転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
え~、本筋とは関係のない話です。
「こんなのこのキャラじゃない!」
「こんなのは認めない!」
という意見もあるかと思いますが創作上の話ですので笑ってお許し下さい。
優しい愛に包まれたアズラエルの話です。
彼に愛は届くのでしょうか?
この場合は届かない方が良いような気がしますが(笑)
閑話3 努力の報酬
これは彼らがまだプラントの未来を知る前の出来事。
それはよくある当たり前の話だった。
成人間近の健康な若い男が異性に興味を持つ事も。
それを解消するのに身近な存在で解消しようとする事も。
しかしアズラエルやタイガのように社会的地位がついて回る者にとっては、ある意味困難な事だった。
「う〜〜〜〜」
「何を唸っているんだ?」
タイガは朝から講堂の机に突っ伏して意味不明な唸り声を上げているアズラエルに声をかけた。
「昨日からジェーンと連絡が付かないんだ!
この間のデートでは良い感触だったから今日こそ最後まで行けると思っていたのに!」
「ああ、そうか」
タイガは聞いて損したとばかりに興味を無くすと、さっさとアズラエルの側を通り過ぎた。
「冷たいじゃないか!
親友が失恋して傷ついているのに慰めの言葉ひとつも無いのかい!」
「お前があんまり露骨にがっつくからだろ?
そんな事をやっていればフラれて当然だろう?」
「そ、そんな〜〜〜!?」
アズラエルは絶望して机に突っ伏すとシクシクと泣き始めた。
「何でだよ〜、ジェーンもミキもフランもキャシーもディアナもリリィもリアもユリカも、
あんなに僕の事を好きだと言ってくれたじゃないか」
諦め悪くシクシクと泣いているアズラエルを横目に、
それだけ他の女に声をかけていれば当然だろうとタイガは取り合わなかった。
(それにほとんどはハニトラだろうしな)
アズラエルは大西洋連邦を代表するアズラエル財閥の御曹司である。
個人的に親しくなって恋人から妻になれば、小さな独立国家を軽く超えるアズラエル財閥の資産を自由に扱えるようになるのだ。
狙われないわけが無かった。
ただしアズラエルの暮らしぶりを見た女性はほとんどが諦める。
朝から晩までメイドや執事に傅かれ、家での一挙一動を監視され、
分刻みのスケジュールを毎日こなし、同じ大財閥の党首や代理人と会食を行う。
傘下の企業への影響も甚大なので常に強いプレッシャーに晒され、
結婚すればその指示を自分も出さなければならなくなるのだ。
失敗すれば容赦なく、しかし決して表立たずに酷評される。
普通の生活をしていた女性に耐えられるはずがなかった。
それでも諦めない女性は、大半がアズラエルを利用しようとする国家の紐付きだった。
あの手この手でアズラエルに好意があるように見せかけ、
既成事実を盾に裏からアズラエル財閥を操ろうとしたのだろう。
そういった女達はアズラエルに近づいてしばらくたつと、いつの間にかいなくなっていた。
(多分あの人が手を回しているんだろうなあ)
タイガの脳裏には、上品にビジネススーツを着こなした女性の姿が浮かんでいた。
「くそ〜〜〜、何でだよ〜〜〜」
シクシクといつまでも泣いているアズラエルに鬱陶しくなったタイガは、しょうがなく声をかけた。
「それならいい店を紹介してやろうか?」
「え?」
「可愛い女の子が揃っている店があるんだ。
同意があればお客との関係には口を挟まない明朗会計の店だ」
「え、え〜、それってプロのお店だろう?
そういうのは僕はちょっと」
「満足に女の子と付き合う事も出来ないのにか?」
「う!」
「別に本気になって付き合う必要はない。
女の子も仕事なんだ。
ちゃんと金を払ってくれる客なら大歓迎だ。
それから先はお前次第だな」
「う、う、う〜〜〜!?」
アズラエルは店の場所が書かれたメモを前に唸り声を上げていたが、
遂に決心したのかひったくるようにメモを受け取ると講堂を飛び出して行った。
「俺の紹介と言えば分かるようにしておくぞ〜」
その背中に向かって声をかけながら、タイガはある所に電話をかけ始めた。
「ええ、俺です。近いうちに顔を出すはずです。その時はよろしくお願いします」
電話を切った後、タイガはある事に気付いて呟いた。
「あいつ授業も受けないでどうするつもりなんだ?」
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「おはよう! いい朝だね!」
数日後、どんよりとした雨模様の朝の講堂にアズラエルのハイテンションな声が響き渡った。
「いや〜、タイガ! いい店を紹介してくれてありがとう!
さすが僕の親友だね!」
「お、おう」
「いや〜、素晴らしい経験だった!
世界がまるで違って見えるよ!」
「そ、そうか」
さすがのタイガもたじたじだった。
「お店の女の子がね! ベスって言うんだけど話を聞くととても可哀想でねえ!」
「お、おう」
「お父さんは事故で死んじゃって、お母さんも治療費が必要で、
弟の進学費を稼ぐのに必死で働いているなんて、涙なしでは聞いていられなくてさあ!」
(今時そんなベタな話を信じ込むのもどうかと思うが?)
「今日も会いに行くからね! ベス! 待っていておくれ!」
(まあ、言っても聞かないだろうし熱が冷めるまで放っておくか)
タイガは薄情だった。
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「う、う、う、う、」
「どうした?」
今日も朝から講堂でアズラエルは唸り声を上げていた。
「ベスとねえ……」
「うん?」
「最近会えないんだ」
「? 客はお前だけじゃないんだ。
別に会えなくても不思議じゃないだろう?」
「そうじゃない! 僕はベスと毎日会いたいんだ!」
「無理言うな。
彼女はお前の妻でも恋人でもないし仕事もあるんだ。
そんな事は無理だろう」
タイガは取り合わない。
「妻! それだ!
ベスと結婚すれば毎日一緒にいられるじゃないか!」
「はあ?」
「ベスと結婚すれば毎日一緒にいられる!
お母さんの治療費だって出してあげられる!
弟さんの進学費だって出してあげられる!
お店に借金があるかもしれないけど僕ならそんなものどうにでもなる!」
「お、おい」
「ベス、待っていておくれ! 今僕が行くからねえ!」
「落ち着け〜〜〜!!!」
講堂を飛び出そうとするアズラエルを取り押さえるのは、
タイガの力でもかなり苦労した。
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アズラエルは暴れ出さないようにロープで椅子に拘束されていた。
それでも何とか拘束から抜け出そうと無駄に椅子をガタガタとさせていたが。
「なんだよ! どうして僕の邪魔をするんだよ!」
「お前が人の話を聞かないからだろう?」
「ベスを迎えに行くのをどうして邪魔するんだよ!」
「お前なあ、ああいう店の女の子の話を間に受けてどうするんだよ?
ああいうのは唯のセールストークだぞ」
「ベスに限ってそんな事はない!」
「そうか」
タイガは呆れた。
しかしこのまま放っておくのは気が引けたので、事実を教える事にした。
「あの子はもう結婚しているぞ?」
「え?」
アズラエルは聞いた事が理解出来なかったのか、間の抜けた声を出した。
「それに子供もいる」
「え? う、嘘だ! そんな事一言も……」
「金払いの良い上客にわざわざ教えるはずがないだろう?」
「そ、それなら何であんな店で……」
「他に働く場所がないからだ」
学園都市という場所柄、住人には若者が多い。
そこで女が手っ取り早く稼ごうとしたら水商売になるのは避けられない。
学もなく、コネもなくても外見を着飾れば、
後は口先だけで若い男をいい気にさせれば幾らでも貢いでくれる。
「いいか、彼女達に惚れるのは構わないが、それは店の中だけにしろ。
店の外には彼女達の生活があるんだ。
お前には、いや誰にもそれを踏み躙る権利はない」
彼女達も好きでもない男に媚びを売り、体を弄られ、卑猥な言葉をかけられるような毎日を送りたい訳がない。
しかし他に働く場所がない。
学がないから仕事が出来ない、コネがないから仕事を紹介してもらえない、
女と見れば暴力をふるわれ乱暴される事さえ珍しくない。
それがちゃんとした水商売の店であれば暴力を振るわれる事もなく、
仕事がもらえ、自分の力で報酬を幾らでも増やしていけるのだ。
「そ、それなら僕がお金を出してあげればそんな事はもう……」
「それは口にするな!!!」
今までにない強い口調でタイガはアズラエルの言葉を遮った。
「彼女達は金が欲しいんじゃない。
労働の正当な報酬が欲しいんだ。
報酬が自分の努力の結果として得られるから努力しているんだ」
お前への話もその努力のひとつだというタイガの言葉に、アズラエルは俯いた。
「何でだよ、いやならそんな事しなくていいじゃないか?
いやだと言ってくれれば僕だって……」
金払いのいい上客をそんなに簡単に手放すはずがないだろう?
というタイガの言葉に、アズラエルは納得するしかなかった。
「それにお前が彼女達に同情で報酬以上の金を与えるという事は、
彼女達の努力に意味がないと言っている事になる」
お前の努力が否定される事と同じだな、というタイガの言葉を、
アズラエルは必死で否定した。
「違う! 僕はそんなつもりじゃない!
ただベスに喜んでもらいたくて……」
「そりゃあ喜ぶだろう?
報酬を得られたという事は、お前を惚れさせた自分の努力が金額で証明されたという事なんだからな。
しかしお前が彼女達に同情して金を渡すのなら、
それは『この金と引き換えに仕事をやめろ』と言っている事になるんだよ。
それは金額の問題ではなく、
お前が『彼女達の労働には、努力には価値がない』と言っている事と同じなんだよ」
アズラエルは、努力が認められない事がどれだけ苦しい事なのか、
お前は理解しているはずだよな、というタイガの言葉に頷く事しか出来なかった。
彼女達は努力して、その結果が評価されて報酬を得ている。
努力しないでも評価されるのなら、努力に何の意味があるんだ?
それをお前が理解出来ないはずがないだろう?
アズラエルはずっと俯いている事しか出来なかった。
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「僕はどうしたらいいんだろう?」
どのくらいの時が過ぎたのか、アズラエルはポツリと疑問を口にした。
「何も知らなかった事にして、店に行って精々上客のフリをしてやれ。
店の中であればベスはお前の恋人で羽振りの良い上客なんだ。
だが店を一歩出れば赤の他人だ。
水商売の店というのはそういうものだ」
前世で上役に散々夜の店を連れまわされた朧げな記憶に顔を顰めながら、タイガは答えた。
「そうか、そうだね」
どこか吹っ切れたようなアズラエルの様子に、タイガはロープを解いた。
「行ってこい、今度はちゃんとした上客としてな」
「うん、そうだね。
僕は羽振りの良い上客なんだから、たっぷりサービスしてもらわないとね!」
「お前なあ……」
空元気だと分かっていても、アズラエルの言葉にタイガは呆れるしかなかった。
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ベスの店の方向へ歩いていくアズラエルの背中を見ながら、
タイガはある所に電話をかけた。
「ええ、なんとか解決しました。
多分もう大丈夫でしょう。
後はこちらでなんとかします。
それではまた。」
電話を切ったタイガはふと思った。
あの店の女の子達を用意したのがお袋さんだと知ったら、
アズラエルのやつ再起不能になるんじゃないのか?
子を想う母の余計な愛情であった。
はい、今までとは打って変わった閑話です。
アズラエルの扱いが酷い?
私の中での彼はこんなものです(笑)
本来私はこういう話を書きたかったんだよなあ。
どうしてこうなった?
次回からは本編に戻ります。
今後も拙作をよろしくお願いします。