転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜   作:台風200号

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※前書きです。

本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。





閑話20 名前0-4~守る側、守られる側~

 

 

 

少女が泣き止んで落ち着いたころ、タイガと少女・トモは牛丼屋にいた。

 

「へい~!お待ち!」

 

威勢の良い掛け声とともにタイガと少女の目の前に牛丼が運ばれてくる。

 

「おお~、きたきた!これだよこれ!」

 

嬉々として下品に牛丼をかき込むタイガに少女・トモは呆れた顔を向けた。

 

「仮にも女の子と一緒にいるのに牛丼屋ってのはどうかと思うんですけど?」

 

そんなトモの言葉にもタイガは動じない。

 

「デートならそうだろうな?しかし今は俺の望みが優先だ。なに、次はまともなデートにしてやる」

 

「次があるとは思えないんですけど?」

 

トモの言う通りだった。

仮にもタイガはアスハ家の三男なのだ。

誘拐やテロの標的になっても不思議ではない。

以後タイガの監視はより厳しくなり、外に抜け出す事などできなくなるだろう。

 

「なに、その時はその時でまた別の手を考えるさ」

 

全く懲りていないタイガの言葉に呆れると、トモも目の前の牛丼に箸をつけた。

 

「あら、おいしい?」

 

牛丼は養女とはいえ氏族のお嬢様の口にも合ったようである。

 

「おっちゃん!追加で大盛り!つゆだくネギ抜きで!」

 

「あいよ~!」

 

(タイガ様なんだかやけに手馴れてません?)

 

当然だがトモの疑問に答える者は誰もいなかった。

 

その後もタイガとトモは、ワイワイと騒がしく街中を歩き回った。

そんな彼らが薄暗い裏通りに足を踏み入れてしまうのは当然だろう。

そこでケンカが起こっていた事も必然だろう。

問題はそこでケンカをしていたのはトモの知り合いだった事だった。

 

「トモ?」

 

そこでケンカをしていたのはプラントでトモの隣に住んでいた少年だった。

 

プラントからオーブにやってきた少年は、手っ取り早く生活費を稼ぐために賭け試合に参加した。

賭け試合ではボクシング、レスリング、その他ルールなどあって無いようなものだった。

しかし少年は何しろコーディネーターなのだ。

肉体的にはナチュラルに勝つ事など簡単だ。

ただし、少年は少々勝ち過ぎた。

賭けの胴元に目を付けられると、数人がかりで袋叩きにされた。

相手が一人か二人ならともかく、それ以上の人数の相手は例えコーディネーターでも不可能だった。

タイガとトモが出くわしたのは少年がそんなリンチを受けている場面だった。

 

「なんだ?知り合いか?」

 

胴元は下品な笑みを浮かべるとトモを見やった。

 

「ちょうどいい。こいつの知り合いならこいつの尻拭いをしてもらおうか?

ちっと年齢が足りていないようだが女なら問題ないだろう?」

 

胴元にとって理由など何でもよかった。

単に自分の欲望を満たせればそれでよかった。

たまたまトモが目の前にいて適当な理由をこじつけただけだった。

 

「な!」

 

トモは絶句した。

何で隣に住んでいた男の子がオーブにいるのか?

何で自分が数年ぶりに会っただけの知人の後始末をする必要があるのか?

何でこんな男にそんな事を言われなければならないのか?

何も理解できずに混乱していると隣のタイガがポツリと漏らした。

 

「なんだ。どうやら人の言葉を話すゴミがいるようだな?

ゴミはゴミらしく道端の隅っこでおとなしくしとけ。

社会の迷惑だ」

 

胴元たちは激高した。

 

「なんだと!このガキ!」

 

「女の前だからってかっこつけるんじゃねえよ!」

 

「このクソガキ!やっちまえ!」

 

タイガの前に進み出てきたのは大きな男だった。

格闘技でもやっていたのか、がっちりした体格で身長も190㎝はあった。

ただ薬物でも使用しているのか目は濁り、虚ろな目で虚空を見つめていた。

小柄なタイガと比べれば正に大人と子供だった。

 

 

「気を付けろ!そいつはいくら殴っても通じない!早く逃げるんだ!」

 

胴元たちに抑え込まれた少年がタイガに声をかける。

 

「うるせいよ!お前は黙っていろ!」

 

胴元が少年を殴りつける。

それに目もくれずに男はタイガに襲いかかった。

タイガはトモを離れさせると、男を正面から迎え撃った。

両手を広げて突っ込んでくる男の胸に一撃。

しかし男が止まる事は無い。

対格差を考えれば当然だ。

組み付かれれば対格差で終わり。

誰もがそう思い、男が組み付いた瞬間、タイガの身体は一瞬下に沈み、全身のバネを使った頭突きが真下から男の顎を突き上げていた。

どんな対格差があっても首を支点にして顎先に一撃を加えられれば脳が揺れ、まともに立っている事などできなくなる。

タイガは地に倒れ伏した男の足を掴むとそのまま関節を極めた。

 

「~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

打撃が通じないはずの男が声にならない絶叫を上げていた。

関節技の痛みは、死を覚悟した者でさえ悲鳴を上げさせる。

例え極められたのが片足でも、激痛の為に残った手足でさえ動かせなくなる。

タイガはそれを“経験上”知っていた。

タイガは冷静に男が激痛で意識を失うまで関節を極め続けた。

 

「・・・・・・」

 

その場を静寂が支配していた。

男はかなりの強者だったのだろう。

それが年端もいかない少年にあっさりとのされたのだ。

 

「・・・て、てめえ、無事に帰れると思うなよ!」

 

この場で最も腕っぷしの強い男が負けたのだ。

残ったチンピラ達に勝ち目がないのは明白だった。

しかしチンピラ達は自分達の詰まらないメンツの為にも引っ込むわけにはいかなかった。

 

(ああ、失敗したかなあ?)

 

表には出さないがタイガは正直焦っていた。

 

コーディネーターの少年が負けたように、いくら身体能力が高くても、武術を学んでいても、

それが有効なのは一対一の場合だ。

良くても一度に相手に出来るのは二人程度。

同時に三人以上を相手に出来るのはそれこそ達人クラスでなければ不可能だ。

だから最初に最も強いと思われる男を倒す事で戦意の喪失を狙ったのだが、

チンピラ程度の相手では意味がなかったようだ。

 

(おい、いよいよとなったら俺が時間を稼ぐからお前は逃げろ)

 

タイガはトモに小声で声をかける。

 

(タイガ様!)

 

氏族の娘としてトモにそのような事が出来る筈もなかった。

むしろ自分の身と引き換えにしてでもタイガを守らなければならなかった。

下手をすれば養父の家が取り潰される事すらあり得る。

 

(さてどうするか・・・)

 

タイガが考えを巡らせている間にその場に一人の老人が現れていた。

 

「ホ、ホ、ホ、申し訳ないがこの場は儂に任せてもらえんかね?」

 

「あ、あなたは・・・」

 

胴元は老人が目の前に来るとダラダラと脂汗を流し始めた。

 

「その子は私の身内でな?このままではおぬしらも無事に済まんぞ?

後でおぬしらの分までわしが締めておくから、この場は儂に任せてもらえんかな?」

 

その言葉に胴元たちは雷鳴に撃たれたように姿勢を正した。

 

「あ、あなたの身内?」

 

「そ、それは申し訳ない事で・・・」

 

「ああ、別にそんな事はどうでも良い。この場は儂の顔に免じて収めてもらえないかね?」

 

「そ、それはもちろん」

 

「し、失礼します」

 

胴元たちは倒れ伏した男を担ぎ上げ、抑え込んでいた少年を放り出すと逃げるようにその場を離れた。

 

 

「・・・」

 

トモは何が起こったのか理解できなかった。

自分はタイガ様の盾になろうと覚悟を決めたはずだった。

それがいきなり何故?

 

「・・・おい、爺さん?こんなとこで何をやってるんだよ?」

 

「ホ、ホ、ホ、もちろん弱っちい弟子を助けにじゃよ?なかなか良いタイミングだったろう?」

 

「嘘つけ!どうせ夜の店に行く途中だったんだろう!そうでなきゃこんなとこ通る筈があるか!」

 

「ホ、ホ、ホ、まだ修行が足りんようだな。明日はもっと厳しくしても良いな?」

 

「て、てめえ・・・」

 

どうやら老人はタイガの師匠らしい。

ひとまず安心しても大丈夫なようだ。

 

「まあ、一緒にいた女の子を見捨てなかった事はほめてやる。それが無かったらもっと厳しくしていたぞ?」

 

「ふざけんな!そんなことできるわけがないだろう!」

 

ワイワイと騒ぐ師弟を眺めながらトモはようやく緊張を解いた。

 

(……この人は、守られる側じゃない。この人は――守る側の人間だ)

 

 

「おい、トモ。いったいどうなっているんだ?」

 

「後で説明してあげるから今は黙っていなさい」

 

幼馴染の少年に冷たく返事をしながらトモはタイガと師匠の喧騒をいつまでも眺めていた。

 

 

 






※あとがきです。

お読みいただきありがとうございます。

本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。

次回お楽しみください。

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