転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください





第107話 MIA

 

 

 

キラとトールが MIA になった。

それも単なる行方不明ではない。

機体の反応そのものが消えたのだ。

それは撃墜されたということであり、生存している可能性はほとんど存在しないという事実を意味していた。

 

「そんなはずない!そんなはずないわ!嘘よ!トールが死んだなんて嘘よ!」

 

「ハウ二等兵、座れ!」

 

「嘘よ!嘘よ!嘘よ!」

 

「アーガイル二等兵! 彼女を連れていけ!」

 

ナタルは叱責しても収まらないミリアリアを連れて行くようサイに命じた。

 

「う、う、う……」

 

すすり泣くミリアリアに肩を貸し、医務室へ付き添いながら、サイの心も千々に乱れていた。

 

(キラが死んだ? そんな事があるはずはない!

あいつはコーディネーターなんだ! あいつがそう簡単に死ぬはずがない!)

 

しかし同時に、キラの死を喜ぶ自分の暗い感情にも気づいていた。

 

(そうだ。フレイがあいつに……。

それがどうした! フレイがどうだろうと、あいつは俺たちの友達だ!)

 

だがその暗い感情は、キラを失った悲しみを覆い隠すことはできなかった。

 

(あいつがそう簡単に死ぬはずがない。

いつもぼーっとして、優秀なくせにめんどくさがりで、面倒事は全部みんなに押し付けてきて……)

 

脳裏に浮かぶのは、今までの思い出ばかりだった。

 

「サイ?」

 

「フレイ?」

 

ミリアリアを連れて行った医務室の外で立ち尽くすサイに声をかけたのは、フレイだった。

縋りつくような瞳。

サイには分かっていた。

彼女は今、自分を支えてくれる「何か」を求めている。

だが、今のサイにそれに応える余裕はなかった。

 

「サイ、あの私……」

 

「フレイ。トールがいなくて、キラがいなくて……みんな悲しいんだ。俺も悲しい」

 

「サイ……」

 

「だから俺……今は君を慰めることはできない」

 

「サイ?」

 

手を伸ばしてくるフレイに、サイは叫んだ。

 

「やめろ!」

 

「あなた! 分かってたじゃない! 私……ほんとはキラのことなんか!……」

 

「やめろ! 最初はどうだったか知らないけど……あいつ、優しくて……だから……そういう奴だから……!」

 

サイは何を言っているのだろう?

自分はキラの事なんかどうでもいいのに?

フレイは自分の感情から目を背けてサイの言葉を否定した。

 

「……違う……」

 

そんなフレイに構う事なく、サイは決定的な事を口にした。

 

「君が好きなのはキラだ! 僕はキラの代わりになんかなれない!」

 

サイから告げられた言葉はふっとフレイの胸の内に落ちた。

サイの言葉に納得している自分がいる。

自分の目の前で泣いていたキラの姿が目に浮かぶ。

泣きながら皆を守る為に必死になっていたキラの姿と、自然と「キラを支えよう」と思っていた自分の姿が。

 

しかしキラはもういない。

 

「違う……違う! 違う!」

 

現実を認められないフレイは必死に否定の言葉を繰り返した。

それはキラがいない事に対してなのか?

自分の感情に対してなのか?

自分でもそれを理解できず、フレイはただ否定の言葉を繰り返した。

 

「違わない! 認めろよ! 君はキラが好きなんだって!」

 

「違う! 違う! 違う!」

 

友人が死んだと聞かされたばかりの少年に、他人の気持ちを思いやれというのは酷だろう。

それも、友人の死を聞いた直後に自分へすり寄ってくる相手であればなおさらだ。

しかしフレイもまた、家族もいない。

頼る人もいない。

アーク・エンジェルの中で唯一の加護者だったキラがいなくなり、

身近な人に縋りつこうとした――それがサイだった。

お互いに余裕がなくなったことによる、痛ましいすれ違いだった。

 

「や、やめろ! 何をしやがる!」

 

その時、医務室から男の叫び声と、ベッドから転がり落ちる音が聞こえてきた。

 

ミリアリアは医務室のベッドに腰を下ろしていた。

まだ頭の中がぼーっとしている。

何も考えられなかった。

 

「あれ?」

 

「え?」

 

声に振り向くと、ベッドに横になっていたのは拘束されたザフト兵――ディアッカだった。

 

「俺が怖いか? それともコーディネーターが珍しいか?

大丈夫だよ、ちゃ〜んと繋がれてっから」

 

拘束具を見せびらかしながら、ディアッカは憎まれ口を叩く。

 

「何泣いてんだか? なんでそんな奴がこんな船に乗ってんだ?」

 

「そんなに怖いんだったら、兵隊なんかやってんじゃねぇっつーの」

 

ミリアリアは何も言い返せなかった。

しかし、次のディアッカの言葉で我を忘れた。

 

「それとも、バカで役立たずなナチュラルの彼氏でも死んだかぁ?」

 

「!!!」

 

信じられなかった、信じたくなかったトールの死を、目の前のザフト兵に突き付けられ、

ミリアリアの頭は真っ白になった。

周囲を見渡すと、机の上のメスが目に入った。

ミリアリアの目には、それしか映らなくなっていた。

 

ふとディアッカが目を開けると、

眼前に迫ったミリアリアが、目に涙を溜めながら握りしめたメスを振り下ろしてきた。

 

「なっ!」

 

ベッドの下に転がり落ちて身をかわしながら、ディアッカは叫んだ。

 

「や、やめろ! 何をしやがる!」

 

「ハァ……ハァ……うわああぁぁ!!」

 

「ミリィ!」

 

その時、飛び込んできたサイがミリアリアを羽交い締めにした。

 

「落ち着くんだ、ミリィ!」

 

「離して! トールが、トールがいないのに!

なんで……こんな奴! なんでこんな奴がここにいるのよおおお!!」

 

「ミリィ!」

 

二人が争う横で、床に転がった拳銃がフレイの目に入った。

 

「……」

 

この感情は何だろう?

自分はキラなんか復讐の道具としか思っていなかったはずだ。

彼が死んだからどうしたというのか。

そんなものは自分には関係ない。

――なら、なぜ自分は銃を持っている?

――なぜ銃口を、このザフト兵に向けている?

 

「コーディネーターなんて、みんな死んじゃえばいいのよぉぉぉぉ!!」

 

頬を流れる涙にも気づかず、フレイの叫びと共に引き金が引かれた。

 

銃弾はディアッカを逸れた。

フレイが撃つ直前、ミリアリアが飛び込み、拳銃を振り払ったのだ。

 

「何するのよ……」

 

もつれあって一緒に床に倒れ込んだミリアリアに向かってフレイは呟いた。

 

「……」

 

「なんで邪魔するのよ? あんただって殺そうとしてたじゃない!」

 

「違う……」

 

「あんただって憎いんでしょ!? こいつが! トールを殺した! コーディネーターが!」

 

「違う……違う!」

 

「何よ! あんただって同じじゃない!

あんただって……私と同じじゃない!」

 

 

フレイは、やっと自分の感情を自覚した。

しかし、それはすべてが終わった後だった。

 

 

 

 






※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

次回お楽しみください。
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