酷い臭い……浮浪者ですか? 衛兵! 何をしていますか、早くこの不敬な男を捕らえなさい!」
彼女は僕が何者であるか理解するよりも先に、その「不潔さ」と「男であること」への生理的嫌悪感と困惑を露わにして叫んだ。
部屋の隅に控えていた四名の衛兵たちが、慌てて武器を構える。
「殺すなよ! 男だ、生け捕りにして……」
衛兵の一人が、剣の腹で僕を殴りつけようと間合いを詰めてくる。
男は弱い。男は守られるもの。男になど殺されるはずがない。
その驕り高ぶった固定観念が、彼女の命取りとなった。
マドゥワス家の家訓――『舐められたら殺せ』。
僕の脳裏に、その言葉が鮮烈に浮かび上がる。
慈悲はいらない。手加減もいらない。
僕たちを、母上を愚弄した報いは、死をもって償わせる。
「……遅いんだよ。」
僕は踏み込み、身体強化を乗せた裏拳を、彼女の顔面へと叩き込んだ。
バヂィンッ!!!
湿った破裂音が響き、衛兵の首が在らぬ方向へとねじ曲がった。
彼女は悲鳴を上げる間もなく吹き飛び、壁に激突して動かなくなる。即死だ。
「なっ……!?」
残りの衛兵たちが足を止めた。
たった一撃。しかも素手の一撃で、武装した兵士の命を奪ったのだ。彼女たちの思考が追いついていない。
「隙だらけですね。……死になさい。」
その隙を、ルイーズが見逃すはずがなかった。
彼女は泥だらけの姿のまま疾走し、背中の大剣を抜いて二人の衛兵の懐へと飛び込んだ。
狭い地下水路で鬱屈していた殺意が、ここで爆発する。
交差する刃。
鮮血が噴き出し、二人の衛兵の頭が粉々に吹き飛んだ。
戦死などという生ぬるいものではない。確実な「死」だ。
「ガウッ!!」
最後の一人には、アグニが天井から飛びかかった。
彼女は衛兵の兜にしがみつくと、その視界を奪いながら、無防備な首筋にその鋭い牙を突き立てた。
――開戦から、わずか数秒。
部屋を警護していた四名の兵士は、全員が物言わぬ骸となっていた。
「ば、馬鹿な……!? 私の精鋭たちが、一瞬で……!?」
側近の女騎士が、後ずさりして机に背中をぶつけた。
彼女の顔からは、先ほどまでの残虐な愉悦の色は消え失せ、代わりに死神を見るような恐怖が張り付いている。
「き、貴様らは何者ですの! どこの手の者です!?」
彼女は腰のレイピアを引き抜き、切っ先を震わせながら叫んだ。
僕はゆっくりと歩み寄り、泥だらけの手で前髪をかき上げた。
露わになった瞳で、彼女を射抜く。
「……忘れたのか? さっきまで、君が散々馬鹿にしていた相手だよ。」
「ま、まさか……」
「マドゥワス家の嫡男。……エヴァン・クロード・マドゥワスだ。」
「ひっ……!?」
彼女が息を呑む。
180センチの巨躯。はち切れんばかりの筋肉。そして、泥の下から覗く、無数の傷跡。
彼女が知る「可憐な人質」とはかけ離れた、殺戮者の姿。
「嘘よ……。あり得ない……。あんな貧相な小僧が、こんな……こんな化け物になるはずが……!」
彼女は錯乱したように叫び、レイピアを突き出してきた。
だが、その剣筋には恐怖がこびりついている。
パシッ。
僕は突き出されたレイピアの刀身を、素手で――身体強化した左手で掴み取った。
「なッ!?」
「君は言ったな。……僕が野盗の慰み者になっていると。」
僕は指に力を込め、鋼鉄のレイピアを飴細工のようにへし折った。
折れた刃が床に落ちる音と共に、彼女の戦意も砕け散る。
「残念だったな。……野盗の頭目は、僕が斬った。君の主人がけしかけた二百の群れは、もう地獄へ送ったよ。……君も、すぐに追いつかせてやる。」
「ひっ、あ、あぁ……お助け……!」
武器を失った彼女は、腰を抜かしてその場に崩れ落ち、見苦しく命乞いをした。
「だ、代行殿! 私は命令されただけで……金なら払います! 体でも何でも……!」
「……マドゥワスの家訓を知っているか?」
僕は折れた剣を捨て、自分の帯剣を抜いた。
冷たい金属音が、彼女の泣き言を断ち切る。
「『舐められたら殺せ』だ。」
僕を、母上を、そして我が領地を愚弄した罪。
その償いは、命でしか贖えない。
「ひぃぃぃぃッ――」
一閃。
首が飛び、側近の女の悲鳴が途絶えた。
鮮血が部屋の壁を赤く染める。
「ふぅ……。」
僕は剣についた血糊を払い、静かに鞘に納めた。
部屋の中には、五つの死体が転がり、再び静寂が戻っていた。
凄惨な光景だ。
だが、これが僕たちの選んだ道だ。敵には容赦しない。奪われる前に、奪う。
そして。
部屋の中央、椅子に縛り付けられたままの一部始終を見ていた人物へと、僕は向き直った。
銀色の髪。
凛とした瞳。
拷問を受けたのか、やつれてはいるが、その瞳の光は少しも衰えていない。
僕が世界で一番尊敬し、そして目指すべき背中。
「……母上。」
僕は泥だらけの手を拭うことも忘れ、駆け寄った。
母上――ラウラ・マドゥワスは、瞬きもせずに僕を見上げていた。
目の前で繰り広げられた殺戮劇に怯える様子など微塵もない。
彼女は僕の顔を――泥と血にまみれ、傷跡だらけになった僕の顔を、じっと見つめた。
そして。
その唇が、大きく弧を描いた。
「……エヴァンか! おお、我が愛しき息子よ!」
部屋の空気を震わせるような、豪快で、そして温かい声。
母上は、拘束されたまま身を乗り出し、目を輝かせた。
「よくぞ来た! ……それにしても、見違えたな! あの細かった腕が、これほど太く、逞しくなるとは!」
彼女は僕の傷だらけの頬を見て、悲しむどころか、心底嬉しそうに笑い声を上げた。
「ワハハハハ! いい面構えだ! 泥と血の匂い……それこそが、戦場を生き抜いた騎士の香水よ! ……あのアンドレア殿下も、良い仕事をするではないか!」
ああ、これだ。
これが、僕の母上だ。
僕が傷つくことを恐れながらも、僕が強くなることを誰よりも望んでくれていた人。
「可憐な息子」ではなく、「一人の騎士」として、僕の成長を認めてくれた。
「……ただいま帰りました、母上。」
僕は母上の足元に跪き、拘束している鎖を引きちぎった。
自由になった母上は、すぐに立ち上がり、泥だらけの僕を力強く抱きしめた。
母上の服が汚れることなど、お互いに気にも留めない。
「遅くなってすみません。……助けに来ました。」
「うむ! 最高のタイミングだ! ……さあ、エヴァン。積もる話は後だ。まずはこの腐った檻をぶち壊し、外へ出るぞ!」
母上は僕の背中をバンと叩いた。
その痛みと熱さが、僕に「帰ってきた」という実感を与えてくれる。
最強の親子が、再会した。
☆
「……さあ、母上。早くここを出ましょう。地上へのルートは確保してあります」
僕は母上の背中を支え、出口へと促した。
この部屋の警護兵は片付けたが、騒ぎを聞きつけて増援が来るのは時間の問題だ。長居は無用。
だが、母上はその場から動こうとしなかった。
「……待ちなさい、エヴァン。脱出の前に、やらねばならぬことがある。」
母上の声は、再会の喜びから一転して、凍りつくような緊張を孕んでいた。
その瞳は、地下牢の入り口ではなく、天井の彼方――この離宮のさらに奥深くを見据えている。
「やらなければならないこと? ……まさか、まだ敵が?」
「敵ではない。……守るべき御方だ。」
母上は僕の肩を掴み、鬼気迫る表情で告げた。
「奴ら……『徹底抗戦派』の狙いは、私への罪の擦り付けだけではない。奴らは、二重の罠を仕掛けている。」
「罠?」
「ああ。……先ほどの尋問で、奴らは言った。『サインを拒めば息子を殺す』とな。だが、それはブラフの一つに過ぎない。奴らが用意している『本命のシナリオ』は別にある。」
母上は唇を噛み締め、吐き捨てるように言った。
『――ラウラ・マドゥワスが敗戦の責任を認めて自害するか。あるいは、逆上して国王陛下を暗殺し、その場で誅殺されるか。』
「なっ……!?」
僕は息を呑んだ。
国王陛下。
ベレイン王国を統べる、マリア・ドゥ・べレイン陛下のことか。
「奴らは、私がこのままサインを拒み、膠着状態が続くと判断した場合……国王陛下を暗殺する手筈を整えている。そして、その罪を全て私に被せ、『逆賊ラウラを討ち取った』という大義名分で政権を掌握するつもりなのだろうな。」
「そ、そんな馬鹿な……! 国王を殺して、国が持つとでも!?」
「奴らにとって、国などどうでもいいのだ。帝国の過激派に国を売り渡し、自分たちが新たな支配階級として生き残れればそれでいい。……陛下は今、この離宮の最上階『玉の間』にて、病と称して隔離されている。」
戦慄が走る。
母上が軟禁されていたこの場所は、単なる牢獄ではなかった。
国王と、その懐刀である母上を一箇所に集め、まとめて始末するための「処刑場」だったのだ。
「陛下が危ない……!」
「そうだ。今、この騒ぎで奴らは計画を早めるかもしれん。……エヴァン。お前が来てくれたおかげで、私は自由になった。だが、陛下を救えなければ、マドゥワス家は――いや、この国が終わる。」
母上は床に落ちていた剣――先ほど僕が倒した側近の剣を拾い上げ、握りしめた。
その構えには、ブランクを感じさせない覇気が宿っている。
僕がまだ小姓の時から……昔から変わらぬ、マドゥワスの誉の姿だった。
「行くぞ、エヴァン。……地下水路へ戻る道はない。目指すは最上階、『玉の間』だ!」
「……御意!」
僕たちは頷き合った。
隠密行動はここまでだ。ここからは、敵の中枢を正面から食い破る強行突破。
徹底抗戦派なぞと気取った売国奴共。
……舐め腐りやがって、ぶっ殺してやる。
「ガウッ! カアチャン、イイニオイ! ……ツヨソウ!」
アグニが母上の足元に擦り寄り、嬉しそうに尻尾を振った。
母上は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにニカっと笑い、アグニの頭を豪快に撫でた。
「ほう! 良い面構えの娘だ! ……エヴァンの『新しい家族』か?」
「カゾク! アグリムノ、カアチャン! ……スキ!」
「ワハハ! 気に入った! 背中は任せるぞ、小さき戦士よ!」
豪傑同士、通じ合うものがあるらしい。
母上はアグニを抱え上げると、僕とルイーズ、ネリーを見渡した。
「さあ、女郎ども! ……いや、エヴァンもいるしな……愛しき子供たちよ! ベレインの未来を賭けた、最後の大一番だ! 遅れるなよッ!!」
「「「オオオォォォッ!!」」」
母上の号令が、地下牢の空気を震わせた。
僕たちは扉を飛び出し、螺旋階段を駆け上がる。
目指すは最上階。
そこに待つのは、国の主か、それとも凶刃か。
泥だらけの騎士団と、最強の母。
僕たちの「再生」の戦いは、ついに王国の命運を握る決戦へと雪崩れ込んでいった。
メインキャラが増えてきたので....みんなの好きなキャラを教えてくれぇ!!!書くわよ〜!!!!
-
ルイーズ・ロンズデール
-
ネリー
-
サーシャ、クロエ、ミリア他騎士団
-
アンドレア殿下
-
ガーベラ
-
アグニ
-
バルバラ
-
上記以外のキャラクターは感想等で教えてね