転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
お気軽に読んでいただければ幸いです。
子供ってかわいいですねえ(笑)
「今日の予定は8時から法務大臣と、9時から典礼省と、午後からモルゲンレーテへ、それから・・・」
「ちょっと待て」
「??? 何か?」
「もう少し余裕を持たせろ! 何で次の場所に行くのに1日に何度も全力疾走しなきゃならないんだ!」
「『少しでも多くの場所を巡りたい』とおっしゃるタイガ様のご希望を最優先した結果ですが?」
「それはそうだが・・・」
「私もご一緒しているのに何が問題なのですか?」
そう、恐ろしい事にカルアはタイガの全力疾走にピッタリついていっているのだ。
しかも会合の資料や道具等を抱えたまま。
「グググ・・・」
あまりの正論に全く反論出来なくなったタイガは呻く事しか出来なかった。
「しかしせめて、こう、なんと言うか? なあ?」
「ハッキリとおっしゃってください」
往生際悪くタイガが何とか言い返そうとするが、カルアの鋼鉄のような視線の前に何も言い返せず黙り込んだ。
「時間までもう少しあります。今日は走るのは五回で済むはずです。頑張ってください」
そう言うとカルアは部屋から出ていった。
――
「ふう・・・」
部屋から出たカルアは隣の部屋でひと息ついていた。
外見からは涼しい顔をしているように見えるが、実際にはカルアにとっても限界ギリギリだった。
こうして少しでも体を休める時間は大切だった。
(父様達元気にしているかなあ)
カルアのホクハ家は5大氏族を補佐する下級氏族のひとつである。
近年稀に見る発展を遂げてきたホクハ家だが、それには理由があった。
カルアは幼い頃から物覚えが良かった。
いや、物覚えが良いというレベルではなく、一度見たものは忘れない完全記憶の持ち主だった。
しかし周囲の子供にはそんな事はわからない。
「無くした物をカルアに尋ねたら教えてくれる」
その程度の感覚だった。
「カルアちゃん、この間パパに買ってもらったウサギのぬいぐるみが見当たらないんだけど?」
「この前、部屋の中でかくれんぼする時にタンスの上に隠したじゃない。まだそこにあるわ」
「本当! ありがとう!」
「カルアちゃん、この間もらったリボンが見つからないの。どうしよう」
「カバンの手前のファスナーの中に入れていたわよ。ちゃんと見てみなさい」
「え! 本当だ! ありがとう!」
それが判明するのは些細な事がきっかけだった。
――
「あなた! この前どこに行ってらしたんです?」
「仕事だよ、仕事」
「皆さんにお聞きしたらあなたはいらしていないという事でしたけど? どういう事です?」
「日にちを勘違いしてるんじゃないのか?」
「でも・・・」
この時カルアは父がその日ポケットに入れた物の事を思い出す。
「ねえパパ! それってXXXってお店の事?」
「!!! カルア黙っていなさい!」
「黙るのはあなたです。カルア、ママに教えて? それって何の事?」
「え〜とねえ?」
カルアは何も考えずに、母に促されてその日見たものをそのまま口に出していた。
その結果、父は母から折檻を受けてボロボロになっていた。
「パパ、大丈夫?」
「ハハハ、だ、大丈夫だよ」
「良かったあ!」
無邪気な声を上げる娘に「誰のせいで」と言いかけたものの、自業自得の上に可愛い娘に声を荒げる事も出来ず、カルアの父は体の痛みに耐えていた。
――
カルアの能力を知ったカルアの母は、それから父親が帰って来ると父親にまとわり付かせ、見たものを全て報告させていた。
「え〜とねえ、今日はXXXというところで、昨日はこういう所で」
わずかな痕跡も記憶してしまうカルアの前では、父親のプライバシーなど存在しないも同然だった。
その結果、カルアの父親は一時ノイローゼ気味になり、カルアが近づくだけで悲鳴を上げてカルアの前から逃げ出すようになった。
「パパ・・・」
大好きな父親から逃げられるようになってカルアは傷ついた。
しかしなんとか愛しい父に構ってもらおうと必死に縋り付いた。
こうして家の中で逃げる父親と追いかけるカルアという奇妙な状況がしばらく続く事になる。
――
「パパ・・・」
その日もカルアは父親を追いかけていた。
父親はビクッと体を震わせ、ゆっくりとカルアに向き直る。
「パパ。私何か悪い事した? 悪い事したのなら直すから、いい子になるから、お願いカルアを嫌いにならないで!」
上目遣いで服にしがみ付くカルアを見て、父親はカルアを抱きしめていた。
「そんな事はない! カルアはいい子だ! 悪いのはお父さんだよ! ごめんなカルア!」
「パパあ」
不器用な親子の絆が再び結ばれた瞬間だった。
その時カルアは父親と約束をした。
――この家で見た事は他人には話さないと。
例え何を見ても、それをカルアが誰にも話さないなら、何も見ていないのと同じ事だ。
父親は安心すると、カルアに対して以前と同じように微笑むようになった。
――
「ママ~!言われたとおりにしたらうまく行ったよ!」
「じゃあこれからも見た事はママにだけ教えてね。他の誰にも言っちゃダメよ?」
「ハ〜イ!」
ホクハ家がアスハ家に匹敵する情報収集能力を得た瞬間だった。
第10話です。
いや~、子供って本当に無邪気で可愛いですね~(目逸らし)
このカルアの能力が彼女の未来に大きな影響を与える事になります。
(どーせろくでもねーことだろー?という外部の声は無視)
運命に引き寄せられたタイガとカルア。
二人の未来にはこの後、何が待っているのか?
次回お楽しみください。