転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。

新章開始前の区切りになります。
閑話 《名前ゼロシリーズ》
お楽しみください。





閑話20 名前0-1~自分~

 

 

 

少年は自分の生まれに不満を持っていなかった。

――持つ理由が分からなかった、と言った方が正確だった。

親からは「役立たず」と罵られ、着のみ着のまま家から放り出されたが特に不満も憶えなかった。

 

「さて、これからどうしようかねえ?」

 

少年はあてもなくプラントの街を歩き始めた。

 

――

 

幼い頃の少年は優秀だった。

いや、幼い頃から優秀だった。

両親は「さすが私達の子だ」「これだけできるなんて偉いわあ」とほめてくれた。

少年は両親にもっと褒めてもらいたくて努力した。

しかしそんな少年でも敵わない相手がいた。

隣の家の同い年で背の高い女の子だった。

勉強でも運動でも少年は女の子に何一つ勝てなかった。

悔しくて何度も勝負を挑んだ。

しかしその度に負け続けた。

勝てない相手だった。

だが同時に、唯一「対等に扱ってくる相手」でもあった。

そしていつの間にか勝負に関係なく少年はいつも少女と遊ぶようになっていた。

もちろん勝負を挑む事は忘れなかったが。

両親によるとなんでも隣の家の女の子は大層高額な費用を使ってコーディネートされているのだとか。

その時は「へ~、あいつって凄いんだなあ~」程度にしか思わなかった。

女の子に妹が生まれてからは一緒に遊ぶ機会も少なくなったが少年は「そんなものだろう」と気にもしなかった。

数年も経つ頃にはまた一緒に遊ぶようになっていたが、少年には女の子が暗い顔をする事が多くなった事に気付いていた。

 

話を聞くと、どうも女の子の両親は女の子より妹の方を可愛がっているらしい。

なんだ?そんな事かと少年は拍子抜けした。

妹が可愛がられて嫉妬するなんてよくある話じゃないか?

適当に返事をしていたが女の子は声を張り上げた。

 

「ちがう!両親は妹が自分達の理想通りの遺伝子を持って生まれたから喜んでいるんだ!私はもう要らないんだ!

両親に「妹が生まれたから、お前はもう要らない」とはっきり言われたんだ!」

 

その女の子の言葉に少年は強い衝撃を受けた。

――その言葉の意味を、少年はすぐには理解できなかった。

理想通り?

自分でも敵わないのに、いまのこいつ以上の理想ってどれだけ高いんだよ?

それなのにこいつが要らない?

何でそんな事になるんだよ?

少年の疑問を他所に女の子は言葉を続けた。

 

両親に要らないと言われた自分はプラントを出て他の国に行く事になった。

だから少年と会うのもこれが最後だ。

もう会う事もないだろうけど元気で。

 

それが女の子との最後の会話になった。

少年は信じられなかった。

女の子は自分よりずっと優れていた。

それなのに「理想通りではない」というだけで捨てられてしまう。

何でそんな事になる?

両親にも女の子の事を何とかできないか相談したが、「無理だ」「あきらめなさい」としか言われなかった。

それどころか両親からは「頑張らないとお前もあの女の子みたいになるぞ」という言葉が返ってきた。

 

何だそれは?

頑張らないと自分も捨てられる?

自分は両親の子供ではなかったのか?

それを簡単に捨てるなんて?

 

しかし思い当たる事は今までにもあった。

両親は満点を取った時や、勉強が良くできた時はほめてくれたが、

満点を取れなかったり、勉強が出来なかった時は露骨にがっかりしていた。

その時に「もっと高額にコーディネートしていれば」とか「次を考えるか」とか言われていたが少年は気にしていなかった。

 

少年は理解した。

両親が見ているのは「自分」ではない。

「能力」だ。

そして――

その能力を満たすなら、誰でもいい。

少年が自分達の希望を満たせないのであればすぐに「次」を用意するであろう事も。

 

それを理解した時、少年は努力する事をやめた。

正確には両親の望む努力をやめた。

 

自分は両親の願いを叶えるための道具として生まれたのではない。

両親は自分を道具として生み出したのかもしれない。

しかし道具として生まれた者は、道具として生きるしかないのか?

――冗談じゃない。

産まれた理由がどうであれ、

生きる意味は自分で決める。

自分は、自分だ。

幼い少年の心にしっかりとした芯が根付いた瞬間だった。

 

それ以降、少年は両親の望む事よりも自分の興味を優先するようになった。

まともに勉強もしようとせず、両親から見ればまるで意味のない事を貪欲に学び、言う事も聞かず手が付けられなくなった。

 

少年に見切りをつけた両親が「次」を用意するのは必然だった。

 

その結果、少年が着のみ着のまま家から放り出されるのは当然でしかなかった。

 

それを予想していた少年は既に家を放り出されても一人で生きていく準備を整えていた。

既に寝床も、食料の確保手段も、当面の資金も用意していた。

 

――

 

「さて、これからどうしようかねえ?」

 

街を彷徨いながら少年はこれからの事を考えた。

 

「そう言えばあいつは今オーブにいるって言っていたな?」

 

数年前に女の子から少年に近況報告のメッセージが届いていた。

 

それによると女の子は今はオーブのある氏族の養女になっているらしい。

 

「久しぶりにあいつの顔を見に行くのも良いか?」

 

少年は足を止めた。

 

「――行くか」

 

そう言って少年はオーブ行の船に乗る為に宇宙港へ歩き出した。

 

自分で決めた、最初の行き先だった。

 

 

 

 






※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

今後、新章開始の前後に話の区切りとして閑話を掲載していく事にしました。
「本編を優先しろ!」
「早く更新しろ!」
という声もあるかとは思いますが、既に最終話まで執筆完了していますので未完で終わる事はないかと思います。
よろしければ皆様には最後までお付き合いください。

次回お楽しみください。


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