転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。





閑話18  黒化

 

 

 

キラはMIAを偽装し秘かにオーブに帰国した後、タイガの手によりプラントの統治に必要な事を学んでいた。

その過程で軍事的な知識も必要という事で様々な事を学んでいたが、一兵士としての能力はともかく、

軍を率いる指揮官としては致命的に向いていない事が判明した。

 

敵の詐術、偽装に簡単に引っ掛かる。

敵への攻撃で致命傷を与える事を避ける。

敵の戦時国際法違反行為を想定していない。

 

一兵士としてなら問題はない。

敵に騙されようが、わざと敵に致命傷を与えなかろうが、それで反撃を受けてもキラの能力なら対処可能なのだ。

しかし「軍隊」ではそうはいかない。

 

キラが致命傷を与えなかった敵の反撃が戦友に向いたら?

生き延びた敵兵が経験を戦訓として敵に伝えたら?

戦時国際法?

それは国家間の「戦争」に適用されるものだ。

プラントは「国家」ではないという理由でどんな事でもやるだろう。

それは相手も同じだ。

最低限の「戦場で守るべきルール」を無視するような相手が存在する事は間違いない。

 

キラに教えるべき事は山ほどあった。

しかしキラはそのスーパーコーディネーターの能力で全てに無理なく対処していった。

軍関係者は頭を抱えた。

キラのやっている事は軍事常識から考えて間違っている。

しかしそれを現実にやってのけているキラに「それは間違いだ」という事は出来なかった。

キラは自分を基準に判断している。

つまり「自分がこれだけできるのだから、皆にも出来るだろう」という無意識の思い込みである。

初期のアムロの自分に対する認識と同じであった。

迷惑な話である。

もっとも、アーク・エンジェルでは後方支援ばかりで、ほとんどストライク単機での交戦だった事、

MS同士の連携の経験など皆無だった事を考えればキラに「友軍との連携」が頭にないのは当然だった。

そしてキラの想定する友軍とは、自分と同じ「スーパーコーディネーターの能力を基準にした軍隊」だった。

そんなものが存在するはずもなかった。

 

――

 

そんなキラに対して教官役としてトダカ一尉が派遣された。

 

トダカはキラに対して「アメノミハシラ周辺でザフトに襲われた友軍の救援」というシミュレーションを実行させた。

しかもそれぞれ「一兵士」「隊長」「救援部隊指揮官」「後方の司令官」という立場であった。

「一兵士」としてのシミュレーションは単純だった。

襲ってきた敵を撃破するだけだった。

キラの能力をもってすれば敵の武装のみ、推進器のみを破壊する事など容易かった。

致命傷を与えず放置する事で、敵に救助が必要な状態を作り出し、救助の為の敵戦力を抽出させる事で敵を分断させた。

キラはこれにより戦力が少ない状況でも救援を次々と成功させた。

そんな時、それは起こった。

キラが致命傷を与えず放置していた敵が苦し紛れに撃った銃撃が友軍を直撃したのだ。

 

「!!!」

 

その時、キラの目には「トールの乗ったスカイグラスパーが撃墜される瞬間」がオーバーラップしていた。

 

トールは助かった。

しかしそれはあくまでも結果論だ。

オーブ軍の救助が間に合わなければトールは間違いなく助からなかった。

トールの乗ったスカイグラスパーのコクピットから、血の付いたヘルメットが弾き出される光景をキラは鮮明に憶えていた。

 

「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、~~~~~~~~~~!!!」

 

狂乱したキラは敵を全滅させていた。

 

次にトダカはキラを逆の襲撃側でシミュレーションを実行させた。

 

「・・・」

 

自分の行動を省みて落ち込むキラの目に、今度は自分が襲撃する側になったオーブの部隊が映った。

気を取り直して操縦桿を握り直したキラの目に護衛のMSが映った。

 

「!!!」

 

それを見たキラの顔は引きつった。

そのMSの肩には「青い縁取りの流星のエンブレム」が刻まれていた。

碌に逃げる事も、抵抗する事も出来ず、武装と推進器を破壊されたキラはそのまま宇宙を漂う事しか出来なかった。

コクピットのどこかが損傷したのか、警告音が響き渡る。

酸素の残量が減って行き、電源が尽きて周囲が暗くなっていく。

あまりにもリアルな周囲の状況にキラはパニック寸前になる。

シミュレーションで危険はない筈なのに、酸欠の為か意識が朦朧としてくる。

 

(ぼくはこんなところで死ぬのか・・・)

 

現実との境界があいまいになったキラは、酸欠ではなく遠隔での鎮静剤の投与によって意識を失った。

 

――

 

その後キラは「隊長」「救援部隊指揮官」「後方の司令官」と立場を変えてシミュレーションを実行した。

それで理解したのは「立場によって最適な行動は異なる」という事だった。

自分が行なったような「武装や推進器を破壊して放置」という行為は「一兵士」の立場や「その場限りの対処」としては正しい。

救援部隊の目的は友軍を救出する事なのだから、武装や推進器を破壊した敵を救助させる事で交戦戦力を減らすのは理にかなっていた。

しかし「隊長」や「救援部隊指揮官」の立場では友軍の救援さえできれば交戦自体が不要だ。

わざわざ敵に反撃の機会を与えるぐらいなら、そのまま撃破した方が確実だ。

何より敵味方の救出作業が行われるのは戦闘終了後だ。

戦闘中に隙を見せてのんびりと救出作業を行っている敵軍など存在しないし、それを見逃す理由などない。

「後方の指揮官」の立場としては敵に自軍の情報を持ち帰えられるのは悪夢といって良かった。

撃破可能だった敵を見逃す事で、自軍の情報が相手に伝わり、その結果友軍の犠牲者が増大する事になるのだ。

「一兵士」の立場でも、致命傷を免れた敵が引き金を引くのは「一瞬」で良い。

実際に自分がアスランへの攻撃をためらった結果「トールのスカイグラスパーが撃墜された」のだ。

 

敵の立場になった場合では何よりも情報の入手を優先した。

キラは何度も襲撃を繰り返し「流星のエンブレムのMS」の行動を予測、把握する事に全力を注いだ。

その結果、遂に「流星のエンブレムのMS」が護衛するオーブの部隊へ一撃を与える事に成功したのだ。

この結果にキラは戦慄した。

 

「自分をはるかに上回る『流星のエンブレムのMS』でさえ、敵に情報が渡れば護衛の意味が無くなる」

 

「敵に情報が渡ったら自分程度の護衛など何の意味も無い」

 

「不殺など将来的に味方を殺す行為でしかない」

 

自分が「敵を殺したくない」などという甘い考えを持てば、それは悲劇を産み出す原因になる。

なによりそんな考えは戦場では通用しない。

「自分は誰も殺したくないんだ!」と叫んでも、ニュータイプが相手では歯牙にもかけられずに撃墜されるだけであろう。

そして宇宙で撃墜されずに放置されれば、救出されるまでひたすら死の恐怖にさらされる事になる。

戦場に出てきたのであれば死は覚悟しなければならない。

何しろただの学生だった自分でさえ「友人を守る為に」それは覚悟していたのだから。

そんな覚悟もなく戦場に出てくるのであれば、それこそ死んでも仕方がないだろう。

ザフトだろうと地球軍だろうと軍人であればそれは当然の覚悟だった。

自分の「敵を殺したくない」などという考えは、その軍人の覚悟を踏みにじるものであり、ニュータイプの前では

何の意味もない道化でしかなかった。

 

地球への逃亡中のアーク・エンジェルでの「どれほど優れたパイロットでも、敵を撃てなければ味方が死ぬ」というトダカの言葉がそれを証明していた。

 

所詮、自分の考えは「コーディネーターの能力」に胡坐をかいた、上から目線の傲慢な考えでしかなく、

ニュータイプの前では何の意味もない。

 

「自分が攻撃をためらえば関係ない『誰か』の身にトールのような悲劇が起こる」

 

「戦場で『覚悟』を持たない者など存在しない」

 

それを理解した時、キラは「不殺」という考えを捨てた。

正確には「戦場に立つ者としての最低限の覚悟」を改めて身に付けた。

 

「相手が手を差し伸べればこちらも手を差し伸べる。殴ってくれば殴り返す。

ナチュラルもコーディネーターも関係ない。当たり前の事じゃないか?」

 

「コーディネーターだからナチュラルを殴っても良い?コーディネーター同士だったら殴られても我慢しろ?

そんな事ある筈がないだろう?」

 

それが「所詮コーディネーターの自分の能力などニュータイプの前では大したものではない」と自覚したキラの得た結論だった。

 

キラが、純粋にコーディネーターの能力の優越を信じていた過去が崩壊した結果得た答え、それは「戦士としての正常化」を意味していた。

戦場に立つ者として最低限の覚悟を身に付け、戦士としての正常化を果たす事を「黒化」と呼ぶのであれば、

アスランと再会した時、既にキラの「黒化」は完了していた。

 

 

 

 






※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

皆様の感想に戦々恐々している作者です(汗)

だから、皆様はなぜ感想欄でこれから作者が書き込もうとする内容を的確に指摘出来るのでしょうか?(涙)

(単に筆者の想像力が不足しているだけでは?)

しかし!今後の展開は皆様も想像出来ないものになると断言します!

(大口叩いておいて、泣いて謝る事になるんじゃない?)

(無視)とにかく!今後数話でオーブを取り巻く状況が大きく動く事になります!

次回お楽しみください。


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