姫騎士(肉食)共から貞操を守りつつ、僕の騎士道がハードモードすぎる   作:お庭屋さん

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えっちな表現出ます!!!!!!
R15くらいなら大丈夫そうな内容です!!!!!!
苦手な人は読まないでください!
本編にはそんなに影響ないです!
殿下サイコー!!!!!


第54話(閑話):アンドレア殿下の怒りと愉悦

 帝都グラディティア、その中心に天を突き刺すように聳え立つ皇城『アーネリア城』。

 グラディウス帝国初代皇帝の名を冠する皇城の、大陸全土を見下ろすかごとき高みにある皇太女の執務室は、夕闇に沈みかけていた。

 

 窓から差し込む陽光は、もはや温かみを失い、不吉な血の色を帯び、部屋の主である余、アンドレア・フォン・グラディウスの顔を照らし出している。

 

 広大な黒檀の執務机の上には、一枚の巨大な大陸地図が広げられていた。

 余の視線は、我らグラディウス帝国の版図にはない。

 帝国の南端、険しい山脈を越えたその先――地図職人が震える手で『赤』く塗りつぶした、広大な領域に釘付けになっていた。

 

「……ワルキア帝国。」

 

 その名を口にするだけで、舌の上に錆びた鉄の味が広がるような不快感を覚える。

 魔術を禁じ、神を糾弾し、「人の手による世界統治」を掲げるイカれた狂人ども。反抗する全てを喰らい尽くしながら版図を広げてきた、南の怪物。

 奴らは国家ではない。災厄だ。

 遠からず、我らグラディウス帝国と、大陸の覇権などという生易しいものではなく、種としての存亡を懸けて衝突することになるであろう最大の脅威。

 

 奴らと正面からぶつかれば、帝国とて無傷では済まぬ。

 勝ったとしても国力は半減し、民は疲弊し、その後の統治など望むべくもない焦土が残るだけであろう。

 だからこそ、余は「緩衝地帯」を欲したのだ。

 

 大陸中央に位置するべレニアン地方。

 北の帝国と南の怪物の間に横たわるこの地域を、無傷のまま帝国の傘下に収め、ワルキアに対する強固な防波堤とする。

 

 それこそが、余が描き、母上であるアウレリア大帝に進言し続けてきた大戦略であった。

 

「……愚かな。」

 

 余は苦々しく吐き捨て、地図上のベレイン王国を指先でなぞった。

 そもそも、先年に行われたベレインとの戦争自体が、許しがたい失策だったのだ。

 あの国には、ラウラ・マドゥワスという理知的な傑物がいた。

 外交の卓につき、ワルキアの脅威を説き、互いの利益を擦り合わせれば、血など流さずとも手を取り合うことは可能だったはずだ。

 

 それを邪魔したのは誰か。

 元老院の老害共だ。

 奴らは地図の色分けと、帳簿の数字しか見ていない。

 『領土拡大』だの『資源確保』だの、耳障りの良い言葉で母上を唆し、余の制止を振り切って無益な戦端を開かせた。

 

 結果はどうだ?

 勝ちはしたが、得られたのは荒廃した土地と、ベレイン国民の根深い反感、そして無駄に消耗した帝国の国庫だけ。

 

 余はこの一年、その尻拭いに奔走させられたのだ。

 敗戦国の将となったラウラ・マドゥワスと膝を突き合わせ、理性と敬意をもって対話を重ねた。

 

 彼女は余の予想以上に聡明な武人であった。

 余の憂慮するワルキアの脅威を正しく理解し、王国の誇りを守りつつも、帝国の防波堤となる道を選ぼうとしてくれていた。

 ようやく、「血を流さぬ併合」あるいは「強固な軍事同盟」という軟着陸が見えてきた矢先だというのに。

 

「……遅い。」

 

 余は苛立ちを隠さずに、指先で硬い机を叩いた。

 コツ、コツ、という乾いた音が、静まり返った執務室に虚しく響く。

 ベレイン方面からの定時連絡が途絶えて、既に一週間が過ぎている。

 ラウラは律儀な女だ。余との約束を違えるはずがない。

 

 この沈黙は、怠慢ではない。異常事態の証左だ。

 余の預かり知らぬところで、何かが起きている。

 それも、余の顔に泥を塗り、積み上げてきた積み木を根底から崩すような、致命的な何かが。

 執務室の空気が、澱むように重くなる。

 

 予感がした。

 背筋を冷たいものが這い上がる、最悪の予感だ。

 余の脳裏に浮かぶのは、欲に肥え太った元老院議員たちの、醜悪な笑顔。

 まさか、奴らは。またしても余の邪魔をするというのか。今度は一体、何を犠牲にして?

 

「失礼致します、殿下。」

「――入れ。」

 

 思考の海に沈んでいた余の耳に、余の執務室の扉を叩く音と共に鈴を転がすような、しかし氷のように冷徹な声が届いた。

 開かれた豪奢な扉の先には煌びやかな帝国騎士の鎧を纏った小柄な娘……いや、彼女は余よりも年上だが……。

 小柄な身体に、身の丈に合わせた小剣を携えたハーフリング。

 余の懐刀にして、帝国の暗部を担う近衛騎士、フリーダ・マイヤだ。

 

「戻ったか、マイヤ。」

 

 余は地図から顔を上げ、彼女を見据えた。

 マイヤは兜を脱ぎ、頭頂部のやや後ろで纏めた金髪を解くと、恭しく片膝をついて垂れた。

 その表情は、いつもの凛とした騎士のようなものではない。

 能面のように感情を殺し、しかしその瞳の奥には、隠しきれない動揺と、主君へ告げねばならぬ凶報の重さが宿っていた。

 

「その顔……。余が思うよりも、悪い知らせのようだな?」

 

 余の問いに、マイヤは短く息を吸い込み、意を決したように口を開いた。

 

「御明察の通りです、殿下。……ベレイン王国は今、死臭と腐臭に満ちております。」

「腐臭だと? 遠回しな物言いは好まぬ。事実を申せ。」

「はい。……べレイン国王陛下、およびマドゥワス領主ラウラ女爵殿が、暗殺されました。」

 

 時が、止まった。

 窓の外で鳴く鳥の声も、風の音も、全てが遠のいていく。

 

「……暗殺、だと?」

 

 言葉の意味を咀嚼するのに、数秒を要した。

 ラウラが死んだ?

 あの英雌と謳われた女傑が。

 余が唯一、対等な視座を持つと認めた友誼の相手が。

 戦場ではなく、暗い闇の中で命を奪われたというのか?

 

「実行犯は王国内の『徹底抗戦派』を名乗る貴族たちです。……ですが。」

 

 マイヤは言葉を切り、悔しげに拳を握りしめた。

 

「その裏で糸を引いているのは、間違いなく帝国の武器と資金です。恐らくは…………。」

 

 

 ☆

 

 

「……元老院か!?またもやか!?」

 

 マイヤの言葉に、余の全身の血が逆流するような感覚を覚えた。

 指先が震える。それは恐怖ではない。制御しきれぬほどの激情によるものだ。

 

「詳細を申せ。奴らは……あの脂ぎった豚共は、具体的に何をした?」

 

 余の問いに、マイヤは懐から羊皮紙の束を取り出し、執務机の上に広げた。

 それは、帝国の諜報網が命がけで入手した、裏帳簿の写しであった。

 並ぶ数字。流れる金の行先。そして、そこに記された契約の条文。

 

「奴らは、王国内の不満分子……グルーゲル子爵を中心とする『徹底抗戦派』に対し、国家予算に匹敵する活動資金を提供しました。その見返りは……『ベレイン王国の属国化』と、『国内資源の独占的採掘権』です。」

 

 パリン、と乾いた音がした。

 気がつけば、余は手にしていたワイングラスを握り潰していた。

 ガラス片が手のひらに突き刺さり、赤い血が滴り落ちて羊皮紙を汚すが、痛みなど感じない。

 感じるのは、内臓が焼け付くような怒りだけだ。

 

「……愚か者共が……ッ!!」

 

 ダンッ!!

 余は血に濡れた拳で、執務机を叩きつけた。

 厚い黒檀の天板に亀裂が走り、地図上のベレイン王国が裂ける。

 

「たかが金か! 目先の利権か! その程度のもののために、余の大戦略をドブに捨てたというのか!!何故ワルキアと言う脅威が理解できんのだ!?」

 

 余の怒声が、広い執務室に反響する。

 元老院の豚共には見えていないのだ。

 この大陸の南端で、口を開けて待っている「真の絶望」が。

 

 ワルキア帝国。

 あれは、人間が相手にするべき国家ではない。

 屍を兵に変え、病を風に乗せ、生けるもの全てを苗床として侵食する「災厄」そのものだ。

 奴らとの絶望的な消耗戦を避けるためには、ベレイン王国という緩衝地帯が健在であり、なおかつ帝国と強固な協力関係になければならなかった。

 王国軍を「壁」とし、帝国の魔導技術でそれを支える。

 その体制を作るために、余は一年もかけてラウラと対話し、武力ではなく理によって国を束ねようとしたのだ。

 

「それを……また、壊したのか。今度は暗殺という、最も卑劣で、最も後戻りできない方法で!」

 

 ラウラ・マドゥワス。

 敵国の将でありながら、余が唯一、対等な視座を持つと認めた傑物。

 彼女ならば、王国の誇りを守りつつ、帝国の防波堤となる道を選んでくれたはずだった。

 それを、元老院の豚共は「餌」として処理したのだ。

 あの高潔な魂を、薄汚い金貨に変えたのだ。

 

「……国が、割れます。」

 

 マイヤが静かに、しかし冷徹に告げた。

 彼女の声は、燃え盛る余の怒りに冷水を浴びせるようであり、同時に残酷な現実を突きつける刃でもあった。

 

「国王と英雌を失い、王国は内乱状態に突入しました。徹底抗戦派が王都を制しましたが、地方領主たちの反応は様々です。反発するもの、協力するもの……これで防波堤は崩壊です。もし今、ワルキアが北上すれば、帝国は無防備な脇腹を刺されることになります。」

 

「……分かっている! 言われなくとも分かっているわッ!」

 

 最悪だ。

 余の描いた平和へのロードマップは、老害共の欲望の脂で汚され、燃えカスとなった。

 ベレインはもう、壁としての機能を果たさない。それどころか、内乱の火の粉が帝国にまで降りかかってくるだろう。

 これで帝国は、好むと好まざるとに関わらず、泥沼の戦乱に引きずり込まれる。

 多くの兵が死に、民が飢え、国力が削がれる……余が最も忌避した未来だ。

 

「……はぁ、はぁ……ッ。」

 

 荒い息を吐き、乱れた髪をかき上げる。

 眩暈がするほどの絶望と徒労感。

 だが、その暗い思考の渦の中で、ふと、ある懸念が脳裏をよぎった。

 

 ラウラが死んだ。

 王家も堕ちた。

 ならば、その息子は?

 

「……マイヤ。……エヴァンはどうした?」

 

 余が一年間、手元に置いて愛でた、あの美しい「籠の鳥」。

 母を殺され、国を焼かれ、後ろ盾を失った若き騎士。

 元老院の悪意と、それに加担する売国奴たちの軍勢に晒されれば、ひとたまりもないはずだ。

 彼はまだ指導者として未熟だった。

 爪も牙も、余がこれから育ててやるつもりだったのだ。

 

「まさか……あの愛い鳥も、豚の餌になったか?」

 

 声が震えた。

 これは「所有物」を失う惜別か、いや違うな……。

 愛という執着心だろう。

  

 もしそうなら、余はこの手で元老院を皆殺しにする。帝国の法など知ったことか。

 余の愛を壊し、余の覇道を汚した罪、その一族郎党に至るまで根絶やしにして償わせてやる。

 

 殺意に染まる余の視線の先で、マイヤはゆっくりと顔を上げた。

 主君の怒りを受け止めながら、しかしその唇が、微かに吊り上がり――ニヤリと、凶暴な笑みを浮かべた。

 

「いいえ、殿下。……鳥は、死んでおりませぬ。」

「……何?」

「死ぬどころか……あの鳥は、血の海の中で狼に化けました。」

 

 

 ☆

 

 

 「……狼に化けた、?」

 

 マイヤの言葉は、熱を帯びた刃物のように余の胸を刺した。

 先ほどまでの、臓腑が焼け付くような怒りが、急速に別の種類の熱量へと変換されていくのを感じる。

 

「詳細を語れ。……あのエヴァンが、余の騎士が、一体どうやって正規軍を退けた?」

 

 余が問いかけると、マイヤは一度だけ口の端を吊り上げ、まるで自分自身がその場にいたかのように、熱っぽく語り始めた。

 

「見事な采配でした。彼は北部の女傑、ゾーラ・フォン・アウグス伯爵を味方につけ、寄せ集めの諸侯軍を一つの巨大な楔に変えました。敵の数は六千、対する彼らは五千。数では劣勢でしたが、マドゥワス卿は、彼自身が自らが先頭に立ち、敵本陣の中央を食い破ったのです。」 

「自らが、先頭に……?」

 

 脳裏に浮かぶのは、余の誘いを冷や汗を垂らしながらシドロモドロしていたの頼りない姿だ。

 高潔を体現する様な彼奴が、騎士道に執着する彼奴が……。

 返り血を浴び、肉を斬り、命を奪う修羅となったというのか。

 

「はい。……敵の指揮官を彼の猟犬がミンチに変え、総大将であるマルグリット・ド・ボーヌを生け捕りにしました。慈悲など欠片もない、完璧な殲滅戦です。……今の彼は、殿下がご存知の『愛玩動物』ではありません。言うなれば、血に飢えた若き獅子であります。」

「…………ふ、」

 

 口元から、乾いた息が漏れた。

 それが笑い声であることに気づくのに、数秒を要した。

 

「く、くく……あはハハハハハハッ!!!」

 

 余は天井を仰ぎ、喉が裂けんばかりに高笑いした。

 愉快だ。痛快だ。なんと喜ばしいことか。

 元老院の豚共が描いた「安易な侵略」のシナリオを、彼奴が暴力でねじ伏せ、食いちぎったのだ!

 

「あっ……ぁ……ッ!」

 

 笑いが止まると同時に、背筋をゾクゾクするような電流が駆け抜けた。

 熱い。

 身体の芯が、溶鉱炉のように熱い。

 怒りが消えたわけではない。だが、それ以上の感情が――破壊的なまでの悦楽と興奮が、余の理性を侵食していく。

 

「……殺したか。奪ったか。蹂躙したか、エヴァン。」

 

 想像するだけで、視界がチカチカと明滅する。

 血に濡れた彼の顔。

 冷酷に敵を見下ろす瞳。

 その手が剣を振るうたびに、余の敵が、世界の敵が死んでいく。

 

「んっ……ふぅ……ッ。」

 

 余は執務椅子の上で、無意識に足を堅く組み、太腿を擦り合わせた。

 駄目だ、耐えられない。

 下腹部の奥にある臓器が、きゅう、と甘く締め付けられる。

 まるで彼に直接、そこを鷲掴みにされたかのような錯覚。

 

「はぁ、あ……たまらん……ッ。」

 

 余は自身の肩を抱きしめ、荒い吐息を漏らした。

 椅子の上質な革に染みができてしまうほどに。

 高貴な皇太女としての仮面など、今の余には不要だ。ここにいるのは、ただの一匹の発情した雌豹に過ぎない

 

 欲しい。

 今すぐにでも彼をこの場に呼びつけたい。

 その血と泥と油の匂いが染み付いた身体を押し倒し、乱暴に犯してしまいたい。

 平和を愛する余が、これほどまでに暴力を、他者の破滅を心地よいと感じるなど……なんという皮肉、なんという背徳か。

 

「……マイヤ。……奴らは、次はどう動く?」

 

 濡れた瞳で問いかけると、マイヤは恭しく頭を下げた。

 

「王都の徹底抗戦派……いえ、売国奴たちは、西部の商業連盟と南部の穀倉地帯を巻き込み、国を二分する内乱へと舵を切るでしょう。マドゥワス卿の道は、これまで以上に険しい修羅の道となります。」

「ならば……余がすべきことは一つだな。」

 

 余は震える指で、机上の地図を撫でた。

 ベレイン王国の北、マドゥワス領ブレスダンの位置を。

 

「戦え、エヴァン。豚共を食らい尽くし、国を平らげろ。……その刃が錆びつかぬよう、余が帝国の側から援護してやろう。」

 

 元老院の老害共は、王国の売国奴と繋がっている。

 ならば、その繋がりを断つのは余の役目だ。

 帝国内での政治闘争。粛清。暗殺。

 彼が剣で戦うなら、余は権力と知略で戦おう。

 

「……早く来い。待ちきれんぞ、エヴァン。」

 

 余は椅子にもたれかかり、虚空に手を伸ばした。

 まるで、そこに彼の頬があるかのように。

 

「貴様が王国の全てを平らげ、一人の王として余の前に立つその日まで……この身体は預けておく。」

 

 太腿の間から、熱がまた一つ伝い落ちる。

 その感覚に身悶えしながら、余は獰猛に唇を歪めた。

 

「さあ、国盗り合戦だ。……負けた方が、骨までしゃぶられる愛の遊戯だぞ?」

 

 夕闇に沈む執務室に、粘り気のある淫靡な香りが充満する。

 帝国の未来は、遥か北の狼を想い、ひとり、甘美な毒を垂れ流し続けた。

 大陸を揺るがす二つの内乱は、こうして一人の女の、歪んだ愛と欲望によって結びついたのである。

メインキャラが増えてきたので....みんなの好きなキャラを教えてくれぇ!!!書くわよ〜!!!!

  • ルイーズ・ロンズデール
  • ネリー
  • サーシャ、クロエ、ミリア他騎士団
  • アンドレア殿下
  • ガーベラ
  • アグニ
  • バルバラ
  • 上記以外のキャラクターは感想等で教えてね
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