転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
キラは戻ってきてから、積極的に訓練に励むようになった。
その上達速度は異常なほどで、
まるでスポンジが水を吸い込むように、
パイロットとしての技量を急速に高めていった。
そんな時――
第8艦隊の先遣隊からの通信がアーク・エンジェルに届いた。
――
「う〜む……」
第8艦隊の先遣隊と連絡が取れてから、
トダカはずっと悩んでいた。
(どうするべきか……いや、ここは言わなければならないな)
トダカはマリューに声をかけた。
「艦長、少しいいだろうか?」
「? はい。何でしょう?」
「もしこの艦が第8艦隊に合流して正式に艦隊に組み込まれた場合、
我々オーブは君たちを護衛できない可能性がある」
「ええ?」
「何ですって!」
「おいおい、どういう事だよ?」
マリュー、ナタル、ムウの驚きの声がブリッジに響く。
「まず、この艦には船籍コードがない。
だから我がオーブ軍はこの艦を“オーブの軍関係者を輸送中の民間船”として扱ってきた。
建前上はな」
もちろん実際にはアーク・エンジェルは地球連合の軍艦だが、
それは暗黙の了解というものだ。
「そしてザフトの目的はこのアーク・エンジェルだった。
だから我が軍は“ザフトに襲われている民間船を救護する”という建前で戦闘を行っていた。
しかし第8艦隊に合流して正式に艦隊に組み込まれれば、その理屈は通用しなくなる」
「――あ!」
マリューが息を呑む。
「プラントに宣戦布告予定とはいえ、オーブはまだ宣戦布告していない。
地球連合とも軍事同盟を結んでいない。
軍事同盟を結んでいない国の軍艦を、我が軍が護衛するわけにはいかない。
それは第8艦隊に“お前達では護衛は出来ない”と言っているのも同然だ。
第8艦隊も、自分達の艦を自分達で守るのは当然だと思うだろう」
「確かに……」
「それはそうだよなあ……」
「正直、第8艦隊でザフトの追撃からこの艦を守る事が出来ると思うかね?」
「それは……」
不可能だった。
第8艦隊にはMSも、ドローン搭載のメビウスもない。
しかも現在はNJの影響でレーダーや通信に強い障害が出ている。
ジンとメビウスの撃墜比率は、L5宙域事変の比ではないだろう。
「かといって我々の任務は、このアーク・エンジェルを守って
移送中の関係者をアメノミハシラに送り届ける事だ。
第8艦隊を守る事は我々の任務ではない。
何よりアストレイは3機しかないので、そんな戦力はない」
実際には違う。
モジュール構造のアストレイなら、
パイロットさえいれば多数の機体を組み立てて即出撃が可能だ。
だが――
任務外の事で、しかも軍事同盟も結んでいない他国のために、
自国の軍事機密を公開する必要はなかった。
「アストレイを攻撃には使えないんですか?」
ナタルの問いに、トダカは即答した。
「我々がわずか3機のアストレイでザフトを撃退できたのは“防衛側”だったからだ。
すぐそばで修理や補給が可能だったからこそ可能だった。
攻めてきたザフトが撤退したのは、補給が出来なかったからだ。
アストレイを攻撃に使えば、今度は逆の立場になる。
とても無理だな」
「う〜ん? 結局どうすればいいんだ?」
ムウの問いに、トダカは明確に答えた。
「こちらの理想としては、このままアークエンジェルにはアメノミハシラに向かってもらいたい。
もしくは軍関係者をアメノミハシラまで送り届けてさえもらえれば、何も言う事はない」
「つまり、アメノミハシラに届けさえすれば問題ないという事か」
「そうなるな。しかしザフトが追撃している状態で無用な危険は犯したくない。
200人を別の艦に移動させるだけでも相当の時間がかかる。
その間にザフトの奇襲を受ければ、あまりにも危険だ」
「そうですよねえ〜?」
ムウの疑問にも、トダカの答えは揺るがない。
『このまま続行。救援はしない』
自国民の安全を最優先するトダカの任務を考えれば当然だった。
必要もないのに、他国の第8艦隊のためにオーブが自国民の生命を危険に晒す事などあり得なかった。
――
第8艦隊の先遣隊がザフトによって壊滅したという連絡が届いたのは、
その後しばらくしての事だった。
同行していた大西洋連邦のアルスター事務次官も死亡した。
悲劇の幕は上がった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。