転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
キラは軍の輸送艦に乗り込む人たちを見ていた。
ヘリオポリスの軍関係者の家族たち。
老若男女、さまざまな人々がいる。
自分ができた事など本当に小さなものだ。
だが、少しでもこの人たちをここまで守る手助けになったのなら――
それだけで十分だとキラは思った。
その時、輸送艦に並ぶ列の中から、小さな女の子が歩いてきた。
キラの前に立つと、女の子は折り紙の花を差し出しながら拙い感謝の言葉を口にした。
「いままでまもってくれてありがとう。おにいちゃん」
それはキラが初めて直接向けられた感謝の言葉だった。
アーク・エンジェルのクルーからは「よくやった」「さすがコーディネーターだ」と言葉をかけられる事はあっても、
感謝の言葉をかけられる事などなかった。
友人たちからも「お前だけに押し付けてすまない」「無理するな」とも言われたが、
友人たちの生命がかかっている状態で、無理をしない選択肢はキラの中には存在しなかった。
友人たちも自分達がどれだけキラに無理をさせているのか理解していた。
優しいキラに自分達を守る為の負担を押し付けておいて、知らぬ顔で感謝の言葉を述べるほど彼らのつながりは小さなものではなかった。
キラも
(自分がどれだけ辛いのか分かって欲しい。でも友人たちの目の前でそんな弱音を吐くわけにはいかない)
と表に出せない思いを、ひたすら胸の奥に仕舞い込んでいた。
胸の奥底に澱のように溜まっていた誰にも言えない孤独な苦悩。
それが、女の子のたった一言で、春の雪が溶けるように消えていった。
「エルー、行きますよー」
母親の声に「はーい」と返事をして、少女は列に戻っていった。
キラは手の中の折り紙の花を見つめながら思った。
(ああ……僕でも、ちゃんとこの人たちを守る事ができたんだな)
つい先ほどまで抱えていた苦悩から解放されたキラの胸の奥に、静かな温かさが広がった。
――
「それではここでお別れだな」
トダカ一尉はマリューたちにそう告げた。
結局ハルバートンは、アーク・エンジェルに乗っていたオーブ軍関係者を輸送艦でアメノミハシラへ移送することを決定した。
理由は――
アーク・エンジェルを一刻も早くアラスカへ向かわせるため。
そのため、オーブの護衛は輸送艦に付くことになり、
トダカ一尉もアーク・エンジェルを降りることになった。
「トダカ一尉、お世話になりました」
「今までのご協力、感謝いたします」
「今度はどこかに飲みに行きましょう」
マリュー、ナタル、ムウの挨拶に、トダカは笑って応じた。
再会を誓い、三人は別れた。
「これから心細くなりますね」
「全くだな」
ナタルの言葉にムウが同意する。
今までの戦闘のほとんどはオーブが担っていた。
それが突然なくなるのだ。
不安になるのは当然だった。
「何言ってるの。これが本来の姿なのよ。
今までの事を振り返るより、これからの事を考えましょう」
マリューの言葉に、二人は顔を見合わせた。
「ええ」
「そうだな」
アラスカに降りてからの事を考え始める二人。
――もっとも、その考えは無駄になるのだが。
――
クルーゼは思案していた。
ラクスをプラントへ送り出してから、
ラクス捜索のため別方向に派遣していたローラシア級が合流してきた。
損耗はあったが、ヴェサリウス、ガモフ、ツィーグラーと合わせ、
クルーゼ隊の戦力は ジン15機、シグー1機、G4機 となった。
これだけあれば――
第8艦隊を殲滅する事すら可能だ。
クルーゼは薄く笑った。
そして静かに命じた。
「第8艦隊を攻撃する」
その命令がCEの歴史を、世界そのものを、時代を変える第一歩となる事を、この時のクルーゼは知る由もなかった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回、いよいよ皆様お待ちかねの「彼」の登場です。
次回お楽しみください。