転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。





閑話20 名前0-3~「自分の名前」~

 

 

 

少女と養父はアスハ家を後にした。

少女とタイガを会わせようと思っていたのに、肝心のタイガがいなくなったのだ。

養父はぶつぶつと文句を言いながら屋敷に戻った。

時間を持て余した少女は「街へ出かけてくる」と養父に伝えると侍女を連れて街に繰り出した。

街中の公園の茂みの影で少女は侍女に「もう大丈夫ですよ」と声をかけた。

 

「いや~、助かった!何とかうまくいったな!」

 

侍女の姿をしたタイガが、けろりと言った。

 

タイガが少女より小柄だった事、

侍女の服装が男女の対格差を隠せるゆったりしたものだった事、

氏族の娘に侍女が付き従うのは当たり前だった事、

これらによりタイガは少女の侍女としてアスハの屋敷を抜け出していた。

 

「そこまでして街で何をやりたいんですか?」

 

侍女の服装をカバンに詰め込むと、街の少年と変わらないTシャツと短パン姿になったタイガの周到さに呆れながら少女は尋ねた。

 

「何って、色々だな?街をぶらつくのも良いし、歩きながら買い食いするのも良いし、牛丼も食ってみたいし、ハンバーガーでも良いな?」

 

「牛丼って・・・」

 

首長家の三男に似合わない、あまりにも庶民的なタイガの望みに少女は再度呆れた。

 

「あんな息の詰まる事、いつまでもやってられるか!俺は自由が欲しいんだ!」

 

アスハ家の三男だったら生まれた時からやっていた事ではないだろうか?

それ程アスハ家の生活は息苦しいのだろうか?

タイガが転生者である事を知らない少女の疑問は当然だった。

ちなみに未来において色々な意味で「自由」というこのタイガの願いが叶えられない事は既に確定していた。

 

「まあ、協力してくれて礼を言う。え~と・・・」

 

「ああ、名前は言わないでください。私が助けたのはただのスズキ・イチローくんですので。

あなたが捕まった時、巻き込まれたくありませんので」

 

タイガが少女の名前を呼べばそれは少女の氏族がタイガの脱走に加担した事になる。

タイガの意思はともかく、それは少女の氏族がアスハ家に敵対した事にもされかねない。

それを懸念しての少女の言葉だった。

 

「じゃあ、俺はお前を何と呼べばいいんだ?」

 

「好きなように呼んで下さい。ポチでも、タマでも何でも良いですよ?

私にとって名前に意味はありませんから」

 

「お前なあ・・」

 

そう、少女にとって名前など何の意味もなかった。

実の両親に捨てられ、オーブの氏族の養子になった時点で新しい名前が与えられた。

政略結婚で他家に嫁げばまた新しい名前が与えられるであろう。

そんな自分の名前になど何の興味も持てなかった。

 

「う~ん?それじゃあ、お前の事は「トモ」と呼ぼう」

 

「え?」

 

「お前は俺の友達だろう?だからお前は「トモ」だ」

 

少女は、言葉を失った。

 

友達?

会ったばかりなのに自分を友達と呼んでくれるの?

それにその名前は・・・

 

少女はタイガの言葉を聞くと静かに涙を流した。

なぜ泣いているのか、少女自身にも分からなかった。

ただ――止まらなかった。

 

「お、おい?どうした?」

 

タイガは目の前の少女がいきなり泣き出して狼狽えた。

 

それは実の両親に与えられた少女の名前だった。

 

(この方は私の事なんか何も知らない。

それなのに――私に同じ名前をくれた。

いや、私の名前は「トモ」だ!

あの両親に与えられたものじゃない!

家の名前なんていらない!

タイガ様が与えてくれたこの名前が「私の名前」だ!)

 

自分の名前にすら意味を見出せなかった少女は、タイガによって自分の名前に新たな意味を見出した。

 

それは――

少女が初めて「自分の名前」を手に入れた瞬間だった。

 

少女はタイガの目の前でいつまでも静かに涙を流し続けた。

 

 

 






※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

次回お楽しみください。

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