転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話は独自設定・原作改変を含みます。
原作とは異なる表現、矛盾、人物が登場しますが
本作独自の創作ですのでご容赦ください。
お待たせいたしました。
新章
『運命《ディスティニー》編』
開幕です。
どうぞお楽しみください。
第139話 無用の混乱
旧プラント最高評議会のメンバーは全員、死刑を免れた。
ただし無罪放免ではない。
禁固、公職追放、プラントからの追放など、
それぞれに重い刑が言い渡された。
その中でも、パトリック・ザラへの処罰は特異だった。
プラントからの追放。
地球連合への引き渡し。
そして木星往還船「ツィオルコフスキー2」への強制搭乗。
片道約7年、往復約15年。
さらに期間は無期限。
地球圏からの強制隔離であり、実質的な終身刑だった。
体調はすべてモニターされ、話し相手はAIのみ。
人間が介在することはなく、精神が不安定になれば薬物で強制的に安定させられた。
「いっそ死刑にすれば?」という声も当然上がったが、
タイガの
「一億数千万の命の代価を、その身に思い知らせる必要がある」
という言葉と、その手段を聞いた者たちは、戦慄しつつも納得した。
こうしてパトリックは地球圏から排除され、一時帰還が許されるまで、約30年もの間プラントの地を踏むことはなかった。
そして──
一時帰還したパトリックがプラントの現状に絶望するのは、また別の話である。
――
オーブ代表代理カガリ・ユラ・アスハは、軍備増強を続けるプラントへ抗議するため、護衛としてアリサとトモを連れてL4の第1兵器廠アーモリーワンを訪れていた。
そこで、カガリと評議会議長ギルバート・デュランダルの非公式会談が行われていた。
「だが、強すぎる力は、また争いを呼ぶ!」
「……いいえ、姫。争いが無くならぬから、力が必要なのです」
「なんだと!」
二人の舌戦に割って入ったのは、カガリの隣に立つ美女──アリサだった。
「カガリ様? 非公式とはいえ、あなたの発言はオーブにとって重大な意味を持ちます。ご理解ください」
「アリサ! 今はそんなことを──」
「カガリ様?」
「ヒッ……わ、わかってる!もちろんだ!」
アリサに一言二言ささやかれただけで、カガリは嘘のように大人しくなった。
デュランダルが呆気に取られる中、アリサは静かに告げた。
「ギルバート・デュランダル様ですね?我が主より、議長就任のお祝いとお言葉を賜っております」
「我が主とは?」
予想はついていたが、デュランダルはあえて尋ねた。
「我が主は──タイガ・ウラ・アスハ様です」
「ほう……タイガ様からのお言葉ですか。賜りましょう」
「ありがとうございます。では──」
アリサは淡々と告げた。
そこで伝えられた言葉はその場にいる誰もが予想しないものだった。
「『無駄な事はするな。全て諦めておとなしくしておけ』とのお言葉です」
その場の空気が凍りついた。
デュランダルの口元が、わずかに引きつる。
「……どういう意味ですかな?」
アリサは淡々と続けた。
「デュランダル様は遺伝子学者であられたとか。『仮にも遺伝子学者で現議長が、プラントの未来を知らぬはずがない』──
これが我が主のお考えです」
「……」
「もはや決定している“プラントの未来”を覆そうとするのは、無用な混乱をもたらすだけ。行動は控えていただきたい──とのことです」
デュランダルは動揺した。
(オーブは……すでにプラントの未来を把握しているのか)
しかし、それを素直に受け入れることはできなかった。
「我々に、何もせず運命を受け入れろと?」
「いえ。我が主はそのようなことは一言も。ただ『お前たちが何をしようと勝手だが、こちらに迷惑をかけるなら相応の対応をとる』とのことです」
「……」
「プラントが国内で何をしようと自由です。
しかし『他国に干渉して自国の利益を得ようとするなら、それは侵略以外の何物でもない』──
我が主はそうおっしゃっています」
「タイガ様は我々に黙って滅びろと?」
「独立したのですから、自分たちで何とかされるべきでは?他国に協力を仰ぐなら対価を用意すべきでしょう。
ナチュラルの国だからといって、対価も払わず成果だけ奪おうとすれば争いになるのは当然では?」
あまりの正論にデュランダルは言い返せなかった。
プラントの思考は、技術的・経済的優位を背景にした「最小限の対価で最大の成果を」というものだった。
極論すれば、「ナチュラルはコーディネーターに無料で奉仕しろ」という思想だった。
デュランダルは一応、他国=ナチュラルに対して対価を支払うという思考は持っていたものの、
それが相手にとって等価であるか?
という点に関しては何も考慮していなかった。
例えるなら宝石の原石を渡して倉庫一杯の小麦を要求するようなものだ。
相手から見れば汚い石ころで小麦を奪おうとしているようにしか見えない。
争いになるのは当然だった。
アリサは冷たく告げた。
「いくら軍備を増強しようと、どんな政策を実行しようと、プラントの未来はすでに決定しております。無駄な事は慎むべきかと」
「・・・それを我々に受け入れろと?」
「はい。そうすれば他の誰にも迷惑は掛かりません。もちろん我が国にもです」
あまりにも冷たい、そしてあまりにも正論なアリサの、いやタイガの言葉だった。
「……受け入れられませんね」
「おや?私など、せめて“最後の時”ぐらいおとなしくしていればと思いますが?わざわざ自分で早める必要はないでしょうに」
「それでも我々はやらねばならない!」
思わずデュランダルはアリサに、その後ろにいるタイガに向かって叫んでいた。
アリサは静かに返す。
「同じことを、前評議会の方々もおっしゃっていたのではありませんか?」
「……!」
デュランダルは言葉を失った。
「どうやらプラントの方々は『学習』という言葉を知らないようですね?ならば結果も以前と同じものになるでしょうね?」
アリサはカガリに声をかけた。
「カガリ様、伝えるべきことは伝えました。失礼いたしましょう」
「お、おう……」
トモは周囲の警戒の為に先導して歩き出し、一礼してアリサとカガリはその場を去った。
残されたデュランダルは、タイガが指摘した“プラントの未来”に暗い気分を抱えながらも、少しでもそれを避けようと行動を開始した。
だが──
それはタイガの言う通り、他国に無用の混乱を引き起こすだけのものだった。
※あとがきです。
お読みいただきありがとうございます。
本話には本作独自の設定が多数ありますが、創作上の出来事としてご容赦ください。
新章
『運命《ディスティニー》編』
開幕です。
デュランダルの行動が地球とプラントに何をもたらすのか?
次回お楽しみください。