転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物、設定が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
地球で負傷したバルトフェルドは、
「治療のための入院」という偽装を最大限に利用し、プラント内部での情報収集を開始した。
ジェネシスそのものの存在は確認できなかったが、
「ヤキン・ドゥーエ周辺に何かがある」
という噂は兵士たちの会話から簡単に拾えた。
問題は――
その噂を裏付けるための“手”が足りないことだった。
そこでバルトフェルドは、頼りになる副官を呼び寄せた。
「隊長! お元気そうで何よりです!」
副官ダコスタは、堂々と「入院は偽装でしかない事」を間接的に公言し、上司に似合わない綺麗な敬礼を決めた。
「うむ。よく来てくれた。早速だが、他の連中は連れてきているかね?」
「はっ! 主要メンバーは全員連れてきています!」
「よし。ではまず、プラントの現状を把握してもらいたい」
「プラントの現状……でありますか?」
「ああ、これだ」
渡された資料を読み進めるうちに、ダコスタの顔色はみるみる悪くなっていった。
「た、隊長? これは……?」
「ある筋から手に入れたデータだ。
信じられないなら自分で確認してみるといい。
今までの考え方が180度変わるぞ?」
「……」
「独立しても意味がない。
本当に独立すれば、経済的に周囲から袋叩きだ。
しかも独立のためには戦力を宇宙に上げる必要がある。
その時、殿で残されるのは――
上層部の受けが悪い我々だ。
評議会のお気に入りのために必死で戦った挙句、まとめて焼き払われて終わりだ」
「……」
「独立に意味があるならともかく、無意味な独立のために君たちを死なせるわけにはいかん」
「隊長!!」
「本来なら亡命か投降だが、我々の部隊規模ではそれも難しい。
だから本国決戦に合わせて情報を手土産に投降し、保護を求める。これが現実的だ」
「隊長……」
「そこで各人には個別に情報収集を頼みたい。
無理をして怪しまれては意味がない。
できる範囲で構わん。他国への伝手は私が用意する」
「はっ!」
「絶対に独立したいのなら止めないぞ?」
「あれを見てそんな事が言えるのは、自分の頭で考えないバカだけです。
私は犬死はごめんです」
「もっともだ。では頼むぞ?」
「はっ! お任せください!」
こうしてバルトフェルドは、“居ながらにして情報を収集できる体制”を整えた。
強硬派・穏健派の動向を調べ、誰がどの立場なのかを整理していく。
その中で、ある情報に目が止まった。
(ヤキン・ドゥーエのこの区画……船外作業が異様に多い。
書類上の申請内容と実作業が矛盾している。
他の区画は矛盾がない。
噂の位置にも該当する。怪しいな)
調べると、その宙域は民間人立ち入り禁止。
特別許可がなければ近づけない。
現場を見に行ったバルトフェルドは首をひねった。
(警戒は厳しいが……レーダーにも反応しない。
何かあるようには見えない。文字通り“何もない”)
無駄足だったかと、病院へ戻る途中、港湾労働者の会話が耳に入った。
「いやー、あれはおっかなかったなあ〜」
「あれはお前が悪い。立ち入り禁止区域に入るなんて、
今ピリピリしてるんだから射殺されても文句言えんぞ?」
「でもしょうがないだろ?
何もないと思って手を伸ばしたら、いきなり壁が出てきたんだぞ?
あんなの分かるかよ!」
「厳重注意だけで済んだんだからありがたいと思え」
労働者たちは去っていった。
バルトフェルドは硬直していた。
(何もない所から壁が出てきた……?
そこまで隠蔽できるステルス……ミラージュコロイド!
立ち入り禁止区域でそれを使う理由は……?
間違いない、そこだ!)
本体を隠せても、作業ポッドのバーニアの軌跡までは隠せない。
バルトフェルドは隠し撮りした映像を解析し、時間ごとのバーニア軌跡を合成。
――ジェネシスの大まかな外形を割り出した。
さらに、作業に従事しているのは評議会直属の工作隊だった。
バルトフェルドは、工作隊がジェネシス建造に従事した期間と、
その穴を埋めた部隊の規模を比較した。
(評議会の工作隊が抜ければ、その穴は他の部隊が埋める。
穴を埋めた部隊の規模が分かれば、どれほどの工作隊が動員されているか推測できるはずだ)
結果はすぐに出た。
評議会直属の工作隊はほぼ全てがジェネシス建造に動員され、
穴を埋めるための他部隊の動員は既に限界近かった。
(部隊動員のコストを考えると、ジン100機や200機というレベルではない。
それだけのコストを費やす価値があるということか……
ダミーにしては警戒が厳重すぎる。
試作機にしてはコストがかかり過ぎている。
パナマを攻略しようというこの時期に、余分な事に多大な時間とコストをかける余裕はプラントにはない。
ほぼ確定だな)
さらにヤキン・ドゥーエ内部で制御室を発見し、データのコピーにも成功。
(あとは逃げるだけだが……)
さすがに警戒が厳しくなり、強行突破も視野に入れ始めたその時――
「何かお困りですか?」
後ろから声がかけられた。
振り向くと、プラントの歌姫が微笑んでいた。
「お仕事は終わったようですね?
できましたら、あなたには地球にいるキラへのメッセンジャーになっていただきたいのです。
お願いできますか?
“砂漠の虎”さん?」
この少女は、自分の目的も正体も、
すべて見透かしているらしい。
「それは構いませんが……私にどんなメリットが?」
「ここから脱出する手段を提供できますよ?」
「!!」
バルトフェルドがラクスから
フリーダムを託されたのは、この直後のことだった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
次回お楽しみください。