転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜 作:台風200号
※前書きです。
本話はキャラクターの心理描写、独自設定が中心となります。
原作とは異なる解釈や表現が含まれますのでご了承ください。
「こんなのは原作にはなかった!」
「矛盾してるじゃねーかー!」
と言ったご指摘、非難はあるかとは思いますが、
本作における創作上の出来事なのでご容赦ください。
「父上入ります」
一応断ってからカルアは父の部屋へ入った。
「よく来たな」
当主の席でカルアの父は鷹揚に頷いた。
父は上機嫌だった。
隣には兄が立っている。
いつも自分を可愛がってくれて笑みを浮かべていた兄が、何やら難しい顔をしているのが気になった。
「カルア、タイガ様が帰国するのは知っているな?」
「ええ、タイガ・ウラ・アスハ様ですよね? それが何か?」
「お前をタイガ様のお世話係として出仕させることになった」
「私をですか?」
カルアは訝しんだ。
タイガ・ウラ・アスハと言えば幼い頃は「オーブの神童」と呼ばれていた男だ。
現在は大西洋連邦に留学している。
それがウズミ様の首長代表就任式に合わせて一時帰国されるという事だ。
その時のお世話係として自分が選ばれたらしい。
しかし噂ではタイガ様の女性の好みは胸の大きいスタイルの良い年上の美人だという。
自分とはまるで正反対だ。
つまり自分は純粋に「お世話係」、つまり秘書の役割をする為に呼ばれたのだろう。
それなら納得できる。
自慢ではないが自分の能力であれば、1週間どころか1ヶ月、いや10年単位であっても予定を組む事は簡単だろう。
(ただし決まった事だけであれば)
「タイガ様は異国でお疲れだ。その疲れを癒して差し上げるのもお前の仕事だ」
父の言葉を理解した時、カルアの頭に瞬間的に血が上った。
「まあ、お前はタイガ様の好みからは外れているから無理する必要はないがな」
明らかに「お前には女性としての魅力がない」と断言されて、カルアは一周回って冷静になった。
「父上」
「ん? なんだ?」
父の座る当主の席の目の前まで進むと、カルアは口を開いた。
「顔に蚊が止まっていますよ?」
湿った布袋を壁に叩きつけたような音と共に、カルアの右ストレートが父の顔面を貫いていた。
――
「ぬ、おおお!」
顔に湿布薬を張り付けながらカルアの父は呻き声をあげていた。
「自業自得ですよ。あの娘にも、もっと言い方というものがあるでしょうに」
カルアの兄は呆れたように父に言葉を掛ける。
「だがなあ、カーン、あの娘には加護者が必要だ。それも5大氏族を超える加護者が。その為にはタイガ様の加護下に入るのが一番だ」
“タイガ様は手を出した女の面倒は一生見ると公言しているお方だからな”
という父の言葉に、カーンは頷く。
「それは同意しますが、女の魅力がないと断言するのはどうかと思いますよ? あの娘も気にしているのですから」
気にしてるのに改善しようとしないなら何の意味もない、と父はカーンの言葉をバッサリと切り捨てる。
「せめてこれで少しはタイガ様に気に入られようと意識してくれればよいのだがな」
という父の言葉に同意しながらも、
「貞操と引き換えに身を守ってもらえ、とあの娘に命令するのはいい気分ではありませんね」
というカーンの言葉に父も頷いた。
「しかしそれでカルアの安全が図れるのなら安いものだ」
それはどんな形でもいいから生きていてほしいという家族の願いである事は間違いなかった。
「しかも万一うまくいけば我がホクハ家がアスハと繋がりを得る事が出来る」
うまくいかなくても、カルアがタイガ様の加護下に入ったと他の氏族に思い込ませれば良いだけだからな、と言う父の言葉に、カーンは「そうですね」と短い同意の言葉を返す事しかできなかった。
つまりは父の真意はどうあれ、実態は有力家同士のよくある話のひとつでしかなかった。
「それより就任式が終わったらお前の結婚式だ。ウズミ様の就任式と同時にやるわけにはいかないから、相手を相当お待たせしてしまったからな。よくお詫びしておけ」
「分かっています」
父の言葉に頷きながら、カーンは婚約者との結婚式に思いを馳せた。
――
実家の出来事を思い出し不機嫌になったカルアは時計を見上げた。
もうそろそろタイガを連れていく時間だ。
コンコンコン。
「入りますよ」
返事も待たずに扉を開けると、そこにいる筈のタイガの姿はどこにも見えなかった。
代わりに呆れたような顔をしたアズラエルが、開いた窓の傍に立っていた。
「タイガ様は?」
返事の代わりにアズラエルは開いた窓をゆっくりと指さした。
「逃げましたね」
端正な顔に似合わない、底冷えするような声がカルアの唇から紡ぎ出されるのであった。
本編第12話です。
果たしてタイガの逃亡先は?
カルアの追跡は成功するのか?
まあ、失敗するはずはないんですが(笑)
次回お楽しみください。