転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
どうぞお楽しみください。
「そうか、安定したか」
タイガは、キラのメンタルケアを担当している医師から報告を受けていた。
「はい。どうも自分がコーディネーターであることに強いコンプレックスを持っていたようです。
何をやっても出来る、出来てしまうため、周囲との軋轢が絶えなかったようです」
「無意識に“自分は何でもできる”“自分がやらなければ”“自分のせいだと”と思い込み、何でも抱え込んでいたということか」
「アムロ二尉との模擬戦で、自分の限界を知ったようです。
コーディネーターの能力に依存していた傾向も消えましたので、もう問題ないかと」
「そうか。下がっていいぞ」
医師が退室すると、タイガは小さく呟いた。
「……これならいけるか」
――
フレイは街を歩いていた。
キラは朝からオーブ軍へ。
ミリアリアたちは家族との再会へ。
――自分には、もう家族はいない。
街は賑わっている。
家族連れ、友人、恋人たち。
笑い声が絶えない。
それなのに、フレイはその中心で“ひとりぼっち”だった。
その時、歓声が上がった。
大型ビジョンに映るのは――
三分で十二機のジンを撃墜する“英雄”。
もちろん合成映像だ。
軍事機密が公開されるはずもない。
そもそも、アムロが撃墜したのは九機であって十二機ではない。
だが市民にとって事実はどうでもよかった。
プラントとの開戦。
不安。
そして突きつけられた圧倒的な“勝てる”という映像。
目に見える形で示された希望に、人々が熱狂しないはずがなかった。
「これでプラントも終わりだ」
「オーブ軍に勝てるわけがない」
「白い流星がいるから大丈夫だ」
その言葉が、フレイの胸に冷たく沈んでいく。
(……何よ、これ)
(この力があれば、パパの仇なんて簡単に……)
オーブ軍。
英雄。
白い流星。
(私が何かしなくても、オーブが勝手に仇を討ってくれる……)
では――
(だったら、私が今までやってきた事は……?)
答えはなかった。
フレイはその場に立ち尽くし、ただ熱狂する街を見つめることしか出来なかった。
――
模擬戦の翌朝、キラは穏やかに目を覚ました。
張りつめていたものが消え、ようやく周囲を冷静に見られるようになっていた。
そして――
自分の行いを思い返し、顔が熱くなる。
(なんだよ……僕はあの程度の力でサイに偉そうなことを……
アーク・エンジェルを守れるのは自分だけだなんて思い上がって……
フレイにもあんなことを……)
自己嫌悪が押し寄せる。
(サイに謝らないと……フレイを返さないと……
いや、フレイは“物”じゃない!僕にそんな権利はない!
そもそもフレイが僕を好きになるはずがない……
あれはアーク・エンジェルを守るために仕方なく……
そうじゃなきゃ、僕なんかに優しくするはずが……)
実際にはフレイもキラを自分の復讐に利用しようとしただけなのでお互い様ではあったのだが、
キラには、フレイの本心など知る由もなかった。
ガチャリ
扉が開き、フレイが入ってきた。
「フレイ?」
どこか思いつめた表情だった。
――
オーブが仇を討ってくれるなら――
自分には何が残る?
友達はいない。
サイにはひどいことを言った。
家族はいない。
頼れる人もいない。
残っているのは――
キラだけ。
パパを殺した憎いコーディネーターのキラだけ。
「!!」
気づけばフレイはキラに抱きついていた。
「フ、フレイ?」
自分に抱きつき、背中に手を回してくるフレイの姿に、キラは胸が痛んだ。
「もうやめろフレイ!
もうそんなことをする必要はないんだ!
君は自由なんだ!」
キラはフレイの肩を掴み、静かに言った。
「もうやめよう、フレイ。僕たちは……間違ったんだ」
その言葉を、フレイは理解することを拒んだ。
拒絶された?
誰に?
キラに?
自分にはもう何も残っていないのに?
なぜ?
私が利用していたから?
憎いコーディネーターのくせに?
優しいくせに?
皆を守ってあんなに泣いていたくせに?
もういやだって私の前では泣いていたくせに?
それでも必死になって皆を守ろうと逃げなかったくせに?
それなのに――私を拒むの?
「嫌よ!そんなの!」
「フレイ!」
キラの声を無視し、フレイは駆け出した。
自分の頬を伝う涙の意味に気づくこともなく。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回、キラの「家族」の絆が描かれます。
次回お楽しみください